米国メディアではここ数日、米ドラマ「エンパイア」出演俳優ジャシー・スモレットのヘイトクライムの話題で持ち切りです。
ゲイで黒人のスモレット氏へのヘイトクライムかと思われた事件が、スモレット氏による自作自演である可能性が浮上し、全米の注目を集めています。
米ドラマ「エンパイア」のスターがヘイトクライムを自演か?
事件のあらまし
ことの始まりは、2019年1月19日、米ドラマ「エンパイア/成功の代償」の出演俳優ジャシー・スモレット氏が二人のマスクをした男性に襲われたという事件でした。
スモレット氏は夜中の2時頃、近くのサブウェイにサンドイッチを買いに行った帰りに、二人組の男に襲われました。スモレット氏によれば、電話で話しながら道を歩いていたところ、後ろから「エンパイア!」という叫び声がしたそうです。スモレット氏は構わず歩いていきました。
すると男たちは「MAGA」といい後ろに忍び寄ってきました。スモレット氏が振り返ると、赤いキャップ帽を被りマスクを被った男が「This MAGA country, ピー(faggot?)!」といって顔を殴りました。
スモレット氏が殴り返して揉み合いになると、二人目の男が後ろから蹴ってきました。二人が暴行をやめて立ち去ると、スモレット氏の首にロープが巻かれており、身体に漂白剤をかけられていたということです。
※MAGA=Make America Great Againというトランプ大統領の言葉を略した標語。この言葉自体は「アメリカを再び偉大な国に」という愛国的な言葉だが、リベラルメディアによって歪められ、本来の趣旨から独り歩きし、白人至上主義者による「ホワイトアメリカ」と同類のプロパガンダに仕立て上げられた。
スモレット氏は後日、警察に報告しました。
この事件はゲイの黒人つまりマイノリティへのヘイトクライム(憎悪犯罪)として取り上げられ、著名な人々がスモレット氏への同情とサポートを示し、マイノリティへのヘイトクライムは許されまじ卑劣な行為であると一斉にSNS上で表明しました。
意外な展開
ところが事件は、スモレット氏を襲った二人組が捕まったことで、驚くべき急展開を見せます。
街路の監視カメラにスモレット氏を襲った二人組が映っており、二人は空港で身柄を拘束されました。二人はナイジェリア出身のオスンダリオ兄弟(黒人)で、スモレット氏と顔見知りであることが判明。一人はスモレット氏と一緒にジムに通い、もう一人はスモレット氏が出演するドラマ「エンパイア」でエキストラを演じた人物でした。
オスンダリオ兄弟はスモレット氏を襲撃した翌日(同日?)にシカゴからナイジェリアに飛び立ち、再びシカゴに戻ってきたところを身柄を確保されました。
オスンダリオ兄弟の自供によると、二人はスモレット氏に3500㌦で襲撃を依頼され、事前にリハーサルもしたということでした。完了した暁には、さらに500㌦支払う予定だったと話しました。
新たな証拠に基づき、警察はオスンダリオ兄弟を釈放し、二人はもう容疑者ではないと発表しました。
警察はオスンダリオ兄弟の家宅捜査も終え、証拠品を調べているということです。
オスンダリオ兄弟は共同声明を出しました。
私たちはレイシストでもなければ、ホモ嫌いでもない。まして反トランプでもない。私たちはシカゴで生まれ育ったアメリカ市民です。
シカゴ警察はオスンダリオ兄弟がスモレット氏の首にまきつけたロープをシカゴのハードウェアストアで購入した記録も発見しています。
この新事実により、スモレット氏が2人を雇ってヘイトクライムを自演したという説が捜査されているようです。
スモレット氏の自演なのか?
現在、自身へのヘイトクライムを自演したと疑われているスモレット氏ですが、弁護士の声明によれば、「容疑者が知り合いだったことにショックを受け落ち込んでいる。さらに被害者の立場であるのに嘘をついているなどと心ない中傷や批判を受け、さらに傷ついている」ということです。
スモレット氏がほんとうに襲撃されたのであれば、心身両方への暴力、しかも人種と性の両方のアイデンティティを不条理に傷つけられたわけですから許されない犯罪行為です。
しかし状況証拠を見ると、おかしな点がいくつもあります。
スモレット氏が襲撃現場に連れていった警察官はすぐに何かがおかしいと気づいたと言っているそうです。まずスモレット氏がカメラの位置を正確に知っていたこと(ただしカメラは違う方向を向いていた)。
そして犯人が「This is MAGA country」と言い捨てたという点です。表向きには、MAGAと言いながらマイノリティを襲撃するようなレイシストは白人のトランプサポーターと考えるのが当然ですが、この兄弟は黒人です。
夜中の2時に赤いハットを被って…というのも引っかかります。シカゴが位置するイリノイ州は民主党支持州であり、シカゴはリベラルな市ですから。
警官のなかには、「そもそも犯人が白人だとして…白人はそもそもエンパイアなんか観ていない」という人も。エンパイアを観ていない白人が夜中の2時に通りを歩ているスモレット氏に気が付いて襲うというのも確かに考えづらいです。しかも漂白剤とロープまで用意して。
スモレット氏は襲撃後に「自分が襲われたのはトランプ大統領を公然と批判しているからだ」と語っていました。
つまり、反トランプ大統領のスモレット氏が襲撃を自演して、性的マイノリティ・人種マイノリティがヘイトクライムを受けているのはトランプ大統領の扇動のせいであるという流れに持っていきたいアジェンダを持っていたかもしれないということになります。
でもそもそもこの兄弟が犯人ならMAGAとは言わないですよね。自分達も黒人なんだから。オスンダリオ兄弟がロープを買っている記録が残ってるし、二人が襲ったことは間違いなさそうですが。
スモレット氏のスマホ記録は、最初提出するのを拒んだようですが、のちに提出。しかし、改ざんされまくっていてスマホ記録からの捜査は不可能だということです。(スマホエンドではなく通話会社やアプリ会社からの記録では見れないのかしら?プライバシー保護で無理か。)
ちなみに気になる点がもう一つあって、スモレット氏にはエンパイアのスタジオ宛てに脅迫状が届いていたんですね。それが1月22日。
手紙は雑誌の切り文字が使われており、木に吊るされた人の絵が描かれています。「黒人のホモ野郎」みたいなことが書かれています。
手紙の中には白い粉が入っており、これはアスピリンを砕いたものであることが分かっています。
そしてスモレット氏への暴行で一度は身柄を拘束されたオスンダリオ兄弟の家宅捜索で押収されたものの中に「雑誌」「財布と財布の中に切手」とあります。財布の中に切手を入れておく場合もごくたまーにあるけど、一般的にはあまりないですよね。。あるソースによると、レターの文字が切られた雑誌が発見されたとかないとか。
ロープ、マスク、漂白剤も押収されました。
During search of brothers home last week....
— Charlie De Mar (@CharlieDeMar) February 18, 2019
Some of items inventoried on police evidence logs show a “magazine, a wallet with stamps and piece of paper/writing were taken from home”https://t.co/0TtYH1awDE pic.twitter.com/jDQvzGADCg
インターネットやSNS上では、差別的なレターが送られてきたことがあまり話題にならなかったので、スモレット氏が今度は襲撃を自演したのではないかという向きが強まっています。
今のところ自演の物的証拠が集まってきていますが、この兄弟がゲイ嫌いで、額面通りのヘイトクライムだという可能性も残ってますしね。実はトランプファンとかもありえるだろうし。でも、アメリカでヘイトクライムの罪は重いので、よっぽどじゃなきゃ簡単に釈放しないですよねぇ。
現在はFBIが捜査を進めているということですので、いずれ真相が明らかになるかと思います。