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特殊部隊ドラマ「Special Ops: Lioness」:現実無視のスーパーウーマン!シリアスさと滑稽さが混在して心情カオス

久しく投稿していませんがお元気か。

私はというと2週間半前に腰をまたやってしまい、ほぼ寝たきり生活が続いておるが、その話はまたの機会としよう。

ドラマ「Special Ops: Lioness」を視聴したので、あらすじ紹介と感想を述べたい。

 

「Special Ops: Lioness」

経験から特殊舞台とかスペシャルオプスとか聞くと、現実との甚だしい乖離のせいでドラマに入り込めないため、まず敬遠してパスするようにしてるのだが、パスできない理由があった。

マイケル・ケリーである。

禿?どこ?と言わんばかりの渋さ、マイケル・ケリーCIA副長官とCIA高官のニコール・キッドマン

セミ禿げながらその渋さと落ち着いた物腰を武器にドラマで着々と重要人物キャラをこなし、「ジャック・ライアン」シリーズではライアンチームに欠かせない好人物キャラマイク・ノーベンバー(仮名)をこなして助演男優として不動の地位を築いている。

私は「ドーン・オブ・ザ・デッド」以来、彼のファンである。特にマイケル・ケリーが、己のセミ禿がった頭をコームで梳いていたあの瞬間、私は心を奪われたのです。(カメラは非情大胆にも真上からケリーの天辺を映していた。ザック・シュナイダーの阿呆ー!)

セミ禿げだからこその魅力がある。セミ禿がってなかったらマイケル・ケリーは成功しなかった可能性さえある。あの天辺からの撮影もセミ禿げだからこそ、私の心を盗むことができたといえる。

セミ禿がってないマイケル・ケリーなんてマイケル・ケリーじゃないんだ。

大好き!マイケル・ケリー!!

そして、後ろのニコール・キッドマンは任務の責任者のCIA高官、その上司がマイケル・ケリー、CIAの副長官に扮している。

主演ゾーイ・ソルダナはCIA職員で、海兵隊から構成される特殊部隊の現場指揮官を務める。

タイトルにあるライオネス計画とは、女の特殊部隊員をテロリスト組織に潜入させ、標的を倒すことにある。

標的はテロリスト組織の金を牛耳るアラブ系の男。

ライオネスに選ばれたのがライスラ・デ・オリベイラ扮するクルーズで、標的の娘に近づき、信頼を得て、娘の結婚式にて標的を倒すのが目標だ。

ライオネスは母獅の意味。

というのが粗筋なんだけど。

 

感想

脚本はテイラー・シェリダン、クリエイターも兼ねる。

テイラー・シェリダンの作品は概ね好みに好合うものが多いのだけれど、イマイチ好きになりきれない部分もある(後述)。

指摘したくない点でもあるけど敢えて指摘すると、シェリダンもハリウッドのフェミニズム&ウォーク*イズムからは逃れられないようだ。

*ウォーク(woke)...元は awake → awoke の「目覚めた」「覚醒した」から派生した言葉で、マイノリティへの人権や人種差別に対する社会的意識が高いことを指すが、行き過ぎた社会的意識から昨今は否定的な意味で使われることが多い。

冒頭で述べたように、特殊部隊ものは現実との乖離がありすぎて馬鹿げた内容になるものが多い。

往々にしてフェミニズム&ウォークイズムを取り込んで失敗するパターンだ。

本作もその例外ではない。特殊部隊の指揮官をガリ細のゾーイ・サルダナが努めているが、現実に軍の特殊部隊の指揮官を女が努めたことはない。特殊部隊の実行隊員つまり危険な現場に出る隊員にも女はまず存在しない。せいぜい特殊部隊のサポートなどアドミ業務だ。

まして本作のように若い女が特殊部隊員として敵地に潜入、標的を素手で倒す(劇中ではナイフを使う)といったプロットは、余りにも現実離れし過ぎていてドラマをリアルに感じることができない。

視聴者の離脱の理由は殆どここに収束されるといっていい。

潜入するライオネスに選ばれたクルーズ(ライスラ)は、被虐待者の人生を耐えてきた子で、身体は傷だらけ、DV男に殴られる生活をしていたが、ある日ブチ切れて男をフライパンでしこたま殴りつけ、逃げ込んだ先が軍隊のリクルートオフィスだった。

打たれ強いクルーズは軍の訓練で前人未踏の懸垂20回、男の体力測定テストで99%をスコアしてしまい将校に「ほぇええ!何たるスーパーウーマン!」と言わせしめる!

現実の軍人どもはどうか?

軍の訓練に於いて懸垂の最高回数は女で7回〜12回、男で18回だそうだ。しかも懸垂は完全に上まで(顎が鉄棒につくまで)そして下まで(腕を完全に伸ばす)下げて初めてカウントされるという大層厳しいものなのである。

フェミニズムとウォークイズムは物理的・生物学的な不可能さえ可能にしてしまう!

せいぜい55kgのか細い体型で、90kgはあるであろう屈強な特殊部隊の男を打ち負かすなんてのは夢物語でしかないわけだが、フェミニズム&ウォークイズムの世界ではそれが起きるし、ゾーイ・サラダ菜がいみじくもブロッコリ頭キッズに言い聞かせたように、「you can do anything 」なのである。

ブロッコリ頭が可愛らしいサラダ菜のキッズたち

馬鹿げた内容は他にも多々ある。

まず、クルーズはアラビア語を話せない。潜入捜査の上に抹殺する役目を負う人間が現地の言葉話せないなどあり得ない。

潜入前に言語を習得していくのが道理である。何故か?言語を知らなければ命取りになるからだ。言語を知らなければ情報も入手できないからだ。

また冒頭の紹介ミッションで、前任者のライオネス(潜入捜査した特殊部隊員)が敵地に潜入中、体側面にある十字架のタトゥーを入浴中に目撃されたため命を落とすのだが、これもあり得ない。タトゥーや身体上の特徴的な印は、すべて記録されるからだ。

このような初歩的なミスはあり得ない。

さらにあり得ないのは、クルーズは標的の娘であるアーリア(ステファニー・ヌル)にファースト・コンタクトを図り、クウェートのルイヴィトンで見事知り合いになるのだが、その後サラダ菜指揮官はクルーズを闇討ち、限界点を知るための拷問計画を実施する。

そのせいでクルーズは顔にも体にも傷や痣を負うのだが、こういうのって標的にファースト・コンタクトする前に済ますものではないか。

おかげでアーリアに「どうしたん、ボコボコやん」と心配され、アーリア勝手に呼び寄せた医者に「えー、診断の結果、これらの傷は車の事故によるものではないですねぇ」と言われて疑われる始末。

クルーズは最初から最後まで顔に傷痣を負っていたが、アーリアのボディガード達は何故かその点は無視、疑うこともしないのであった。

おかしいだろー!!

ふつうテロリスト組織は家族も全員標的になるので、細心のセキュリティが施行される。アーリアのようにランダムに知り合ったアメリカ人をすぐに家に招いて泊まらせる等あり得ない。

可笑しい話はまだある。

クルーズが敵を斃す頃、クルーズを疑い始めたアーリアの婚約者がクルーズパスポート写真を顔認識ソフトにかける。すると軍服で朋輩たちとニコニコ笑顔のクルーズの写真が出てきていとも簡単に正体がバレる。

え...そういうのって潜入前にすべてチェックして情報は隠されるものじゃない?そうよね。なんなん、CIA管理の特殊部隊といいながらこの杜撰さ。あり得ないわー。

現実とのギャップがあり過ぎて見る気がしなくなる、といったのはこうした理由からです。

フェミニズム&ウォークイズムは、例えばチームの男性隊員は誰もキャラに命吹き込まれておらず、モブキャラ、その他扱いなのに、レズビアンのボビーだけは多用され、視聴者にも印象付けられている、という点にも露われる。ボビー役俳優は素敵でしたけどね。

クルーズ役ライスラ・デ・オリベイラは救いようがないほどこの役に向いてなかった。

次にシェルダンの嫌いなところだけど、演出が臭いというかクリンジなのよ。たとえばクルーズがサラダ菜に拷問にかけられたことを知って、ボビーがバーに向かい拷問チームの男の頭にビアを投げつけるシーンがあるんだけど、あんな事はまずないわね。

とにかく軍人がウーラー*感いっぱいで恥ずかしい。実際の軍人たちはもっと冷静で落ち着いていますよ。まぁ喧嘩は多いかもしれないけど…

*海兵隊員の鼓舞言葉。なお、陸軍はフーアー、海軍はフーヤー。

チームメンバーもこんな話し方する!?ていう話し方ばかり。日本語字幕でどうなっているか分からないけど、絶対ない話し方だよ。

Fワードも多すぎるんだよね。脚本ありきだから仕方ないんだけど、高等教育を受けたかのような高い語彙力の中にFワードが入るから、リアルじゃないのよ。こんな話し方しないよ。

余りにも格好良いセリフや表現を日常会話にするものだから、気恥ずかしいというか、どこの世界?てな感じで。

ここがテイラー・シェリダンものの嫌いな点ですわね。

蛇足も多い。

特にサラダ菜の家族な。医者の旦那はすごく良かったけど、サラダ菜が帰宅早々、旦那と「他の女と寝た?」「そんなには」みたいな物騒な会話が出てくるわけ。サラダ菜が仕事でほぼ不在なので離婚間近の別居に近い夫婦関係ではあるのだけれど、オープンマリッジ*をノーマライズするかのような会話…ソワソワするわ。

*オープン・マリッジ…夫婦同意の下、お互い他の人と性交してもよいという夫婦関係。ウィル・スミス夫妻がオープン・マリッジを宣言している。

キッズの反抗とか、そもそも要らないのよね。サラダ菜のキャラを掘り下げるためなんだろうが、集中力削がれるだけで、物語に何の貢献もしていない。

チームの家に突然ティーンが強盗を働くといいう小話もあったわね。あれ一体なんなの?と首を傾げるしかない挿入話で、これもチームの掘り下げのためなんだろうけど、取ってつけた感半端ないし完全に蛇足だよね。何あれ、強盗ティーンに金渡して追い返すとかないわー。

同じように特殊部隊がテロリストを狩る映画「ゼロ・ダーク・サーティー」があるけど、あの映画が成功したのは重厚感ある内容に蛇足が全くなかったの一つだと思うの。キャラの余計な私生活とか、ビン・ラディンを狩るという重大なミッション、そこには任務と任務を実行する者達、標的しか存在せず、余計なものが入る隙間はなかった。ドラマと映画はまた違うかもしれないけど。

指揮官は男、潜入捜査は女でもいいが、もう少し現実離れを解消して、蛇足は排除してミッションをより綿密にしていたら良かったかもね。

ホームランドを見習って欲しいな。