全世界が新型コロナウイルスの治療薬を待ち望むなか、朗報が飛び込んできた。
新型コロナウイルスの治療薬には富士フイルムの抗インフルエンザ薬「アビガン」が有効性を示しており、国内での承認申請が待望されているが、アメリカからも朗報が届いている。
C型肝炎治療薬ハーボニーなどを開発したことで知られる世界第二の米バイオ製薬企業ギリアド・サイエンシズが、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」を感染患者125人に投与したところ(うち重傷者113人)、2名の死亡者を除いて一週間以内に全ての患者が退院できたという。
この治験結果報告を受けて、ギリアドは治験人数を6000人に拡大した。日本でも4月14日に複数の医療機関でレムデシビルの投与を開始している。レムデシビルの安全性や有効性はまだ確立されていないものの、治療薬として確立される可能性を大いに秘めている。
さて、現在、世界は新型コロナウイルスの感染を防ぐために活動自粛を余儀なくされているのだが、ウイルス収束と経済活動はトレードオフの関係にある。
ウイルスを完全に収束させるためには人の動きを封じ込めることがマストなのだが、それによって経済活動をストップさせると、今度は経済的に困窮して生活が立ち行かなくなってしまう相反関係にあるわけだ。
これが感染の封じ込めを難しくさせている。
3月から徐々に休業しはじめた観光業、飲食業、宿泊業はその影響をモロに受けており、今後はコロナ倒産する企業が増えていくと予想されている。
日本の就業人口の4割は派遣社員、契約社員、アルバイトなどの非正規雇用者だが、事業を維持するために企業が削るのはまずこれらの非正規雇用者ということになる。
非正規雇用者は給料も安く、正社員のような手厚い待遇はしてもらえない。交通費は自己負担が普通だし、給与は時給なので休めば一円も入ってこない。ボーナスや退職金もない。
つまり、アフターコロナの世界では社会経済的に低い立場にある人々がより苦しむ世界が待っている。
政府はやっと一律10万円の給付金を決定したところだが、コロナウイルスはいつ収束するか分からない。1か月以内に収束すれば一律10万円で食いつなぐことはできるが、今後数か月を10万円で食いつなぐことは難しい。
ましてウイルスの収束はいつになるのか分からず、半年とも1年とも2年後とも言われているのだ。
たとえ今年中にウイルス収束の出口が見えたとしても、実体経済はすでに大打撃を受けており、元の状態に戻るには時間がかかるだろう。そもそも、元の状態が戻ってくるかどうかも怪しいところだ。
アフターコロナの世界では、これまでギリギリやってきていた人々が貧困化し、貧困層はさらに貧困化する。失業保険申請件数と生活保護受給件数が増加するとともに、生活保護を申請できなかったり行政に助けを求められない人が自殺したり、人知れず餓死していくケースが増えるだろう。
一方で、今回のコロナショックで暴落した株式の下支えのために政府が膨大な金を株式市場に投入している。その金は、人知れずこっそりと暴落した優良企業の株を拾い上げている1%の富裕層が吸収していき、貧富の差はこれまで以上に広がっていくだろう。
日本は暴動が起きない社会になってしまったが、外国ではわずか数十円の値上げで国家を揺るがすほどの暴動が起きる。貧富の差がさらに進み、貧困層が増大すると、社会不安も増大し、犯罪も悪化する。アフターコロナの世界は確実に悪化するだろう。
2019年までの世界は戻ってこないかもしれない。私たちは大きなパラダイムシフトを目撃することになるのだろうか。
The single biggest threat to man's continued dominance on this planet is the virus.
ノーベル生理学・医学賞受賞分子生物学者ジョシュア・レーダーバーグ