お久しぶりの映画の感想だわよ!
こっそりと映画もちらほら観てるんだけど、感想書くのめんどくさくて書いてないんだわ。
チェックしてみたら最後に映画の記事を書いたのは去年の9月でした。
7か月も書いてなかったのかーと、時の流れに驚くも身を任せてみるよ私は。
ついでに最後の記事は「冷たい熱帯魚」でした。
ちょっと反省して、そろそろ映画の感想も書くように心がけたいと思います。
早速アマゾンプライムに「透明人間」がリリースされていたので観てみました。
エリザベス・シューの方じゃなくてエリザベス・モスの方の「透明人間」です。
【透明人間】作品情報
原題:The Invisible Man
公開年:2020年
監督:リー・ワネル
出演:エリザベス・モス
上映時間:2時間5分
邦題は「透明人間」だが原題は「The Invisible Man」。2000年にケビン・ベーコンとエリザベス・シュー主演で「インビジブル」が制作公開されたが、あちらの原題は「Hollow Man」。ややこしい。ちなみにクリスチャン・スレーター主演で続編「インビジブル2(Hollow Man 2)」も制作されたが米国では劇場未公開という屈辱、スレーター涙目。
どっちにしても原案は1897年のH・G・ウェルズの小説「透明人間(The Invisible Man)」を原作としており、1933年の映画「透明人間」のリメイクである。が、今回の、つまりエリザベス・モス主演の「透明人間」は現代風にリブートしている。別に現代風にリブートなんてしなくていいのに。
さらに2019年にはユニバーサル・ピクチャーズが1940年公開映画「The Invisible Woman(インビジブル・ウーマン)」のリブート企画を立ち上げ、エリザベス・バンクスが監督・主演するかもしれん、乞うご期待!とワクワクする報道がありましたー。観ない奴は女性蔑視者!お仕置きよ!やめーい!
監督は「アップグレード」に続いて3作目のリー・ワネル。ジェームズ・ワン監督とタッグを組むことが多い。SAWシリーズやインシディアスシリーズが有名。SAW一作目で足に鎖を繋がれていた若者アダムがリー・ワネル監督です。
【透明人間】あらすじ
富豪で天才科学者エイドリアンの束縛された関係から逃げることの出来ないセシリアは、ある真夜中、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れたエイドリアンは手首を切って自殺をし、莫大な財産の一部を彼女に残した。セシリアは彼の死を疑っていた。
偶然とは思えない不可解な出来事が重なり、それはやがて、彼女の命の危険を伴う脅威となって迫る。 セシリアは「見えない何か」に襲われていること証明しようとするが、徐々に正気を失っていく。
透明人間-Filmworks
【透明人間】感想
前作「アップグレード」で下半身麻痺となったマーシャル・グリーンにAIチップ「STEM」を埋め込んで超人的な身体能力を与えたリー・ワネル監督が、今度は光彩科学によってDV男を透明人間にさすゥゥゥー!
「アップグレード」では超人的な身体能力を手に入れた主人公に悪党をバッサバッサと倒させて技術の凄さを描いたリー・ワネル監督だが、今度は180度方針を転換して技術が悪用されるケースを描いている。(まぁ、「アップグレード」でも最後の方で行き過ぎた技術が及ぼすデメリットに警笛を鳴らしてはいたけれども。)
テスラに乗ったものの「どのボタンが自動縦列駐車ボタンなのか分からん」とこぼすワネル監督らしい。
2000年のポール・バーホーベン版「インビジブル」では、ケビン・ベーコン、エリザベス・シュー、ジョシュ・ブローリンといった豪華メンバーが透明人間になる技術を発明しながらも動物実験では暴走して凶暴化してしまうという副作用があり人間への治験ができなかったのだが、なんとしても成功させたいケビン・ベーコンが自分に投与して透明人間になるも暴走して暴れ回る話だった。凶暴化したのは副作用のせいであって、ケビン・ベーコンは透明化する前はごく普通のベーコンだった。
ところが今回の透明人間は金持ちで支配欲の強いDV男。元からクズ。
透明人間男は最後の方にちらっと顔を出すだけなので、ほとんど誰だか分からん。
そしてDV被害者はその妻、エリザベス・モス。
モスはHuluオリジナルドラマ「ハンドメイズテイル」というディストピアドラマに主演しているので、被害者役は慣れたもの。すでにディストピアの女王という冠を戴いたも同然だ。映画を観ている最中に「ハンドメイズテイル」を観ているような気になったものね。
透明人間男もといエイドリアンは光彩学の第一人者らしい超金持ちで、サンフランシスコの海岸沿いの豪邸にモスと住んでいる。モスはエイドリアンと寝ている真夜中に、こっそりと身を起こし、身支度を整え、家を逃げ出す。
このあたりの描写は「愛がこわれる時」「イナフ」みたいでハラハラドキドキ。モダンなモデルホームみたいな何もない無機質な豪邸をモスが音を立てないように差し足抜き足歩く姿や、廊下でうっかり犬の餌皿に足をひっかけて音をだしてしまうというアクシデント(やりがち)や、何もない廊下のむこうを映し出して今にもエイドリアンが現れるのではないかというカメラワークがスリル満点。
これ…透明人間にならなくてもいんじゃない?このままDVモラハラ支配男だけで怖いよ?
無事に逃げ出したモスは妹の協力で旧友ジェイムズの家に居候させてもらう。
まもなくエイドリアンの弁護士の弟から、エイドリアンが自殺したこと、エイドリアンが500万ドルの遺産をモスに残したことを知らされる。
DV男も死んで大金も手に入った、ヤッホウ!とはいかず、モスは「あの男が自殺なんかするかボケ」とイマイチ信じられずにいた。
モスの予想は当たる。透明人間はキッチンから包丁を盗んだり、仕事の面接用のポートフォリオを隠したり、薬を飲ませたり、妹にヘイトメールを送ったりする。
さらにモスがジェイムズの十代の娘シドニーと二人で和気あいあいしているところで、透明人間がシドニーを殴ったためにシドニーが「イタッ!パパー!殴られた!助けて!」と叫んでジェイムズが慌ててやってきて「何をした!?」と怒るシーンがあるのだけど、あそこ、おかしいよね?だってシドニーとモスは2m近く離れていたよね?物理的に無理があると思ったんだけど…
まぁいいや。こうして「モスは狂っている」という印象を周りに植え付け、モスを孤独にしていく透明人間。
やがて透明人間は、モスがチャイニーズレストランで会った妹の喉を包丁で掻っ切って殺す。このときの包丁の動きは「アップグレード」そのものだった。透明人間は包丁をモスの手に持たせたので、モスが殺人犯として逮捕され、精神病院に入れられてしまう。
精神病院に入れられた後は透明人間が警備員たちをこれまた「アップグレード」みたいになぎ倒していく。
透明人間がらみで一番怖いのは、透明人間と物理的に接触するまでのシーケンスだと思うのね。気配はするけど見えない、なんかいる気がする、見られてる気がする、みたいな。
だからせっかく人んちにコーヒー豆を部屋中に蒔いたのにそれが生かされないとか、透明人間の存在を確認できる足跡が少なかったのは残念だなぁ。
バーホーベン版の「インビジブル」を思い返すと、水、ペンキ、消化器、火も使ったし、透明人間の形状をみせるためにスキンマスク作ったり、熱感知バージョン、骨バージョン、筋肉バージョン、ドリンク飲んどるバージョンとか色々あって、透明人間ぽさをこれでもかっというくらい出していた。
本作の透明人間は光彩学を応用していて、ブツブツしたGoProをいっぱいくっつけたようなスーツを着ている(トライポフォビアだったら超ビビるかもしれん)。ペンキをぶっかけたり、ボールペンでぶっ刺した時に二、三度、そのスーツ姿を披露するだけなので、透明人間らしさをあまり感じられない。(透明なのに透明人間らしさてのもナンだけど…)
更に言うと、本作「透明人間」」では透明人間にあるべき重要な要素が欠けている。
それは・・・なんといってもスケベさであるッ!!
コホンっ。女としてこんなことを言うのもなんだが、透明人間たるもの、スケベ心がなければならない。
透明人間になったら何する?とアンケートをとったら、回答は必ず「好きな女の子の裸を覗きにいく」で埋まるはずだ!
ケビン・ベーコンだって寝ているエリザベス・シューのシーツを取るだけでなくパンティをずり下ろしたり、美女ローナ・ミトラを襲ったりしていた。
しかし本作の透明人間は、旧友の娘シドニーと寝ているモスのシーツをとっただけ。そこにスケベさは感じられない。ただ脅かそうとする悪意だけである。スケベじゃない透明人間は透明人間らしくない!
透明人間は精神病院でモスとすったもんだした末に警備員をなぎ倒して逃げる。
モスが追う。
透明人間はジェイムズと娘シドニーの家に向かって二人を襲うが、モスが間に合って銃で撃つ。
「エイドリアーン!」と言いながら(言ってない)マスクをはぎ取ると、そこにはエイドリアン…
ではなく彼の弟トムの顔があった。
えっ・・・?
トム・・・?
お前、なんでここにいるの?なんでこのスーツ着てるの?なんで透明人間?
ここで「真犯人は誰か議論」が起こり、やれトムが真犯人だの、すべてモスが仕組んだだの、やっぱりエイドリアンが真犯人だという三つの説が沸き起こったが、真相はやはり素直にエイドリアンだと思われる。
モスがエイドリアンに暴力を振るわれていた証拠がないのでDVを振るわれていたとモスが嘘をついていた可能性もある、という意見もあったが、これは冒頭のシーンだけで十分わかるとモスが監督を説得して敢えて入れなかったそうだし、犬の首輪やモスが乗った車の窓を割った様子や、モスに薬を飲ます、知らない間に避妊ピルをすり替えて妊娠させる、といった様子からもエイドリアーンのDVモラハラは間違いない。
マスクの下がトムだったことについては、エイドリア~ンがトムに「ジェイムズを少し締め上げてやれ」みたいに依頼したのだろう。エイドリアンは精神病院にいて逃げていた最中だったし、モスが数秒遅れで追ってきているのだから、あんなに早くジェイムズの家に先に到着しているのはおかしい。
トムだって「エイドリアーンのもとに戻らないとお前ずっと殺人犯よ?」と脅すクズなので、ジェイムズを締め上げるくらいお手のもものだろう。
ただ、それまでに出てきていた透明人間は、どれがトムでどれがエイドリアンだったのか釈然としない。あるいはトムが透明人間になったのは最後に殺されたあの時だけだった可能性もある。自宅に戻った時の透明人間は、犬が吠えていたのでトムだったという説もあるが、犬が喜んで吠える場合もあるので分からない。
いずれにしてもトムを入れたのは蛇足だったような気もしないでもない。どのみち、あのあとモスはエイドリアンを殺すわけだし、ジェイムズ宅で殺しても同じだったのでは?
この辺りが釈然としない終わり方だったが、ポリコレフェミニズムの視点からDV男と対峙して妹の復讐を果たす形を見せたかったのかなと思った。
追記:最後にモスが透明人間スーツを持ち出して行っていたので、モスはあれをエリザベス・バンクス宅に持って行くつもりだと思います。スーツは私が確認できた限り4着ぐらいあったので、エイドリあぁんとトムが2着ダメにしちゃったとして、あと2着残ってるので「インビジブル・ウーマン」に2着使えるよ!