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Netflix映画「オールドピープル」粗筋と感想:姥捨て山の老人たちが若者を妬んでゾンビ化する話

オールドピープル@Netflix

今週のアメリカは、感謝祭とかいう名の下に七面鳥やらスタッフィングやらマッシュポテトやらローストビーフやら饗膳が食卓に並び、それらを一日中食べまくるデブるための訓練週間でした。

わが家は感謝祭の食事は夫が準備するので、豪勢な食事よりも何よりも「夕飯を作らなくていい」ということが嬉しいのでありますッ!

だけど、七面鳥とスタッフィングを数日食べる羽目になるのよね…リッチな在米の皆さんたちはきっと翌日は別のテイクアウトとか寿司とか食べてるんでしょう?(殺す)

夫や同居中の義兄(私たちが義兄の家に居候中)はシンプルな舌の持ち主らしく、飽きないみたいなので、きっと今日も同じ食事を食べると思います。七面鳥もスタッフィングも山ほど残ってるから。

でも私はさすがに昨日も今日も七面鳥とスタッフィング食べてたので飽きたわ…2回が限界だわ。そういうわけで、今日はトレジョで買ったチキンカレーを食べようと思います。

さて、暇つぶしにネットフリックスで「オールドピープル」というホラー映画を観たら意外に面白かったので、久しぶりに映画の感想です。

 

【オールドピープル】

原題:Old People

製作年:2022

監督:アンディ・フェッシャー

出演:メリカ・フォロウタン、ダニエラ・ガルボ、シュテファン・ルカ、マキシーン・カジス、ルイー・ベットン、ゲルハルト・ボス

上映時間:101分

ポスターイメージ、なかなかセンスあると思わなくて?まるでメタリカの「アンフォーギブン」のプロモのようでなくて?

監督はアンディ・フェッシャーという42歳のドイツ系ルーマニア人で、本作の脚本も彼が執筆している。

 

あらすじ

妹サナの結婚式に出席するために娘と息子を連れて故郷に戻ってきたエラ。実家と疎遠にしていたエラは、妹サナから「実父は痴呆症で老人ホームに入所した」と知らされる。実父に会いに老人ホームに行くが、そこは虚な目をし虚脱した老人たちだらけの異様な雰囲気が漂う施設だった。

結婚式の夜、楽しそうな音楽が老人ホームにも響いてくる。老人たちが窓際に集まり音色に耳を澄ましていると、スタッフに就寝しろと言われる。いう事を聞かない老人たちをスタッフが無理やり寝床に連れて行こうとすると、突然老人たちがスタッフに襲い掛かる。

 

感想

姥捨て山に捨てられた老人どもが人生の最盛期を生きる若人たちに嫉妬し復讐を奏でる話。

子供叱るな来た道だもの 年寄り笑うな行く道だもの」の年寄りの部分を実写化したような映画なんで、説教臭さはある。そんな社会的な説教臭さは置いとくとして、映画は「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の雰囲気そのもの。42歳という年齢を考えてもジョージ・A・ロメロの影響を多分に受けていることは想像に難くない。

ぶっちゃけちゃうと高齢者は限りなく死期が近いので、言葉は悪いがリビング・デッドそのものなん。…なんなら中年の私だって体弱いからほぼリビング・デッドなんですけど…。

社会的に宝とされる子どもが親に襲い掛かるパターンの方が心理的な負担と障害が少ないせいか、「ザ・チャイルド(1976年)」「チルドレン・オブ・ザ・コーン(1984年)」「光る眼(1995年)」「クーティーズ(2015年)」と量産されていて、老人が若者をぶっ殺しまくる映画は意外と少ないのよね。

「小さな子どもが大人を殺す分には仕方ないが、老人が若者を殺すのはちょっと…」みたいな人間の心理的な反感が無意識に投影されているんだろうなー。

ニコラス・ケイジの「マッド・ダディ」なんて親が子供を殺そうと躍起になる映画だったんで一種のタブーというか、そこを狙ったんだろうけどやっぱりウケなかったもんなー。

で、老人が若者を殺し始めるという単純なスリラー・ホラー映画なんだけど、見せ方が上手い。

「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のゾンビのデロデロした腐食感を老人の「汚さ」で代用するという…(そんなこと言っていいんか…)。

綺麗事を言うつもりはないので正直に書くけど、老人ともなるとさ、赤ちゃん帰りといわれるように、痰は絡むわ、咳は出るわ、ヨダレは出るわ、メシはこぼすわ、大小便漏らすわ、加齢臭が出てくるわ、皺シワになるわ、髪の毛ボサるわ、人間が「汚ねぇー」と認知する問題が出てくるわけだよ。

この老人の武器をふんだんに発揮させているあたりが私のお気に入りポイントなんだけど、そんな私は人格的に問題があるな、こりゃ。

子どもが襲い掛かってくるパターンだと、子どもは「純真無垢」「人畜無害」を武器にするじゃない?だけど老人が襲い掛かってくるパターンだとビジュアル的に汚そう、汚いという点をゾンビに見立ててるのよね。

まずは主人公のシングルマザー、エラが故郷の老人ホームを訪れて老人たちのコンディションの悪さに異様なものを感じるシーン。そこではまだ老人たちは攻撃性はなく、何もせずにボーッとこちらを見ているだけなんだけど。受付にも誰もスタッフがいなくて明らかに人手不足、老人たちと遊ぶスタッフもいないし、エラ達が声をかけても暫く誰もでてこない。床には食べ物のようなものが散らかってる。

不穏さがプンプン漂う。ホラー映画の醍醐味。いいよいいよー。好きだよぉー。

話によれば、ほとんどが家族が面倒見れないと捨てられたような不幸な高齢者ばかりだそう。

その中でもボス猿的存在の爺さんがいて、この爺さんが襲撃を指揮していきます。(ひとりだけ目ヂカラ出してカリスマ出しまくってて格好いい。)

ボス爺

襲い掛かって痰を吐いたり、わざわざ靴下を脱いで水虫だらけの足(もはやゾンビの足)を見せてから靴下に鉄球を入れて花嫁を殴り殺すとか、色々と芸が細かい。

花嫁と花婿が初夜を明かすバーンにボス爺が侵入するシーンも、まず花嫁たちが浮かれてドアの施錠を怠る点から、視聴者が「あー鍵かけてないよー来るよー来るよー」と思っているうちに、いちゃこらする二人からカメラが階段を降りて施錠されていないドアにゆっくりと近づいていき、ドアノブがゆっくりと回るというホラー映画の定石をしっかり踏んでいて、期待を裏切らない。こういうホラー映画だとさ、安心するわけよ、ほーらファンは。

エラの元夫がGFと車で乗り付け、老人たちが燃え盛る車の傍で若者を八つ裂きにしているシーンなんかも「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」さながらだったなー。で、同作同様に、エラと子どもたちと合流した元夫とGFが家に逃げ込み籠城します。

結局、何が老人を駆り立てたかは最後まで明らかにされず、エラの娘のアレでボス爺が突然攻撃を止めたりするという情けない反撃しかできないんで、その点は改善の余地ありかね。まぁ、老人たちが寂しさ、孤独感に突き動かされたのが理由なんだろうけど。

エラのことを自分の娘だと勘違いした爺さんと、エラの実父アイクだけは、人間性と狂気の狭間で揺れ動くニュートラルな存在なんだけど、たとえばこの二人だけは家族が比較的頻繁に訪問してくれるだとか、狂気に落ちるのを呼び止めるような家族エピソードがあるとより説得力があったのではないかな。

暇つぶしにおススメよ!