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タトゥーを入れる心理と人々がタトゥーに抵抗感を示すワケ

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同質性が高い日本社会では、タトゥーの是非がたびたび議論される。

フロイトはかつて、タトゥーはトラウマを隠すための自己防衛メカニズム、内在化、自我の盾(服従という外部の圧力と戦い、魂を解放する)の表れだと言った。

ここでは人々がタトゥーを入れる心理と、人々がタトゥーに抵抗感を示す理由を考えてみたい。

 

日本の入れ墨の歴史

「よく分からないけどタトゥーって怖そうなイメージ」「なんとなく嫌い」と理由がわからないまま毛嫌いする人も多いので、まずは日本の入れ墨の歴史をざっと頭に入れておこう。

タトゥーという対象に限らず、自分の好き嫌いには何かしらの理由があるので、その理由を明らかにするためにはその対象について基本的なことは知っておかなければならない。偏見や先入観を回避するためにも、最低限の情報は知っておくべきだ。

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要約すると、日本の入れ墨はこのような意味合いを持っていた。

① 琉球諸島やアイヌなどの辺境の通過儀礼や習慣

② 飛脚や鳶などが肌の露出を隠すため

③ 侠客の間での誓い合い

④ 犯罪を犯した者への刑罰、黥刑(げいけい)

 

人々がタトゥーに抵抗感を示す理由

日本人民が抱くタトゥーのイメージは、①の民族の慣習や儀礼によるタトゥーと③や④の反社会勢力のタトゥーが強い。

①のタトゥーは日本では目視で確認する機会も少なく、反社会的イメージの方が強く頭に刷り込まれているはずだ(多くは映画、ドラマなどを通じて)。

日本人民がタトゥーに抵抗感を示す人が多いのも無理もない。

一方、なにかと日本と比較されることの多いアメリカ様の地ではタトゥーはどう認知されているのだろうか。誤解されがちだが、社会的により自由でタトゥーが容認されていると思われるアメリカでも実はタトゥーへの抵抗感や先入観、偏見なるものは存在する。

「アメリカなど欧米では多くの人がタトゥーを入れていて受け入れられているのに、日本はタトゥーに不寛容すぎる」という意見は現実を正しく認識できていない。

アメリカでも、とりわけ目に見える場所にタトゥーが入っている人ほど就職率が低いのである。タトゥーを入れていると就職に不利というのは、日本だけでなくアメリカでも同じだ。

タトゥーを入れている人と入れていない人の心理的な違いについては、アメリカでも多くの研究がなされている。人民はタトゥーを入れた人に先入観と偏を持ち烙印を押す傾向があるが、こうした偏見を形成する僅かな心理的な特徴がタトゥーを入れた人の共通点として存在する。人々がタトゥーに抵抗感を持つのは、タトゥーを入れる人達のこうした心理を防衛本能によって察知しているからであろう。

 

タトゥーを入れる人の心理的な特徴

アメリカでは入れ墨を入れている人が非常に多い。体感では、タトゥーを入れた人の確率は、10人いたら3~4人は入っているといったところだ。

ある調査ではアメリカでは実に38%の人がタトゥーを入れているという結果が出ていた。実に3人に1人がタトゥーを入れている計算だ。表面から見えない場所にワンポイント・タトゥーを入れている人を入れたら、この数字はもっと高くなるかもしれない。(ジェネレーションX世代はなんと40%がタトゥーを入れているという調査結果も。)

人々はなぜタトゥーを入れるのだろうか?

押しも押されもせぬアメリカのトップ俳優ジョニー・デップは、自分の肌はキャンバスだと言った(内在化)。ミュージシャンであるB'Zの2人のタトゥーは、音楽でずっとやっていくという決意の表れだと語った(内在化と自我の盾)。サッカー選手のデビッド・ベッカムは、遠征が多いために「ずっと家族と一緒にいたい」という思いからタトゥーを入れ始めたという。

それぞれタトゥーを入れる動機は異なるが、精神病理学上、タトゥーを入れる人の心理には共通点があることが分かっている。

それはどのようなものだろうか?

 

リスクをとりやすい

タトゥーを入れる人の多くは、施術する前に、現代社会にはタトゥーへの偏見や先入観が存在しており、就職に不利だという事実を予め理解している。タトゥーを入れた人の多くは、それでも何らかの動機からタトゥーを入れる選択をしているということになる。つまり、リスクを理解した上でその選択をしているということだ。

これが何を意味しているかというと、タトゥーを入れる人はリスクを取りやすい傾向があるということだ。

アメリカの調査の結果でも、タトゥーを入れた人はそうでない人に比べてリスクを厭わない選択をすることが分かっている。

入れ墨を入れる年齢が10代~30代に集中しているのも、老齢層より若年層のほうがリスクを取りやすいためだ。

さらに犯罪というリスクを敢えてとって御用となったアメリカの囚人の実に90%以上がタトゥーを入れており、再犯者はタトゥーを入れていることが多い。

リスクをとりやすいことは否定的に取られがちだが、ベクトルが反対に向かえばそれは肯定的な性質になる。たとえば他人の喧嘩シーンに遭遇したとき、人々は巻き添えになることを恐れて仲裁に入ることを嫌う。喧嘩の仲裁にはリスクが伴うからだ。タトゥーありの人はタトゥーなしの人よりリスクを取りやすいので、タトゥーありの人の方が喧嘩の仲裁に割って入る可能性が高い。第三者の身が危険に晒された時も、傍観者の中で率先して助けようとするのはタトゥーありの人が多いということになる。

 

刹那的・衝動的

とりわけ外から見えるところにタトゥーを入れる人ほど、人生において刹那的で衝動的な選択をする。

たとえばお金をもらう実験で、今すぐもらえば1㌦もらえるが、数週間待てば最高で2.5㌦もらえるというような実験をしたとき、タトゥーがない人は数週間待つ選択をする人が多いが、タトゥーがある人は今すぐもらう選択を、見えないところにタトゥーがある人はその中間という実験結果が出た。

老後の預貯金計画やSNSでの個人情報の取り扱い方、それから喫煙の有無についても、差異が見られた。タトゥーがある人ほど今を大事にする現在志向であり、見えないタトゥーを入れている人はやはり中間という結果が出た。

ただし女性に限っては、簡単に隠すことができるタトゥーをしている女性はタトゥーなしの女性と比べて、衝動性に差は見られない。(他の実験では、男性より女性の方が将来を見据えていることや、リスクをとらない性質であるという結果が出ている。)

 

アグレッシブで反骨精神が高い

最近の調査ではタトゥーの数が多い人ほど内に怒りを抱えていると言われれている。タブーワードを使う頻度もタトゥーなしの人に比べて高い。

人々がタトゥー民に抱きやすい偏見の一つである「低学歴」については、実はタトゥーを入れている人と入れていない人の間に大きな差異は見られない。

警察などの権威を持った人物に命令されたり禁止されたりすると、タトゥーを入れた人の方がいい返す確率が高いということだ。

反抗的、反骨精神が強いということは、短絡的には反社会的と捉えられやすい性質かもしれないが、不正を行う組織を告発したり、政府に異を唱える勇気と気概を持つには反骨精神が少なからず必要であり、一概に一蹴されるべきとは思わない。

反抗的・反骨精神という多様性を持たない社会の方が逆に独裁的な組織を許してしまい危険かもしれない。

  

性的に活動的である

タトゥーを入れた人の共通点として顕著なもう一つの特徴は、性的に活動的であるという結果が出ていることだ。初体験の年齢、性交の回数、性交渉の経験人数、浮気や不倫の数、性交渉の場所(屋外かどうか)など、タトゥーを入れた人の方がセクシュアルであるという実験結果が出ている。※「タトゥーを入れているから浮気しやすい」というわけではないことに注意されたい。

髪型や服装などに気を使う人が多く、それが色気や魅力的な外見を生み出すことから性的なコンタクトが多くなり、性交回数・経験人数が多くなるということだ。冒険心があり、リスクをとりやすいことから、性的なコンタクトが多くなると思われる。

また他人から「個性的」と思われたいという願望が強い。

 

タトゥー嫌いな私がタトゥーより嫌いなもの

人々はこうした心理的な特徴を無意識のうちに察知するため、タトゥーを入れた人に抵抗感や偏見を持つ。タトゥーを入れた人と入れていない人の心理的な差異はさほど大きなものではないのだが、それでも差異はそこに存在する。

あなたの友人・知人がタトゥーを入れたとしても、問題はタトゥーではなく、タトゥーを入れるに至った心理的な側面である。タトゥーを入れるに至ったあの人と、タトゥーを入れない自分の心理的な差異が無視できるものなのか、無視できないほど大きいものなのか。差異が無視できるものなら、タトゥーが入っていようがいまいが、今後もその友人とはうまくやっていけるだろう。

私はタトゥーが嫌いだが、その理由は①タトゥー=反社会的勢力であるギャングの刷り込みが強いこと、②単にビジュアルが清潔に感じられないこと(特に飲食店で感じる)、③感染症の心配があることが理由である。

①のギャングについては、逆にギャングのタトゥーは「あの人には近づくな」という目印になるという利点もあるのだが…

しかしタトゥーより嫌いなものがある。それは何かというと、巷でタトゥーを見たときに「見てみて、タトゥーしているよ」と隠れながら凝視したり、ヒソヒソ話をしたり、「あの芸能人がタトゥー入れた」と大騒ぎしている者たちである。

こういう人間は同質性にどっぷり浸かって井の中の蛙に陥っているので視野が狭く、多様性を受け入れるキャパシティが育てられていない。

精神や身体に障害がある者、肢がない者、ふつうと違う格好をしている者、髪の色が違う者、タトゥーを入れている者など、彼らの基準でいう「ふつう」と違う人間を特別な目で見てしまう。

タトゥーを入れたのはあなたではなく、別の人間である。それは他人がどうこう言う問題ではない。たとえタトゥーが大嫌いでも、他人にタトゥーを入れるなという資格はないし、タトゥーを入れる権利はその人にある。(・・・温泉の話はまた別の機会にでも)