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ホテルの部屋の「シャワーの蒸気で火災報知器が作動する」注意書きの英語表記を正す

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某ホテルのバスルームのサイン

毎度おなじみジャパングリッシュを斬るコーナーです。

ついに国民の公共空間にある英語表記まで文句を言い始めました。

鬱陶しい。

独身時代は英語の翻訳やコピーライティングをやっていたので軽い職業病かなぁ。たぶん通訳や翻訳やってる人は絶対同じように考えてると思う。

あわよくばいつか御社から「貴殿の英語表記を採用させてくれ」という声がかかるように少しずつこのコーナーを増やしていこうと野望を抱いているんだけど…ダメですか。

ではさっそく今日のジャパングリッシュを直していきましょう。

今回は、某ホテルのバスルーム内のシャワー室で見かけたサインです。

英語表記が明らかにおかしく、意味を成しません。

どこがおかしいか気が付きますか?

 

ホテルのシャワーの蒸気で火災報知器が作動する注意書き 

日本語表記

火災報知器が湯気により作動する場合がありますので、浴室をご利用の際はドアを閉めてご利用ください。

英語表記

Because a fire alarm will be sometimes activated by steam. When using a bathroom, please close and use a door.

おかしな点が多々ある上に英語だけ読んでもさっぱり意味がわかりません。

このおかしな英語表記に最初に気付いたのは娘でしたが、バイリンガルの娘(英語ネイティブ)が読んでも「It doesnt make sense.」でした。

このホテルのバスルーム(洗面所・脱衣所・トイレが一緒にあるエリア)の天井には火災報知器がありました。

シャワー室のドアを開放したままシャワーを浴びると、シャワーの湯気でバスルームの火災報知器が反応して作動してしまうようです。

そのため「シャワーを浴びる際は必ずシャワーの扉を閉めて下さい」という注意書きです。

おかしな点を見ていきます。

 

文頭が Because で始まっている

絶対というわけではありませんが、正しいグラマーとしては Because は文頭にはあまり使いません。小説や口語、ネットの記事では頻用されますが、論文や公刊物など堅い文献では基本的には使用しないのがふつうです。

because は「○○は~~である。なぜならば」というように、前提があってその理由を次に述べるという流れを作る単語だからです。

英語では大事なことを一番最初に述べるため、最初に「○○は~~である」を述べ、そのあとに「なぜならば」と続く体になります。

サインの分かりやすさが優先される公共スペースの表記であれば尚更です。

したがって、because を使いたいのであれば、後ろに持ってこなければなりません。

なお、公共の警告表記サインでは because が使われることはほぼありません。というのも because のあとに続くのはSVOといった文章が続くので、表記が長くなってしまうからです。

 

will be sometimes activated 

一文目の will be sometimes activated は「警告」表記としては大変おかしな文であるとともに冗長的です。

will be sometimes の部分は、わずか一語で簡潔に示すことができます。何を使うか、皆さんお分かりでしょうか?

正しくは、 may activate 又は will activate です。

警告表記は「簡潔」であることが求められるため、受動態もなるべく避けます

shower steam will activate fire alarm でいいわけです。

 

when using a bathroom

次に when using a bathroom の部分です。

「バスルームを使用の際は」という意味ですが、ご存じのとおり、欧米ではトイレ・洗面所・バスタブ又はシャワー室が一体化している場合が多く、これらをまとめてバスルームと呼びます。

つまり、バスルームを使用するということは、風呂に入るという意味だけでなく、トイレで用を足すという意味にもなります。

この場合の「バスルームを使用の際はドアを閉めてください」は、「トイレで用を足すときにドアを閉めてください」という意味にもなります。

要するに曖昧なわけです。

重要な注意書きなので、誤解が生じかねない曖昧な表記はいけません。

 

Please close and use a door

一番おかしいのが最後の部分です。

Please close and use a door. 「ドアを閉めてドアを使って下さい」では何のことなのかさっぱり分かりません。

バスルーム内には、洗面所・トイレ・シャワールームがあり、ドアといってもバスルームのドアなのかシャワールームのグラスドアなのかどっちなのかも不明です。

 

正しい英語表記の例

上記を踏まえた上で、より分かりやすい英語表記を考えてみましょう。

Please keep this door closed when showering as the steam will easily set off the fire alarm.

普通は部屋内の煙感知器が作動しないようにバスルームのドアを閉めてシャワーを浴びる、という感じだと思いますが、このホテルはバスルーム内の脱衣所・洗面所・トイレに煙感知器があつたので、シャワーのドアということを明らかにするためには括弧内のように this door と入れるか、glass door または shower room door と入れます。

When Shower: Keep Glass Door Closed - The Steam Will Set Off Fire Alarm

Please keep this door closed when showering: the steam will activate the fire alarm.

Please keep this door shut when showering. Failure to do so may result in fire alarm being activated.

Please Keep Glass Door Closed While Using Shower, To Prevent Steam From Activating Fire Alarm.

このようにサイン表示では、冠詞 the も度々省略されます。

これでずいぶん分かりやすくなったと思います。いかがでしょうか。