8月9日公開のスリラー&ホラー映画「ゴーストランドの惨劇」を観た感想です。
ご存知、ホラーファンの私に若干トラウマを植え付けた映画「マーターズ」のパスカル・ロジェ監督による作品です。
【ゴーストランドの惨劇】作品紹介
原題:Incident in a Ghostland
公開年:2019年
監督:パスカル・ロジェ
出演:クリスタル・リード(大人になった妹)、エミリア・ジョーンズ(ティーン時代の妹)、アナスタシア・フィリップス(大人になった姉)、テイラー・ヒクソン(ティーン時代の姉)、ミレーヌ・ファレメール(母)、ロブ・アーチャー
上映時間:91分
パスカル・ロジェの映画が上映時間91分てマジぃ?パスカル・ロジェ監督代表作には「マーターズ」「トールマン」があります。
アルバトロス配給といい、こ、これは果てしなくB級ホラーの予感を感じさせます。
【ゴーストランドの惨劇】あらすじ
人里離れた叔母の家を相続し、そこに移り住むことになったシングルマザーのポリーンと双子の娘。
姉のヴェラは、奔放で現代的な少女。一方妹のベスは、ラヴクラフトを崇拝する内向的な少女。双子の姉妹ながら、性格は正反対だった。
新居に到着したその日の夜、突然の惨劇が一家を襲う。
惨劇から16年後、ベスは小説家として成功したが、ヴェラは精神を病み、今もあの家で母と暮らしていた。久しぶりに実家に戻ったベスを母は迎え入れるが、ヴェラは地下室に閉じこもっていた。そして、ベスに向かって衝撃の言葉をつぶやく―。
ゴーストランドの惨劇-cinemacafe.net
シングルマザーと双子の娘の3人が田舎の屋敷に引っ越してきたところへ、連続殺人鬼によるホーム・インベージョンという惨劇が起きます。
16年後、内向的な妹だったベス(ブルネット)は小説家として成功していました。母と姉のヴェラ(ブロンド)はまだあの屋敷に住んでいて、姉は精神崩壊した状態で屋敷の地下室に閉じこもっています。
姉のヴェラから電話を受け、ただならぬ気配にベスは実家に戻ります。そこでベスは衝撃の事実を知ります。
というような話です。
【ゴーストランドの惨劇】ネタバレなし感想
imdb評価もあまり芳しくないので、それ相応の映画なのだろうなーと心して観たせいか、そこまで酷い出来ではなかった。でも褒めるところが一つも見つからないし、まぁ良くはないわな。
そういう意味では予想通りでした。
物語はベス・ヴェラ・ポーリーンの3人家族が人里離れた屋敷に向かうシーンから始まる。
途中でキャンディトラック(アイスクリームトラックみたいなの)に遭遇するが、これがなんか薄気味悪い。
レストストップで休憩しているとそこにまたさっきのキャンディトラックの姿がある。
内向的な妹のベスが怪訝に思っていると、新聞のトップページにホームインベージョンによる連続家族惨殺事件の記事が目に入る。
という感じでごくごくシンプルな恐怖への幕開け準備が流れる。シンプルすぎじゃない?「ジーパーズ・クリーパーズ」でさえもっと凝ってたし、怖かったよ。
3人が屋敷について間もなく、先ほどのキャンディトラックがやってきて惨劇の幕開けとなる。
ここまでホラーとしてはあまりに順当すぎる展開で、70年代、80年代のようなホラー展開です。古い。
惨劇シーンも特筆すべきシーンはなく、「マーターズ」「バイオレンス・レイク」などの映画に慣れている人には全然堪えない。
予告編に出てくる犯人2人はマリリン・マンソンとシー・ノー・イーヴィルのケインのを彷彿させる巨体の二人組なのだが、マリリン・マンソンは細身なので母にかなり反撃されるし、巨人のほうは知的障害があるので逃げるチャンスがけっこうある。ていうかシー・ノー・イーヴィルそのまんまじゃん。
しかしこの二人の殺人犯象があまりにも荒唐無稽。ホラー映画なので変態チックな犯人像を用意したのは分かるにしても、この屋敷がたまたま犯人たちの好みの人形屋敷だったなんて都合よすぎる。双子ちゃんを誘って自分たちのドールハウスに誘拐してきたというのなら分かるのだけど…。
あとこの屋敷が変。家じゅうアンティーク人形だらけで、ガラスのむこうから出てくるからくり人形まである。
物語のネタバレになるツイストは映画のちょうど半分くらいで明らかになる。ネタとしては悪くないのだけれど、これが初めてではないし、スリラーものでは使い古されたネタでもあるので斬新さは感じられなかった。
何が一番ダメかって、女子が叫びすぎィ。そして、「ワッ!」と脅かして怖がらせる所謂ジャンプ・スケア(jump scare)ばっかりなの!それはもう苛つくぐらいに。
ジャンプ・スケアを何度もされて、女子がずっとギャーギャー騒いでいるところを想像してもらえばご理解いただけると思うけど、あの「スクリーム」でさえ、こんなに叫んでいなかったですよ。
たぶん、映画館で観たら怒りで卒倒するかもしれません。ジャンプ・スケアと女子の叫び声に。
要は全編を通してホラーの仕立てが古いのよね。いまだにジャンプ・スケアを多用するホラー映画を製作するなんて思わなかったよ。しかも「マーターズ」の監督が。
以下、ネタバレあり感想です。
【ゴーストランドの惨劇】ネタバレあり感想
まずは映画中盤で明らかになるネタの説明から。
16年後、ベスは小説家として成功して家庭を築いて幸せな生活をしていた。時折、あの時の悪夢に悩まされながら。
というのはベスの空想で、実はベスはまだヴェラとともに二人で犯人二人に監禁されている。
目の前で母が殺されるのを目撃し連日の拷問に耐えられなくなったベスは、耐えきれない状況を生き抜くために人格をもう1つ作り出すように、惨劇を耐え抜いて成功した自分を空想していた。
ヴェラが「なぜ1人で行ってしまったの」と言っていたのは、ベスがたびたび空想世界に行ってしまうことを意味していたというわけだ。
予告でも、あたかもベスが大人に成長して成功している様子が描かれているが、すべてベスの現実逃避の空想である。
これに気付いたベスは中盤で自分がどんな状況に置かれているかを再認識するが、ここで視聴者もベスとヴェラがどんな状況にあるかを理解する。人形に仕立て上げられ、気の向くままに拷問される毎日。
結局のところパスカル・ロジェは若い女性いたぶられる画を撮りたいだけなんじゃないかという気もするのよね。
しかし何より腹が立ったのは、マリリン・マンソンが銃を使ったこと。テキサス・チェーンソーのレザーフェイスが銃を使ったことがあるのか。13金のジェイソンが銃を使うのか。マイケル・マイヤーズが銃を使うのか。テッド・バンディが銃を使うのかーっ。ホラー映画の猟奇殺人犯が銃を使ってどうすんねん。