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【ホース・ソルジャー】映画の感想:ジェリー・ブラッカイマーによるドスタム将軍の独壇場

ホースソルジャー12 strong

(C)2018 BY HS FILM, LLC.

クリス・ヘムズワース主演「ホース・ソルジャー」を見た感想です。

911テロ爆破事件を受けて、翌10月にアフガニスタンに馬に乗って突入していった12人のアメリカ陸軍特殊部隊を描く、実話に基づいた映画です。

「ホース・ソルジャー」という邦題がどうもイケてない。もうちょっとなんとかならなかったんだろうか。

安心してください、マイケル・ベイじゃありませんよ。

ホース・ソルジャーは2018年5月4日に日本公開予定です。

 

【ホース・ソルジャー】作品情報

原題:12 Strong
公開年:2018年
上映時間:130分
監督:ニコライ・フルシー
出演:クリス・ヘムズワース、マイケル・シャノン、マイケル・ペーニャ、ナヴィド・ネガーバン
製作国:アメリカ
言語:英語
ジャンル:戦争、アクション

主演は「ソー」のクリス・ヘムズワース、右腕的存在に「テイク・シェルター」「シェイプ・オブ・ウォーター」のマイケル・シャノン、現地の反タリバン勢力の指導者ドスタム将軍にナヴィド・ネガーバン、ほかマイケル・ペーニャやウィリアム・フィクナーが出演しています。 

またクリス・ヘムズワースのリアル奥様であるエルザ・パタキー(ワイスピシリーズ出演)が妻役で出演し、夫婦共演を果たしています。なんかムカつくわー、それ。

監督はニコライ・フルシー、これが初監督作品です。

え?ベイじゃないの?

じゃあ何なんだろう、この

そこはかとなく漂うミリタリーフェティッシュ臭さは。

そして「5万人に対し12人で戦った」だとか「スパルタン300がペルシャ軍10万人だか20万人だかと戦った」とか、多勢に無勢が好きそうなこのニオイ…

まさか…と思ったでしょ。

アタリ

ジェリーさんがプロデューサーなんですねぇ。マイケル・ベイと並んで2大バカとされるハリウッド巨匠ジェリー・ブラッカイマーさん。もうなんだか嫌いじゃないですよ…

思えば作品を見ただけで監督が分かるというのは映画キチでもなかなか難しいものだと思うが、私のような映画パンピーでもベイとジェリーあたりは察しがついてしまうあたり、実はこの二人は凄いのではないかと思う時がある。

ベイとジェリーはソウルメイトどころかまるでツインのようである。撮影現場では二人とも罵声を浴びせたりスパルタ的であることで有名で、マイケルベイに至っては起用俳優のミーガン・フォックスさんにヒトラーのようだと揶揄されたこともある。

「派手なくせに内容のない映画ばかり作る」と映画批評家からことごとく酷評されるも、本人たちは「映画は極上の娯楽である」と言い切り、CG、ポップなミュージック、画面映りのいい俳優の起用によってブロックバスター映画を次々と量産する物量攻めに飽き飽きしながらも、なんだかんだ言って見てしまっている自分が二人に踊らされているようでなんだか格好悪い。

リドスコ、トニスコ、ベイ、ブラッカイマーあたりは80年代からミリタリー同好の士である。(トニスコは2012年に飛び降り自殺をしてしまいました、合掌)

上映時間は2時間10分、ベイもジェリーも相変わらず長いです。

 

【ホース・ソルジャー】あらすじ

2001年9月11日のその翌日、ミッチ・ネルソン大尉は、最も危険な対テロ戦争の最前線部隊に志願し、特殊作戦の隊長に任命される。

わずか12人でアフガニスタンへ乗り込み、反タリバンの地元勢力を率いるドスタム将軍と手を結び、テロ集団の拠点マザーリシャリーフを制圧するのだ。

だが、現地に着いた彼らに、次々と予期せぬ危機が襲いかかる。敵の数はまさかの5万人、しかも彼らは米兵の命に高額の懸賞金をかけていた。

さらに、将軍から険しい山岳地帯で勝利を収めるための最大の武器は、ほとんどの隊員が1度も乗ったことのない“馬”だと言い渡される──。

 

【ホース・ソルジャー】感想

ホース・ソルジャーの原題は12 Strongで、ジェリー・ブラッカイマーが12人の勇者を褒め称えるはずの映画なのだが、何やら映画は奇異な様相を見せる。 

それは現地の反タリバン勢力の指導者ドスタム将軍(ネガーバン)がアメリカ兵12人より武勇さや存在感を見せつけるためだ。 

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ドスタム将軍(ナヴィド・ネガーバン)

無計画で直情的な現地のドスタム将軍は、ネルソン(ヘムズワース)を振り回してツンデレぶりを発揮し、ネルソンはドスタム将軍の周りで終始タジタジさせられる。

ドスタム将軍はネルソンの目を何度も点にさせる行動をするが、その実、恐れを知らない勇者であり、タリバンの敵が待ち伏せしていると知るやいなや、アメリカ人兵士を差し置いて真っ向から切り込み隊長となり、RPGをぶっ放してタリバン一個分隊を一掃するという武者ぶりを見せる。

もはや12ストロングではなく、ドスタム・ストロングと言っていい。

ヘムズワース目当てに見ていたはずなのに、いつのまにか目線はヘムズワースからドスタム将軍へと移り、ドスタム将軍がこの上なく格好良く見えてくる。

それもそのはず、ドスタム将軍を演じるのは「千の顔を持つ男」の異名をとるナヴィド・ネガーバンである。

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ナヴィド・ネガーバン(ドスタム将軍)

え?誰か分からない?では、これはどうだ。

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アブ・ナジール(ナヴィド・ネガーバン)

ホームランドであのアブ・ナジールを演じていた人物だ。

整形とかではなく、顔が違う気がする。さすが千の顔を持つ男だ。

まだ分からない?では千の顔を持つ男の原形をお見せしよう。

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ナヴィド・ネガーバン(原形)

これなら「ああ、見たことある」と思う人が多いのではないだろうか。24にも出てた気がする。

ご覧の通り、顔が全然違う。

このドスタム将軍の抜群の存在感たるや、イケメン長身のクリス・ヘムズワースが中身のない猿に見えてくるから恐ろしい。

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ネルソン大尉(クリス・ヘムズワース)

タリバンのキャンプサイトを見つけ、ネルソンが「近付いて本当にタリバンか確認する」と言うと、ドスタム将軍が「だから、タリバンだっつーの!」と言ってトランシーバーで「おいラザーン、聞こえるか!今アメリカ人と一緒だ、今からお前らのこと皆殺しにすんぞ!」と言う。

するとトランシーバーの向こうから「ファッキンアメリカン、殺したる!ウォー!」とかいう声が銃声と一緒に聞こえてくるので、「ほらな」というとてもアナログな敵の確認の仕方をするドスタム将軍の豪快さは、ここがアフガンで敵がタリバンだということをすっかり忘れてしまう。

ドスタム将軍があまりにも恐れ知らずでズンズン進んでいくので、これは実は村同士のケイドロ(鬼ごっこの一種)ではないのかと思うほど、アメリカ人兵士たちが蚊帳の外である。

ところがドスタム将軍は今度はアメリカ人兵士に見せ場を作る。ドスタム将軍の政治的ライバルが他のアメリカ軍チームを支援していることを知って、「やってられるか!」とヘムズワースたちを置き去りにしてしまう。

去るドスタム将軍の背に向けて「縄張り争いのために戦いを放棄するのか、あんたは戦士じゃない、単なるウォーロードだ(行くなマイラブ)」と哀願するも、ドスタム将軍は意に介さずズンズン歩き続ける。

ドスタム将軍なしで最後の砦にやってきたアメリカ人兵士たちだが、仲間の士気は低下、ある者は「ノー・ドスタム・ノー・ドスタム」と喪失感を口にする。

さらにはタリバン指導者ラザーンとの戦いで、ヘムズワースの右腕的存在であるハル・スペンサー(マイケル・シャノン)がタリバンの自爆テロで負傷という事態に。

そんなとき、お静かに大群の騎馬隊を引き連れてドスタム将軍が登場する。ドスタム将軍は決してアメリカのヒーローのように大仰な登場の仕方はしない。そろーっと登場して、ヘムズワースに視線を送るニヒリズムが渋い。ヘムズワースはドスタム将軍に駆け寄ってハグしたい気持ちを抑え、持ち場から「うむ」と頷くのであった。

終盤、タリバンのリーダーを追い詰める戦闘シーンでは騎馬隊と化したヘムズワースの横を並走するドスタム将軍、ライド・ウィズ・ノーマン・リーダスならぬ、ライド・ウィズ・ドスタムである。

タリバンのリーダーが双眼鏡を覗いても、ヘムズワースとピッタリ寄り添うドスタム将軍の姿が泣かせる。

タリバンのリーダー、ラザーンにとどめを刺すのはやっぱりドスタム将軍である。

パラン?ラザーン

とか何とか言って成敗する。「死ね」とか、そういう感じかしら。

ウィリアム・フィクナーはロボコップになりつつあって心配。具合悪い?

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この戦いはアルカイダにとって完敗という屈辱的な戦いであり、アメリカ軍が2年かかるだろうと予想していた任務をわずか3週間で完遂したそうです。それもきっとアフガンの北部同盟であるドスタム将軍の貢献によるところが大きいと思います。

12人の兵士たちは特別任務のため兵士たちは勲章などをもらえなかったそうです。

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By Master Sgt. Chris Spence, FOB-53/U.S. Army, United States Special Operations Command

世界貿易センタービル近くのリバティパークには、America's Response Monument という名称でこのホース・ソルジャーの銅像が建てられています。

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America's Response Monument @NYリバティパーク

ドスタム将軍は2014年にアフガニスタンの副大統領になったそうです。また、ドスタム将軍とネルソン大尉は今も親しい友人の仲だということです。

評価:50点