誰も読んでないだろうなと思うような前書きを書くと、knoriさんが褒めてくれたりするので若干混乱しています。
昨日、ツゥイッターでふとこぼしたのだけれど、テレビ画面に映ったペンギンを見た母が私の娘に「ほら見て、シャチシャチ」と言っていました。
もはや色しか合ってない。
またある時、母はとある海洋哺乳類の名前を思い出そうとしていました。
私ともう1人の女性で連想ゲームのようになっていたのだけど、私が「シャチですか?」と聞いたら「違う違う、もっと庶民的なやつ」と答えました。
ウミガメ、アシカ、あざらし、象あざらしあたりを経て、やっと「イルカ」という答えに辿り着いたんだけど、もう1人の女性が「…イルカって庶民的か?」と呟いていました。
最近は検索サイトで調べるという趣旨を伝えようとして「グルグルすれば分かるってよ」と言っていました。
他方、日米ハーフの娘は、クラスメートと遊ぶ日のために電話を初めてかけたのですが、クラスメートのお父さんが電話に出たら
「これはGですが、エルサはいますか」
と言っていました。
ほら、英語で「〇〇ですが」は This is...になるじゃないですか。
「これは」と「こちらは」の違い。
英語は This is で同じ。
間違っていないだけに、直すのが阻まれます。
それから日本語は主語を省くことが多いですが、英語には必ず主語が付いているので(IとかYouとか)、彼女は日本語で話すときに必ず「私は」「あなたは」と付けてしまいます。
祖父母に話す時に「あなたはドア開けっ放しですよ」「あなたはちゃんとゴミ捨てなさいよ」といった具合になっています。
なかなか難しいものです。
さて久しぶりに映画を観ました。コロナ禍始まって以来、めっきり遠ざかっていた映画。自粛中は休校していたので娘も在宅、2時間集中して映画を観ることができないのよね。
久方ぶりの映画はソフトなものが観たかったので、深夜に「さくっと心温まるヒューマンドラマ系映画、しかも90分台で」というリクエストを満たしてくれそうな映画「500ページの夢の束」を観ることになりました。
【500ページの夢の束】作品紹介
原題:Please Stand By
制作年:2019年
監督:ベン・リューイン
出演:ダコタ・ファニング、トニ・コレット、アリス・イヴ、チワワ犬
上映時間:93分
文部科学省特別選定(青年向き・成人向き)
文部科学省選定(青年向き・成人向き)
ふぅん。
バリバリ大人が青少年に観てもらいたい作品ということですね。まぁ心温まるソフトな作品なので異論はないけど。
「ジュノ」「マイレージ・マイライフ」のプロデューサーが脚本に惚れ込み、「セッションズ」のベン・リューイン監督が映画化しました。
【500ページの夢の束】あらすじ
大好きな『スター・トレック』の脚本コンテストのためにハリウッドを目指す、自閉症のウェンディ。初めての一人旅には、誰にも明かしていないホントの目的が秘められていた―
あらすじもうちょっと詳しく。
『スター・トレック』が大好きで、その知識では誰にも負けないウェンディの趣味は、自分なりの『スター・トレック』の脚本を書くこと。自閉症を抱える彼女は、ワケあって唯一の肉親である姉・オードリーと離れて暮らし、ソーシャルワーカーのスコッティの協力を得てアルバイトも始めた。ある日、『スター・トレック』脚本コンテストが開催されることを知った彼女は、渾身の作を書き上げるが、もう郵送では締切に間に合わないと気付き、愛犬ピートと一緒にハリウッドまで数百キロの旅に出ることを決意する。500ページの脚本と、胸に秘めた“ある願い”を携えて―
【500ページの夢の束】感想
ダコタん。
「アイ・アム・サム」でショーン・ペンと共演して衝撃の子役ぶりを見せたダコタんは、その後トム・クルーズやデンゼル・ワシントンといったAリスト俳優から引っ張りダコタん。
記憶力が良く、なんでも短期間で習熟するという離れ業を見せるダコタん。たぶん頭の素地が良いんだろうなコタん。
「天才子役!」と持ち上げられたハリウッドキッズの多くはドラッグや酒に溺れ、早々に若年期に人生を転落していくのが常道だが、ダコタんにはその片影は見られない。
ダコタんは老練の共演者たちからも賛辞を受けているが、やたらめったら手放しに持ち上げられているわけでなく、ダコタんの類まれなる才能を正当に評価しているところが本当臭い。
また、自身を「とてもノーマルな子です」と評していることからも、天才子役だとか個性派俳優だとかの枠に嵌められるという罠を華麗にかわしてきたことが伺える。即ち、頭がすこぶる良いと思われます。
ダコタんは特別美人というわけでもないし、個人的に特別好きな俳優というわけではないのだけれど、映画を観てると自然に惹きつけられるのよねー。幼少期に子どもの劇で大人たちがダコタんが一際目立っていたことに気が付いたという話も納得ダコタん。
さぁ、そんなダコタんのハートフルなヒューマンドラマ映画がこちらの「500ページの夢の束」でございます!
まずは映画本編とは無関係な批判をさせてください。
ダコタんの執筆作は427ページであって、500ページじゃありません!
それから映画宣伝キャッチフレーズのこれ↓が酷い。
引きこもりの映画オタク女子、ハリウッドの脚本コンテストに挑む!
引きこもりの映画オタク女子って何ダコタん!ダコタんは引きこもりじゃなくて自閉症スペクトラム症ダーコタん!
ムカつくわーこういう宣伝文句。
批判はこのぐらいでしょうかね。
閑話休題。
ダコタんは自閉症を抱えるスタートレックが大好きな女の子で、トニ・コレットが管理するカリフォルニア州オークランドのグループホームに住んでいます。毎日決まったルートを通り、決まったルーチンをしないと不安に襲われるので家と仕事場(シナボン)の往復以外に外出することはありません。
そんなダコタんはスタートレックの脚本を執筆中でしたが、締切に間に合わないことが分かり、一念発起して600km離れたロスアンゼルスのパラマウント・ピクチャーズまで直接届けに行くことにします。
というのが大体のあらすじです。
自閉症のダコタんが旅に出て数々の困難を乗り越えていく…というよくある人生と旅路を掛けた成長ストーリーかと思いきゃ真相はちょっと違ったので、私にとっては嬉しい展開でしタん。
ダコタんには独自のコミニケション方法とルーチンがあります。例えばグループホーム運営者のトニコレがダコタんの部屋など彼女のパーソナルスペースに侵入するときには笛を吹きながら入ってくるとか、不安に襲われた時は両腕を胸の前で丸く構えてパーソナルスペースを可視化させ「そのまま待機せよ(Please Stand By…そのまま原題になっているがスタートレックに頻出する台詞」をマントラとして唱えることで気分を落ち着かせる。(宇宙戦争でも同じような恰好をしていたので「宇宙戦争」のオマージュかな?)
ダコタんはいわば「スタートレック」におけるバルカン人(地球人とのハーフ)スポック(まことちゃんヘアのエルフ耳した奴)なので、地球人とはコミュニケーション方法が異なるわけだ。
他方、ダコタんには地球人の姉(アリス・イヴ)がいる。姉妹の母が亡くなり、姉は結婚して子どもが生まれたので、妹の面倒が看れなくなり、ダコタんはグループホームに入居したという経緯がある。
姉はダコタんのコミニケーション方法自体が理解できないため、妹とまともに話し合うことができない(と思い込んでいる)。話している最中にダコタんは激昂してしまい、地球人の姉は「何故なの、私にはもう理解できない、無理よ」と対話の難しさを嘆く。姉の普通の人っぷりが映画に活きてくるのが凄く良かった。
ダコタんは誰にも言わずに愛犬チワワとロスアンゼルスへの旅に出る。パラマウント・ピクチャーズに脚本を届けるために。
10万ドルの賞金を手に入れれば、母の家を売却しなくて済むので経済的にも姉を助けることができる。しかしダコタんが危険を冒しても旅に出た目的は、別に賞を取りたかったからではない。自閉症を抱えていても自分は大丈夫だということを姉に見せたかったのである。家に戻っても大丈夫だということ、生まれたばかりの姪に近づいても大丈夫だということ、姉たちともやっていけるということを示したかったのだ。
詰まるところ、自閉症を抱えるダコタん(バルカン人)と地球人の姉の相互理解ーそれがこの映画の主題である。
姉のオードリーは「ふつう」の地球人、それ故にバルカン人の思考回路やコミュニケーションを理解できず、ダコタんと衝突してしまう。そんな姉を説得するために、ダコタんは自分の危険を顧みずロスまで旅に出たというわけだ。
最後のシーケンスで、ダコタんと姉=スポックとカーク船長として描かれているように、ダコタんの捨て身の挑戦によって姉はダコタんを初めて理解し認めてくれる。
パラマウント・ピクチャーズからの賞は逃したが、同日の郵便には地球人の姉から家への招待状が届いていたので、ダコタんは本当に欲しいものを得たわけです。
この二人の関係はそのまま他人種、多民族、多文化の相互理解に繋がるわけだが、説教臭さや押し付けがましいことが一切ないのが素晴らしい。心がほんわか温まるハートフルな映画でした。虚心坦懐に鑑賞してほしいなと思います。
「500ページの夢の束」はAmazonプライムで視聴できます。