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【ミッドソマー】映画のあらすじ&感想:自然崇拝カルト

ミッドソマー映画のあらすじ感想

ミッドソマー(2019)

悪魔崇拝の次は自然崇拝(ペイガニズム)。

不気味な雰囲気と映像が好評だった「ヘレデタリー/継承」のアリ・アスター監督のホラー第2弾「ミッドソマー」を観ました。 

興行収入は振るわなかったものの、独特の不気味な雰囲気は健在なようで批評家からは「ホラー界の巨匠としてみなされるべき」など好意的な反応を得ているようです。

その一方でパンピー視聴者からはかなり辛辣な糞映画認定を受けているようなので、観る人によって評価が大きく分かれる作品のようです。

 

【ミッドソマー】作品情報

原題:Midsommar

公開年:2019年

監督:アリ・アスター

出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ヴィルヘルム・ブロングレン、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィル・ポウルター

上映時間:147分

2時間27分もあるのですか?アベンジャーズに追いつけ追い越せじゃん。ホラーでそんなに長いと不安です。

前作「ヘレデタリー/継承」はトニー・コレット、ガブリエル・バーン、それからアレックス・ウルフ(「ジュマンジ」のリブートでロック様(ドゥエイン・ジョンソン)をアバターにして印象付けることに成功したホクロ俳優)といったまぁまぁ知名度のある俳優が多数出演していましたが、今回はほぼ無名の俳優ばかりですね。

スウェーデンの田舎の村が舞台なので、先入観をなくす意味では無名の俳優のほうがストーリーに入り込みやすいのでしょう。

 

【ミッドソマー】あらすじ

ダニとクリスチャンのカップルは破局寸前だった。そんなある日、ダニの妹が両親を殺した後に自殺するという事件を引き起こした。トラウマに苦しみ続けるダニを見たクリスチャンは「誰かがそばにいてやる必要がある」という思いから、すぐに別れを切り出すのを思い留まった。

翌年の夏、ダニはクリスチャンと一緒にパーティに参加した。席上、ダニはクリスチャンが友人(マーク、ジョシュ、ペレ)と一緒にスウェーデンの田舎町、ハルガを訪れる予定であることを知った。クリスチャンはペレから「自分の一族の故郷であるハルガで、今年夏至祭が開催される。夏至祭は90年に1度しか開催されないので、見に来てはどうか」と誘われたのである。文化人類学を専攻するクリスチャンは、学問的関心もあってハルガ行きを決めたのであった。ダニに内緒で旅行を企画したことを咎められたため、クリスチャンは渋々彼女もハルガに連れて行くことにした。

ダニたちには知る由もなかったが、その夏至祭はペイガニズムの儀式であり、暴力と猟奇性に満ちたものであった。ペレがマーク、ジョシュ、クリスチャンの3人を誘ったのは善意故の行動ではなかったのである。祭りの真の目的を知ったとき、ダニは究極の決断を迫られることになった。

ミッドソマー-Wikipedia

ちょっとあらすじ長いなー。

面倒だから読まなくてもいいですけど、一言でいえば、自然崇拝のカルト集団の村にきてしまった若者たちが犠牲になる話です。

 

【ミッドソマー】感想

「若者が旅行先の田舎でトラブルに巻き込まれる」というホラーの定石を踏んだ作品です。

「テキサス・チェーンソー」「13金」「クライモリ」「サランドラ」「ヒルズ・ハブ・アイズ」「死霊のはらわた」「ホステル」「キャビン・フィーバー」「グリーン・インフェルノ」「バイオレンス・レイク」「2001人の狂宴」「フロンティア」「ボーダーランド」等々…

本当に数多く製作されているので、これはもう若者が旅行に行ったら殺されるものだと思ったほうが良いよね。むしろなぜ殺されないの?という話なわけで。

そんな定石を踏んではおりますが、本作「ミッドソマー」に出てくる若者はウェーイ系のパリピではありません。だいたいホラー映画に出てきて殺される若者というのはチャラ男、チャラ子と相場が決まっているものなので、本作のように真面目な大学生たちが一人また一人殺されていくと、なんだか居たたまれない気分にさせられます。

前作「ヘレデタリー/継承」でも犠牲になるのはトニー・コレットとその家族で、特に子どもたちが可哀想な目に遭っていましたし、そう考えるとこのアリ・アスター監督というのは、犠牲者のターゲットをチャラ男・チャラ子から普通の善人に意図的に変えていて、それにより視聴者により恐怖を与えることに成功しているのでしょうねぇ。くわばらくわばら。

家族を失ったばかりの若い女性にこのような試練を与えるというのもかなり下衆い案だと思いませんか。何も溺れる犬を叩くことないじゃない。まぁ彼女の場合、運命は結果オーライでしたが。

冒頭、主人公のダニ(フローレンス・ピュー)は両親と妹を失います。双極性障害を患っていた妹は両親を殺したあと自殺します。ダニの彼氏クリスチャンは、ダニと別れたがっていたのですが、ダニに同情して別れるのを踏みとどままります。

まもなく、クリスチャンは大学の考古学の研究で友人ペルの故郷スウェーデンの田舎町ハルガに同行することにします。そこへ気分転換をかねてダニも同行することになります。

スウェーデンという設定ですが、実際の撮影はハンガリー。

村はまるっきり「ウィッカーマン(1973年)」のような村ですね。というか最後の火のシーンもそうだし、熊の着ぐるみはリメイクの「ウィッカーマン(2006年)」と全く同じやないかい。

牧歌的で長閑な景色が広がるハルガ村、人々は笑顔でダニたちを歓迎し、90年に1度、9日間開催される夏至祭にダニたちを招待します。

嫌な予感しかしませんね。

村には黄色いピラミッドの建物があって「あそこは立ち入り禁止ね」と言われるので、「あぁ、最後に生贄入れて燃やすのね」と思うよねー。

なお、この村では様々な自然LSD系ドラッグが登場します。錠剤、粉末、ドリンクなど、なんでもござれ。マジックマッシュルーム(幻覚キノコ)系の強烈なドラッグのようで、ダニたちは殆どドラッグの影響下にあります。

そのため画面で静止しているはずの植物や花がユラユラ動いていたり、ダニの花冠が成長したりとトリップ感満載。

ハルガ村がペイガニズムカルトであることだけでなく、これから起きることが丁寧にタペストリーや壁画、オープニングのミューラルにも描かれているので、最後の方まで何が起きるのかと不穏な空気を残したウィッカーマンなどの映画に比べると随分直接的で親切です。

ほぼずっと日中で、夜の描写があまりなく、画面がずっと明るく、緑と花と村民たちのペザント風白衣装という素敵な図がずっと続きます。

そんな明るいなかで、グロテスクなゴアシーンが出てきます。なんだろう、ミスマッチなのにマッチしているこのフレッシュさ。こんなに明るく猟奇シーンを見せられると超現実的に感じられて、目の前の出来事が幻覚のように感じられるというか、それこそ本当にドラッグでトリップしちゃっているような不思議な感覚です。

ホラー映画ってだいたい夜と相場が決まってるし、ダークな雰囲気を醸しだした上でモンスター出してきたり、殺人犯に襲われたり、食われたりというのが筋というものでしょう?

でもこの映画は逆で、清く明るく美しく人を犠牲にする。その超現実的な画が自然崇拝カルトとうまく融合している。アリ・アスター監督の持ち味は、この超現実的な画によって幻覚や錯覚を観ているような感覚なのだと思う。

ビジュアル的にコミカルでプッと笑ってしまうシーンも盛りだくさん。「ウィッカーマン(2006年)」のニコラスケイジの着ぐるみは笑わなかったのに、なんでこっちの熊着ぐるみでは爆笑したんだろう。

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「ウィッカーマン」のニコラスケイジ

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これが本当の着ぐるみ

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なんだこれ

多分、ニコラスは着こなしちゃっているから、かな。あとニコラスなら何をしてもおかしくない認定が一般の人に行き届いているからかもしれないなー。

「ヘレデタリー/継承」でも最後に皆でツリーハウスでお祈りしてたよね。今回も人形(熊の後ろに2体見える)とか作ってあった。

のちのち分かることだが、夏至祭では9人の生贄が必要らしく、そのうち4人は村民、5人はダニたちのようにアウトサイダーを拾ってくるらしい。つまりペルは生贄にするためにクリスチャンたちを誘ってきたわけです。あぁ、あるある

順序が前後して申し訳ありませんが、夏至祭のオープニングは72歳を迎えたジジババの姥捨てならぬ姥殺しという派手なイベントから始まります。

白っぽーい岸壁の下で上を見つめる村民たち。あぁ、ジジババが飛ぶんだなと分かります。分かりやすい。

ババアがまず飛び降ります。

飛び降りる着地点には岩が置いてあって、そこに着地すれば即死できます。

ババア飛び降り成功。

顔がベロンチョするので、やなぎやさんがキャッキャします。

次はジジイの番です。

ところがジジイ、まさかの着地失敗。岩の横にズレて着地してしまい、脚が折れてるがまだ生きてました。あの高さなら岩じゃなくても普通死ぬだろ。

ジジイが生きてるので村民が「アー」とか「ウー」とか一斉に叫び出す。なんてシュールな画だろうか。

村民が杵を持っていたので予想してたと思うけど、死に損なったジジイをみんなで打ちますよ。

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顔を損かいされたジジイとババア、今度はグリル焼きされます。この辺は「2001人の狂宴」ぽい。でも雰囲気明るいですけどね。

その後、ダニとクリスチャンの友人たちが一人また一人と消えて行きます。あるある。

イギリス人の婚約中カップルの男の方が何も言わずに先に車で駅まで送られていったり、「私を置いて勝手に行くはずがない」と怒った女も姿を消す。あるねー。

ダニのBFのミートパイには女の陰毛が入ってる。そらないわー。

ところでミートパイて、ホラー映画において恐怖を煽るという大切な役目を果たす小道具ですよね。「テキサスチェーンソー」「食人族」「人肉饅頭」など、人肉を食らうホラー映画は多く、ホラー映画に出てくる肉が人肉である可能性は思いのほか高い。

このミートパイの中にはもちろん肉が入っているんですが、そのすぐ前にジジイとババアが殺害されてグリル焼きになっているので、たとえこのミートパイの肉が人肉でなくとも視聴者は「あー人肉が入っちゃってるんじゃないのかなぁー」という不快感を抱かずにはいられないんですよね。

空気が不穏になってきたなかで提供されるミートパイはホラー映画においてベストチョイスと言えませんか。

さらに、さらにですよ?クリスチャンのミートパイに陰毛が入っているだけではなく、ドリンクには経血が入っています。(皆のドリンクは黄色だが、クリスチャンのドリンクだけ赤っぽい)なんたる不快さ。

映画の前半にさらっと見せられた異様なタペストリーに、女が陰毛を剃って男の食事に入れて食わす直球描写があったりと、まぁ分かりやすいっていえば分かりやすいですけどね。

レザーフェイスも出てきますね。雰囲気、明るいですけどね。

さてダニがメイクイーンに選ばれ、女たちと豊穣の儀式をしている間、クリスチャンはドラッグをもられて村民の若い娘マヤ(経血と陰毛の持ち主)と交配の儀式へ。

挿入したところで母親らしき女がマヤの手をとり、クリスチャンの顔の側で「ダローダロー何ダロー」と大声で歌い出します。

マヤの恍惚の声「アッハン」「アハン」にあわせて周りの年増女(全員裸)も「アハーッアハーッ」と合唱し始めます。女たちは自分の胸を両手で掴んで、前後に揺れています。集団行動が嫌いだと、これは難しいかも・・・

そこへ豊穣の儀式を終えて戻ってきたダニがカギ穴からアッハン劇場をのぞき見してしまい、パニックを起こす。

ダニの「ハーッ、ハーッ」という出産時のような呼吸に合わせて回りのヤングレディーたちも合唱し始める。ダニが「アーッ」と叫べばヤングレディーたちも「アーッ」とシンクロしてくる。

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交配の儀式はまだコトが終わらず、見かねた老婆(裸)がピストン運動に合わせてクリスティン(ダニのBF)の生ケツを押し始める。見事な連携プレーである。

その後、メイクイーンに選ばれたダニが生贄の最後の一人を選び、着火して終わります。

ドラッグの幻覚で自分の手足に草が生えてきたり花だらけにされることで、精神的にブロークンだったダニがカルトに入信する軌跡がうまく描かれてはいました。この辺りは同じ製作会社A24の「ウイッチ(2015年)」を彷彿とさせます。

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メイクイーンの座に収まったダニ

「ヘレデタリー/継承」では悪魔崇拝カルトでしたが、本作は自然崇拝(ペイガニズム)カルトというだけで、結局同じことやっているわけです。どんだけカルト好きなんだこの監督。燃やすのも好きだし。

観終わってみると「なんだコレ?でも面白かったわー。何を観たかは分からんけど」みたいな「ヘレデタリー/継承」を観た時の感想を持っちゃうんだけど、それでもそれなりに楽しめるのは、エロとグロを忘れず、そして猟奇ゴアシーンをいい塩梅で明るく見せているからじゃないかなぁ。

現にこの映画をクソ扱いしている人でもシネマトグラフィーだけは美しかったと認めているし。カメラアングル、接写、カット、画面構成は超ー美しかった!!