連日お伝えしている、ヘイトクライムを自演して逮捕された人気ドラマ「エンパイア」俳優ジャシー・スモレットの続報。
米ドラマ「エンパイア」のスターがヘイトクライムを自作自演か?
「エンパイア」俳優ジャシー・スモレット、ヘイトクライム自作自演で逮捕
日本では朝の番組でデーブ・スペクターが芸能ニュースで紹介したのを見かけたきりであまりニュースになってないようだが、この事件は現代のアメリカにとって看過できないセンセーショナルな事件だ。
ヘイトクライム自作自演の真相
ヘイトクライムを自作自演した容疑で告訴された人気ドラマ「エンパイア」の俳優、ジャシー・スモレットは、2月21日の早朝に警察に出頭したあと、裁判所に出廷した。
保釈金は10万ドル(1,171万円)で、スモレット氏は保釈金を支払って午後4時前に釈放された。
事件の真相
以下、警察ソースより発表された内容。
ことの起こりは1月22日にドラマ「エンパイア」の撮影スタジオにスモレット氏宛てに送られてきた人種差別的・性差別的な脅迫状だった。中には白い粉が入っていたが、のちにアスピリン(またはイブプロフェン)であることが分かった。
1月25日、スモレット氏はオスンダリオ兄弟にメールをした。
Might need your help on the low. You around to meet up and talk face to face?
スモレット氏ははオスンダリオ兄弟のアベルとは2017年から友人関係にあり、ときどきアベルからエクスタシー(ドラッグ)を入手していたという。
1月25日、スモレット氏とアベルは、アベルのアパートの外で会い、スモレット氏の車中で襲撃の自作自演計画について話した。アベルの兄弟のオラ・オスンダリオが参加したのはこのときだったという。
当初の計画は、オラがスモレット氏の首にロープを巻いてガソリンをかけ、「This is MAGA country」と叫ぶというものだった。スモレット氏は兄弟に100㌦手渡し、「襲撃」に必要なものを買いに行かせた。
1月27日、3人はシカゴの町を車でドライブしながら、襲撃の現場として使えそうな場所を探した。
その後、ガソリンではなく漂白剤を使うことにしたが、その理由は不明。
スモレット氏は彼らに3500㌦の小切手を渡した。小切手の名目はトレーニングにしてあった。
1月28日、オスンダリオ兄弟が物資を購入し、アベルが小切手を換金した。
1月29日の午前12時49分、スモレット氏とアベルは3分ほど電話で話し、スモレット氏が午前2時ごろに「襲撃」計画を実行するように伝えた。
約45秒の「襲撃」で兄弟は軽くスモレット氏を殴ったが、スモレット氏の顔面についていた傷は、自分で傷つけたものだと思われる。
オスンダリオ兄弟は「襲撃」後、シカゴからナイジェリアに飛ぶのだが、翌日の1月30日、スモレット氏とアベルの間で8分48秒の通話記録があった。このときアベルはトルコにいた。
2月14日、スモレット氏が「グッドモーニングアメリカ」に出演して襲撃についてインタビューを受けていた頃、警察はすでに襲撃が自作自演である証拠をつかんでいた。
なお、スモレット氏は虚偽報告や自作自演を否定しており、3月14日に罪状認否のため裁判所に出廷する。
ヘイトクライムを自演した動機
警察の発表によれば、スモレット氏がヘイトクライムを自作自演した動機は、出演しているドラマのギャラに不満があり、ギャラを増やしたかったためだという。(スモレット氏のギャラは1億2千100万円)
ゲイで黒人である氏は、かねてから公然とトランプ大統領を批判しており、「犯人はMAGAの赤い帽子を被った白人だった」と警察に証言しているように、トランプ大統領とその支持層はレイシストというイメージを刷り込ませようという魂胆もあったと推測されている。
反トランプのマイノリティ代表がヘイトクライムを受けたとあれば、リベラルメディアが飛びつく。時の人になれば、あちこちから引っ張りだこでギャラも跳ね上がると考えたのだろうか。
ヘイトクライム自演による被害者たち
人種差別の問題、性的マイノリティの問題、セクハラ問題で揺れる今のアメリカで、このようなヘイトクライムを自作自演したことを許せない気持ちがSNS上で溢れている。
シカゴ警察のエディー・ジョンソン警視は、自身も黒人であることから、スモレット氏が自ら黒人の辛くおぞましい過去の悲劇を私欲のために利用したことが嘆かわしいと心情を述べている。
彼が犯したヘイトクライム自演による被害者は
- シカゴ警察の刑事たち(24名?)、警官、FBI
- トランプ大統領とその支持層
- 過去・現在・未来のヘイトクライム被害者
だろう。順不同。
まず、何も起きていないことに駆り出された警察やFBIのリソースの無駄遣いなど、骨折り損は計り知れない。
警察やFBIは救命士や消防士と並ぶファーストリスポンダーである。その任務は地域住民の生命や身の安全、コミュニティの治安に直結する。その大事なリソースが虚偽報告の捜査に数週間も費やされたのだ。
次にトランプ大統領とその支持層。リベラルメディアがすでに刷り込み済みの「白人至上主義のレイシスト」という歪曲イメージを助長しようとした罪も大きい。言うまでもないがトランプ大統領を支持しているのは白人だけではない。(白人至上主義のレイシストがトランプ大統領を利用しているのは確かだが)
黒人でゲイのスモレット氏が襲撃されたニュースが広まるや否や、リベラルや民主党政治家は即座に飛びつき、トランプのヘイト時代の一例だと非難し、トランプ大統領支持層を不当に差別主義者と誹謗したのだ。
そして、ヘイトクライムの被害者だ。スモレット氏の愚かな自演のせいで、実際にヘイトクライムを受けた被害者が報告を躊躇するようになってしまえば、まさに悲劇である。
左派がマイノリティへの犯罪をトランプ大統領と支持層を毀損するために躍起になる一方で、右派のコメンテーターは、ヘイトクライム詐欺がこれまでに何件あったか、昨年に何件あったかなどを調べて記事を出している。
ヘイトクライム詐欺があるのは事実だが、カリフォルニア州立大学の憎悪と過激主義の研究センターによれば、2016年~2018年のヘイトクライム虚偽報告はわずか0.2%だそうだ。
ヘイトクライムがあるのは事実であり、過去4年間ヘイトクライム数は増加している。
今回の嘆かわしいスモレット氏の事件に一粒の光を見出すとしたらーーヘイトクライム自作自演にエネルギーを注ぐより、99.8%のヘイトクライムに注意を向けなければならない――という教訓だけだろう。
スモレット氏の虚偽ヘイトクライムが世間を沸かせていた間も、NYでユダヤ人男性が少なくとも二人襲われていたのだから。
そういう私も同じ穴の狢か。