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【1917 命をかけた伝令】感想:臨場感が命!体感型映画に成功のサム・メンデス監督

1917映画あらすじ感想

イギリスで2019年12月に公開、アメリカで2020年1月に公開された新作戦争映画「1917 命をかけた伝令」のあらすじと感想です。

一足早く観ることができたので、さっそく感想を書いてみました。

日本公開は2月14日です。

第77回ゴールデン・グローブ賞で「ドラマ部門作品賞」と「監督賞」の2冠に輝きました。

受賞歴も多数!

ゴールデングローブ賞 映画部門 作品賞(ドラマ)

全米撮影監督協会映画賞 劇場映画撮影賞

放送映画批評家協会賞 撮影賞

ゴールデングローブ賞 映画部門 監督賞

全米製作者組合賞 劇場映画賞

サテライト賞 撮影賞

放送映画批評家協会賞 監督賞

全米監督協会賞 長編映画監督賞

放送映画批評家協会賞 編集賞

ほかノミネート多数

粗筋をざっくり説明すると、第一次世界大戦で味方1600名が虐殺されるのを阻止するために作戦中止の命令メッセージを届けに敵陣をかいくぐって味方のところまで走っていくイギリス人将兵二人を描いています。

 

【1917 命をかけた伝令】作品紹介

原題:1917

製作年:2019年

監督:サム・メンデス

出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、リチャード・マッデン、ベネディクト・カンバーバッチ、コリン・ファース

上映時間:119分

イギリス勢が揃い踏み。

監督はサム・メンデスで、代表作に「アメリカン・ビューティ」「ロード・トゥ・パーディション」「レボリューショナリー・ロード燃え尽きるまで」「007」シリーズがあります。

サム君はキャメロン・ディアス、キャリスタ・フロック♡(アリー・マイラブ)、レイチェル・ワイズなどの女優との交際を経て、女優のケイト・ウィンスレットと2010年まで7年間結婚していました。かなりのドンファンやで。

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モテ男のサム・メンデス監督

男はいいなぁー、白髪が生えてたってモテるんだから。

本作はサム・メンデス監督の祖父で西部戦線に従軍したアルフレッド・メンデスの回想話が原作になっています。

将兵二人が敵陣をかいくぐって伝言を届けるというのはフィクションですが、ドイツ軍がヒンデルブルク線まで退却したことは史実です。

 

【1917 命をかけた伝令】あらすじ

第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。それは一触即発の最前線にいる1600名の味方に、明朝までに作戦の中止の命令を届けること。

進行する先には罠が張り巡らされており、さらに1600名の中にはブレイクの兄も配属されていたのだ。

戦場を駆け抜け、この伝令が間に合わなければ、兄を含めた見方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる。

刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる。

1917公式ページ

 

【1917 命をかけた伝令】感想

1917年の4月6日、フランス北部の西部戦線で、ドイツ軍と戦っているイギリス軍。

ドイツ軍が退却したかのようにみえたのは罠であることが判明する。ドイツ軍はヒンデルブルク線まで下がってイギリス軍を待ち構え、大砲で皆殺しにする戦略だった。

そこでイギリス軍のコリン・ファース将軍は、いつになく険しい顔つきで二人の若い将兵を呼び出し、明朝までに進撃中のデヴォンシャー連隊第二大隊に攻撃の中止命令を伝達するように命じる。

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「マズイことになってんねん」

呼び出されたのはスコフィールドとブレイクという将兵。

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スコフィールド(左)とブレイク(右)

スコフィールド役のジョージ・マッケイは「マロンボーン家の掟」「はじまりへの旅」に出演している。いずれも未見なので、ともすれば私にはヘンリー王子にも見えるしウィリアム王子にも見える。所謂典型的なイギリス人を想像したときに頭に浮かぶ顔をしているのだが、どうやらシアーシャ・ローナンと交際しているという噂。

ブレイク役は「ゲーム・オブ・スローンズ」でサーセイの息子トメン・バラシオンを演じたディーン=チャールズ・チャップマンである。

この名前はちょっと覚えにくい。

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「ゲーム・オブ・スローンズ」でトメン王子を演じていた。幼さが残っていて可愛い。

イギリス軍が予定通り進撃してしまえば、ヒンデルブルク線で待ち構えているドイツ軍によって1600名の第二大隊は壊滅的な被害を受ける。その中にはブレイクの兄リチャード・マッデン(ゲースロに続いて再び兄弟役!)もいるので、ブレイクは勢い勇んで塹壕から這い出る。頑張れトメン!

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塹壕から恐る恐る這い出た二人は、ノーマンズランド(軍事対立の中間の、いずれの勢力によっても統治されていない領域)を注意深く警戒しながら抜けていく。夜にならないと味方の将兵たちも這い上がっていかないところである。ワンダーウーマが歩いて行ったときは5秒後に鉛玉が飛んできたように、危険度が高い場所である。

ノーマンズランドは、爆撃の跡、殴り倒された有刺鉄線巻きの柵、馬の腐乱死体、膨大な数の空薬莢、損壊した人間の屍、死体に集まる蝿とネズミと地獄さながら。ブレイクとスコフィールドは敵の急襲に怯えながらこの地獄を歩いていく。

監督は没入感に相当こだわったらしく、塹壕から戦場から当時の戦況を完璧に再現している。

そして必殺、長回し

119分の戦場潜入アクション長回しはさすがに無理だけど、複数回のワンシーン・ワンカットという長回しを繋ぎ合わせて「全編を通してワンカットに見える映像」を作り上げているそうだ。

カメラは余計な場所にはいかず、全編この二人にピタッと寄り添っている。顔の位置で後方から二人を映したり、前方から二人を映したり、地面すれすれの位置からノーマンズランドの戦場荒野を駆け急ぐ二人を映したり。

この撮影技法のおかげで、我々はまるで自分たちがブレイクとスコフィールドになったかのような極限の臨場感を体感できる。RPGシミュレーションゲームといっても良いかもしれない。

馬や人間の腐乱死体が転がっている近くではまるで死臭が漂ってくるかのような感覚を覚えるし、ドイツ軍の塹壕跡地を命からがら脱出するときは土煙の匂いで息ができず岩に押しつぶされる感覚まで覚えてしまう。

通常はこういうシーンでは「ヤバいヤバい」とスリリングな興奮感に酔いながら前のめりになるのが人間としての自然なレスポンスであるが、本作では自分が一緒になって死臭を嗅ぎ、敵兵に怯えながら戦場を歩き、土砂崩れから逃げようとしているので、「ヤバい」「スリリング」どころじゃない。それはもう将兵と一緒になって目と耳フル活動しながら脅威を察知しようとしたり、生きて脱出しようという「生」への渇望を抱いちゃう。

つまりサム・メンデス監督は、3Dに依存することなく体感型の映画の製作に成功したのです!

是非、本作を映画館で視聴体感してもらいたいです。

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劇中の塹壕の様子

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実際のww1の塹壕:John Warwick Brooke -Wikipedia

もっとも、映画は開始早々に平凡な将兵二人が呼び出されて伝言お届けミッションを命じられ、そこから終盤までひたすらノーマンズランドと敵陣を駆け抜けていくだけなので、劇的なドラマ性や戦いの賛美、軍神、非凡な兵士といった目を引く材料はない。

任務を託された将兵二人が、仲間を助けるために義を尽くす高尚さと自己犠牲を戦場というバックグラウンドで描いているだけで、時と場所が違っても義を尊ぶことの大切さを説いているだけだ。

同監督作品「ジャーヘッド(2005年)」ではとってつけたような兵士の描き方や現実から分離した演出に私と軍人の夫両方から失笑をかったが(シェイクであっても救えなかった映画)、本作はスムーズに美しく描かれていた。余計なものを排除してスケールは大きいながらもフォーカスを将兵二人に絞り、ミニマルに徹した戦略がたいそう活きておりました。

生の象徴として描かれた植栽(二人が野花のなかでくつろいでいるシーン、途中に登場する切り倒された桜の木、川に浮かぶ将兵の目を覚ます桜の花びら)や、森の中に響きわたる兵士の歌声は、ストレートに心の琴線にふれるものであった。

1917 命をかけた伝令 映画の感想

伝言お届けのために戦場を縦走するスコフィールド。横のベクトルを戦争とすると、縦走することで反戦と見ることもできる。しかも途中で何度か横走する兵士たちと衝突するというおまけつき

俳優たちで良かったのは何と言ってもアンドリュー・スコット。将兵二人を送り出した中尉を演じていて、登場シーンはものの1分未満?なんだけど、イイ!悪目立ちせずに目立つという抜群のバランスを兼ね備えていると思います。

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アンドリュー・スコット

ちなみに第二大隊の大佐をベネディクト・カンバーバッチという朝食みたいな名前の俳優が演じており(「ドクターストレンジ」「シャーロックホームズ」の人)、ブレイクの兄を「ゲーム・オブ・スローンズ」の貴公子リチャード・マッデンが演じております。

リチャード・マッデンが出たときの私の安堵といったらないわー。

何故かというと、この映画、将校たちは割と有名どころ(ベネちゃん、ファレルじゃない方のコリン、リチャード・マッデン、アンドリュー・スコット)が演じているのに、肝心の将兵二人は平々凡々、登場する兵士たちもいずれも存在感のない人ばかり。

冒頭のコリン・ファースを確認し、アンドリュー・スコットに「行ってきます!」と挨拶し、御大ベネちゃんに軽くあしらわれ、リチャード・マッデンで安堵するという感情の流れがある一方で、メインキャラたちとは感情的な共有をできないという欠点もあります。

矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、RPGゲームのような体感はできるけれども、メインキャラたちに感情移入はできないという不思議な感覚でした。そのため、心に残るかといえばそれは微妙なんだけど、戦争映画なのに美しいアートをみたような感覚です。

最後のシーンでは、スコフィールドには、彼の無事帰国を祈る妻子がいることが判明します。一度として彼の口から語られず、最後の1分で語られた重要な事実。これについて共同脚本家はこう語っていました。

一つはリアリティを出すためだ。スコフィールドとブレイクは6か月以上は一緒にやってきた仲間だ。それなのに最初のシーンで「妻子が恋しい」というセリフをいうのは、いかにも取ってつけたようだろう?

もう一つの理由は、ブレイクが外向的なキャラクターであるのに対し、スコフィールドは内向的なキャラクターのためだ。ブレイクは馬の死体、人間の屍などあらゆるものに目を配るのに対し、スコフィールドは任務だけを考え常に前を見ている。スコフィールドは外界から自己を切り離して、小さな缶に家族の写真を入れている。妻子のもとに生きて帰りたいから、自身を兵士と認めるのを恐れている。