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【マインド・ハンター】シーズン1の感想:Netflix犯罪心理スリラー、FBIプロファイリングの軌跡

マインドハンターNetflix

© Netflix (2017)

Netflixオリジナルドラマの新作【マインド・ハンター】のシーズン1を視聴しました。

ネタバレなし

 

犯罪心理スリラー【マインド・ハンター】

デビッド・フィンチャーが手掛ける犯罪心理スリラー「マインド・ハンター」。はてなブロガーの Ellie K さんがハマッていたので見てみた。

予備知識ほとんどなしで観たんだけど、観て正解。ホラーファンの私にふさわしいダークな世界のドラマ。

どういうドラマかというと、「クリミナル・マインド」でFBIの特別捜査官が連続殺人犯のプロファイリングをやってますよね。あのプロファイリングを犯罪心理学の分野として確立させたFBIエージェントの話です。

まだ犯罪心理学が確立していない70年代後半。二人のエージェントがタッグを組んで、実在の連続殺人犯へのインタビューなどを通して連続殺人犯の心理を学びながら、プロファイリングによって事件を解決していくという話です。

端的に言えば、クリミナル・マインドのホッチやモーガンたちの仕事の起源みたいなもん。

心理学に興味がある人や、クリミナル・マインドで犯罪心理学とか気になったりした人にはお勧めです。私も10代の頃にロバート・K・レスラーのFBI心理分析官を読んだりした。

本ドラマのFBIエージェント、ビルは、ロバート・K・レスラーがモデルとなっている。主人公ホールデンは、ジョン・E・ダグラスがモデルで、マインドハンター──FBI連続殺人プロファイリング班を執筆している。女性博士ウェンディは、ボストン大学のアン・バージェス博士がモデル。

雰囲気的にはトゥルー・ディテクティブのシーズン1を彷彿とさせる。よく似ている。こういう重苦しくてダークな雰囲気はたまらない。

かねてからクリミナル・マインドでスピンオフを作って、もっと一つ一つのケースを掘り下げて犯罪心理学にフォーカスするものがあったらと思っていた。これはかなり近いと思う。

 

【マインド・ハンター】感想

第1話~2話あたりは静かな運び。主人公のホールデンがビルと出会うまでや、地元警察を転々としながら講師をし始めたり、主人公の人物像を分かりやすく説明している。

第2話では、さっそくエド(エドモンド)・ケンパー(通称:The Coed killer)が出てくる。エド・ケンパーは残忍な連続殺人犯で、2mを超す身長に130kgと見た目も超ド級のモンスター。

彼は15歳の時に祖父母を銃殺し、15~21歳まで精神病に入れられ、出所後、十代後半の女の子たちを次々と殺害。最後は母親も殺して、そのあと常軌を逸した行為をしている。最終的には、ケンパーの被害者は10人とされている。

さすがにエド・ケンパー級の俳優は見つからなかったのか、ドラマのエド・ケンパー役は実際のケンパーより背が小さい。それでも喋り方とか、不気味な雰囲気とか、なかなか雰囲気出ていた。ドラマでは、実際のケンパーのセリフがそのまま使われていたりするので、ゾクゾクする。

上述のロバート・K・レスラーの書籍FBI心理分析官でも、レスラーがうっかりケンパーとのインタビューで二人きりになってしまって恐怖感を味わったエピソードが書かれている。興味のある方は一読してみると良い。

エド・ケンパーNetflixマインドハンター

エドモンド・ケンパー Photo By Santa Cruz County Sheriff's Office

Netflixマインドハンター

Photo by Merrick Morton - © 2017 - Netflix

一方でケンパーは非常に知能指数が高く、そのIQは140とも言われている。本人のインタビューを見ても、コミュニケーション能力が高く、学者だといっても分からないくらい知的能力が高い人物である。プロファイリングの確立において、ケンパーの果たした役割は大きかったはず。

ちなみにケンパーは連続殺人犯のなかでも珍しく、警察に自首した。自身は死刑を望んだが、終身刑となっており、自殺未遂も起こしている。

ハイヒール殺人鬼のジェリー・ブルードス、看護師殺人鬼のリチャード・スペックも紹介。これらの俳優も良かった。

犯罪心理学のプロファイリングは70年代に生まれたようだ。ドラマの序盤では、連続殺人犯のことをシークエンス・キラーと呼称している。それがのちにシリアル・キラーとなったのだと思うと、なんだか感慨深いものがある。

ロバート・K・レスラーの書籍で習う秩序型(organized)と非秩序型(disorganized)という犯人のタイプや、ストレッサー(ストレス要因)、ファンタジーという専門用語や、victimology(被害者学)もこのドラマの中で紹介される。

また、地元警察に頼まれて、ビルとホールデンがプロファイリングを少しずつ披露しても、異常快楽殺人の概念どころか定義さえ触れたことのない地元警察が「狩りをする」などの専門用語に戸惑っている様子なども見れる。遺体発見者のアリバイさえ確認していなかったり、現代との対比も面白い。

シーズン1の前半は緊張感もあって一気に進めたが、6話あたりからキャラクターの掘り下げにより多く時間がもうけられたせいか、若干中だるみした。

ビルやホールデンの精神的な葛藤や苦悩も、ロバート・K・レスラーとジョン・E・ダグラスの執筆本を読むと、理解がいっそう深まるだろう。

常軌を逸した連続殺人犯をインタビューする上で、彼らの心理を引き出すために規律を超えなければいけない時がたびたび出てくる。ホールデンはその手段を正当化し、ウェンディ博士やビルは「我々はFBIなんだぞ」と反対する。

法律や倫理を順守しなければならない立場におかれながら、結果を出すためにそれを破らなければならない葛藤や、上司や仲間と使命感との板挟み、連続殺人犯の心の闇を覗きながら闇が自分の心を覗いていることを忘れないようにしたりと、現場の捜査官は本当に大変だったろうなと思った。

ウェンディ博士は現場に出てないコンサルタントだからね。共感しやすいのはビルの意見だね。でもホールデンのやり方が間違っているとは言えない。倫理的に引っかかるだけであって。

最後はエド・ケンパーでしめましたね。ホールデンの奢りと固執は仲間を遠のけ、ガールフレンドを失い、FBIの職さえ危うくさせます。連続殺人犯のケンパーがホールデンの鼻っぱしらを折り、モンスターへの恐怖心を与え、結果的に襟元を正す役目を担うことになったかも、という皮肉な結末が最高だった。この部分は脚色なんだろうけど。

出演者もハナマル。主人公のホールデンは、プロファイリングが存在していない中で葛藤しながら新しい犯罪心理学のメソッドを模索するクリーンでマジメな若い青年。ホールデン役のジョナサン・グロフはリアルライフではゲイのようだがドラマ内ではストレート。

相棒役は、古参のビル。ビル役のホルト・マッキャラニーさんが好きな俳優だったので嬉しかった。ブラッド・スローンでビーストを演じていた。この方は、シカゴPDのオリンスキー刑事だとか、ジョン・マルコビッチみたいに、画面に映っただけで嬉しくなるタイプの俳優である。ビル役はハマり役。

また、途中から加わる博士のウェンディ(アナ・トーヴァ)もいい。警視ステラ・ギブソン系の知的で聡明でクールな女性。彼女をゲイにしているが、モデルとなったアン・バージェス博士はおそらくゲイじゃないような気がする。お相手の女性は蜘蛛女のレナ・オリン。まだ引退してなかったんだ。

FBIの上司もいい。ホールデンのしつこい根気に嫌気がさしてビルに文句垂れたりとか、この辺りがクスッと笑える。

ホールデンのガールフレンドのデビーだけはちょっとエキセントリックすぎて好きになれなかった。

内容はダークな犯罪心理スリラーなので、ゴアも高い上にその多く実話とあって面食らうかもしれないが、上質なスリラーだ。FBIのプロファイリングに敬意を示すという意味でも、是非観て頂きたい。 

シーズン2にはジェフリー・ダーマー、バーコウイッツ、ジョン・ウェイン・ゲイシー、テッド・バンディも出るかもしれませんね。