
Netflix新作ドラマ「アメリカン・プライミーバル」を視聴しました。
日本のNetflixでリリースされているかどうかわからないので、邦題が「アメリカン・プライミーバル」で合っているかどうかは分かりませんが、取り敢えずこれでいきます。(原題は American Primeval)
- Netflixドラマ「アメリカン・プライミーバル」
- 人物紹介
- ガイド アイザック by テイラー・キッチュ
- 前哨基地フォート・ブリジャーの創設者 ジム・ブリジャー by シェー・ウィガム
- 追われ人の母 サラ by ベティ・ギルピン
- 賞金稼ぎ ヴァージル by ジャイ・コートニー
- モルモン教徒 ジェイコブ・プラット by デーン・ディハーン
- ジェイコブの妻 アービッシュ・プラット by サウラ・ライトフット・レオン
- ネイティブ・アメリカンの少女 トゥームーン by シャウニー・プリエ
- モルモン傭兵隊「ナウヴォー・レギオン」のリーダー ジェイムズ・ウルジー by ジョー・ティペット
- ユタ州準知事 ブリガム・ヤング by キム・コーツ
- ブリガム・ヤングの右腕 ワイルド・ビル・ヒックマン by アレックス・ブロー
- 米国陸軍大尉 エドモンド・デリンジャー by ルーカス・ネフ
- ネイティブ・アメリカン「ウルフ・クラン」のリーダー レッド・フェザー by デレク・ヒンキー
- 感想
- 人物紹介
Netflixドラマ「アメリカン・プライミーバル」
1857年のアメリカはユタ州とワイオミング州南西...
ユタ州クルックス・スプリングズを目指す母子。
ガイドとしてテイラー・キッチュを雇う。
しかしそこは荒野。
白人先駆者、ネイティブ・アメリカン、ユタ準州知事が率いるモルモン教の傭兵、アメリカ合衆国陸軍の支配と思惑が複雑に絡み合う。

彼らの仁義なき戦いを6話のミニシリーズとして描いた作品です。
果たして母子は無事にクルックス・スプリングスに辿り着くことができるのでしょうか。
監督は「ローン・サバイバー」「パトリオット・デイ」「キングダム/見えざる敵」などのピーター・バーグで、「バトルシップ」「プライド栄光への絆」で起用したテイラー・キッチュを主演に迎えている。
人物紹介
キーパーソンがけっこう多めなので、ちょっと紹介しよう。
ガイド アイザック by テイラー・キッチュ

ボストンからきた母子のガイドとなり、ユタ州クルックス・スプリングスを目指す。妻子を殺された過去を持ち、フォート・ブリジャー近くの川でホームレス生活を送っている。
前哨基地フォート・ブリジャーの創設者 ジム・ブリジャー by シェー・ウィガム

ワイオミング州の毛皮貿易の前哨基地「フォート・ブリジャー」の創設者で実在の人物。フォート・ブリジャーは、オレゴン、カリフォルニア、モルモントレイルの荷馬車隊の重要な補給地点だった。タフで怖いもの知らず。
本作の脚本家・クリエイターであるマーク・スミスが脚本担当したレオナルド・ディカプリオ主演「レヴァナント」では、子供時代のブリジャーが描かれている。
追われ人の母 サラ by ベティ・ギルピン

ボストンからはるばるワイオミングまでやってきたサラ。息子と共にユタ州のクルックス・スプリングスを目指すが、西部は想像以上に地獄であると知ることになる。
賞金稼ぎ ヴァージル by ジャイ・コートニー

サラを追う賞金稼ぎの追跡者。人のナイーブさに付け入る事が好き。
モルモン教徒 ジェイコブ・プラット by デーン・ディハーン

他のモルモン教徒と合流するため妻のアービッシュとユタ州に向かうところだったが、フォート・ブリジャーで母子に同行を頼み込まれ渋々承諾する。荷馬車で移動中、マウンテンメドウズの虐殺に遭う。
ジェイコブの妻 アービッシュ・プラット by サウラ・ライトフット・レオン

夫のジェイコブと荷馬車で移動中、マウンテンメドウズの虐殺に遭う。
ネイティブ・アメリカンの少女 トゥームーン by シャウニー・プリエ

家で性的暴行に遭い、相手を殺害して短剣ひとつで逃走。サラと息子のデヴィンが乗る荷馬車の荷台に隠れる。サラ、デヴィン、アイザックと行動を共にするうち、家族のような存在に。舌を切られているため言葉は話せないが、勇敢で有能。
モルモン傭兵隊「ナウヴォー・レギオン」のリーダー ジェイムズ・ウルジー by ジョー・ティペット

モルモン傭兵隊「ヌウヴォー・レギオン」を率いるジェイムズ・ウルジー。利他主義には興味がないようだ。
ユタ州準知事 ブリガム・ヤング by キム・コーツ

本作では「知事」と呼ばれるユタ州準知事で宗教家のブリガム・ヤング(実在の人物)。マウンテンメドウズの虐殺に関与したか否かが常に議論されているが、本作では後ろで糸を引いている黒幕役として描かれている。ブリガム・ヤングは多重婚者で、生涯で55人の妻がいたとされいる。ユタ州にはブリガム・ヤング大学もある。
ブリガム・ヤングの右腕 ワイルド・ビル・ヒックマン by アレックス・ブロー

ブリガム・ヤング準知事の右腕で、ユタ戦争ではブリガムの近衛兵のワイルド・ビルヒックリーも実在の人物。ヤングの前にモルモン教創始者のジョセフ・スミスの近衛兵だった。
米国陸軍大尉 エドモンド・デリンジャー by ルーカス・ネフ

マウンテンメドウズの虐殺の報告を受け、調査に乗り出す。公正でフェアな人物。
ネイティブ・アメリカン「ウルフ・クラン」のリーダー レッド・フェザー by デレク・ヒンキー


ネイティブ・アメリカンの反逆者グループ「ウルフ・クラン」のリーダー。白人の専横跋扈に我慢できず、白人と戦うべきだと主張する。
感想
さて粗筋に少し食い込んでみると、サラ(ベティ・ギルピン)とデヴィン(プレストン・モタ)母息子はボストンから夫/父親のいるユタ州を目指していて、そこで雇われガイドになったのが主演のテイラー・キッチュ。もっともキッチュは「あかんあかん、百鬼夜行の荒野で冬の山越えなんて自殺行為もいいところ」と最初は断る。
困った母子は、モルモン教の荷車隊のジェイコブ(デイン・デハーン)に「一緒に連れてって」と頼み込んで渋々承諾させる。ところが出発後まもなく母子を含むモルモン教の荷車隊はマウンテンメドーズで休憩中、何者かに襲撃される。そこを救うのがテイラー・キッチュで、結局母子の面倒を見る羽目になるわけだ。
テイラー・キッチュてさぁ、私の中でコリン・ファレル同様に過小評価されている俳優且つ「劇中で死ぬ俳優ベスト10」でショーン・ビーンに次ぐ2位にランクインしている俳優なんだけどよ。このままのペースでいくとショーン・ビーンを超えるのでは…いやもう超えたかもしれん。
キッチュの作品全部を観たわけじゃないけど、ちょっと思い出すだけでも「ローン・サバイバー」「Waco」「野蛮なやつら」「〇〇〇〇〇(ネタバレになるので名前は伏せる」「トゥルー・ディテクティブ2」「オンリー・ザ・ブレイブ」「21ブリッジ」とみんな死んでるんだよ!!死に過ぎでしょ。
そんなわけで本作も「嗚呼、キッチュまた死んじゃうんだろうな」と思いながら見ていたわけだ。キッチュの運命というネタバレはしないでおくけれども。
物語はA)キッチュ+母子の一行と、B)その他の皆様という二本軸で進行していく。
この二本軸というのがね、好みが分かれるところだと思うの。ジョージ・A・ロメロ「ランド・オブ・デッド」で主役一行が外出中にメインイベントがタワマン周囲で始まって、帰ってくる前に終わっちゃったじゃない?メインイベントの最中に主役不在というあの感覚が若干あるのはあるかな。でも前半はA)キッチュ一行もB)その他の皆様と戦ったりするので、多少絡みはあるから許容範囲内。
で、A組のキッチュ+母子一行なんだけど、トゥームーンというネイティブ・アメリカンの少女がついてきます。成り行きで行動を共にすることになるのだけど、トゥームーンが超可愛くて。ネイティブ・アメリカン役は、アジア系俳優やメキシコ系俳優を雇いがちだけど、シャウニー・プリエは正真正銘ネイティブ・アメリカンの血を継いでいて、ネイティブの言葉も話すバイリンガルらしい。

少年は特筆すべきことないんだけど、問題はこの人よこの人。

ベティ・ギルピン。
ベティさんについては「ザ・ハント」でしかお見掛けしていないが、何故ベティがこのお母さん役に起用されたのか至極理解不能。綺麗というわけでもなければミスキャストすぎて、脇を固める秀逸な俳優陣のなかで一人だけ完全に浮いていた。1850年代には1850年代らしい雰囲気があって、人々の話し方や使う単語、間合いの取り方、人との接し方も現代と異なるのが当然であって。リストは少し長くなるが、フォート・ブリジャーの創始者ジム・ブリジャー役シェー・ウィガム、賞金稼ぎヴァージル役ジャイ・コートニー、モルモン教傭兵隊リーダーでマウンテンメドーズの虐殺の実行犯ジェイムズ・ウルジー役ジョー・ティペット、ネイティブ・アメリカンの集団「ウルフ・クラン」のリーダー「レッド・フェザー」役デレク・ヒンキー、アメリカ合衆国陸軍隊長役ルーカス・ネフ、モルモン教のユタ準州知事ブリガム・ヤング役キム・コーツとその参謀ワイルド・ビル・ヒックリー役のアレックス・ブロー、いずれも素晴らしい存在感で1850年代の空気を完璧にこなしてくれたのにだよ?ベティ母ちゃんだけは!ベティ母ちゃんだけは雰囲気も表情も喋り方も現代人そのものなのです。
さらに輪をかけてベティ母ちゃんというキャラクターの描き方がちょっと酷いのもあって、本作の評価をひとりで下げてしまっているわけです。具体的には、アメリカ白人女性の悪い所をすべてさらけ出しているようなキャラクターでさ、謙虚さがまるでない。何もできない癖に文句ばかり言う。要求ばかり押し付ける。
そしてアイザックと合流してからは何度も一行を危険に晒します。「ここでじっとしていろ」と言えばここでじっとしていないし、「俺が話すから黙っていろ」と言えば黙ってないし、「やめとけ」と言えばやめない。その結果アイザックは不要な死闘を強いられたり散々な目に遭う。
マウンテンメドウズの虐殺や賞金稼ぎという追手から逃げ、ヒルビリーのようなマウンテンピープルというレベルをクリアした次は仏版「ヒルズ・ハブ・アイズ」悪漢、つまりヒルズ・ハブ・ガイズに大変な目に遭わされる。
尤もベティ母ちゃんはこれでようやく現実世界を体感して目を覚ますことにはなるのだが、ベティ母ちゃんと息子のデヴィンへの精神的損害は計り知れない。
白人とネイティブ・アメリカンの関係性も公平に描かれている。白人側につくネイティブがいれば、アイザックやある人物のようにネイティブに認められ、仲間となる人物もいる(ある人物とレッド・フェザーの関係性は感涙もの)。モルモン教の白人対その他の白人、モルモン教同士の殺し合い(モルモン教傭兵は道徳心なし)もあったり、不適切な表現ながらも総合エンターテイメントとして素晴らしい出来栄えだった。
終わり方には賛否両論あるかもしれないが、私はこれで良かったと思う。まぁベティ母ちゃんのアイザックへのアプローチは、ベティ母ちゃんが下手過ぎてまずったし、アイザックが撃たれた時の反応もまずったけど(とにかくベティ母ちゃんがまずってる)。
ピーター・バーグはテイラー・シェリダンと作風が似ているので、テイラー・シェリダンが好きな方は大変楽しんで頂けるのではないかと思う。「レヴェナント」を楽しめた方にもおすすめ。
そういえばテイラー・シェリダンは「イエローストーン」以降「1883」「1923」を制作、「イエローストーン」のケビン・コスナーも西部劇「ホライゾン(2024)」を制作(「ホライゾン」は評判が宜しくないようだが)。2025年はホラー界が盛り上がりを見せているが、西部劇も再流行しそうな予感。
「アメリカン・プライミーバル」は、これまでの西部劇を超えるほどの荒野の狂気が描かれ、女子供にも容赦ない絶対的な暴力が降り注ぐ。時折目を背けたくなるシーンもあるが、神が存在しない荒野で繰り広げられる激しい戦いや人間ドラマは、紛れもなくアメリカが歩いてきた道。
過度の暴力に辟易してしまう人もいるかもしれないが、私はホラー映画で見慣れているので特に暴力的とは思わない。人間の邪心や悪意、醜悪さを表現するにはまだ足りないくらいだ。
「アメリカン・プライミーバル」リリースされた際には是非視聴をお勧めしたい。