ミセスGのブログ

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「ウオッチャー(2022)」映画の感想

「ウオッチャー」

先日「ロングレッグ」という映画を観ました。日本人の奥様とベビーと幸せな日々を過ごしているという噂のニコラス・ケイジがシニスター系の連続殺人鬼に扮している映画でね。ニコラスが「母さーん!父さーん!生まれる前に戻してぇエエエエエエ!」と奇声を発しているのが可笑しくてゲラゲラ笑ってたんだけど、ニコを追うFBI捜査官を演じたマイカ・モンローが本作「ウオッチャー」で主役を演じています。

ニコラス・ケイジ

昔から思っていたのだけれど、どういうわけか情報ナッシングで映画を観たら、たまたま同じ俳優が主人公だったっていう経験をしたことない?私はかなりの頻度でこの現象を経験しているのよね。VODがたまたま同時リリースしているだけなのか、何か見えざる力が働いているのか、アイドンノウなんだけれども。

ちなみにマイカ・モンローは低予算ながらカルト的ヒットとなったホラー/スリラー映画「イット・フォローズ」の主役の女子です。相変わらずホラー、スリラーを中心に出演しているようです。

しっかし「ウオッチャー」て題名は映画ファン泣かせだわね…。

「ザ・ウオッチャーズ」(2025)マイク・インファンテ主演

「ザ・ウオッチャーズ」(2024) ダコタ・ファニング主演

「ザ・ウオッチャー」(2022)ナオミ・ワッツ主演ドラマ

「ウオッチャー」(2019)韓流ドラマ

「ザ・ウオッチャー」(2016)エリン・カヒル主演

「ザ・ウオッチャー」(2000)ジェイムズ・スペイダーとキアヌ・リーヴス主演

「ウオッチャーズ」(1988)コリン・ハイム主演、ディーン・クーンツ原作スリラー映画(ゴールデン・レトリバーが可愛いやつ

これ以外にも同名題の映画やドラマがまだまだあってだね。「バード・ウオッチャー」や「ナイト・ウオッチャー」を入れたらどうするん。おまけにヘンリー・カヴィルの「ウイッチャー」まであるんだから、さぁ大変。

というわけで「ウオッチャー観たで」とか言われても、ワッツのウオッチャー?キアヌのウオッチャー?それともゴールデン・レトリバーのウオッチャー?もしかして「ウオッチャー」じゃなくて「ザ・ウオッチャー」じゃなくて?単数形ではなく複数形の「ウオッチャーズ」じゃない?とまるで春のウオッチャー祭り。

取り敢えず、今回はマイカ・モンローの「ウオッチャー」です。

粗筋は

夫と共にブカレストに引っ越してきた若いアメリカ人の女性。彼女は、向かいのアパートから彼女を監視する見知らぬ男が、地元の連続殺人犯ではないかと疑い始める。

 

「ウオッチャー」感想

これ結構よかった!「ロングレッグ」より、本作の方が断然好きだな。

監督はクロエ・オクノさんというまだアラフォーの方で、「Slut」「Let the Right One In」少し有名なのだと「V/H/S 94」がある。いずれも未見なのだけれど、本作を観たあとは俄然興味が沸いて、以上の映画も観てみたいなと思わせるものがありました。Okunoさんて、もしかしたら奥野さんの可能性もあるよね。黒髪で、顔から判断すると日系ぽさもある。

舞台は東欧ルーマニアのブカレスト。歴史が残る美しい街だけど、本作では殆どブカレストの美しい街並みを見せていない。

マイカ・モンローは夫の仕事の都合でブカレストに帯同してきたのだけれど、夫はルーマニア出身らしく現地語を話せるのに対し、マイカは殆ど話せない。旅行や駐在などで海外に行ったことがある人なら理解できると思うが、言語が話せないことから生じるマイカの孤独感や閉塞感というものがブカレストの美しい街並みを見せないことで表現されている

最初は新天地への引っ越し、可愛いアパルトマン…と、高揚感もあったんだけど、言語も話せない、近所で殺人事件が起きる、といった感じでマイカの幸せレベルはどんどん落ちていく。

たまに旦那の同僚がディナーを食べに来たりもするが、少しはマイカに気を遣って英会話をするものの、すぐに慣れた現地語でマイカを置いて話し始めてしまいます。自分以外の人たちが他言語で楽しそうに話していて自分だけ理解できていない状況、本当にキツイんだよね。しかも本人以外はまったくその痛みが分からない。孤独感MAX。

で、マイカたちのアパルトマンがこれまた超素敵で。高い天井、大きな窓、くの字型のフローリング、特に私が「わぁ素敵」と気に入ったのが壁の色。淡いブルーグリーンというのかな。大変センスの良いカラーで、このペンキの色はどこの何色ですか?と聞きたいほど素敵なのよ。うちもこのカラーに塗りなおしたいな…もし次の家を買う機会があったら、絶対この色にしたい。

一歩足を踏み出した外部の景色はマイカの疑心暗鬼や不安を表しているから劇中でほぼ見せない一方で、この素敵なアパルトマン屋内が表すのは「安心」である。

で、この素敵なお部屋の大きな窓の向こうにお向かいのアパートが建立していて、マイカたちの部屋から1階上のお向かいさんに男性のシルエットが写っており、終始見られているような気がするわけです。

最初は「たまたま窓辺に立って外を見ているのだろう」と思っていたのだけど、確認する度に男のシルエットが窓に映っているのねね。しかも巷じゃ連続殺人鬼「スパイダー」が女性を絞首したり斬首したりしている。「もしかしてこいつスパイダーじゃないの?」という疑念が強くなっていく

一人で外出し、平日昼間の映画館に入って着席すると、まもなくマイカの真後ろに男が座る。トナラーも嫌だけどすいているのに真後ろに座るの絶対おかしい。(しかも上映中の映画はオードリー・ヘプバーンの「暗くなるまで待って」というチョイス)

男の吐く息を感じたマイカは恐怖で席を立ち映画館を立ち去りスーパーに入るのだが、そこにまで男は尾いてくる。「気のせいなのかな」「いや、やっぱりいる!」「でも偶々方向が同じだけなのかも…」「いや、また付いてきてる!」の繰り返しで神経を消耗していく。

帰宅したマイカは夫に「お向かいに見られている。あとスーパーでもつけられた」と告げ、夫妻はともにスーパーに趣き店の防犯カメラを見せてもらう。防犯カメラには確かに男がマイカの同線を辿っているように見えたが、同時にマイカも男の行方を気にして見張っている様子が映っていたため、夫はいまいちマイカを信用してくれない。

言葉が通じなく、家族や友人とも引き離され、連続殺人犯がうろちょろしている街で男にウオッチされている…という状況下でマイカの疑念と不安はどんどん増していく。

部屋の中にいるところを部屋の外から写すことで、孤独感や孤立感が際立つシーンが多い。

因みに、何かに取り憑かれて視野が狭窄することを英語でトンネル・ビジョンと呼ぶのだけれど、男に見られているという恐怖心と不安で頭がいっぱいになっているマイカの心情は、劇中のトンネルのように細長い空間によってこれでもかというほどに表現されているのねー。密閉された狭い空間=「危険」信号でもあるし、劇中の隣人女性との交流につながる親密さも内包している。

長細いアパルトマンの廊下で隣人の女性と言葉を交わすシーン。密接さも表現

駅の細長いプラットフォーム

長細い地下鉄の電車内

長細い地下鉄の電車内

長細いスーパーの通路

男をつけていったところ。細長い通路に入っていくところ。

「シャイニング」の廊下のシーンを想起。ウォッチャーの男のアパルトマンなのでダークで暗いイメージ。

最後のシーンも、マイカの代わりにウオッチャーの方が孤立するショットがあって、なんか良かったな。どんなシーンかは言わないでおくけど、面白かったし撮り方が優秀だったので是非観てみてね。