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デンマークの映画『偽りなきもの~Jagten/The Hunt』のレビュー&感想

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映画「偽りなきもの(原題:JAGTEN / THE HUNT)」を見ました。

2012年、デンマークの映画です。

監督はトマス・ヴィンターベア

「光のほうへ」という映画も評判が良いようなので、今度見てみたいと思います。

主演はマッツ・ミケルセン

ハンニバルのTVドラマシリーズでハンニバルを演じている俳優さんですね。

申し訳ないけど、ちょっと苦手な顔です。

第65回カンヌ映画祭で主演男優賞をはじめ、三冠を受賞した作品です。

デンマークの映画は、他にも「未来を生きる君たちへ」など名作が多いようなので、どんどん見ていきたい。

「アンチクライスト」もデンマークの映画と知ってなんだか納得しましたが。

あれも違う意味ですごい映画でした。

本作「偽りなきもの」の予備知識という予備知識はほとんどありませんでしたが、かいつまんだあらすじだけは頭に入れておきました。

あらすじだけ読んだだけで、いやーこれはまた重苦しい映画になりそうだ…と思ったので、心して観ることにしました。

集団ヒステリーっていうの?あれ苦手なんですよね。ただでさえ集団が苦手なのに…

確かアメリカが舞台だったんだけど、辺鄙な田舎で、女性が魔女狩りみたいな感じにされて警察が止めようとするけど住民全員に取り囲まれて何もできなくて…みたいなシーンだけはいまだに頭に残ってる。映画の名前もあらすじも忘れてしまったのに。群衆の心理は恐ろしいと心からゾッとしました。

「オチが衝撃!」で有名になった「ミスト」も途中から宗教熱心な女性に扇動されて集団ヒステリーが発生していました。今度、集団ヒステリーものの映画をまとめてみようかしら。けっこう怖いですよね。

ゾンビの方がよっぽどカワイイよ。

ほらほら見て見て。

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映画「 偽りなきもの」のストーリー

あらすじです。

幼稚園で働くルーカス。

クラスにクララという女の子がいます。クララのお父さんとルーカスは大の親友です。

クララは両親に少し放置され気味で寂しそう。

ルーカスはクララを送り届けたり、幼稚園に一緒に行ってあげたりと優しく接します。

そんなルーカスを好きなクララですが、あることをきっかけに

「ルーカスは嫌い。彼のペニスは空に向かってそびえ立っているから」

と小さな嘘をついてしまいます。

小さな町で、子供の小さな嘘が引き起こす悲劇を描いたシリアスなドラマです。

 

映画「偽りなきもの」の感想

ひどい。ひどすぎる。

まずヒドイと思ったのが、子どもの話をそのまま真実だと信じて疑わない幼稚園の園長。

こちらが園長とクララです。

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この人は本当に酷くて、真実かどうかも分からないまま、クララの言うことだけを信用して、ルーカスに「とりあえず今日は帰りなさい」と言ったその日の夜に「性的虐待があった」と両親たちに話してしまうんです。

こんな対応あるか?でも性的虐待など重大な事件があまり起きそうにない片田舎な感じなので、ありそうな気もする。

でも、とりあえずロー&オーダーSVUを見続けてる私としては、このあたりで「えええ~~~????短絡すぎるでしょ!?あり得ない!」と辛口でした。

子どもへの性的虐待というのは重大な事件ですから、慎重に慎重をかさねて真実を究明するのが先でしょ!?

クララの身に何が起こったのかも分からないまま、「ルーカスは嫌い。ペニスがあるから。ペニスが空高くそびえ立っているから」だけで断定???

両親の一人が「That is a serious accusation.」だと園長に言うんですよね。それは大変な告発ですよ、(本当なのか?)と。その通りです。

翌朝、ルーカスが起きると、息子マーカスの耳にもニュースは伝わっています。「父ルーカスに電話もかけるな」「一緒に住むのもダメだ」と言われたとマーカスが言います。しかもマーカスに告げ口したのは園長の仕業。園長がマーカスに電話して言ってきていました。

園長を逮捕したくなった。

真実が分からないまま、噂が噂を呼んで、ヒドイ話になっていったことが伺えます。

さらに、告発した子が誰かは言えないとルーカスに言っておきながら、クララであることをルーカスにうっかりスベらす園長。

あり得ない。ムカつきすぎるわ。

父テオがルーカスに怒るのを見て、クララは母親アグネスに「自分が適当なことを言ったら他の人たちが色々なこと言い始めた」ことを告白するんですよね。でももう、後の祭り。

唯一の救いはルーカスの息子と、ルーカスの冤罪を信じる一握りの友人たち。

特にマーカスはいい息子で、クララの家に行ってクララに「なぜ嘘をつくんだ」と問い詰めます。ツバまで吐きます。

親父連中に殴られながらも、勇敢に父の無罪を信じる息子が健気です。

釈放されたルーカスの家に石を投げ入れたり、おまけに愛犬を殺す、怒った住人たち。

たとえ冤罪であっても、ルーカスに向けられた人々の偏見はなくなりません。

でも私思うんですが、観客として見ている私はルーカスが無実なのを知っているからこうした感想を言えるのであって、たとえばルーカスが無実なのかどうかを知らない設定だったら、どう反応していたかと考えてしまうんですよね。

実際に自分が幼稚園の親の一人だったとしたら。

娘が通う幼稚園で、先生の一人が性的虐待をした疑いが持ち上がった、という時点で、偏見を持ってしまうに違いないと思うんです。まずは娘の安全を確認したい、それだけしか考えられないと思うんですね。

つまり、子供が絡んでくると、疑わしきは罰せよになってしまうのです。

だから住人達の態度や攻撃も責められない自分がいる。もちろんこの映画ではルーカスが無実であることを知っているから「ひどい」「怖い」「集団ヒステリー」と言えるですが、自分が住人の立場だったら、ルーカスが本当に無実かなんて分からないわけで。

ルーカスが実は本当に有罪だったら、逆にルーカスをリンチした人の行為は英雄的な行為になってしまうのです。

この映画のように「小さな子供が嘘をつくわけがない」って思い込んでしまうと思うんです。子どもを持つ親であればなおさらだと思うんです。子どものたった一つの小さな嘘で、ここまで影響されてしまう社会の心理が一番怖いと思いました。

自分自身にも問いかけられているような、そんな気がしました。

ちょっとアレ?と思ったのは、ルーカスが弁護士とか雇わないこととか、あと最後の方でクララが線をまたげずに立ち止まっているときにクララに話しかけて抱っこして運んであげるとか、嫌疑をかけられたものとしては、たとえ疑いが晴れても、軽率な行動ではないかと思いました。

無罪であるからこそできるのかもしれませんが、自分が無罪だという信念を曲げないがために他人の心理に鈍感になっているように思いました。

最後のあの人物は誰なのかという議論があって、観客に判断をゆだねるようになっています。あの人物が誰かは焦点ではないので、誰であっても構わないのですが、おそらく他の方のレビューでも見られるように、クララの兄が第一候補ですね。

点数をつけるなら…55点かな。

ストーリー展開が雑なところが結構ありましたので。弁護士が出ないとか、子供の証言の詳細が出ないとか、釈放までの経緯が全く描かれないとか、園長のあり得ない対応とかね。

出演者の演技や雰囲気づくりはとても良かったです。

ところで、この映画に出て来るデンマークのおうちは、どれもお城みたいですね。

庭も広くて、というか庭が自然と一体化している。

11月~12月の秋冬の映像がとても美しかったです。

ずっとああいうところに住んでいると飽きてしまうのかもしれませんが、一年中温暖で緑が少ない南カリフォルニアに住んでいると、ああいうところに住みたくなります。