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アメリカの学校の入学書類にバイリンガルであることを絶対に記載してはならない理由

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アメリカの学校は8月~9月に始まる。したがって、新しく学校に入学するための準備は5月~7月あたりに行うことになる。

我が家もキンダー(幼稚園)の enrollment packet と言われる入学書類一式を6月に提出した。キンダー終了後は併設の小学校1年生(first grade)に上がることになる。

その enrollment packet(入学書類一式)に home survey(アンケート)のような形で次のような質問があった。

  ①子供の第一言語

  ②家庭で使う言語

我が家は私が日本語と英語のバイリンガル、旦那が英語とスペイン語のバイリンガル、娘が英語と日本語のバイリンガルである。家庭内の公用語はだいたい①英語、②日本語だ。

①の子供の第一言語には「英語」と記入し、②の家庭で使う言語には「英語」と「日本語」を記入した。

ところが、これが大きな間違いだった。

この記事を読んでくださっている皆さんは、決して私のような間違いを犯してはならない。間違ってもバカ正直に「日本語」と書いてはならない。

なにが問題だったのか。

 

アメリカの学校の入学書類にバイリンガルであることを記入してはならない理由

English Proficiency Test の知らせ

入学書類(enrollment packet)を学校のオフィスに提出しに行ったときにオフィスの方からこう言われた。

「二か国語以上話す生徒には英語の簡単なテストがあります。」

「それはmandatory(必須、義務)ですか?」と聞くと

「形式上のものですが二か国語以上話す生徒は全員受けることになっています。」

子供が学校にいる間に口頭でテストが行われたようで後日その結果が文書で返ってきた。我が子は生後6か月からアメリカ育ちなので当然英語力になんの問題もなかった。

そんなこともすっかり忘れていたある日のこと。

市の school district から手紙が届いた。

それは再び英語のテストのお知らせだった。

第一言語が英語である我が子になぜ英語のテストが必要なのか。

 

私が犯した間違い

英語がネイティブの子どもにわざわざ英語能力テストを受けさせなければならないかもしれないという原因を作ったのは私だった。

そう、1年前に入学書類一式の中にあったアンケートが原因だった。私が「家庭で使われる言語」に英語だけでなく「日本語」を記入したことが原因だったのだ

日本人はお上の言うことは鵜呑みにする癖がついている。日本人の私は「英語に何の問題もないのだから普通に英語のテスト受ければいいだけじゃん」と軽い気持ちでいた。

ところが旦那はこのテスト実施の通知に憤慨した。

「学力や英語力に問題があると担当教師が判断した上でのテストならともかく、なんの問題もない生徒に英語のテストを課す道理はない、第一言語が英語だというのに Enlgish learner(英語学習者)と区分するのはまちがったレッテル貼りであり、バイリンガルの子供たちへの差別だ。」

言われてみればもっともな言い分だ。旦那にそう言われるまで気が付かない私の危機管理のなさとふがいなさに泣けてくる。

大雑把に思われるアメリカ人だが、実は unconstitutional(合衆国憲法にそぐわないもの、違憲)なものには非常に敏感で断固として自分の権利を守ろうとする。

日本で生活していると「憲法」や「権利」をそこまで主張する人を見たことがない(9条は別として)。

私には「憲法」や「権利」を自らの手で掴んだという意識がなく、それは日本に生まれ育てば自動的に与えられるものだという感覚だ。しかしアメリカ人は憲法や権利を自分たちの手で掴んだとい意識が強く、それを侵害されることに全身全霊で反抗する。

日本なら横並び社会の性質も手伝って「それでも皆しかたなくテスト受けてるのに、あそこの家はおかしいね。自分たちだけ免除されると思うほうがおかしい」とモンペ扱いされる可能性さえあるかもしれない。

改めてママ友に聞いたり調べてみた結果、2か国語以上を話すマルチリンガル児は、 アメリカの公立校で English Learner というレッテルを貼られる事実を初めて知ることになる。

ある友人は、子供は英語しか話せないというのに母親がスペイン語を話すからという理由で、自動的に English Learner として区分されてしまったそうだ。

さらに家庭の中で祖母だけがたまたまスペイン語を話すという理由で、子供が English Learner として区分されてしまった事例もある。

 

ESLプログラムの落とし穴

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English Leaner として区分されてしまった生徒は、「英語能力に問題はない」と判断されるまで英語のテストを毎年課され、テストに不合格だった場合はESLプログラムに入れられてしまう。

ESLという言葉は、留学を考えたことがある人は聞いたことがあるだろう。

ESL = English as Second Language(第二言語としての英語)プログラムである。

日本人の多くは英語が第二言語なのでESLを利用した方も多いだろう。実際に英語が第二言語の人にとってESLはありがたいプログラムかもしれない。

しかしバイリンガルであるために、英語が第一言語でネイティブであるのにも関わらずESLプログラムに組み入れられてしまう場合はどうだろうか?

我が子はネイティブイングリッシュスピーカーであるにもかかわらず、それから毎年授業の合間に連れ出され、英語テストを受ける羽目になった。所要時間は1時間程度だが、その間、通常の授業には出られない。

なお、我が子のクラスメートには他国からきた生徒もおり、英語を殆ど話せない子たちも1~2人ほどいたが、入学書類に他の言語を話せることを記入しなかったため、英語テストを受けていない。

娘は通常の授業から連れ出され、本人曰く「バカらしい」英語のテストを受けるのがとても嫌だったようでいつも文句を言っていた。

子供には機嫌が悪い時もあれば具合の悪い時、あるいは単に質問に答えたくないときもある。担当教師でもない見ず知らずのスタッフが子供の英語能力をテストで測ることができるのだろうか?

またこの英語テストは難しく設定されているという噂も耳にする。3年生の子に5年生レベルの英語テストを実施して不合格率を上げたという話もある。

これは何のためか?

ESLの予算を獲得するためだと言われている。

テストに受かることができずにESLプログラムに入れられた生徒の学問成績は、そうでない子に比べて低いという統計データも出ている。

こうした背景もあって、ネイティブのアメリカ人の中ではESL=劣等というイメージがある。私の旦那の反応も、この背景が頭にあるからだ。私はアメリカに無知なため、旦那のように強い反応を示さなかったというわけだ。

母親がスペイン語を話すために子供は英語しか話せないのに英語のテストを受けさせられていた方は、最初の3年だけ1年に1回英語テストを受けていたが、その後英語力に問題ないと判断されたのでその後はテストも受けなくてよくなったということだ。

テストが必要でない子にEnglish Learnerというレッテル貼りをしてテストを受けさせ査定する、またはテストが本当に必要な子にはテストを受けさせていない。いずれも入学書類の自己申告に依存する行政の怠慢である。

 

私たちの決断

旦那が市の school district に電話をかけてこちらの意向はすべて伝えた。

担当者は「バイリンガルの子たちには英語のテストを受けさせるように言われていて、Gさんのお子さんの学業成績を見る限り全く問題ないからテストを受けても心配はないですよ」と言っていたが、そもそも我が子は英語ネイティブなのだから受ける必要がないのだ。

ネイティブだから受ける必要がないという点をどうしても覆すことができず、私たちは毎年school districtと電話で議論する羽目になった。

さらにそのhome survey(アンケート)には私たちが記入した情報を何に使うか、データをどう評価するかは全く知らされていなかった。

これは unconstitutional(違憲)ではないのか。事前にこの情報がどう使われるかを知っていたら、きっと「英語」としか記入していなかっただろう。

担任の教師にもschool districtからの手紙を見せて相談したが、教師でさえこの手紙について知らされていなかったことが分かった。担任の教師でさえも「○○ちゃんに英語のテストは必要ないですよ、何の問題もありません。テストは断ることができるのではないでしょうか。」と私たちの意図を支持してくれた。

この現状はまさに negligent administrative discretional intention によって引き起こされている。

在米の日系家族の方にはお子さんをアメリカのキンダーや小学校に入学させる方も多いだろう。

入学書類に子供の言語環境をたずねる質問事項があったら、絶対に英語以外は記入しないこと。

どうか私と同じ轍を踏まないように注意されたい。