アメリカにきてからほとんど外食をしていなかったのだが、娘の希望で「チーズケーキ・ファクトリー」に行くことにした。
チーズケーキ・ファクトリーは、文字通り、多様なチーズケーキが看板のレストランである。
LA・OC付近では19店舗ある。ラスベガスやサンフランシスコにもあるので、在米の人ならご存知だろう。
チーズケーキは美味しいが、日本人の口にはかなり甘い。私も親戚も1日2~3口ずつ、5日くらいかけて食べたりする。
チーズケーキの一例:
損して得取れ『チーズケーキ・ファクトリー』の神対応
チーズケーキ・ファクトリーではいつも良い対応をしてもらうので、好きなレストランの一つだ。そんなチーズケーキ・ファクトリーでの不慮の出来事に神対応をしてもらった。その対応の仕方がいかにもアメリカらしい「損して得取れ」精神だったので紹介する。
チーズケーキ・ファクトリーは注文しなくても二種類の温かいパンが出てくる。このパンが美味しい。
余談だがカリフォルニアではプラスチック軽減のためにストローがデフォルトでは提供されなくなったそうだ。頼めばもらえる。コップが大きく重いので、ストローがないとはっきりいって飲みにくい。
子どものカップには穴あき蓋(スタバであるやつ)が付いていた。
量が多いので前菜は普段は頼まないのだが、今回はナチョスを頼んでみた。
ナチョスの上にチェダーチーズ、トマト、グアカモーレ(アボカドを潰したもの)、サワークリーム、万能ねぎ、ハラペーニョのピクルスをのせたもの。
ハラペーニョが全然辛くなかったので、白人に馴染みやすい味にしてあるのだろう。
こちらは娘のオーダー。キッズ・ミールのピザとグリルド・チーズ・サンドイッチ。2つ注文したとは気付かず。やられたー。
パスタ好きの私はEvelyn's Favorite Pastaをオーダー。これとLouisiana Chicken Spicy Pastaが好きでよくオーダーする。
旦那はフィッシュ&チップスをオーダーした。
不慮の出来事がなんだったかというと、旦那のオーダーしたフィッシュ&チップスの魚のフライが完全に揚がっておらず、衣が半生だったということだ。(衣の小麦粉がまだ白くて液状だった。)
そのため、衣をとりのぞいて食べたり、2個くらいしか食べれなかった。(とはいえナチョスとパンですでにお腹はある程度満たされていたが)
担当のウェイトレスに伝えたところ、ウェイトレスが店長に伝えると言い、後ほど店長(女性)がやってきた。
衣が半生だったことは伝えたかったが、そのせいで厨房の店員が叱られたり、解雇されたりということだけは避けたいので、そのように伝えた。
アメリカは食べ物にはとても寛容なので、新しい料理を用意すると店長は申し出てくれたが、お腹の具合も十分だったし、丁重に断った。すると店長は、注文したチーズケーキ1つ分を無料にすると申し出てくれたので、その申し出を快く受け取った。
会計をするとき、合計が$70強だったので「いつもより多く頼んでるのに、ずいぶん今日は安いな」と思った。そこで家に帰ってレシートを確認してみたところ・・・
チーズケーキ1個だけでなく、衣が半生だったフィッシュ&チップスの分の18.50㌦も無料になっていた。
つまり、半生だった皿の料金のお代をとらないのはもちろん、チーズケーキ1個分を無料でくれたということだ。
こちらが無料にしてもらったゴデュバ・チョコレート・チーズケーキ。私が好きでよく頼む一品である。
なお、以前にもチーズケーキ・ファクトリーで旦那がケーキを頼んで家に持ち帰ったところ、普段より小さいケーキが入っていた。普段の3分の2くらいのサイズ感だろうか。
旦那は店に電話を入れ、その旨を伝えると、後日、チーズケーキ・ファクトリーから10㌦分のギフトカードが送られてきた。
こうした寛大な対応はレストランだけでなくアメリカのあらゆるサービス業でみられる。損して得取れ精神が徹底しているのだ。
「日本のカスタマーサービスは世界一」「アメリカのカスタマーサービスはいい加減」という声をよく耳にするが、長年アメリカに住んでみると両国のカスタマーサービスはそう一面的には判断できないことがわかる。
確かに日本人の勤労意識は平均して高いしカスタマーサービスも平均して満足のいくものが多いが、日本のレストランで果たしてこれだけ寛容な対応を簡単にとれるかどうかは疑問だ。
日本のカスタマーサービスはマニュアルに準じることが多く、臨機応変な対応はあまり望めないというのが正直な感想だ。
アメリカではレストランだけでなく、デパートなどでもこうした寛大な対応をしてくれるので、いちどアメリカの購買生活に慣れてしまうととても日本で購買する気になれなくなる。
たとえばデパートのNordstromは顧客満足を徹底させていて、返品返金交換がもっとも簡単なデパートでも知られている。その許容度は想像以上のもので、たとえば化粧品を使って合わなかった場合はもちろん快く返品と全額返金を承ってくれるし、なかにはファンデーションを全て使い切って空の瓶を持っていって「合わなかった」と説明しても返金してくれたケースさえある。
また、こんな逸話もある。Nordstromが建てられるまえにその場所に建っていたオート・ストアでタイヤを数年前に購入した老人男性が、Nordstromに返金してくれと頼みにきた。タイヤを売ったのはもちろんNordstromではないので、Nordstromがタイヤの返金に応じる必要はないし、常識的に考えてタイヤを返品できる可能性はゼロである。(オート・ストアは廃業したようだ)
しかしNordstromはなんとこの老人の返金リクエストを快く受け、タイヤの購入額全額を老人に返金したのだった。
化粧品のULTAやSephoraも「カスタマーが満足できることが一番」と謳っているため、使用後であっても返品・交換・返金が簡単にできる。おそらく使用されたものは試供品などに回すのだろう。
来店した人なら分かると思うが、店には試供品が並んでいて、どれも自由に試すことができる。客が試し放題なので、多少乱雑だったりはするが、好きなだけ試して気に入ったものを購入できる。
日本の陳列はピカピカで綺麗に並んではいるものの、何色も口紅を手につけて確認したり、口紅の次はファンデをいくつも手に取って試したりというのは気がくじかれないだろうか。
まして使用済み化粧品の返品返金など決して望めない。返品返金をしないという覚悟をもったうえで購入をすることを客が期待されているのだ。そのため、容易に購入することができない。買い物のハードルが高い。この買い物のしにくさも、消費動向に直接的に影響しているはずだ。
アメリカのカスタマーサービスは、たとえ短期的には損することになっても、長期的には得をすることを知っている。返品・交換・返金を容易にすることで顧客が必ず店に戻ってくることを知っているのだ。
オンラインショッピングでも気が付けばFree Shipping & Free Return(送料無料・返送料無料)のところばかりで買い物をするようになる。
損して得取るアメリカのカスタマーサービス対応は、アメリカの購買活動にも一役かっているに違いない。