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【ノクターナル・アニマルズ】映画の感想:男の闇、女の闇を描いたスタイリッシュなサスペンス

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ノクターナル・アニマルズ


今月日本公開の「ノクターナル・アニマルズ」を視聴しました。

男の心の闇、女の心の闇を描いた、スタイリッシュなサスペンスです。

賛否両論ありますが、私は好きでしたよ。

前半ネタバレなし、後半ネタバレありの感想です。

 

ノクターナル・アニマルズ

主演はエイミー・アダムズとジェイク・ギレンホール。ジェイク・ギレンホールは以前は嫌いだったんだけど、いい演技をするので好きになってきたんですよね。若手の中ではトップクラスじゃないかな。出演する映画にもこだわりが感じられる。

エイミー・アダムスは今年43歳の演技派女優。映画「メッセージ」にも出演していますが、わたくし彼女の出演している映画をたぶん見たことがありませんでした。本作を見て、演技派だなと実感しました。可愛いし。43歳より若く見えますね。

そして監督はなんとトム・フォード。ファッションデザイナーのトム・フォードです。えートム・フォードってサングラスとか香水のイメージしかないわ・・・監督なんてやってたんですね。

さて、本作はスキッと明明白白な映画ではありませんので、これまた好みが別れると思います。でも分かりづらいサスペンスではなく、分かりやすいサスペンスです。この手の不可解なサスペンスにありがちな「え?これで終わり?え、どういうこと?」の心配はないかと思います。ただし、最後はあっけない終わり方なので「え?これで終わり?」と思うかもしれません。

私は単純な分かりやすい映画も好きですが、どっちかっていうと「あれはどういうことだったんだろう」という映画の方がちょっとばかり好きかな。本作も見終わってからしばらく考え込んでしまいました。

ノクターナル・アニマルズとは、夜行性動物という意味で、本作ではジェイク・ギレンホール演じるエドワードが元妻スーザン(エイミー・アダムズ)をそう形容しています。

 

「ノクターナル・アニマルズ」のあらすじ

アートギャラリーのオーナーのスーザンの元に、ある日、20年前に離婚したライターの元夫から小説の原稿が届きます。 ダークで暴力的なストーリーの小説に魅入られたスーザンですが、徐々に自分の過去を思い出し、心の闇に気がついていきます・・・果たして元夫が小説をスーザンに送った真意は?

というような内容です。

映画のストーリーの中に、元夫エドワードが書いた小説のストーリーがある2本仕立て形式で映画は進行していきます。

 

「ノクタール・アニマルズ」の感想(ネタバレなし)

監督がデザイナーだけあって、大変スタイリッシュなサスペンスです。冒頭から最後のシーンまで、まるでファッション雑誌やモデルの写真撮影を見ているかのようなスタイリッシュさです。これは映画に批判的だった人も認めざるを得ない点でしょう。

まず冒頭から度肝を抜かれる映像が流れます。これはホラーを見まくってアメリカで無修正ポルノを見なれた私でもビックリしました。いまだかつてこれほど衝撃的な冒頭シーンはなかったと思います。

でも、これがまた不思議とスタイリッシュで惹きこまれちゃうんですよ。登場している方たちには申し訳ないのですが、はっきりいって見苦しい絵面なんですよ。でもそれを数分くらい?見ているうちに、不思議と惹きこまれてしまう。幻想的で美しい・・・とさえ思ってしまうわけです。この冒頭シーンだけでも見る価値あります。

スーザン役エイミー・アダムズとエドワード&トニー演じるジェイク・ギレンホールはやっぱり良かったです。特にエイミー・アダムズの表情が良かったので、彼女の他の作品も見たくなりました。

見終わってから改めて考えてみると、「なんだ、そんなことでここまで・・・」と思うような内容だったりするので、ガクッとくるかもしれません。スーザンとエドワードに起こったことは、誰にでも起こり得る日常の一コマです。その日常の一コマをここまでドラマチックにスタイリッシュに意味ありげに撮ってみせたという点は評価したい。

とはいえ、子どもじみた話であることもまた事実です。

ネタバレなしだとここまでしか書けませんが、サスペンスはやはりネタバレしないで見た方が良いと思いますので、是非観て頂いて、あれこれ思考を巡らせて自分なりの解釈を見つけてみて下さい。

 

以下、ネタバレ含む私なりの解釈です。

 

解釈

ぶっちゃけて要約しますと、経済的に恵まれたスノッブなスーザンに20年前に傷つけられて捨てられて、挙句の果てに自分の子を堕胎されたエドワードが、単に恨みを晴らしたいクソヤワ男のささやかな復讐劇という子どもじみた話です。

エドワードはスーザンに「小説に自分のことばかり書くのやめたら」みたいなことをかつて言われて批判されていましたが、逆に自分のことを書いた小説で成功してみせたんですね。同時に、小説の中でスーザンの心の醜さを露呈させた。スーザンの闇の権化が小説の中でトニーの妻子をレイプして殺した腐れ男レイとして描写されているのだと私は解釈しました。

そしてトニーの妻はスーザンの善心、娘はスーザンが勝手に堕胎したエドワードとの子です。つまり、スーザンのダークな部分(=レイ)が、愛する妻(=スーザンの善の部分)と娘(スーザンが堕胎した子)を殺し、それを止められなかった弱い自分を小説の中で悔いています。

小説では最後はトニーは、あやまってか故意なのか、お腹を撃って死んでしまいますが、リアルな世界ではエドワードも死んだという解釈をしました。エドワードが自殺したかもしれないし、エドワードの心が死んだことを表したのかもしれませんが、それは映画内では説明されていません。現在のエドワードは一切出ないので、生死は不明です。

ただなぁ・・・捨てられて、他の男作られて、自分の子を勝手に堕胎されたっていうのは確かにヒドイ仕打ちですけど、20年後まで憎しみを抱えるエドワードもどうかと思いますけど・・・だからこそ小説でヤワな男トニーをうまく描写できたし、成功したんでしょうけどね。でも小説自体、素晴らしいと褒められるようなストーリーじゃなかった気がするが・・・

スーザンはエドワードを捨てた後、経済的に恵まれていて自分と同じようなタイプのリッチな男とすぐに一緒になりますが、結局、幸せは掴めず、小説が届いた後はエドワードの才能に感動し、エドワードに再び近づこうとするんですね。結局、スーザンは問題が起きると、関係をあきらめて、すぐに逃げ出し、向き合うことをせず、小説の中のレイのように、自分がしたいように思うがまま生きていくタイプなんです。

人生は選択の連続ですが、スーザンのように常に自分本位な選択ばかりしていると、他人を傷つけるどころか、一生幸せになれませんよ、他人を傷つけた代償は、巡り巡って自分に帰ってくるという戒めにも感じました。

あと小説の中に出てくる保安官は、エドワードのお父さんをイメージしたのかなと思いました。現実世界で亡くなっているし、肺がんで亡くなったのかもしれませんね。

評価:60点