Amazon新作ドラマ「ゼロゼロゼロ」を観始めました。
第1話(あらすじ感想)は前哨戦とおぼしき3つのロケーションでのシンプルなキャラ紹介に留まったものの、第2話では椅子から身を乗り出すほどの画面吸着ぶりを披露してくれました。ワクワクが募る。
いや、なかなかどうしておもしろいです。
もち、批判すべき点もあるのだけれど、とりあえずエンタメとして面白いです。
【ゼロゼロゼロ】第2話 あらすじと感想
第1話のあらすじ感想記事でざっと説明は済ませたけれど、本作の設定をシンプルにまとめるとこうなる。
関係者1:イタリアン・マフィア(イタリア)=バイヤー
関係者2:リンウッド家(アメリカ)=密輸ブローカー
関係者3:メキシカン・カルテル=サプライヤー
関係者4:メキシコ軍
このうち、関係者4のメキシコ軍は第2話で消え去るので、実質3プレイヤーの群像劇。
メキシコ軍は特殊部隊が麻薬カルテル撲滅作戦任務を牽引しているのだけれど、その特殊部隊の現場リーダー自身がカルテルの親玉のスパイという堕落ぶりさ。
リーダーのコントレラス軍曹は、メキシコ軍の襲撃をカルテルに警告したりと、軍の任務のサボタージュに忙しい。
第1話では、ガブリエル・バーン演じるリンウッド家の長エドワードがティルティル似の娘エマと共にメキシカン・カルテルの親玉レイラス兄弟とミーティングしているところにメキシコ軍が襲撃をかけたところで終わった。
なお、この銃撃戦でガブリエル・バーンが銃でバーンされる。
バーン違いではあるものの、ガブリエル・バーンは映画「ヘレデタリー/継承」でも炎でバーンされている。
ここのところバーン死することが多いが、第二のショーン・ビーンでも目指してるのだろうか。
バーンパパもエマ娘も防弾チョッキを着ていたので即死は免れたが、車に乗り込んでからのカーチェイス、後続車のメキシコ軍から惜しみなく降り注がれる銃弾の雨を潜り抜け、飛行場からプライベートジェットに乗り、ヨロヨロとエマに担がれながらニューオリンズの自宅に戻ってきた甲斐も空しく、バーンはバーンと床に突っ伏してそのまま息を引き取ってしまう。バーンが一応の主人公だと思っていたので、私の心はバーンと引き裂かれた。もうバーンのネタ切れだからいい?
でもね?バーンなしで密輸事業どうするの?と心許なさを感じていると、船舶ビジネスは娘エマと息子クリスに託されることになると知り、尚更不安がバーンと増す。
父バーンは息子クリスがハンティントン病を患っていることから、「俺が死んでも、クリスは絶対にビジネスには巻き込むなよぉお!?」と娘エマにきつく念を押していたのだが、なぜかエマは大事なバーンとの約束を速攻破ってクリスを家業に狩りだす。
「病気の影に隠れて生きてちゃダメ」とかもっともらしいことを言ってたが、自分一人では無理だと思ったからに違いない。ナルコスの世界なんて極限マッチョの世界だから、表向きは女である自分よりも男である弟を看板にしたほうが良いという打算だと踏んだ。
バーンが亡くなったことで、イタリアン・マフィアの若頭ステファノがはるばるイタリーから押しかけてきて、エマとクリスはコカイン輸送をやめるように脅される。
何故かというと、若頭ステファノは祖父兼古頭のドン・ミニュを排除しようと動いているためだ。古頭ドン・ミニュはイタリアン・マフィア・ネットワークの支配力を高めようとメキシカン・カルテルから5トンのコカインを購入したのだが、若頭ステファノはそれをサボタージュすることで首領の地位を失墜させようと考えた模様。
祖父と孫の仁義なき戦いなわけだが、そこに至る経緯はまだ説明されていない。
しかしリンウッド家のエマはステファノの脅しに屈せず、予定通りに船をメキシコからイタリアに航行させることに。船にはクリスを乗せる。え?クリス乗せちゃうの?ハンティントン病を抱えたごく普通の青年。こんなひよっこをコンテナ船のコカイン輸送に投入するなんてあり得ない。
確かにクリスの寂し気な表情や人生をあきらめた態度と様相がナルコワールドでの潜在的な成功を予感させないでもないし、同情心から応援したくなるのが人間心理というものだが、実はこのあともISIS系のイスラム原理主義者たちとのハートフルなやり取りだとか非現実的なストーリ展開があるので、冷静に考えてしまうとストーリーの滑稽さに気が付いて白けてしまうリスクがある。
とはいえ、NETFLIXのナルコスのようなドキュメンタリに近いドラマがある一方で、アメリカ製のドラマチックな麻薬ビジネスドラマであることを忘れずにみれば、とても面白いドラマであると言えよう。
イタリアン・マフィアの若頭ステファノのいかにもなミソジニーぶりなど、細かい描写はリアル。極端にポリコレに傾倒した現代社会で(表向きは)言葉狩りによって耳にしなくなった台詞がよく飛び出す。
表で聞かれないからといってミソジニーや差別がないわけではないので、現実を飾ることなく再現してくれたことは評価できるし、安心して背筋を凍らせることができるだろう。
クリスを乗せた船が出港、大西洋を横断し始めると、まもなく武装ヘリが船に近づいてくる。武装ヘリからSWATのような者たちがロープで降下してきて、クリスを殴り倒す。
ここで場面は第1話の最後のレストラン襲撃のあとのメキシコ軍の視点に切り替わる。
前述のように、メキシコ軍の特殊部隊の軍曹マニュエル・コントレラス(ハロルド・トレス)はカルテルのスパイである。
第2話はこのマニュエル・コントレラス軍曹の視点から物語が進んでいく。
「誰がスパイなのか」というサスペンス仕立てをきっぱりと切り捨てて、「こいつがスパイだけど、その生き様を見てくれるか」という姿勢が非倫理的ながらも清々しい。
原作者のロベルト・サヴィアーノは偏執的なまでにコカインワールドを調査探求しているらしいので、第2話にして既にその片鱗が垣間見える。
レストラン襲撃情報が寸前でカルテルに漏れていたことにメキシコ軍のキャプテンが気付くのだが、キャプテンはよりにもよってスパイであるコントレラス軍曹に「仲間内に裏切者がいるなんて考えたくないだろうしリーダーとしてお前も大変だろうけど、お前しかいない。スパイ見つけてくれるか」と命じる。
そこで面従腹背コントレラス軍曹は、カルテルメンバーの協力を得て、チーム内の仲間をスパイに仕立て上げることにする。気の毒な同僚兵士はGFとの間にもうすぐ子どもが生まれるところだった。
すると今度は、コントレラス軍曹の仲間を陥れた作戦に協力したカルテルメンバーがメキシコ軍に捕まり、拷問の末にコカインを積んだ船舶の番号をゲロする。キャプテン、コントレラス軍曹、特殊部隊はヘリで船舶に降りる。
ここで先ほどのリンウッド家の息子クリスを殴り倒すシーンと繋がる。
ドラマでも複数の視点から同じ時間軸を別途追って行くことはよくあるけれど、このドラマは耐えられる。
どのドラマにも大して興味が湧かないキャラはいるもんだし、かのゾンビドラマのように興味が湧かないキャラの視点から延々と描かれるドラマの退屈さといったら殺意が湧くものだが、このドラマはどのキャラも面白い。
さらに登場人物は全員、麻薬ビジネスに関わる犯罪者たちなので、たとえ危険な目に遭おうが死のうが悲しまずに済む。心の防弾チョッキ付き。
キャラとして愛着を抱く一方で、同情はしなくていい(どころか嫌悪する)キャラというのは視聴者フレンドリーかもしれない。大好きなキャラが死んだらショックを受けたり喪失感で心にストレスがかかるけど、好きなキャラだが人間のクズというキャラが死んでも、私たちの心のダメージは少ないわけです。
さてメキシコ軍のキャプテンは船に積まれたコカインを無事に発見するが、隣には麻薬カルテルの真正スパイであるコントレラス軍曹が立っていて(ドキドキMAX)、キャプテンの動向に全身全霊を傾けている。次に何が起きるかは、ご想像通りです。
キャプテンのほか、コカインを発見した兵士をコントレラス軍曹が撃ち殺すも、他の特殊部隊チームメンバーは微動だにせず軍曹の命令通りに動いているので、軍曹はどうやら忠誠心のあるチームメンバーに恵まれたようです。
コントレラス軍曹は「2名負傷!2名負傷!応援モトム!」としれっと本部に連絡する一方で、クリスと船長に「メキシコ軍に追跡されている。GPSを消していくんだ。気を付けな」と助言し、鮮やかにヘリで去っていく。極悪人なのに痺れさすな。
なお、前回、雰囲気がマイケル・マンということに言及したが、アクションシーンの撮り方がうまい。とりわけカーチェイスや走行中の画は臨場感がありながらもスムーズで美しいので、是非その目で確認してほしい。シーズンを通して美しい情景を堪能できる。
頼もしいドラマが誕生した予感。
Amazonドラマ【ゼロゼロゼロ】第3話あらすじと感想:イタリアの古頭と若頭の関係