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Amazonドラマ【ラスト・ナーク 】キキ・カマレナ捜査官殺害の真相を暴いた衝撃作

Amazon「ラスト・ナーク」ドラマの感想

The Last Narc@Amazon

少し前にtwitterで、こんなことを呟きました。

「母がTVに映ったペンギンを『あ、ほらほら、シャチ、シャチ』と呼んで憚らない」

「母に映画『ライオン・キング』を覚えていますかと聞いたら、『覚えてる覚えてる。トラが何かするやつだよね』と言って憚らない!」

ちなみに母がペットボトルのことをケットボトルと言い続けて早20年。憚らない!!

私は「年がとるとそうなるんだよねーやだねー」

なんて悠長なことを言っていましたが、

TVでサメをみた瞬間、「わぁ、観てあの大きなシャケ」と言っていました。この親にしてこの子。蛙の子は蛙。もうヤダ。

 

Amazonドキュメンタリードラマ【ラスト・ナーク ~麻薬捜査官 殺害の真相を暴く~】

Amazonドラマ「ラスト・ナーク~麻薬捜査官殺害の真相を暴く~」を視聴しました。

全4話のドキュメンタリーです。

やらせのリアリティショーではなくドキュメンタリーです。

全員実名(多分)で顔出しで出演しておりますが、実名顔出ししちゃって大丈夫なのかなと思うほど、危険な真相を暴いています。

 

DEA(麻薬捜査官)キキ・カマレナの殺害

物語はDEA捜査官キキ・カマレナの殺害の真相を暴いています。

キキ・カマレナDEA捜査官と妻ジェネーバ

メキシコの麻薬カルテルを調べれば必ず名前が出てくるキキ・カマレナ捜査官(本名:エンリケ・カマレナ・サラザール。キキは愛称。)

1980年、まだメキシコで中小麻薬カルテルしか存在しなかった麻薬戦争の黎明期に、キキ・カマレナ捜査官は麻薬撲滅の野心を抱いてメキシコオフィスに転属してきました。

カマレナ捜査官は天賦の才を活かして情報提供者から巧みに情報を引き出していくことに成功、チワワ州の1000ヘクタールに及ぶマリファナ農園「ランチョ・ブファロ」を発見し、メキシコ軍とともに農園を壊滅させます。

これがきっかけとなり、潜入捜査をしていたキキ・カマレナ捜査官はグアダラハラ・カルテルによって誘拐されます。カマレナ捜査官のパイロットであるサバラ・アヴェラーも同じく誘拐され殺害されました。

重要容疑者はグアダラハラ・カルテルの麻薬王ミゲル・フェリックス・ガヤルド、それからアーネスト・フォンセカ・カリーヨラファエル・カロ・キンテロです。(ほか関与者多数)

これが表向きの話であり、最近ではNetflixドラマ「ナルコス~メキシコ編~」でも、キキ・カマレナ捜査官の誘拐から殺害の余波までが詳しく描かれています。

www.realoclife.com

しかし、本作「ラスト・ナーク」では、キキ・カマレナ捜査官の誘拐・殺害に関わる信じがたい真相を暴いています。

本作にはカマレナ捜査官の妻ジェネーバも出演しており、カマレナ捜査官との思い出を語るとともに、捜査の末に明らかになった真実に心を痛めています。

 

キキ・カマレナ捜査官殺害事件を指揮するヘクター・ベレレス捜査官

キキ・カマレナ捜査官の殺害の捜査を指揮するのは、対テロと麻薬捜査の経験豊富なDEA捜査官ヘクター・ベレレスです。ヘクター・ベレレスはDEA史上、最も優秀な捜査官の一人として多数の勲章を授与されています。

「ナルコス~メキシコ編~」はフィクションなので、シーズン1でキキ・カマレナ捜査官が殺害されたあと、スクート・マクネイリー扮するウォルト・ブレスリン捜査官がグアダラハラ・カルテルに復讐を挑んでいますが、実際の捜査を指揮したという点ではヘクター・ベレレスがモデルなのかもしれません。

キキ・カマレナ捜査官殺害事件を担当したヘクター・ベレレス捜査官

「ナルコス」のドラマの感想でいつも批判していますが、主役級DEA捜査官に白人を起用するのは納得がいきません。①スペイン語が話せない、②紅毛碧眼が現地で目立つ、というデメリットしかないのにそれでも白人を起用しているのは、ネットインフラが普及した世界ならどこでも視聴できる今、白人層の視聴率を理由にあげるには説得力がなく、白人至上と捉えられても仕方ないと思います。おっと、「ナルコス」の話になってしまったので話を戻します。

 

3人の証言者

DEA捜査官ヘクター・ベレレスは、カマレナ捜査官殺害事件に関与した人物に接触することに成功。

キキ・カマレナ捜査官の誘拐に関与した証言者たちは、顔出し・実名でドラマに出演していますが、いずれも元メキシコ警察とか元メキシコ軍というバックグラウンドで、当時は麻薬カルテルのボスたちの護衛に就いていました。

ホルヘ・ゴドイ…元ハリスコ警察、キキ・カマレナ捜査官の誘拐拷問殺害に関与した麻薬カルテルのボス、アーネスト・フォンセカ・カリーヨのボディガード。現在は検察側証人として証人保護プログラム下に。

若きホルヘ・ゴドイはアメリカに入国し、米陸軍に入隊することを夢見ていましたが、入隊は認められませんでした。米国を去り、グアダラハラに戻り、1980年にハリスコ州警察官になりました。

ホルヘ・ゴドイは、ハリスコ警察でレネ・ロペスと親しくなります。二人はハリスコ警察の殺人課の刑事になります。

レネ・ロペス…ホルヘ・ゴドイの友人。元ハリスコ警察の殺人課の刑事で、麻薬カルテルのボス、ラファエロ・カロ・キンテロのボディガードになった。

二人の上司がラモン・リラでした。

ラモン・リラ…元ハリスコ警察の殺人課の上司。

この3名の証言によって、キキ・カマレナ捜査官殺害の詳細と真実が明らかになっていきます。

いずれも改悛の念から、真実を語ろうと決意した模様。もちろんカルテルからは死ぬまで命を狙われることでしょう。

麻薬カルテルについてよく存じない方は、かつての法執行者が麻薬カルテルのボスたちの護衛に転身するということさえアンビリーバブルな展開かと思いますが、汚職が蔓延るメキシコではよくある「転職」事情であります。

所謂、反社会的勢力に関与する「その筋」の人たちというのは、見た目からして一般人とは違うオーラを放っているものですが、この3名からもその鬼気迫る空気が画面越しに伝わってきました。狂気に満たされた闇を第一線で目撃してきた…そんな容貌が伝わってきます。

 

CIAの関与

驚くところはそこではなく、キキ・カマレナ捜査官の殺害にCIAが関与していたという事実です。関与というより、むしろCIAと麻薬カルテルの双方にとって邪魔だったために殺害されたというのが適切です。 

突然CIAを持ち出すと、よくある陰謀説のような胡散臭さを感じるものですが、目撃証言と状況証拠からCIAの関与は否定できないように思います。

キキ・カマレナ捜査官が監禁され拷問された現場では、麻薬カルテルの関係者たちが大勢集まりパーティを開いていました。そこでは人々が麻薬に興じ、カマレナ捜査官の拷問を多くの人間が目撃していたと言います。(拷問の内容は残酷過ぎるので割愛する。)のちの麻薬王エル・チャポ(ホアキン・グズマン)もそこにいたということです。

カマレナ捜査官はボクサーショーツ一枚にされ、目隠しをされていました。

ヘクター・ベレレス捜査官はカマレナ捜査官が目隠しをされていたという事実がおかしいことにすぐに気が付きます。目隠しをするのは麻薬カルテルの手口ではありません。麻薬カルテルたちは自分たちの顔バレを恐れる必要がないからです。彼らはメキシコ当局や政治家に賄賂をたっぷり渡しているので、自分たちはアンタッチャブルであることをよく知っています。場所を突き止められないようにズタ袋を被せたりすることはあっても、拷問の際に目隠しをする必要はないのです。どうせ殺害するのですから。

とすると、カマレナ捜査官に見られてはならないもの、あるいは人物がその場にいたということが考えられます。

ヘクター・ベレレス捜査官が着眼したとおり、証言者たち全員が、カマレナ捜査官が拷問された場に麻薬カルテルのメンバーではないキューバ人がいたことを証言しました

そしてこのキューバ人は、CIAエージェントのフェリックス・ロドリゲスでした。フェリックス・ロドリゲスはキューバ出身で、あのチェ・ゲバラを突き止めた部隊の指揮官でした。

キキ・カマレナ捜査官は、麻薬カルテルがコカインを米国に密輸していることは知っていましたが、コカイン密輸事業の裏でCIAが暗躍していることは知りませんでした。

報復の気運高まる米国からの圧力で、エル・チャポらカルテルメンバーはキキ・カマレナ捜査官の遺体を掘り出し、見つかりやすい道路脇に放置します。カマレナ捜査官の遺体は、米国旗に包まれ、海兵隊の手によってサンディエゴ海軍基地に戻ってきました。

ヘクター・ベレレス捜査官が聴取したインサイダーは100人以上に上ります。その多くが証人保護プログラムの下、米国で保護されていますが、うち23名は捜査中に殺害されました。

CIAは麻薬カルテルから金を貰い、コントラ(ニカラグアの親米反政府民兵組織)に大量の武器を供与していました。中南米の内戦の背後に反共に燃える米国のCIAが暗躍していたことは今でこそ周知の史実ですが、その史実を鑑みると、CIAのフェリックス・ロドリゲスがDEAのキキ・カマレナ捜査官がどこまで知っていたのか探ろうとしていたとしても不自然ではありません。

ドラマは、キキ・カマレナ捜査官の死は、米国上層部の政治家によれば、外部の敵から米国を守るという大義のために生じたコラテラル・ダメージだとみなしていると主張しています。キキ・カマレナ捜査官は踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまったと。

殺害に直接関与した3名以外に起訴に漕ぎつけたケースはなく、ヘクター・ベレレス捜査官はワシントンDCでデスクワークを命じられます。さらに、証人に連絡するこも禁じられました。

また、ドラマはメキシコ政府だけでなく現地のDEAの上司がキキ・カマレナ捜査官の誘拐にも関与していたと主張しています。

 

レッド・リボン・ウィーク

米国では毎年10月に Red Ribbon Week というドラッグフリー週間があります。

娘が通っていた公立学校でもドラッグフリー週間があり、その時期になると赤いリボンの型紙を持ち帰ってきていました。

これはカマレナ捜査官へのトリビュートで、赤はカマレナ捜査官が流した血を意味しています。

祖国のために麻薬を撲滅しようとしたカマレナ捜査官の殺害に祖国が絡んでいたという受け入れがたい新事実、残された奥さんや子どもたちの心情を思うとたまらないものがあります。

最近は日本でも覚せい剤などのハードドラッグの蔓延が懸念されますが、麻薬を売買することは麻薬組織を支援していること、カマレナ捜査官ほか無数の民の残虐無慈悲な死を招いているということを知って欲しいです。(なお、筆者はマリファナについては寛容な姿勢であります。)