NYのクリントン刑務所からの二人の男の脱獄劇を描いたドラマ「エスケープ・アット・ダニモーラ~脱獄~」を視聴しました。
本作は全7話のミニシリーズで、2018年にアメリカで放映されました。
2015年の実際の脱獄事件を基にしたドラマで、ベニチオ・デルトロが脱獄囚を怪演、脱獄を手助けする刑務所の女従業員にパトリシア・アークエットです。
デルトロとパトちゃんが共演ていうだけで観たくなるでしょう?
そのほか、検事役にボニー・ハント、刑務所の看守役にデビッド・モース。映画並みの豪華キャスティング。
製作はコメディ映画でお馴染みのベン・スティラー。評判は上々でプライムタイム・エミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされた。
【エスケープ・アット・ダニモーラ~脱獄~】あらすじ
最高警備を誇るクリントン刑務所に服役しているリチャード・マット(ベニチオ・デルトロ)とデビッド・スウェット(ポール・ダノ)は、縫製作業場の針子の女ティリー(パトリシア・アークエット)と性的な関係を持つようになる。
やがて二人は脱獄を計画し、ティリーをそそのかして脱獄に必要な工具を刑務所内に持ち込ませるようになる。
【エスケープ・アット・ダニモーラ~脱獄~】感想
デルトロとダノは縫製作業場で働いていた。二人は模範囚だったために「名誉ブロック」にいた。名誉ブロックでは、活動域が広く与えられ、自分たちで料理をする(屋外でBBQ等)こともできた。
意外に思われるかもしれないが凶悪犯が刑務所内で模範囚になることは珍しくない。デルトロとダノ演じるリチャード・マットとデビッド・スウェットも殺人による保釈なしの終身刑で服役していたが模範囚だった。デルトロ演じるリチャード・マットも実際に絵が達者だったそうだ。デビッド・スウェットも上手だったらしく、劇中ではリチャード・マットに絵を教わっていた。
デルトロは独特の雰囲気があって好きなんだけど、今回のデルトロはえらく気持ちが悪い。囚人という役を差し置いたとしてもエキセントリック過ぎて気持ち悪い。
髪の毛を真っ黒に染め、眉毛も真っ黒に書き、もみあげを剃っているからだと思う。実際のリチャード・マットの方が人相マシというのはどういうわけか。
シカリオ(「ボーダーライン1&2」)あたりのデルトロならエミリー・ブラントでも相手できるが、このデルトロを相手にできるのはパトちゃんしかいまい。
ミシン工場の針子、ティリーことパトちゃん。
パトちゃんはここのところ「見せかけの日々(感想ここ)」の毒親とか実在のサイコ女を演じることがめっきり多くなりました。「トゥルー・ロマンス」のパトちゃん可愛くて大好きだった。そういえば90年代にニコラス刑事と結婚していた過去をすっかり忘れていたけど、今思うと凄い組み合わせだよなー。あの頃は二人とも売れていた全盛期でしたからね。多分、毎日取っ組み合いの喧嘩してたんだろうなー。「このセミハゲ野郎が!毛伸ばしたからってハゲてないことにはならねえんだよ落ち武者か!」「うるせーこの糞ビッチ!」とか言ってそうだなー。
ドラマはパトちゃんが検事のボニー・ハントに尋問されているシーンから始まる。尋問でパトちゃんは脱獄への関与を全面的に否定しているが、検察はすでにパトちゃんが囚人二名と親しい仲にあり脱獄の手助けをしたことを把握している。
ドラマはすぐに回想シーンに入ってパトちゃんが囚人のダノとインスタントSEXに興じているシーンへと移る。
二人は針子(囚人に縫製技術を教えている)と囚人という立場で同じ作業空間に勤務しているが、ミシン工場には隣に倉庫室があるのでパトちゃんが度々理由を付けてダノを倉庫に呼び出すというわけ。すごい大胆。
倉庫に入るなりパトちゃんはすかさずスカートを捲し上げ、たわわな白いケツを突き出す。ダノはベルトを緩めてパンツを下ろし、すぐにパトちゃんの中へ。揺れるパトちゃんの巨乳!ピストン運動によってパトちゃんの肌の白肌が波打つ!
何このBBW系エロ動画・・・(BBW = Big Bust Women = 巨乳)
この間、ものの1分くらい。
ドアは少し空いているのでいつ誰が入ってくるか分からないスリルも手伝ってああもう見てられない。でも見ちゃう。
そんなインスタントセックスが第1話でも第2話でも第3話でも続くので、小さなお子様がいるところで観ないように注意されたい。
さらに困ったことに第2話あたりからはダノンの代わりにデルトロがインスタントSEXに参戦する。
というのもパトちゃんとの仲を疑われたダノンが異動になってしまったからだ。パトちゃんはダノンには好意も抱いていたので、デルトロにダノン宛の小さな手紙や自分のエロ写真を託したり「ダノンどうしてるノン?」と様子を探っていた。
デルトロは愛欲に飢えるパトちゃんの様子を見逃さなかった。まずはデルトロの子どもの話をパトちゃんの方から聞き出させ、同情を誘う。パトちゃんは、ダノンへの言付けを頼む代わりに、メキシコにいるデルトロの子どもに電話をして「君の父ちゃんはしーんぱーいないからねー」とご子息に伝えるといった具合に、パトちゃんをすぐに取り込むことに成功する。
デルトロは誠実なフリをしてパトちゃんと倉庫で二人きりになり「ありがとう。君は素敵な人だ」とか何とかいいながら髪と顔に優しく手を添えて口説きモードに入り、気が付いたらパトちゃんがデルトロのデルトロをデルトロってる。
ふかづめさんがいつもデルトロはブラピに似ていると言うけど、こうしてみると本当にブラピのゾンビ版みたいで、のちにトイレの窓を壊すときのデルトロはまさにゾンビ。
ブラピは「イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、北アイルランド、ドイツの血を引く」とwikiに書いてあったので、プエルトリコ人のデルトロとは民族的には全然違うけど、確かになんとなく似てる。鼻の形と眉毛が下がっているところかなぁ。
こうしてパトちゃんは今度はデルトロと情事を始めます。ただしパトちゃんは未だに気持ちはダノンにあるみたいで、途中で「ダノンへの罪悪感があるノン」とか面倒くさいことを言い出します。言い忘れてたけどパトちゃん結婚していて夫も同じ刑務所で働いています。パト夫、もはや蚊帳の外。これにはデルトロさえ「罪悪感て、夫にじゃなくてダノンにかよ」みたいに引き気味。
ダノンへの思慕を募らせるパトちゃんに、デルトロは「この糞みたいな場所から逃げ出して3人でメキシコのビーチの近くで幸せに暮らそう!」みたいなこと言って、脱獄に必要な細々としたツール(やすりとかマグネットとか弓のことか)を調達させます。
デルトロとダノンは房の後壁に弓のこで穴を開けてキャットウォークに出て脱獄ルートを模索します。どういうわけか、その後の壁の穴開通やパイプの穴開けといった体力作業はすべてダノンが担当していて、デルトロはパトちゃんとずっとインスタントSEXに明け暮れているのだけれど…(現実でもダノン演じるデビッド・スウェットが脱獄作業をほぼ担当した)
パトちゃんが終始つれない態度をとり続けるライル(エリック・ラング)という間男の夫は、エリック・ラングに変な差し歯をつけているせいか、若干知的障害があるかのような印象を受ける。過去も現在もパトちゃんに言いように扱われながらも裏切られながらも何も気づかないところをみると、少しスローなのかもしれない。本作の制作には協力しないと拒んだ人物だが、確かにこれだけコケにされていたら制作に協力などできるわけがないので彼の心情は理解できる。扮するエリック・ラングは最近ではナルコスでたまに出てくるCIAを演じている。
ライルはパトちゃんを一途に愛していて、愛する嫁がまさか囚人二人と勤務時間中に倉庫でチョメチョメしているなんて思いもせず。たまに疑うのだけれどパトちゃんに「何言ってんのよーあんた!ほっといてよ!」みたいに軽くあしらわれます。
パトちゃんは脱獄後のダノンとのメキシコのビーチでの日々を夢見ていそいそとショッピングする始末。
脱獄当日、デルトロは薬をパトちゃんに渡してライルに薬を盛るように言います。また、逃亡グッズを用意して合流地点で車で待機するように言います。
メキシコでの幸せの日々を想像してショッピングしたりダイエットしたりしていたパトちゃんですが、いざ「僕たち、もう出るトロ」と言われると、パトちゃん、動揺しまくる。
これ分かる気がするよね。旅行ってのは行く前の準備段階が楽しいもんだ。あれこれ想像を膨らましている時は楽しいんだけど、いざ変化が起きる段階になると怖気付いてしまうという心理。我々の平和な旅行とは性質が大分違うけれども。
W不倫してる間は楽しくても、いざ相手が「さぁ、二人で駆け落ちしよう」と言われたら「え?本当にやんの?」と変化についていけなくなるような、そんな気持ちにパトちゃんはなってしまったんだと思います。
すべてを捨てて飛び立つというのは、人間心理的になかなか難しいものがあるんだよね。これができるのは若い頃だけだろうな。事件の証人になってたとえ命を狙われていたとしても、すべてのコネクションを断って慣れ親しんだ町を出ていくというのは、簡単にできることではないんだよなー
パトちゃんはディナーの席でライルに薬を盛ることができず、その場でパニック発作を起こして救急で運ばれ病院で一夜を過ごします。きっと現実逃避することでやり過ごそうとしたのでしょう。
その間、デルトロとダノンは無事にマンホールから抜け出します。パトちゃんが来ていないことにデルトロは怒りますがダノンが宥めます。脱獄にひとまず成功したことでデルトロが猫が轢かれたみたいな笑い声を出すのでビビります。
ひとまず刑務所の外の空気を吸い、二人が束の間の自由を謳歌したあと、第6話では3人の過去が描かれます。デルトロ、ダノン、パトちゃんがクリントン刑務所で運命を交わすまでの経緯が描かれます。
これまではデルトロとダノンとパトちゃんの視点から、ダノンの人畜無害そうな貌やデルトロの強烈な個性、パトちゃんの犯罪性愛に落ちていく様を平和に楽しんでいたのに、ここで一転!
被害者がダノンとデルトロによって無残無慈悲に殺される様を観る羽目になります。
はっきり言って
ヒイッ!!
と声が出てしまうぐらい怖い。
私たちは、ここでデルトロとダノンが終身刑を食らった囚人であることを思い出すのです。
二人が何故服役したのか、ここまで一度も描かれていないので、二人の模範囚ぶりや人畜無害ぶりを見ているうちに、「この二人、そんなに悪い人間じゃないんじゃない?」という勘違いをしてしまうんです。
それが実はあんなことしてこんなことした囚人だということを第6話でやっと知らされ、しかもちょうど刑務所から外に出たときに囚人二人の残虐非道ぶりを確認するという巧さ。この絶妙なタイミングでの過去の挿入には「ベン・スティラーしてやったり」と唸りました。
そしてパトちゃんの過去はというと、パトちゃんはクリントン刑務所で働き始める前に前夫と縫製工場で働いていました。ライルは二番目の夫だったんです。
そこで同僚のライル(現在の夫)との浮気がバレて離婚、息子は自分が引き取り、ライルと再婚したというわけです。犯罪性愛の女かと思ったら以前からも浮気虫の歴史を持っていたわけだ。
パトちゃんがダノンと体の関係にありながらもデルトロに手引きされるままにデルトロとも肉欲の関係に溺れていく様は、心に傷を抱え、刹那的な衝動に弱い人物にありがちな行動をよく捉えている。自尊心が低いがために肉体的に常に求められないと不安になるのだ。
犯罪者には悪知恵が働く者が多い。とりわけ些末なミスが命取りになるアンダーワールドに生きる男たちは、観察力があり、人を操る力に長け、愛に飢えた者の些細な心の機微を見逃さないという人読術を身につけている。心に隙がある者を素早く見つけ、利用しようとする。
(裁判等の諸理由から、ティリーはデヴィッド・スウェットと身体的関係があったことや好意があったことを否定、リチャード・マットには脅されて身体的関係を持ったと主張している。)
脱獄に成功した二人は、山に逃げ、カナダを目指します。
最終回の7話は1時間半くらいのロングバージョンになっていますが、ここでデルトロとダノンのバランスも変化していきます。脱獄時、デルトロは49歳、ダノンは35歳なので、時間が経つにつれてデルトロは体力気力を奪われていきます。
ダノンはそれほど変化がなかったものの、デルトロは脱獄してからは人が変わったように衝動的で無責任で粗暴な面を露わにしていきます。所内では模範囚でやってきたデルトロですが、これが本性なんだろうな。リチャード・マットの過去を読んでみるとそれがよく分かる。
最終的にデルトロはカナダ国境近くで射殺、ダノンもカナダ国境付近で不運から捕まり、腹を二発撃たれて刑務所に戻されます。あれだけ注意深く緻密な脱獄計画を遂行したとは考えられないほど未熟なミスによる最期です。
リチャード・マットもデビッド・スウェットも不健全な幼少時代を過ごしており、若い頃から犯罪を重ねていた人物でした。その一方でリチャード・マットは絵画の才能があり、デビッド・スウェットは空間認識能力(16歳で強盗する予定の建物の平面図を書くことができた)に長けていたりと稀な才能があったので、健全な幼少時代を基礎にすることができていたら、二人は別のベクトルで社会的に成功していたかもしれません。
パトちゃん以外にデルトロ達の脱獄に関与した疑いで有罪となった人物はもう1人いて、それが看守のデビッド・モース。
デビッド・モースはアートに目がなく、デルトロに度々絵を描いてもらう代わりに小さな便宜を図ったりしていました。彼は直接脱獄に関与したわけではないけれど、「名誉ブロック」に甘んじて囚人と親しくなったりして(供与など)ルールを破ったりしたことが間接的に脱獄を助けてしまったことから、3~6か月の有罪判決を受けました。彼はすでに出所し、名前を変えて町から出て行ったということです。
デビッド・モースは嫁の似顔絵をデルトロに書かせていました。 嫁の似顔絵か。ほらほらほら「大切な人に気持ちを伝えよう!似顔絵感謝デイ」じゃん。描いてるじゃん。