左は元気なころのパトちゃん、右は糖尿病が悪化してきたころのパトちゃん。コントラストが美しい一枚。左手に持っているのはインシュリン注射かな?
Huluで2019年春にアメリカで配信された新作ドラマ「The Act(原題)」を観ています。
今、ちょうど5話まで観終わったところですが、
暗ッ。
暗い暗い暗い、暗すぎる。
でも、暗いの大好きー。
【The Act】第3話~第6話あらすじと感想
第1話と第2話では、娘ジプシーを献身的に介護している母ディーディーが実は代理ミュンヒハウゼン症候群を患っていて、ほんとうは娘ジプシーは病気でもなんでもないのに車椅子に座らせられたり(本当は普通に歩ける)胃ろうだの(本当は普通に食べれる)酸素注入(本当は不要)だのされたりしてました。
第3話からはジプシーが自我に目覚め、悲劇に至るまでの様子が描かれます。
ジプシーの性の解放
第3話から第5話は、ほとんどジプシーの独壇場。
ジプシーが思春期を迎えてFacebookなどSNSで男性と知り合おうとする様子が描かれる。
思春期といっても、15歳だと思っていたジプシーの実年齢はなんと19歳なのだから、ジプシーの性的な鬱積・鬱憤はマックスに達している。
隣人レイシーとその彼氏のイチャイチャを羨ましそうに見つめたり、芝刈り青年の逞しい肉体と滴る汗を物欲しげに眺めるジプシーと私。
人は思春期を迎えると性に目覚めるが、この時期に性的対象への健全な欲求が抑圧されると、のちの人格形成や人間関係の形成に重大な影響を及ぼすという。
母が寝ている間に19歳で初めて性的欲求を解放できる環境(=オンライン空間)をゲットしたジプシーは、それまで抑圧されてきた性的欲求を解放しまくる。
第3話~第5話は、パトちゃん(ディーディー)の糖尿病が判明して、パトちゃんがどんどん悪化していく。インシュリンの注射も必須になり、パトちゃんがまともに動くのも辛そう。ディーディーというキャラクターていうより、もうパトちゃんが可哀想で直視できない。
ディーディーは、代理ミュンヒハウゼン症候群で娘を虐待していたことを除けば、娘を愛し守ろうとするごく普通の献身的な母だったに違いない。同じ母としてディーディーの親としての心情も十分理解できてしまうあたりが母娘という親子関係の難しいところを暗示していると思う。
第3話~第5話は、ほとんどディーディーとジプシーとニックしか出てこないので、憂鬱で嫌な雰囲気がずっと続きます。せっかくサブカル女優のクロエ・セヴィニーが演じるあけすけビッチが気に入ったところだったのに、全然出てこな~い。
実話ベースではあるものの、ドラマ化やフィクション要素は含まれているらしいので、ここでクロエ・セヴィニーが違和感を感じるシーンを用意したり、あの医師がもう少し動いたりといったサスペンス要素を挿入してくれたら良かったのになと思いました。
ニックとの運命の出会い
ジプシーは最終的にクリスチャン・デーティング・ドットコムというキリスト教信者用の出会い系サイトでニック(軽度の知的障害あり)という青年と知り合い、夜中にいそいそとパソコンを開いてはオンライン上の逢瀬を重ね、2年の月日をかけて交流を深めていく。(相互自慰による性交など、すべてはオンライン上で繰り広げられる。)
ちなみに海外の出会い系サイトは、プロファイルであらかじめ宗教を選べるようになっている。同じ宗教同士じゃないと結婚できないという人たちも多いのでクリスチャン・デーティング・ドットコムだとかがあったりする。
やがてジプシーは、映画館で偶然を装ってニックに会う計画を立てる。ジプシーとニックは、映画館で母の目を盗み、多目的トイレで初体験を済ませる。
二人は結ばれたものの、母ディーディーとニックを好意的な雰囲気のなかで知り合わせるという目論見は大失敗し、ジプシーに付きまとってくるニックに母ディーディーが怒鳴り散らして逃げるように映画館を去るという結果に。
ディーディーがどんな母親かを知った上にジプシーから「母を殺して」とお願いされたニックは、ついに第5話でディーディー殺しに及ぶ。
殺害シーンの直接的な映像は見せず、鳥瞰図からディーディーとジプシーのピンクの家にズームインしながら、ディーディーの「ノォ~!」という悲鳴だけがこだまする。とりわけ殺害シーンというのは、直接見せずに視聴者の創造力に頼るほうが、より効果的で、より恐怖が煽られる。
ディーディーを殺害後、二人はタクシーでモーテルに移動し、その後もモーテル生活を続ける。
ディーディーの母
ディーディーの絶命が絶えた瞬間に1991年の分娩時に戻るというタイミングが素晴らしい。
分娩時に赤子の首にへその緒が絡んでしまうというトラブルと、生まれてすぐに赤子が泣かないというトラブルがこれからの凶兆を予感させる。
さらにそのすぐあとに分娩室に喜び勇んで入室してきたディーディーの母(つまりジプシーの祖母)の様相がこれまたディーディーそっくり。
ディーディーが代理ミュンヒハウゼン症候群を抱えるに至った原因はディーディーの育った環境にあると見るのが自然だが、多分に漏れず、ディーディーの母も支配的な母像だった。
ディーディーは小切手の不正使用(祖父の小切手を盗んで使用していた)を繰り返して逮捕される。初犯どころか何度も軽犯罪を繰り返していたため、6か月の実刑を食らうことに。
しかしディーディーの母はディーディーを気遣うそぶりさえ見せない。「孫ジプシーは私が見るから」と、自分の娘が刑務所に入るのに他人事のようだった。
6か月の刑期を終えてディーディーが戻ってきても「ジプシーの面倒をずっと見てきてやったんだから、ありがとうくらい言ったらどう?」と冷たく言い放つだけ。娘への愛情や関心、共感が欠如しているように見える。
ディーディーは支配的で自分を認めない母への苛立ちを募らせていく。ジプシーが咳き込んでいる様子にディーディーとディーディーの母が駆け寄り、母が「さっき咳止めあげたから大丈夫よ」と言って去っていくと、「私が面倒みるからね」とジプシーにさらに咳止めシロップを与える。
この辺りから代理ミュンヒハウゼン症候群の兆候が表れ始めたようだ。
その後、ディーディーの母が病床につくが、ディーディーの母は最後までディーディーへの愛情を示すことがないまま死んでいく。母との関係に苛まれて、ディーディーは娘ジプシーに精神的に依存するようになる。
あぁ…これ母親として気を付けなきゃいけないなぁ…と思った。自分が親になると、子どもの頃のときをすっかり忘れてしまうのか何なのか…子どもを愛するあまり、過保護になったり、過干渉になったり、手を繋ぎたがったり。親ならドキッとすることがあるのではないだろうか。
ディーディーの母の死がトリガーであるかのように、ディーディーはだんだんと娘ジプシーを病気に仕立て上げるようになる。
ディーディーは手を強く握ったりすることでジプシーを支配していた。細かい演出がしっかり映像化されていて分かりやすい。
あっ!あと「ベタコーソー」のマドンナ、キムがディーディーのいとこ役で出演しています。
さらに「ブレイキングバッド」「ベタコー」のハンクも出演しているときたら、ベタコーファンとしては観ないわけにはいくまい。ハンクはディーディーに好意を抱いてデートに誘う男性役です。
さて残るは2話です。