ミセスGのブログ

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ハリケーン・カトリーナ禍の病院の惨状を描いた新作海外ドラマ「Five Days at Memorial」

Five Days at Memorial

おもしろい新作ドラマが続々とリリースされていて嬉しい今日この頃です。

最近の傾向としてはミニシリーズが目立ちますね。

日々忙しく、膨大な情報に触れている現代人は、集中力が低下してきているとの指摘もあり、短いコンテンツじゃないと途中離脱してしまうと言われているので、その影響もあるのかもしれません。

今日ご紹介するのは、2005年のハリケーン・カトリーナに襲われたとある病院の話

実話に基づいたドラマです。

主演はヴェラ・フェルミガで、ハリケーン・カトリーナ一過からの5日間、電気や水、医療資源を断たれたメモリアル病院で、献身的に尽くす医師を演じています。

ヴェラ・フェルミガがメモリアル病院の医師を好演

ハリケーン・カトリーナが発生した時のことはよく覚えています。なぜなら私は、この時、南米を訪問していて、ちょうど帰国日にハリケーン・カトリーナがルイジアナ州を筆頭に米国南東部を襲ったために飛行機がキャンセルとなったからです。

私はペルーからテキサス州ヒューストンで乗り継ぐ予定だったので、むこう一週間は飛行機が飛ばないと知り、愕然としました。日本で仕事もしていた頃なので、慣れないスペイン語圏の国から会社に連絡したり飛行機の変更をしたりと散々でした。仕事に戻れたのは10日後でした。

 

「Five Days at Memorial」粗筋と感想

電気も断たれ、医療物資も食糧も水も足りない中で、ヴェラ・フェルミガら医師たちが献身的に患者を助けた感動的な話かと思いきゃ、ダークで悲惨なお話でした。

第1話で、取り残された45名の患者がメモリアル病院で命を落としたことが明らかになります。

ハリケーン・カトリーナ発生からの5日間、医療物資を失い、電気もエアコンもない灼熱の環境で、終末期ケアの患者が生存できなかったためだろうかと思っているとそれも違う。

実は、ヴェラ・フェルミガ扮するポー医師が、救出が望めない患者たちを苦しみから救うために安楽死させたという穏やかでない話なのです。

ハリケーン・カトリーナは超巨大ハリケーンでしたが、本当の地獄はその1~2日後でした。堤防が決壊し、水かさがどんどん増していき、ついに病院の電気系統が浸水してしまい、病院は自家発電機も失います。

電気、エアコン(湿気が多く36度以上の暑さ)を失い、医療物資、水、食料も不足します。

それにしても恐ろしいのは、救援隊がいつになっても来ないことです。

救援を要請しても断られたり、無視されたり。ヘリを送ろうとしたジャーナリストも、上司からダメだと言われたり。

ちょっと日本では考えられないようなことが起きます。

いやー、このもどかしさたるや。

さらにアメリカ有事の名物ともいえる略奪も始まり、人々の精神を蝕んでいきます。

中には、邪な警備員が我先にと逃げ出したり、避難しようと病院にやってきた人を銃で脅して引き返させたり、と醜いシーンが続きます。

メモリアル病院の上層部も「緊急避難」のプロトコルを把握しておらず、ぶっといマニュアルを取り出すも「洪水」の欄がないという始末。

ルイジアナはハリケーンが毎年襲ってくる州だというのに、いかんせん頼りない、頼りなさ過ぎて絶望してしまいます。

互いに「救助活動の責任者は誰?」と尋ね合い、救助活動の音頭をとるリーダーが誰だか分からない状況なんですね。指揮統制がナッシング。ときのブッシュ大統領は口だけで何もしてくれないし。

日本は危機意識が低いとよく指摘されることが多いものの、災害が多いせいか自然災害への対応は世界一ではないかと思います。初動は消防隊、レスキュー隊、医療関係者といったファースト・リスポンダー、そして被害が甚大なら自衛隊の救助を仰ぐ。日本人の個々のサバイバル力は諸外国変わらないかもしれませんが、集団になるとものすごい力を発揮する民族でもあるのです。

アメリカは移民国家ということもあり、生活習慣、文化、価値観、考え方、宗教と何から何まで多様です。そうした異なる背景から構成される人々をまとめるのは、なかなか難儀であります。ですから、集団で何かをするという力はそんなに高くないのかもしれませんね。

さて、メモリアル病院の責任者たちは、ボロボロのヘリパッドがあることを知り、やっとヘリが少し救援に来るようになったものの、ヘリでは少人数ずつしか救出できません。

それにしても医師や、特に看護師たちの尽力たるや凄まじい。リスペクトしかないよね。

極限の情況で日ごと弱ってくる患者たち。

医師たちはトリアージュ、つまり命の選別を強いられます。

DNR(Do Not Resuscitate:蘇生措置拒否)患者は最後に救出することに。

またメモリアル病院の上階には、ライフケアという終末期ケアの患者がいました。

メモリアル病院は間欠的でもヘリやボートで救援ができていたのですが、ライフケアはどことも連絡が付かず、孤立状態にありました。

ライフケアの責任者はメモリアル病院の責任者に協力を要請しますが、自分の病院の患者もろくに救援できていない状況です。メモリアル病院の責任者としては、ポー医師らをヘルプで貸し出すぐらいしか協力できることはありませんでした。

そして5日目に強制避難が始まります。

これは患者もその介護者も、自力で動けるものは問答無用で病院から避難させられるというものでした。

終末期ケアにいる母親から無理矢理引き離される女性、終末期ケアの患者を置き去りにするように命じられる看護師たち。

そして、ある医師はまずペットたちの安楽死に着手します。(ペットは置いてけ、という命令のため。避難所はペットは入れないらしいので)

犬好きとしては、これキツイわー。

しかも大型犬を泣く泣く安楽死させられた女性がボートに乗るや、救援ボートの女性から「わんこも乗せられたわよ」と言われたり。なんなんじゃ!

この動物に対する心理というのが、日本と欧米では正反対なんですよね。欧米人は、致し方ないときにはペットを置き去りにせず殺すことが慈悲深いと考えているらしい。それに対して日本は殺生しないことが慈悲深いと考える。

動物は動物だからさ、殺さんでも自然に生存能力ギリギリまで自分で頑張ると思うんだよね。だから無理矢理殺さなくても…と私は思う。

そしてペットたちが安楽死させられたあと、この医師はヴェラ・フェルミガ扮するポー医師となにやらコソコソ話をしたあと、注射器を持ってライフケアの階に向かうのです。

6話以降はポー医師のこの行動が捜査されることになります。

2022年まだ6話までしかリリースされてませんが、残りの2話が楽しみ。

系統でいうと「チェルノブイリ」辺りが好きな人におススメの一作です。