次々と見応えのあるドラマを連発するNetflix!
本作「運命の7秒(原題:Seven Seconds)」も申し分のない出来栄えです。
全10話です。
白人警官が15歳の黒人少年を轢き殺してしまいます。犯人の仲間の刑事3人は、事件を隠ぺい工作。少年の家族と事件を担当する刑事は、事件の真実を明らかにしようとします。
人種問題、警官による隠ぺい、家族の悲劇、警察vs黒人、裁判と、米国が抱えるリアルタイムな問題にまっこうから切り込んだ骨太ドラマに大満足!
見なくきゃソン!
【運命の7秒】あらすじ
白人警官のジャブロンスキーは、雪が降る早朝、公園で15歳の黒人少年を轢いてしまいます。
ジャブロンスキーの上司ディアンジェロは、麻薬捜査官の部下2人とともに、事件を隠蔽します。
少年は数日後、病院で死亡。
少年の両親と事件を担当する刑事フィッシュ、検察官KJ・ハーパーは、事件の真相を追います。
登場人物
地方検事KJ・ハーパー
わたしは疲れた主婦ではない。主婦ヘアーは変えない。美人でもないが、こうみえても地方検事である。チャームポイントはこのオールナチュラルなポッテリップ。
見た目も性格も地味すぎるKJハーパー。過去の悲劇から自暴自棄になってアル中になり、カラオケバーで鬱憤を晴らし、軽いとの噂。
空気もあまり読めず、被害者の家族の丸い目をさらに丸くさせること数回。やる気が出るときと出ないときの差が大きい。黒人女性にありがちな顔芸をまったく見せない、つかみどころのない女性。
ひき逃げ事件の担当刑事フィッシュ
最初から最後までずっとガムを噛んでいるクチャラーフィッシュ。 歯を見せて笑うとなぜか醸さなくていいペドらしさを醸すので、目撃者の少女にもペドと勘違いされるが、実は良心のある善良な刑事。
検事のハーパーが定期的に鬱になるので、ハーパーを起こしにいったり、ケツを叩いたりと、フィッシュの気苦労は多い。
元妻もヤリマンと、なにかと軽い女に縁のある刑事だが、元妻は猛々しく頼りになる女でもある。じゃなきゃサムクローの嫁なんかやっていられない。娘がいる。
「オザークへようこそ」で神父を演じているマイケル・モスレーが演じます。
ひき逃げ事件の犯人の刑事ピート・ジャブロンスキー
馬面が苦手。犯人である刑事のピーティー・ジャブロンスキー。イケイケな格好を保とうとするが、実は弱い人間であることがドラマ内で明らかにされていく。
麻薬捜査課のボスディアンジェロ
悪玉セバスチャン・モンロー。本名はデビッド・ライオンズだが私の中では永遠にセバスチャン・モンローである。レボリューションの剣さばきとマイルズとのブロマンスを回顧してはあの頃は良かったとため息をつく。
ジェレミー・レナーとコール・ハウザーを足して2で割ったようなチョイワル親父がスペシャリティー。
本作ではディアンジェロを演じている。もう一度言おう、ディアンジェロである。ディアンジェロは奥さん持ち、ディアンジェロ子供なし、ディアンジェロどうやら種ないジャロ。ディアンジェロという名前の響きが格好よいので何度でも言ってみるジェロ。
麻薬捜査課の刑事ウィルコックス
麻薬捜査課の刑事だが、おとり捜査ではないのにギャングスタイルに身を包む。
麻薬捜査課の刑事オソリオ
麻薬捜査課の刑事で、プエルトリコ人。事件現場で唯一良心を見せた人物だが・・・
被害者少年の母ラトリース
被害者少年の母ラトリースを演じるのは、2度のエミー賞に輝くベテラン、レジーナ・キング。
寛容さと包容力があふれ出る女優。この人を見るたびに「おっかさん」と言って抱擁してもらいたくなるのは内緒。
被害者少年の父イザイア
被害者少年の父ちゃんイザイアまたはアイザイア。日本語字幕で見ていないので正確にな表記が分からない。
【運命の7秒】感想
主人公という主人公を設定せずに、重要キャラ全員にフォーカスした濃密で骨太なドラマです。
登場キャラがいずれも自分の役どころを理解してきちんと仕事をやりこなしているだけでなく、事故から警察の隠ぺい工作と人種問題を絡ませて現代のアメリカのリアルタイムの問題に深く切り込んだ濃厚なドラマです。
いちおう主人公は検事のKJハーパーになりますか。
KJのキャラとしてはおもしろいけど、主人公としては起用女優のインパクトが弱い。しかし、そのインパクトの弱さが実はドラマが意図しているものだとしたら大したものです。
なぜなら最初に述べたように、このドラマは主人公を中心に描いていくものではなく、犯人、被害者、目撃者、警察、ドラッグディーラー、黒人、白人、ラティーノなど、それぞれにスポットライトを当てて描いているからです。
被害者の家族の悲しみだけでなく、ひき逃げした犯人の葛藤や奥さんの不安、隠ぺい工作に加担した刑事たちの不安など、いずれのキャラもしっかりと描かれているので、「この汚職警官めが!」なんて思いながらも、彼らの選択や行動が理解できてしまいます。
汚職警官たちの手の汚し具合も悪化していきます。最初は隠蔽工作だけだったのに、ウソの上にウソを重ねていくから、最後はとんでもないことになってしまいます。その転落具合の描き方が自然で巧みです。
ホワイトトラッシーなディアンジェロの仲間たちとワイフたち。その中でも唯一トラッシーじゃないのがジャブロンスキーの妻マリーです。しかしマリーは、保身のために(自分の家族を守るために)証言台に立つイトコのテレサにプレッシャーを与えます。生まれたばかりの子どもを抱えて、果たして自分なら一体どうしただろうか、と考えずにはいられない。マリー自身もそれがベスとな選択なのか分かっていない。
隠ぺい工作に加担した刑事のなかで唯一良心があったと思われるオソリオの意外な行動や、目的遂行のためなら手段を選ばないはずのディアンジェロがたまにふと見せる躊躇いのリアルさ。
人間はやはり単純ではなく、いろいろな一面を持っていることをまざまざと見せつけてくれます。しかも、それがわざとらしくない。状況が作られて、そこで初めて見せるキャラたちの本性。人間はその状況になってみないとどうなるか分からない、何をするか分からない。その辺が実に説得力あるんだな。
最後の3話くらいは裁判に当てられます。
最終話、これまでほとんど反撃しなかったハーパーが、弁護人にむかって「お座り!」と声を荒げ、ハーパーの闘争心と怒りに火がついたことを悟るディアンジェロのシーンは「う~ん、これはディアンジェロォオオオオ」と唸りました。
最終話は、まるで「評決のとき」を彷彿とさせるKJの最終弁論に心を打たれました。そして、そのあとの展開の演出がニクイ。
ただ一つ説明不足だったのは、ディアンジェロがなぜそれほどまでにピートに目をかけていたのか。自分の身や仲間の身を危うくさせるまでしてピートを守ろうとする動機がイマイチ掴めませんでした。
ドラマでちょっとでてきた説明から判断するに、父親に虐げられていたピートに自分を重ねていたからだと思うのですが、この辺りをもう少し掘り下げてくれるともっと良かったと思います。
あといくつか穴がありますね。オソリオが腕をあれだけド派手に引っ掻かれているのなら、爪からDNAも採取できたのでは?それにトラックのバンパーのグリル部分の有無にあの時点まで気づかないとかある?
シーズン2の製作はまだ公表されていませんが、クリエイターのヴィーナ・サッドさんによれば、シーズン1がかなり好評なのでシーズン2を作る気満々だそうです。
シーズン2はシーズン1の続きではなく、アメリカン・クライムのようにシーズンごとに違う話にして、一部キャラを再登場させるということになりそうです。
Netflixオリジナルドラマはクオリティが高い。