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新作海外ドラマ「ブラックバード」粗筋と感想:連続暴行殺人犯の自供を引き出すために潜入捜査する実話ベースの話

ブラックバード

新作海外ドラマ「ブラックバード」の紹介です。

アメリカで評判がまずまずだったのと、先日急逝したレイ・リオッタが主人公の父親役で出演していたので観ようと思ってました。

なお、実話に基づいた(インスパイアだったかも)お話です。

ネトフリの犯罪心理捜査ドラマ「マインドハンター」が好きならオススメできる。マインドハンターより面白かった。

 

「ブラックバード」粗筋

ドラッグディーラーとして財を成し優雅な独身生活を送っていたジミーだが、ついに御用となってしまう。

裁判で検察官の罠にかかって有罪を認めてしまい、10年の実刑判決が下る。

それでも、持ち前の人好きするチャーミングさと控えめだが達者なしゃべくり能力から、刑務所内の黒人ギャング、メキシカンギャングともうまくやっていたジミー。

FBIはそんなジミーに目を付け、ある事をすればすぐに釈放するという話をジミーに持ちかける。

それは、重警備刑務所にいる連続暴行殺人犯から遺体を埋めた場所を聞き出すというものだった。

 

「ブラックバード」感想

ドラッグディーラー且つアサルトウェポンまで所有していた人が司法取引で連続暴行殺人犯の自供をとれば釈放される...というシンデレラストーリーが、いかにもアメリカらしい。

毒を以て毒を制す。日本司法ではとても考えられない制度だけど、犯罪が多い国では極めて現実的ではある。

しかもこれが実話ベースとはねぇ。

なお、このジミーさんは、ミッションを終えた後、 無事に出所を果たし、FBIのプロファイリングに協力しているというのだから天晴れとしか言いようがない。

連続暴行殺人犯から自供を誘い出すミッションを与えられたジミー

アメリカでは凄腕ハッカーがCIAやらNSAにリクルートされる話は有名だが、こういったリクルートはおそらく世界のどの国でも行われている。日本は潔癖性でリスクを恐れる国民性な上に、国家公務員じゃないとダメみたいな上級国民意識を為政者が持っているからまず無理だね。代わりに犯罪歴はないがパソコン操作さえままならないオッサンがデジタル庁だの何だの長に収まるという未熟さ。日本が衰退していってる理由が分かるよなぁ。。。

はい、でジミーは悩んだ結果、ミッション遂行を決意します。失敗すれば、ジミーは重警備刑務所のまま残り9年を過ごさねばならないのだから、そら悩むわな。まして連続暴行殺人犯ラリーを演じるのは、世紀の冤罪騒動「リチャード・ジュエル*」に扮したポール・ウォーター・ハウザーですから。*リチャード・ジュエル…1996年に爆発物を発見して通報した英雄的人物だが、FBIのリークによりメディアによって犯人と仕立て上げられてしまった人物。

FBIのお姉さんだって途中で「ラリーって本当に真犯人なのかしら?」と冤罪を疑っちゃうからね。(ラリーが真犯人だと確信が持てないのに自供を引出せというのもむちゃくちゃだけど)

でも安心して下さい。今回は冤罪ではありませんよ。ラリーが真犯人で間違いありません。

ラリーは、十代の若い少女を21人暴行殺人していました。(実際にFBIが推測している人数は40人に及ぶそう。)

但し、発見された遺体は数名で、決定的証拠に乏しく、期限までに残りの遺体を発見できなければラリーの控訴が認められ、ラリーが放免されしまうという瀬戸際でした。

ジミーはラリーのすぐ側の房を与えられ、少しずつ接近を試みます。ラリーには双子の兄がいて、お腹の中にいた時にラリーは酸素不足に陥りました。そのためラリーは知能が低く、学校では反社会的な言動を示し、言語障害が残りました。

ラリーの双子の兄ゲリー(ジェイク・マクローリン)はラリーの守護神だったので、FBIは「ゲリーになりきるんだ」とジミーに助言します。ちなみに双子の兄ゲリー演じるジェイク・マクローリンは「クワンティコ(S1で脱落した)」の主人公のお相手の男性。マクローリンは元陸軍の分隊支援火器の射撃手で、2003年にバグダッド入り、重症を負ったがメダルを幾つも受賞している。

軍人としての背景を持つ彼の強面ぶりはゲリー役として板にハマったもの。

連続暴行殺人犯ラリーの双子の兄ゲリー(ジェイク・マクローリン)

うちの夫もそうなんだけど、軍人や元軍人は普通の人と雰囲気が違う。長年軍隊にいる人は、顔立ちが厳しく、目力が強く、それから物言いがストレートです。交際し始めて間もない頃、夫の軍人らしい物の言い方に慣れなくて怖いと思い、2回ぐらい「わーかーれましょう、私から~、別れましょう~(スペシャルサンクス大黒摩季)」て切り出しましたからね。二回とも説得されて元鞘に納められたけど。

もう慣れたから怖くないけど、それでも偶に言い方とか目つきに怖くなる時があります。あと、軍人が命令しているような口調が多いので、言い方を直すようにお願いしたり。

さて、好局を逃がさずラリーと仲良くなるきっかけをモノにしたジミー。最初は上出来なんだけど、その後のジミーの活躍がいまいちだったように思うのね。実際はどうだったか自伝を読んでないので分からないのだけど、FBIからお墨付きをもらったジミーのコミュ能力というものが描ききれてなかったかな、と。

ラリーからも

「なんで質問ばかりするん?」

「質問多くね...?」

と指摘されてるし。・・・ダメじゃん。

FBIから「潜入捜査官だとラリーに見破られるから、実際の囚人である貴方じゃないとダメなの!」とは言われたけど、ジミーの風貌や質問の嵐ぶりじゃあ、潜入捜査官を投入しても変わらないと思います。つまりジミーでなければならない根拠の描き方が弱かったです。

私としては、このラリーから自供を引き出すプロセスを一番楽しみにしてたのだけど、ラリーがスラスラとやぶからぼうに犯行を自供し始めるので拍子抜けしたというか。これならジミーじゃなくても仲良くなれば喋ったんじゃない...?ていう。

ラリーとジミー、ラリーの兄はゲリーと名前が韻を踏みまくってややこしい。

さらに言うと、ラリーの生々しい犯行の回想を聞かされてジミーは内心激しく動揺するんだけど、その動揺が隠しきれてない。まぁ、あんなことこんなこと聞いて平常心保てっていう方が無理かもしれんが、実話ベースとはいえドラマの中ではもう少し善処させてもよかったのでは。

最後の地図のシーンでは、ジミーがキレ始めるからね。そもそも快楽殺人犯ラリーに良心の呵責とかはないわけで、「被害者のご遺体が見つかれば両親の心も救われる」「贖罪になる」とか説教されても、ラリーにしてみれば「なんで僕がそんなことしなくちゃならんの?」てなるわな。

それでもジミーを演じたイギリス人のタロン・エジャートンはスマートな身のこなしと見栄えのする麗姿で魅了してくれました。彼、次期007に向いてるんじゃない?身長が175cmと007の資格要件に少し満たないんだけど、許容範囲だよ。年も32歳だし、007を三作やるには十分な若さですよ。写真より動画の方が何倍も格好良いし、次期007に是非推したいな。

そして連続暴行殺人犯のラリーを不気味に演じたポール・ウォーター・ハウザーには拍手喝采を捧げます。

連続暴行殺人犯のラリー

知的障害を抱えている連続暴行殺人犯の薄気味悪さがよく出ていました。証拠がありながらも多くの刑事たちが「ラリーは犯人じゃない」と思い込んだように、半分純真無垢な子供のようなラリーも上手かった。

それからジミーの父を演じたレイ・リオッタは、現実のレイ・リオッタに即して病に倒れる役だったので、色々と辛かった。レイ・リオッタの脳ミソ食べてたオッサンより先に逝くなんて。見納め。良い俳優でした。

2022年に天国に召されたレイ・リオッタ、劇中でも脳卒中を起こして具合が悪い役どころでした。

アン・ヘッシュも先日52歳の若さで亡くなられたし、青春時代に観てきた映画の俳優たちがどんどんいなくなって物寂しい。