子どもへの性犯罪が連日報道されているので、子どもを性犯罪から守るために自分たちが知っておくべきことと、日常で気をつけるべきことをもう一度確認したい。
「性犯罪者をなくすこと」は不可能だが、性犯罪を減らすことは可能だ。どうやって減らすのか?それは私たちが被害者にならないように気をつけること、つまり予防措置を採ることである。一人一人が性犯罪への意識を高め、気をつけることで性犯罪は確実に減るのである。
なお、ロリコン・ペドファイルが必ずしも児童性犯罪者になるとは限らないことに留意してもらいたい。ペドファイルであっても、児童ポルノを見たり児童に手を出さない限り、現行法では犯罪者になり得ない。
また、大人より子どもと接するほうが好きだからといってペドファイルとは限らないことも念をおしておく。
子どもを性犯罪から守るための心構えと10の具対策
まずは子どもを性犯罪から守るために大人が知っておくべき心構えを紹介する。これらは今すぐ家庭でできることなので、すぐに実践してもらいたい。
子どもとコミュニケーションをとる
不幸にも子どもが何かしらの性犯罪に遭ったとき、ふだんから親とコミュニケーションが取れていないと、子どもは羞恥心と罪悪感からまずそのことを告白しない。
親と適切なコミュニケーションが取れていて「告白しても怒られない」という親への信用がないと、子どもの方から切り出すことはなかなか難しいのである。
子どもが性犯罪に遭っても親に言えず、一人で苦悩する悲劇を考えてほしい。いちど性犯罪に遭うと、生涯にわたって苦しむことになる。それは私も実体験済みである。
したがって、子どもが親に辛い出来事を話せるような親子関係を築くのが望ましく、そのためにはコミュニケーションが欠かせない。
プライベートな部位の呼称に正式名称を使う
アメリカの専門家シャロン・ドティによれば、プライベートな部位を違う呼称で呼ぶと、子どもたちはそれを恥ずかしいこと、あるいはおかしいことだと感じ、性的被害に遭ったことを言わなくなってしまうという。
実はこれは私も覚えがある。母は恥ずかしさからセックスについて言及する時に「カップルが変なことしてんだって」とか「おかしいこと」とか言っていたので、私はセックスは恥ずかしく、してはいけないことだと思うようになった。結局、親が知らない性被害については、恥ずかしくてとても言えずじまいだった。
したがって「ペニス」「膣」「睾丸」「外陰」「胸」といったように、正式名称で呼ぶのが望ましい。
体の一部がプライベートな部位であることを教える
お子さんがいらっしゃる方は、水着で覆われている体の部位は「プライベートな体の部位」であることを子どもに教えてください。このプライベート部位は、父か母が身体を綺麗にするとき以外と、保護者が同席した上で医者が触れる以外は誰も触れるべきではないことを伝える。
この世に悪いことをする悪人がいて、どうのこうのというレベルまで展開する必要はなく、プライベートな部位に触れることは不適切であることを教える。
体にプライベートな部位があることと、そこに触れるのは不適切であるという知識を持った子、そしてプライベートな部位に触られたらNOといえる子どもよりも、プライベートな部位の知識を一切教わっていない子どもの方が黙らせやすく、性犯罪者にとってコントロールしやすい。したがって、性犯罪者は前者の子より後者の子どもをターゲットにする。
大人同様に子どもも、体の部位についての知識や、自らのプライベートな部位に触れることを拒む権利があることを知っている者ほど、性犯罪者の毒牙にかかりにくい。
また児童性犯罪者は、人見知りしやすい子、大人しい子、自信のない子、一人で行動する子を狙いやすい。こうした性格のお子さんをお持ちであれば、なおさら自分の体の知識とプライベートな部位を守る権利があることを教えるべきだ。
万一誰かにプライベートな部位を触られたら「やめて」と言って立ち去るように言っておくこと。そして親にすぐに報告するように言い聞かせておこう。過剰に手を触れてくることが何度も続くようであれば「両親に言った」と言うだけでも効果がある。
子どもの話に耳を傾ける
「叔父さんの家に行きたくない。叔父さん、変なんだもん」
「パパの友達の○○さん家でBBQ?私、あのおじさん苦手なんだけど…」
「〇〇コーチと合宿に行きたくない」
「〇〇先生はいつも僕だけくすぐってくるから嫌い」
子どもの口からこういう言葉が出たら、「いいから行きなさい」「家族なんだから失礼なこと言わないの」とはねつけてはならない。
「どこがどう変なの?」
「どうして苦手なの?何か言われた?」
「合宿?何か心配なことがあるの?」
「あなただけ?どこをくすぐられたの?」
というように、子どもの言い分に耳を傾けてほしい。
叔父さんは単に変わった人なだけなのかもしれないし、パパの友達の〇〇さんは単に口調が厳しいだけなのかもしれない。〇〇コーチに叱られたから合宿に行きたくないのかもしれないし、〇〇先生は僕を純粋に気に入って贔屓しているだけかもしれない。
一方で、叔父さんは子どもにポルノやいかがわしい画像を見せてきたのかもしれないし、パパの友達の〇〇さんや〇〇コーチは皆の見ていないところで抱きついてきたのかもしれない。〇〇先生はくすぐる時にさりげなく下半身に触れてきたかもしれない。
子どものSOS発信を見逃さないために、子どもの言ったことに耳を傾ける必要がある。
子どもの日常に注意を払う、積極的に関わる
子どもの日常に注意を払う親になる。学校の教師、校長、PTAと積極的にコミュニケーションをとる。クラブ活動の教師、コーチとコミュニケーションをとる。お迎えには早めにいって親としての存在を周囲の大人に認知させる。遠足、試合、リハーサル、試合などに姿を現す。
つまり、「自分は子どもに注意を払っている親」であることをアピールするのだ。
児童性犯罪者は狙いやすいターゲットを狙う。狙いやすいターゲットとは、親が見ていない子どもである。親が子どもを注視していない、関心をもっていない、親の存在が身近に感じられない子ほど、リスクは高くなる。
性犯罪者は注意深く用意周到なので、学校でもボランティアとして積極的に活動したり、ボーイスカウトのキャンプなどでスタッフ全員に挨拶して回ったり、どこにでも顔を出そうとする大人の子どもをわざわざ狙おうとしない。
子どもの日常に注意を払っていれば、子どもの友人関係も把握しやすい。反社会的な態度を示す子どもと仲良くしていないか、同学年よりも年上の友人と過ごすようになっていないか、子どもの生活に積極的に関わって、友人関係をも把握できるようにしておこう。
児童性犯罪者について知る
ここでもう一度、先日の記事「子どもへの性犯罪・わいせつ行為について知っておくべき事実」に掲載した統計をおさらいしよう。
- 未成年者への性犯罪: 女児4人に1人、男児6人に1人
- 犯人が家族か親戚:34%
- 犯人が知人:90%(友人家族、教師、保育士、コーチ、監督、指導者、近所の人、ベビーシッターなど)
- 犯人が男性:96%
- 犯人が成人:76.8%
- 性的被害に遭った平均年齢:9歳
(source: invisiblechildren.org)
アメリカで報告されている子どもへの性犯罪は、10%にしか満たないという。
これは上のリンク先で紹介した児童性犯罪者更生プログラムの調査で、ポリグラフにかけられた児童性犯罪者たちが10~100件以上の余罪を示したことと辻褄が合う。
いかに性犯罪が身近なものであるかが分かる。
アメリカで性犯罪を専門にする司法心理学者のアンナ・ソルターによると、逮捕された児童性犯罪者の平均余罪は、50~152件である。
女性の児童性犯罪者は3%と少ないが、その場合、女児ではなくほぼ男児を狙う。男性の児童性犯罪者は女児も男児も標的にする。また、同性愛者、異性愛者ともに児童性犯罪者になり得る。
なお、子どもへの性的虐待の通報は、60~70%が女性からの通報で、男性からの通報は20~30%と低い。
家族による児童性的虐待のうち90%が親からの性的虐待で、義父による性的虐待は、実父によるものより断然多い。
児童性犯罪者に見られる傾向
- 大人より子どもと過ごすことを好む
- 子どもの親が禁止することを許す
- 児童ポルノをみる(※違法)
- 大人との性行為で、子どもや十代の格好をさせる
- 日常に支障が出るほどマスターベーションをする
- 虐待(心理的・物理的・性的)を受けたことがある
- 精神病を抱えている
- 子どもと触れあう立場につく
新潟の7歳女児が亡くなった事件では、容疑者の小林遼(はるか)がかねてから大人より子どもに興味を示していたことが分かっている。小林遼は社員旅行で同僚らと過ごすより、同僚の娘である女児と遊ぶことを好み、女児を抱っこしたりもしていた。
単純に子ども好きという男性のケースが多いのだろうが、児童性犯罪者は子どもが目当てなので、ふだん大人より子どもに多大な関心を見せたり、大人そっちのけでいつも子どもと過ごそうとしているような場合は注意をしたほうがいいだろう。
また、家族歴も見逃せない。性的虐待を受けた人は、性的虐待をする側になる率も高い。親から性的虐待を受けた人は、自分の子どもに性的虐待をする可能性が高くなるので、夫や彼氏が性的虐待を受けたことがある人は用心したい。
警戒すべき兆候
- 特別扱いする
- 体をくすぐったり、レスリングを通じて体に触れようとする
- 子どもと秘密をもつ(「これは二人だけの秘密だよ」という)
- 子どもにいかがわしい画像や映像を見せる
- 子どもだけを買い物、試合、映画などに連れて行こうとする
- 子どもがバスルームにいるときに覗こうとする、入ろうとする
具体的な対策
トイレは性的暴行が起きやすい地雷エリアと認識する
トイレは性的暴行が起きやすい地雷エリアだと認識してほしい。トイレが子どもにとって危険をはらんだエリアだという認識が社会に浸透すれば、被害は少なくなるはずだ。
女の子は母親と同じトイレに入るので危険度が下がるが、男の子は男性トイレに入るので注意が必要だ。児童性犯罪者の97%が男性であることを思い出してもらいたい。個室のドアを閉めれば、簡易的な密閉空間ができあがってしまう。
就学前の男児は母親と女子トイレに同行させるべきだ。就学前の男児が男子トイレから一人で出てくる光景をアメリカでは見たことがない。むしろ男児が一人でトイレにいたら、たまたまいた通行人に保護されて通報されるのがオチだ。
女子トイレであっても、身障者用の大きめの個室に男が潜んでいて襲われたケースもあることをお忘れなく。
父親がいるなら父親は絶対に同行すべきだ。親の第一の責任は子どもの身の安全を守ることなのだから、同行しないのは親としての責務怠慢である。「一人で大丈夫だろう」ではなく、「どんな危険が潜んでいるか分からない」を肝に命じよう。同行して当然と思って習慣化させれば、トイレの付き添いはさほど面倒なことではない。
公共トイレには防犯アラームを持ち込むことも推奨できる。
公園のトイレ、ショッピングモールのトイレ、店のトイレ、駅のトイレ、展示会のトイレ、ミュージアムのトイレ、遊園地のトイレだけでなく、レストランのトイレも油断せず、同行するように。
学校の送迎をする
日本では過保護であることが悪いかのような風潮があるが、子どもの安全を優先した過保護と度の過ぎた過保護は異なる。日本で学校への送迎している人はほとんど見かけないのだが、外国籍の親は送迎をしているのをよく見かける。
もちろん外国は日本より治安が良くないので危機意識が高いためである。その危機意識の高さが子どもを守ることにつながっている。
私は自分が性的虐待を受けていまだに苦悩していることと、日本より犯罪が多いアメリカに来たことも手伝って、一般の日本人より子どもの安全や危機意識は高い方だと思う。小学生だけの通学風景は児童性犯罪者にとって格好の狩りの場であり、見るたびにいつも不安に思う。
共働きで送迎できない家庭も多いだろうが、いまいちど送迎ができないかライフスタイルを見直してみてほしい。できないのであれば子どもの祖母など、信頼できる人に送迎を頼める大人はいないだろうか?
少なくとも不審者情報が出たときには送迎をすべきだろう。新潟の7歳の子が亡くなった事件も、不審者情報が多く出回っていた上に、女児本人が男に声をかけられたと証言していたのだ。
さらにyoutubeなどで日本の小学生は1人で通学していることを世界に向けて発信するのはやめた方がいい。日本がいかに安全かPRしたいのだろうが、裏目に出る。
なにしろ世界は小学生の送迎がディ・ファクト・スタンダードになっているのだから、日本人が小学生の身の安全を考えていないという誤ったイメージを植えつける可能性がある。なにより「日本の小学生なら狙いやすい」と思う児童性犯罪者を寄せつける恐れがある。
日本人の両親たち全員に小学生を送迎しろと言うことはできないが、小学生を一人で通学させることが子どもの身の安全を脅かすリスクを抱えていることは認識しておいたほうがよい。何かが起きてからでは遅いのである。
シングルマザーは付け入られやすいので注意
以前noteで書いたことがあるが、社会的に弱者の立場にある人ほど、悪人の毒牙にかかりやすくなる。
社会的弱者の中のさらに弱者がモンスターのターゲットにされるという悲しい現実
シングルペアレンツの家庭は、両親がそろっている家庭に比べ、必然的に子どもに目を配るのが難しくなる。ヘルプが必要なときも多くなるだろう。児童性犯罪者はそのチャンスを見逃さない。親が忙しいときや面倒を見れない時に、みずから面倒を見ると申し出るはずだ。
とりわけシングルマザーの家庭は注意が必要だ。母親も子どもも父親像を求めていることから、児童性犯罪者にとっては格好の的になりやすく、実際に被害も多い。
児童虐待が内縁の夫によって多発する理由も、虐待者にとってシングルマザーの家庭が狙いやすいからである。
よく知らない人と子どもを二人きりにしない
親戚であっても信頼できる人でない限り、子どもを預けたり二人きりにしないこと。私は母方の親戚は全面的に信頼できるのでまったく心配しないが、父方の親戚は信用できないので子どもを預けることはないし、二人きりにすることもない。自分のいとこであっても、男性なら子どもと二人きりにしない。
旅行や外出などで自分が行けない時は、必ず2人以上の信用できる大人に預ける
外出や旅行などで自分が行けない時は、必ず2人以上の信用できる大人に預ける。
学校の集団通学でも、警備するはずの成人男性がペドファイルである可能性がなきにしも非ずなので(実際に事件があったように)、お互いも見張るという意味で、大人1人ではなく大人2人にしなければならない。
友人宅に遊びに行くにしても、大人が2人(女性が望ましい)いることを前提にすること。
日本では子どもたち同士で自宅に行ったり来たりしている光景も見られるが、友人宅に年上の兄弟がいる時は注意が必要だ。年上のイトコが遊びに来ている場合もあるので、子どもがいる場所に誰がいるのか把握しておくこと。
お泊りは要注意
私が小さい頃は、小学生の間はお泊り禁止だった。お泊りしようとも思わなかったのだが、父が禁じていたと後になって母から聞いた。しかし、お泊りをしなくても私は性被害に遭った。
お泊りは危険と隣り合わせであることを認識してほしい。児童性犯罪者は信頼を築いてから犯行に及ぶことを忘れないでほしい。
インターネットに子どもの裸を載せない
いまやインターネットは児童性犯罪者の狩りの場と認識すべきだ。児童性犯罪者は身分を偽ってウェブを徘徊し、子どもがいそうなサイトに潜り込む。SNSで人物特定され、ストーキングされる可能性もある。
とりわけ、風呂、シャワー、トイレ中の写真は厳禁。ましてこれらはネットにアップすると児童ポルノ扱いされて逮捕される可能性もあるので注意すべし。たとえばアメリカでは高校生などの未成年が裸を映してネットに流布しても児童ポルノにあたる。
子どものインターネット活動を注視する
子どもがインターネット上で話している相手が誰かを聞いて、把握しておくこと。子どもはインターネットの活動については秘密にしがちなので、モニターしておく必要があるかもしれない。
インターネットで出会った人と会ってはいけないこと、写真を送ってはならないことを子どもに言い聞かせておく。
バスルーム(脱衣所)に鍵をつける
家族による性的虐待は約35%と多く、家族による性的虐待の90%は親によるものである。したがって、バスルームの脱衣所に鍵をつけること。ペドファイルはなにかと理由をつけて、あるいは「誤って」ドアを開け、子どもの裸を見ようとする。
夫や祖父に子どもを風呂に入れさせない
私の夫が最後に娘と一緒に風呂(シャワー)に入ったのは、2歳になる前だったと思う。父は新生児の時に数晩入れただけで、そのときは母がずっとそばについていた。
夫であろうが父であろうが男には変わりないので、子どものプライベートな部位を見せないようにするのが望ましい。
まして5歳にもなったのにわざわざ風呂に入りたがる祖父や父親であれば、ペドファイルであることを疑ったほうがよい。もちろん、絶対に入れてはならない。
行政に求めること
13歳までに性教育を実施する
「先生のことが好きならここを触っていいんだよ」というペドファイルの誤った「性教育」に毒される前に、先手を打って13歳までに性教育を実施してほしい。
とりわけ自分の体の「プライベートな部位」を教えること、そこには誰も触れるべきではないこと、そして触れられたら「NO」と言うこと、親に報告することは徹底して教育すべきだ。
朝夕の通学路に白バイ警官を巡回させる
朝夕の通学路に白バイ警官を巡回させてほしい。
アメリカは性犯罪者どころかテロや銃乱射の危険がいつもあるので、白バイ警官2台が学校の前に常駐していたり、交通安全を見守ってくれている。やはり白バイ警官の存在を感じるだけでも安心感がある。
教師やコーチの素行調査(犯罪歴の有無)
驚いたことに、停職以下の処分を受けた教員については、都道府県をまたげば復職できるという記事を読んだのだが、これが本当だとすると恐ろしい。
「懲戒免職になって教員免許が失効したという情報は、全国の教育委員会で共有していますが、大田容疑者のように停職以下(減給、戒告)の処分については共有していません。犯罪歴や処分歴は個人情報に当たるので、都道府県をまたいで照会することができないというのが現状です」(文科省教職員課担当者)
未成年への「性犯罪歴」がある教師が他県で再雇用されるカラクリ|BIGLOBEニュース
アメリカの場合:性犯罪者データベースで近所をチェックする(ミーガン法)
日本でもミーガン法の施行を求める声が高まっている。
性犯罪がこれほど多いのだから、性犯罪者データベースを構築して、一般市民が近隣に住む性犯罪者の有無を確認することで性犯罪防止を一人一人が心がけることができる。早急に確立してほしい。