ミセスGのブログ

海外ドラマ&映画の感想、世の中のお話

海外ドラマ【WACO】あらすじ&感想:実在のカルト教団を襲撃&集団自殺に追い込んだATFとFBI

海外ドラマWACOカルト教団によるブランダヴィディアン事件

 

新作海外ドラマ【WACO(ウェーコ)】のあらすじ&感想です。

全6話のミニシリーズです。

カルト教団による立てこもり、集団自殺を描いたドラマ…ではありません。

この記事のタイトルは、最初は「実在のカルト教団による立てこもり&集団自殺」にする予定でした。あらすじをざっと読んで「カルト教団が立てこもりをして集団自殺した事件か」と思っていたのです。

しかし、実際にドラマをみたら、かなり違っていました。

ダメだ、辛すぎる。

なんたる悲劇的な事件でしょうか。

涙なしには見れません。

タイトルは「実在のカルト教団を襲撃&集団自殺に追い込んだATFとFBI」にあらためました。

教祖デビッド・コレシュを演じるのは、テイラー・きっちゅ。

ATF捜査官役にジョン・レグイザモ交渉人役にマイケル・シャノンも出演しています。

予告はこちら。

 

WACO事件とは?

1993年2月~4月、新興宗教団体「ブランチ・ダヴィディアン」の教祖デビッド・コレシュは、立てこもりと長い交渉の末、FBIによって突入され、80人の信者を道連れに集団自殺したと言われています。

この事件は Waco Siege と呼ばれています。

信者のほとんどが命を落としてしまったことで、教団側の主張はまったく聞かれず、メディアによって偏ったものになっていました。生存者の著者を読んだ監督は、事実をまったく知らなかったことに気付き、教団側のストーリーを伝えようと考えたそうです。

ふむふむ。なるほど。

物事には二面性がありますから、しごくフェアだと思います。

カルト教団と聞くと、先入観が先に立ってしまうのは当然です。

現に私も、本作を観る前にこの監督のインタビューを読んで「そんなこといったってカルト教団が武装し始めたんでしょ?じゃあカルト教団に非があるんじゃないの?」なんて短絡的に考えていました。

しかし事件の詳細や本作を見ると見えてくるように、このカルト教団はチャールズ・マンソンやオウム真理教のようなカルトとは異なります。

教祖の重婚や法的レイプなど、一部のおかしな慣例を除けば、ごく普通の人々が終末観思想を共有して日常生活を送り、コミュニティを形成している集団です。

 

【WACO】事件の経緯

タイトルのWaco(ウェーコ)は、アメリカ・テキサス州の地名です。

ここに教団「ブランチ・ダヴィディアン」の本部マウント・カルメル・センターがありました。

「ブランチ・ダヴィディアン」は、ヨハネの黙示録による終末思想を思想体系にしていた教団です。

教団は1934年に設立。創始者が亡くなった後、創始者の息子と後継者争いをしたバーノン・ハウエルが新教祖に就任し、のちにデビッド・コレシュと改名します。

デビッド・コレシュ

デビッド・コレシュ(旧名バーノン・ハウエル)

教祖となったコレシュは、急速に選民思想を説き始め、最終戦争後にブランチ・ダビディアンの信者だけが生き残ることを神に許されていると主張。カリスマ性を駆使して、多数の信者を獲得します。

教団は終末への準備として武装を推し進め、児童虐待や不正な銃器売買で当局に目を付けられます。

アメリカATF(アルコール・煙草・火器局)は武器の存在や児童虐待の証拠を確認できないまま強制捜査に踏み切ります。教団側は捜査官をバビロニア軍と信じ込み応戦。銃撃戦に至り、教団側6名、ATF捜査員が4名死亡しました。

捜査はATFからFBIに引き継がれ、51日間の膠着状態の末、1993年4月19日にFBIが強行突破。

教徒は投降せず、建物から出火し、教祖のコレシュを含む81名(うち子ども25名)が死亡しました。76人は火事により死亡。生存者は9名でした。

WAVOウェーコ海外ドラマ

マウント・カルメル・センター(FBI撮影)1993年4月19日

なお、FBIのやり方にもいろいろと問題があったようです。

教団を攻撃する4日前、コレシュは降伏の手紙をFBIに渡したものの、FBIは司法長官にそれを渡さなかったり、出火原因がFBIの責任である可能性も高く、適正な手続きという点で政府の対処に問題があったと批判を浴びたそう。

 

教祖としてのデビッド・コレシュ

デビッド・コレシュが自分で作ったメッセージ動画を見ましたが、はっきりいって魅力がある方です。顔もハンサムですし、喋り方もいたって普通、落ち着いています。

マンソンのような狂信的な面は見られず、ごく普通に見えます。教祖に登り詰めて80人もの信者を支配できるほどのカリスマ性が動画だけで十分感じられました。

誰かがルールを破ったときも、罰を与えるわけではなく、ユーモアをもって全員に説くのです。 

そんなコレシュですが、経歴を見てみますと常識とかけ離れた人生を送っています。20代後半には創設者の60代の妻と不倫関係になり、彼女との子どもを望んでいます。

その後、彼女が死亡し、息子が教団を引き継ぐも、デビッド・コレシュと衝突。まもなくデビッド・コレシュは大多数の信者の忠誠心を獲得し、教祖になります。

教祖になった後、コレシュは複数の妻を娶り、その中には12歳の少女もいました(子どももいた)。この児童虐待の情報もATFが動いた理由の一つです。

ちなみにその少女の姉はコレシュの第一夫人。

さらに親友の妻と子どもまで作っているという、一夫一妻制の私にはよく分からない複雑な人間関係です。

要はそこまでぶっ飛んだことができてしまうほど、コレシュは信者たちを完全に支配していたということです。しかも暴力は一切使わず。

教祖とセックス、教祖と児童性的虐待はセットが多いな。

12歳と淫行して14歳で結婚とか完全にペドだろ。でも60代の女性と不倫して子ども欲しがってたこともある。コレシュの守備範囲が広すぎて、頭ひねりたくなるな。

 また、籠城中にだんだん利己的で独善的な面が露呈してきます。

 

【WACO】感想

教祖のデビッド・コレシュ役のテイラー・きゃっちゅ。全然違うな。テイラー・キッチュ。巷ではキャッチュやらキッシュやらキャッチと呼ばれています。

f:id:oclife:20180310154200j:plain

デビッド・コレシュ(byテイラー・キッチュ)

イケメンきゃっしゅがこんな感じになっとる。 

きゃっちゅさんもカルト教団という先入観が強すぎてこの役を降板しようと考えたこともあるらしい。

実際の教祖デビッド・コレシュの動画も見ましたが、おもしろいことにコレシュ本人の方がカリスマ性があるんです。コレシュ本人の方がテイラー・きゃっちよりも男性的。悍馬というわけではありませんが、侠気があって、ドンキホーテみたいな男です。 

f:id:oclife:20180310154658j:plain

信者のデビッド(by ローリ―・カルキン)

こちらは新入り信者のデビッドさん。教祖と同じ名前。

えっと・・・あれっ?

マコーレー・カルキンさん・・・ですよね?

じゃない?

いや、マコーレーさんでしょ?カルキン家の。

いつのまにかクリーンになって復帰してたんですね。

若干、男前になりました?

トワイライトシリーズとか吸血鬼ものとか出るといいと思うな、オジサンとしては。(あれっ、俺の性も変わっとる)

そんなオジサンがカルト教団に同情するのはこれが最初で最後かもしれん。

教団に武器が大量にあるのは終末思想によるところが多いし、ドラマでは反政府的な活動や言動は一切見られません。ジョン・レグイザモが潜入捜査官だとバレても、教団は彼に何も危害を加えることはなく、ジョン・レグイザモに「ATFの襲撃を止めさせるんだ」とリクエストして解放している。

この集団が犯している犯罪は、教祖の重婚、児童虐待と法的レイプ、武器の不正購入ですが、いずれも当局は確認できていないまま強硬手段に出ています。

これは完全に due deligence 違反では。あげくの果てに、教祖が手を挙げて投降しているというのに犬を撃ち殺し、その銃音でパニクって突然撃ちまくるというヒドイ失態。女性も子どもも大勢いる建物に向かって撃ちまくります。完全に暴走しています。

ジョン・レグイザモの必死の静止もきかずにGOサインを出したボスもそうだけど「カルト教団」に対する先入観が影響しているような気がします。

そこから51日間の籠城が始まり、最悪の事態を迎えるわけなので、ATFが始めた悲劇といっても過言ではありません。

時代が違ったら、これ小さな村の虐殺ですよ。 

教団は地元の保安官とも良好な関係らしく「ATFによる銃撃を受けているので止めさせてくれ」 との連絡を受け、保安官がATFに連絡して止めようとするのですが、なんと現場にいる捜査官が電話も無線もないというあり得ない展開。

ATFって、バカなんですか?

信者にしてみれば、静かに暮らしている中、ATFが突然襲撃してきて撃ちまくってきたので応戦しただけです。教祖による犯罪行為と不正武器を考慮しても、最終的に81人を死に追いやったのは明らかに度を越しています。

おまけにATFのボスは会見を開いて、教団が武装してATFを待ち伏せ攻撃した("ambush")と事実と異なるウソ情報をメディアに発信するという嘘つき具合。

真珠湾攻撃を「奇襲」とされ、慰安婦を強制連行して虐殺したなんていうねつ造の汚名を着せられてしまった日本人と重なってしまい、憐れみを感じました。

このドラマをみる限り、デビッド・コレシュが投降しないと決めたのも、ATFの会見によるイメージ操作が原因。ATFがまさにコレシュを死に追い詰めた感は否めません。

その後捜査を引き継いだFBIも、交渉人以外はお単細胞な阿呆ばかりです。なまくら坊主の瀬戸内寂聴風に言うならば「殺したがるバカども」で合ってます。

FBIも、やることなすこと逆効果満点。

現地では教団に同情する声が多かったようですが、その気持ちは理解できます。

ちなみに最後にFBIの攻撃を許可したのは、ときのビル・クリントン政権。

戦車で突っ込んで催涙ガスをぶち込みますが、催涙ガスが発火した模様。建物は炎に包まれます。

最終話は胸が痛くて、やりきれない。大勢の小さな子どもたちを抱いて走り回るお母さんたち。催涙ガスと火事の煙にまかれ、子どもも意識を失い動かなくなり、隣でお母さんが「目を覚まして」と泣いています。

これさぁ・・・どうみても集団自殺じゃなくて、FBIによる虐殺じゃん。

確かにコレシュが自分の思想にこだわり続けて投降機会を逃し、FBIに襲撃の口実を与えてしまったのは事実だし、信者を死なせてしまった責任はあるけれど、セブン・シールだかを書き終えたら投降すると交渉人との取引が成立していたのに。

 

事後

事後、FBIは発火の原因となる武器の使用を否定し、教団側が自発的に火をつけたと主張しています。司法省も同じ結論を出していますが、FBIがスタン手りゅう弾(音と光だけの手りゅう弾で殺傷力はない)を使用したことを確認しています。

教団の生存者たちは、集団自殺の計画は一切なかったと主張していますし、スタン手りゅう弾が催涙ガスに引火したとみるのが自然でしょうね。

FBIはこの日一発も銃を撃っていないとしていますが、検死官の報告では、20人が撃たれて死んでおり(14歳以下の子もいた)、3歳の子が胸を刺されて死んだそうです。これは・・・どうなんだろう。3歳の子は教団のメンバーによるものかもしれませんね。となると撃たれた20人は本当に集団自殺なのかもしれない。とはいえFBIが発砲した可能性も否定できない。真相は闇の中ですね。

またコレシュはドラマ内では右腕のスティーブに自分を撃つように頼んで死んでいますが、これも実際は誰がコレシュを殺したのか分かっていないそうです。

ドキュメンタリーも製作されているので、そちらも見てみようかな。

知れば知るほど、もっと知りたくなる事件です。