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『アス』日本公開は9月6日!あらすじネタバレ感想:「ゲットアウト」の斬新な切り口と顔芸、再び

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「アス」

待望のホラー映画「アス」の日本公開が9月6日に決定しました。

根強く残る人種差別問題を未曾有の顔芸でブラックユーモアたっぷりに描いた「ゲット・アウト(感想)」のジョーダン・ピール監督の新作ホラー&スリラーです。

最初にネタバレなし感想、その後にネタバレあり感想を書いています。

 

【アス】作品紹介

原題:Us

公開年:2019年

監督:ジョーダン・ピール

出演:ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、シャハーディ・ライト・ジョセフ、エヴァン・アレックス

上映時間:116分

主演はケニア人両親のもとでメキシコで生まれ育ったルピタ・ニョンゴ。私はニャンコちゃんと呼んでいます。「それでも夜は明ける」で絶賛され、アカデミー助演女優賞を受賞している。ケニア美人だわー。

原題は確かにUsなんだけど、邦題「アス」で良いのん?アスと言われると、まずお尻のことを思い浮かべてしまう私のような破廉恥者が相当数いるはずなんだけど。

UsはUnited States(合衆国)と掛けているようにも思う。

富裕層の友人役には、シーズン3も好調のHuluオリジナルドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」で主演を張っているエリザベス・モスが出演している。

 

【アス】あらすじ

アデレードは夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンと共に夏休みを過ごす為、幼少期に住んでいた、カリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れる。

早速、友人達と一緒にビーチへ行くが、不気味な偶然に見舞われた事で、過去の原因不明で未解決なトラウマがフラッシュバックする。

やがて、家族の身に恐ろしい事が起こるという妄想を強めていくアデレード。その夜、家の前に自分達とそっくりな“わたしたち”がやってくる・・・。

アス-Filmarks

あらすじを一文で要約しますと、自分たちと全く同じ外見をしたドッペルゲンガーに襲われる話です。

 

【アス】ネタバレなし感想

ドッペルゲンガーて信じる?

私は他の方から、いるはずの無い場所で「Gさんを見た」という報告をよく受けます。

たとえばその日に私は休みだったにも関わらず、翌日仕事先の人から「昨日、Gさんをあそこで見かけたんだけど」だとか、「○○のモールで見かけたんだけど」といった報告を頂きます。

行ってません。

私じゃないと思うので、多分私のドッペルゲンガーが少なくとも2人くらいは日本に居住しているんのでしょう。

本作は、そのドッペルゲンガーに襲われる話である。

ところでウッカリ屋の私は言い間違いが多いのだけれど、ドッペルゲンガーをいつもドッペンゲルガーと言ってしまう。

オルター・エゴ、のび太のコピーロボット(のび太じゃなくてパーマンだったっけか)、クローンなど、ドッペルゲンガーのその正体は色々考えらるが、答えがジョーダン・ピールらしい切り口なんだな。

「ゲット・アウト」の顔芸に続き、本作でもルピタ・ニョンゴちゃんがそれはそれは可愛らしい顔芸を披露している。

黒人の父、白人の母を持つジョーダン・ピール監督は「ゲット・アウト」でも本作でも黒人俳優を主演に起用しているが、黒人は目が丸いので、変顔や目を丸くした顔がさらに際立って個性的な画を創り出すことに成功している。

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ママ役のニャンコちゃん

夏休みの休暇でサンタクルーズにやってきたニャンコちゃん一家。サンタクルーズはモンテレーの近くの海岸線の美しい田舎町。

さっき気が付いたけど、ここ行ったことあるわ。とても素敵な場所ですよ。映画のようにボードウォークになってて、小さな遊園地があります。住みたい思った。

サンタクルーズにホームレスそんなにいた覚えはないが…サンタモニカにはたくさんいるんだけど、もしかしたら場所は単に仮定の設定なのかもしれない。

ニャンコちゃんは幼少期にこのサンタクルーズで育ったのだが、親が目を離した隙に遊園地の外れにある「Find Yourself」と書かれたミラーハウスのアトラクションに1人で入って行ってしまう。

そこでニャンコちゃんは自分そっくりの少女を見つけ、ビックリして気を失う。

それがきっかけで失語症になったニャンコちゃんだが、大人になり、結婚して、4人家族で幸せな生活を送っている。夏休みの休暇を過ごしに家族でサンタクルーズに戻ってきたというわけだ。

だが夜になり、4人のドッペルゲンガーが仮住まいの家に訪れてくる。こんな風に。「ストレンジャーズ~戦慄の訪問者~」みたいですね。手をつないでいるのがポイント。

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ドッペルゲンガー

果たしてドッペルゲンガーの正体は!?というのが本作のポイントなので、ここでは明かさずに後述のネタバレ感想で解説していく。

賛否両論が予想されるだろうけど、ジョーダン・ピール監督の斬新さは素直に褒めてあげたい。

「ゲット・アウト」でも人種差別を独創的な切り口から描いていたし(しかもホラーというジャンルで勝負)、ネタバレあり感想で後述しますが今回も同様の鋭い切り込み方をしている。ピール監督はこのまま進んで行ってほしい。

ただ、ホラー映画として観ていると「何これ?」「つまらないホラーだ…」と混乱してしまうかもしれない。現にホラーやスリラーとして観ると、案外すんなり逃げられるし緊張感やスリルがあるわけでもないし大しておもしろくないわけだ。

 

ここからネタバレあり解説と感想です。

 

【アス】ネタバレあり解説と感想

本作は単なるスリラーではなく、本質はもっと違うところにある。「ゲット・アウト」の本質が人種問題にあったように、本作「アス」の本質は見えない人々、つまりホームレスや飢餓者を代表とする社会的貧困者にある。

冒頭のTV画面で映し出された Hands Across America というムーブメントは1986年5月25日に開催された実際の出来事で、全米で650万人が15分間手をつないで人間の鎖をつくるというものだ。

このイベントの目的はホームレス、飢餓者、貧困者を救うこと。参加者は10㌦を支払い、運営コストをのぞくと15億円という募金を集め、地元のチャリティへ寄付された。

本作に出てくる「アス(私たち)」は、地上の楽園で楽しい時間を過ごす人々の下で、ひっそりと地下で過ごす忘れ去られた人々である。

 

社会的貧困者はウサギ小屋に押しやられ、人間らしい生活もできず、光もなく、希望もない場所でひっそりと生きている。

「政府が私たちクローンを作った」とニャンコちゃんは言った。つまり格差社会による分断、持てる者と持たざる者を生み出したということである。

彼らが話すことができないということは、彼らが社会で声を持っていないことを反映している。

また、何故自分たちと同じ姿をしているのかという疑問に対する答えは、自身も社会的貧困者になっていてもおかしくない、誰でも貧困に陥る、つまり彼らは自分たちと何ら変わらないということを暗示しているのだろう。

地上に住んでいるのが私たちのようなごく普通の人々で、地下に住んでいるのは貧困者と見ると、単なる社会派ドラマの映画と判断してしまうかもしれないが、ジョーダン・ピール監督の腕が冴えるのは、そこに大事なツイストを盛り込んでいる点だ。

実は少女時代のニャンコちゃんはミラーハウスに入り込んだ時、ドッペルゲンガーのニャンコちゃん(ここでは便宜上、陰と呼ぶことにする) と入れ替わっているのだ。

両親のもとに戻ってきたニャンコちゃんが失語症になっていたのは、それが陰のニャンコちゃんだからである。大人になって襲ってきたニャンコちゃんがもともと地上にいた陽のニャンコちゃんなのである。だから襲ってきたニャンコちゃんは少し言葉を喋れるわけだ。ちなみにニャンコちゃんは、志村けんが力士を真似たときの「ごっつぁんでーす」みたいな話し方をする。

立場がそっくり入れ替わることで陰のニャンコちゃんが人生を掴むことができた一方で、陽のニャンコちゃんは逆に地下のウサギ小屋に閉じ込められ、声を持たない者となってしまった。

1%の富裕層と99%の貧困層という超格差社会に邁進する現代社会においては、運命のいたずらによって誰でも相手の立場になるかもしれない、相手の立場になっていたかもしれないという警告メッセージにもとれる。

忘れさられた人人が反乱を起こしたように、持たざる者が持てる者から奪い取る未来が待ち受けているかもしれない。このまま超格差社会が進んでいけばどうなるのか?監督はその大いなる可能性についても警告メッセージを発しているのだ。

富裕層の中には超格差社会に警笛を鳴らす者もいるが、彼らの中にも不穏を察知している者がいるのだろう。映画のように、いずれXデーがやってくると思ったほうが自然だろう。

ジョーダン・ピール監督がインタビューで語っているように、陽と陰のキャラを国境内外の人々に見立てることもできる。

こうした社会問題にホラーにツイストを入れることで問題提起するやり方がジョーダン・ピール監督らしい。ジョーダン・ピール監督の政治的ポジションは私とは多少異なるが、彼の問題に対する光の当て方がユニークなことは認めざるを得ない。面白いか面白くないかは別として。

ただ、やっぱりホラーとしてはツマラナイよ。

一つだけ気になるのは、ジェイソンとプルートのこと。ジェイソンとプルートも、ニャンコちゃんママと同じように(おそらくは映画が始まる前に)入れ替わっているのではという点である。

マジックトリックの件やプルートの顔が火傷を負っていること、ジェイソンがいつもマスクを被っていること、ビーチの砂でトンネルを作っていたこと(過去の居住場所の記憶を辿っていた?)、地上のスラング言葉にしては少し変な言葉遣いをする(Kiss my assではなくKiss my anusと言うなど)、ジェイソンを殺そうとせずに火のマジックを教えていたこと、最後にママに見せた顔など、ジェイソンとプルートがすでに入れ替わっていることを示す兆候はたくさんある。

ただ、ジェイソン/プルート入れ替わり説については映画でも明確な答えを出していないので、観客の判断に委ねられている。

豆知識として、本作では11:11という数字が頻出していたが、これにも意味があるそう。

ボードウォークでホームレスの男が手にしていたサインに書かれた11:11という数字、テレビの野球の試合のスコア11対11、ドッペルゲンガーがやってきた時刻11:11など。

11:11という数字は、単に同じ数字のコピーというだけでなく、スピリチュアルな目覚め、覚醒を意味するそうだ。自分を正しい道に導き、進むべき道を示す道しるべのような意味合いもあるようだ。

また11月11日は、人生における大きな変化や、真実を暴くために深く掘り下げるための啓蒙、教化といったスピリチュアル上の意味があるという。

聖書の11章11節も意識しているみたい。聖書に詳しい方、もし本作を観たら解説願います。

それゆえ主はこう言われる、見よ、わたしは災を彼らの上に下す。彼らはそれを免れることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない。