Netflixの新作映画「パーフェクション」を観た感想です。
海外の記事で「ネトフリの新作映画パーフェクションは、虫、嘔吐、ゴア好きにはお勧め!」と書いてあったのでトライしてみましたが、パーフェクションからは程遠いパーフェクションを魅せられて多少ムカついています。
【パーフェクション】作品紹介
原題:The Perfection
公開年:2019年
監督:リチャード・シェパード
出演:アリソン・ウィリアムズ、ローガン・ブローニング、スティーブン・ウィーバー
上映時間:90分
主演の天才チェロ奏者に「ゲット・アウト」のアリソン・ウィリアムズが出演しています。
【パーフェクション】あらすじ
かつて将来を有望視されていた天才チェロ奏者が元恩師を訪ねるが、そこには別の才能豊かな愛弟子がいた…。二転三転する展開から目が離せない驚がくのスリラー。
Netflix
「二転三転する展開から目が離せない驚がくのスリラー」とか言われたら見ないわけにはいかないじゃない?
だもんで、ちょっと期待していたんですよね。
【パーフェクション】ネタバレ感想
観終わって腹を立てた映画で5本の指に入る出来栄えだと思います。悪い意味で。ベスト3には「パール・ハーバー」あたりが入っていますが、下手すりゃ「パール・ハーバー」を追い越したかもしれない。
駄作であっても「観なきゃ良かった」と後悔する経験はあまりないし、「後味悪すぎて観なきゃ良かった」「胸糞悪すぎて観なきゃ良かった」という良い意味での「観なきゃ良かった」という映画ならそれは観る価値があったと判断するのですが、本作におきましては間違いなく観たことを後悔しました。
端的に言いますと「なんじゃこりゃ!??これを映画と言うのか!?」というのが本音でございます。
Netflixのオリジナル映画については兼ねてから思う所もあったのですが、もはや映画じゃない。Netflixの映画は、短いドラマを観ているようです。そこにそこそこ雰囲気のある俳優を取り込んできて奇抜でクールなショットを挿入しているだけなんだよ。要はキルトみたいな継ぎ接ぎ映画というか。
ドラマにも見られる傾向だけど、どれだけ奇想天外な展開にできるか、視聴者の予想を裏切ることができるか、スタイリッシュでクールな印象を与えられるか、衝撃を与えらえるかに引っ張られ過ぎて、肝心のストーリーが破たんしてしまうパターン。
「ゲーム・オブ・スローンズ」のシーズン8がまさにそのパターンで失敗したと思っている(もっともゲースロの方は時間をかけてあと5シーズンくらい作れば視聴者が納得いく顛末になっていたのかもしれない)。
熱烈な映画ファンの皆さんがNetflixの映画を映画と認めないかのような振る舞いや、Netflixの映画って微妙…と思う良心的映画ファンの直観は正しい。
キャストは問題ありません。
「ゲット・アウト」のアリソン・ウィリアムズが将来を有望視されたものの母の介護のために天才奏者としての道を絶たれた女性をミステリアスに演じます。
10年後、母が死にます。その頃、エリザベス(愛称リジー)という黒人女性が天才チェロ奏者として世界的にもてはやされていました。彼女の地位と名声は、アリソンが約束されていた地位です。
アリソンは当時のチェロの講師に連絡をとり、中国の上海で開催されたリジーのチェロ伴奏会に現れます。アリソンはそこでかつての恩師たちやリジーと会います。
とまあここまできたら、あのアリソン・「ゲット・アウト」・ウィリアムズですからリジーを貶めるいわゆる復讐劇だろうな~なんて想像がつきますね?
ところがリジーは思いのほかいい子で、アリソンに憧れアリソンを目指していたというからあらビックリ。
そんなリジーにアリソンも心を許し(?)、Netflixの定石どおりにLGBTQをぶち込んで二人はめでたく美しく結ばれます。
ただしアリソンが薬をリジーに勧めるシーンでカメラは必ず意味深に薬にフォーカスしているし、アリソンがチェロ奏者だった頃や母を介護していた頃の少女の回想ショットが挿入されるので、アリソンが何かしでかそうと考えているのは間違いありません。
まあ朝っぱらから「頭痛い」と言っているのに迎え酒でイブプロフェンを飲まそうとしている辺りからして危ないし信用ならないわけですが。
意気投合した二人は中国を西へと旅行することになります。しかしリジーは「頭が燃えるように痛いと言い、すこぶる調子が悪そうです。もうここまでくるとアリソンがあげている薬はイブプロフェンなんかじゃないことは自明です。
リジーが幻覚を観始めるので、私はLSDを飲ませているのかと思いましたが、アリソンが与えていたのは死んだ母の抗てんかん薬で、とりわけ酒と摂取すると副作用である幻覚や頭痛がひどくなるそうです。
リジーはバスの中でひどい頭痛、嘔吐、下痢に襲われます。このバスの中でという設定は素晴らしいですね。バスの中で「うんこ出ちゃう!一歩でも動いたら漏れる~!」というリジーが可愛いし、「バスの中でうんこと嘔吐はヤメテ、お願い」というプライスレスな表情を浮かべる中華人民の皆さんがこれまた可愛らしい。それでも水をあげたりする優しい中華人民たち。
バスの中で吐いた嘔吐に蛆虫が見え、腕の中に虫が這いまわる幻覚を観始めるリジーは、アリソンがストリートの朝食場でくすねた中華包丁で手を切るように勧めます。
手を…切るように…勧める?
するとリジーは手を切ります。手を…切る?
しかも後で分ることだが、虫は腕のとちゅうから湧き出てきているというのに(幻覚ね)、なぜか手首を切っていました。
アリソンは止血帯を用意していたので、止血してリジーを山腹に置いていってしまいます。
まあここまでの前半戦は良いとしましょう。予想できたものの、なかなかおもしろいジェラシーサスペンスだと思いました。
問題はこの先です。
ここから今度は手を切る羽目になったリジーがアリソンに復讐をするのかと思いました。復讐への復讐ですね。リジーがどんな巧妙な計画でアリソンに復讐し返すのか、それはそれは楽しみにしていたのです。しかもアリソン・「ゲットアウト」・ウィリアムズへの復讐ですから、胸躍ります。
そうしたら全然違いました。
簡単にネタバレしてしまうと、 アリソンやリジーたちの名門チェロ寄宿学校の恩師たちはペドファイルで、チェロを教える傍らに少女を食い物にしていたわけだ。
それでアリソンは恩師たちを止めようと考え、まずはピラミッドの頂点にいるリジーを説得しようとして前半の行動に出た。
そして最後はアリソンの考えを理解したリジーが2人で協力して恩師たちを殺すというストーリーだ。
しかし色々とおかしい。
天才奏者としての活路を絶たれたアリソンが現在の天才奏者であるリジーと自分を捨てた恩師たちに不当な復讐をするというストーリーなら分かるし、それだけでコンテンツとして十分な魅力がある。
それなのに「実は恩師たちはペドファイルでした、なのでペドファイルの恩師たちに復讐をします」という展開は必要なのだろうか?
Netflixは奇想天外な展開を狙って全体のストーリーが破たんしてしまうという同じ轍を何度も踏んでいる。「ザ・サイレンス~闇のハンター~」では、目は見えないが聴覚が発達した人食いテラノドンによるアポカリプス世界を描いているのに最後にカルト集団を登場させてぶち壊した例や、「アポストル~復讐の掟~」ではカルト集団から妹を救出するというストーリーなのに血をすする女神の怪物も出てきておまけにリーダー争いの抗争も勃発して何してんだか分からなくなっちゃった例もある。
次にペドファイルの恩師たちに復讐するために、リジーに薬を盛って幻覚を見させ、バス車中でウンコ漏らさせて嘔吐させて腕を切らせるというトンデモ展開にも異議がある。どう考えてもおかしいだろー!しかもリジーを山腹に置いていくし。
さらには腕を切らせられておいて納得してしまうリジーもおかしいし。この辺でよくよくウンザリして観るのを辞めようと思いました。
まるで映画の企画段階で「腕切っちゃえばいんじゃない?」「恩師たちが実はペドファイルっていうのはどう?」「最後ダルマにしちゃえばおもしろくない?」というアイデアをそのまま盛り込んだようである。
よく公開にまでこぎつけたと思うよ。
良かったのは最後の腕を切られる(また?)シーンと、バス車内の中国人たちの皆さんだけですね。