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【サスペリア】2018年リメイク版映画の感想:ティルティル3変化、阿修羅観音、救世主

サスペリア映画の感想

サスペリア

この1月に公開されたオカルトホラー映画【サスペリア】を観ました。ホラー映画をかじったことがある人ならおそらく知っているであろう、ご存知ダリオ・アルジェントの有名作【サスペリア(1977年)】のリメイクです。

オリジナル版【サスペリア】はファンが多いものの、「実は薄っぺらい」とか「中身がない」とか批判も多いダリオ・アルジェントの定番映画でもありますが、私は彼の極彩美が苦手で、何かが起きているわけでもないのになんだか怖いと感じてしまうセンシティブなタイプです。

ちょっと前にやなぎやさんが「家とか土地系が怖えー」とか訳の分からないこと言っていましたが、私は使ですとか妙な雰囲気を一番怖がります。訳わからんな。

「ええっ、なんでそこでバイオレンスが!?」みたいな突拍子の無い展開あるじゃないですか。ファニーゲームみたいなやつよさ!「なんでそこで卵落とすか?」とか、「なんでいつのまに家の中に入ってきとんの?」とか「この質問にその返答おかしくね?」とか「その手袋は何ですか」みたいな。やなぎやさん推しの炎628みたいに「えーちょっと待てや、なんで住民を小屋の中に押し込めようとするか」みたいな。

あるいは「なんでこのおっさんの目線が私のDカップに」とか「なんで本部長がこの部署に」とか「なんで私のバッグの中で水がチャプチャプいってる」みたいなやつとか。

そんなもんで、じーっと見つめてくる男性とか恐怖を感じます。ちょっと前に同窓生と会った日のこと、夜の10時過ぎだったと思うんだけど、駅からバスに乗ったのね。バスは5~10分と短い距離なんだけど、私の他に2~3名が乗っていて、そのうち1人は若い男性(20代後半~30代前半)が乗っていました。

その男性はガッチリした逞しい体育会系の体で、顔もイケメンに入る部類だったんだけど、最後部に座っている私をちらちら振り返って見ているわけです。最初は顔にケチャップでもついているのかと思って口を拭ったりしていたんだけど、それがずっと続いて、なんだか怖くなってきたわけです。

一人また一人と乗客がいなくなって、ついには私と彼しかいなくなってしまったわけです。こ…これはヤバイ、自分が降りるところでこの人も降りたらどうすべ…と本気で怖くなりました。というのも自分が降りるところは住宅街で、人気がなく、家への徒歩距離は5分以内だけど暗い公園の脇の狭い路地を通るのです。

彼がもし私の前に降りなかったら、これはもう自分の停留所を通り越して駅にそのままトンボ帰りして両親に迎えに来てもらおうと思いました。

幸い、彼は私の停留所より2つ手前で降りたのですが、降りるときにもチラッ、チラッと確認されて、本気で怖かったわ。そのときはスカート履いてたし…

要するに予測できない自分のコントロールを超えたものといいますか。

悪霊とかオカルトとか全然平気なんだけどねー。逆に旦那は悪魔とか悪霊関係に滅法弱くてね。たぶんカトリック教徒なのとか関係してるんだと思う。信仰心はないのに。あと飛行機の中でヘビが出るサミュエル・L・ジャクソンの映画なんだっけ…あれを劇場で観に行って、ヘビが飛び出すシーンで隣でジャンプしてポップコーン落としそうになってたよ。「何やってんのあんた」って言ったら「超ビックリしたー椅子から落ちそうになった」とか言ってました。ホラー映画で、あんなコントみたいなジャンプする人初めて見た。しかもあのB級ホラーで。彼はホラー映画が大嫌いです。

集団ヒステリーとかでその気がなかったのに一人が扇動したせいで殺されちゃうだとか、子供虐待ものとか映画観れないなぁ…「子宮にしずめる」とかいう実際の虐待殺人事件を扱った邦画も、胸糞悪いというレビューばっかりなので死ぬまで観れないと思う。

怖いものは大好物なんですけど、おそらく自分の中でのタブー領域なんでしょうねぇ。マイケルマイヤーズとかがザシュッ!ザシュッ!ってナイフでめった刺ししている方がなんぼかマシなのねー。

そんなわけでよく分からんけどなんだか怖い「サスペリア」がついにリメイクとあって楽しみにしてました。

 

【サスペリア】作品情報

原題:Suspiria

公開年:2019年(日本)2018年(アメリカ)

監督:ルカ・グアダニーノ

出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、クロエ・グレース・モレッツ

上映時間:152分

上映時間まあ長いけど飽きずに最後まで緊張感は続くので全然許容範囲。ティルティルが出てると時間が短く感じる摩訶不思議。

監督ルカ・グアダニーノはイタリア人、「君の名前で僕を読んで(2017年)」というゲイロマンス映画が好評という以外はよく知らない。

 

【サスペリア】あらすじ

超名門バレエ団「マルコス・カンパニー」に入団したスージーは、カンパニーに潜む、恐ろしく邪悪な「何か」の存在におびえる。やがて「それ」は仲間を1人、また1人と殺していく――。カルトホラーの傑作、想像を超えた最恐のリメイクが結実。

映画『サスペリア』公式サイト

簡単にいうと、スージーが入団した舞踊団は魔女集団で、先生たちが魔女です。 

先生たちに逆らったダンサーたちが一人また一人と姿を消していきます。

 

【サスペリア】感想

maribuさんナオミントさんが素晴らしいレビューを書いてらっしゃるので、別に書かなくていいかーと思ってたんだけど、コメント欄で読者の方とサスペリアの小話をちょっと交わしてたら「楽しみにしてますー」と可愛く言われちゃったので奮発しました。フォー・ユー。

映画を観る前にmaribuさんのレビューを途中まで読んでいったので、オリジナルと設定や展開が違うこと、着地点が異なることは把握していきました。

ダリオ・アルジェント監督の反応

オリジナルと違う展開になっている…と聞くと、オリジナルの監督であるダリオ・アルジェントの反応が気になるところです。

ではダリオ・アルジェントが果たして何と言っているかググってみましょう。

It did not excite me, it betrayed the spirit of the original film: there is no fear, there is no music. The film has not satisfied me so much.

(楽しめなかった。オリジナルの精神を裏切ってる。恐怖もなければ楽曲もない。本作の出来には、あんまり満足してない。)

かなり怒ってらっしゃるの?

なおリメイクのルカ監督は本作をリメイクというより改作としており、ダリオ・アルジェント監督の怒りを鎮めようとする気遣いが感じられます。

一方でダリオ・アルジェント監督はオリジナルの方で世話になった楽曲の友ゴブリンへの気遣いもあるでしょう。

大概、リメイクを喜ぶオリジナル監督っていませんよね。

結論から言うと、私は両作とも楽しめました。

 

ティルティル3変化

なんといっても見どころはティルダ・スウィントンの三変化。ふかづめさんが先日ティルティルの七変化について熱心に語っていましたが、本作で文字通り三変化を見せています。

ティルティルは実は180cmもあるので、男性にも変幻自在。最初知らなくて「この爺さん、やけに声が細くて高っ」とか思ってたら、ティルティルだって知って驚きました。

特殊メイクも凄いので、言われないとティルティルが一人三役やっていることに気づかないかも。

ジョセフ・クレンペラー博士はLutz Ebersdorfという役者が演じる…というプロモーションをかねた設定でしたが、実はこのLutz Ebersdorfという人物は架空の人物で、ティルティルがLutz Ebersdorfになりすまし、クレンペラー博士を演じたというわけです。

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ティルダ・スウィントン

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ティルティル?

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ティルティルの皮を被ったティルティル

これはもう映画を実際に見てティルティルの凄さを実感してもらいたい。

映画全体を通して冬基調の暗めのアンダートーンで、鮮やかな原色の色使いはこのティルティルの衣装だけだったので中年男女の目に優しい出来栄えとなっております。オリジナルは原色使いがねぇ… メリーポピンズも原色使いが過ぎて中年の目には堪える!

 

阿修羅観音ダンス

ティルティルの三変化に続く見所は、なんといっても全編を通して見られるカメハメハ砲ダンスと阿修羅観音ダンス。いちおうダンスには「民族」という名前が付いていたけれど、どう見ても阿修羅観音にしか見えない。

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現代に生きる私にも前衛的過ぎて分からない

深紅の色使いが美しいとはいえ、ふんどしを切り刻んだようなコスチュームと色のダサいブリーフを履いて踊りまくるダコタ・ジョンソンたちに目が釘付けになる。

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もうすぐクライマックス

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もういいって

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ダブルアイーンまで

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カーメーハーメー

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波ーーーーーーー!

 

ダコタ・ジョンソン

ダコタ・ジョンソンは「50シェイド・グレイ」とか「50シェイド・ダーカー」とかのエロ映画の女優らしい(観てない、興味ない)。

本作ではケツが見えそうで見えなそうなグレーの短パン姿で歩き回ったり、ノーブラで乳首を浮き上がらせたり、官能的な阿修羅観音ダンスやM字開脚も披露する。

ダコタ・ジョンソンのエロスが際立っているが、これは単にエロを披露したいわけでなく、スージーのもう一つの顔(魔女としての)が表面化してきている様子を表している。スージーの踊る姿は獣を想起させ、とりわけダンスフロアで身悶えする様子は肉欲的だ。(マダム・ブランに「獣とセックスしたくなった」と後に告白している)

なおスージーの獣ダンスは魔女らしく危険なもので、スージーがカメハメ波ーをすると、「魔女!」と吐き捨てたチームメイトが「リング」の貞子の呪い並みに体があらぬ方向に捻じ曲げられてしまうので、視聴者はエロスを観ながら拷問を見せられるという恐ろしいシーンを目撃することになる。ここは割と気に入った。
 

ネタバレあり感想

内容もあらすじも全然違うんだけど、雰囲気が「ヘレディタリー/継承」に似ているなと思った。

全体的にダークな雰囲気がすごく好みで、ベルリンの壁が目の前にあったり、ダンスホールの雰囲気や建物もゴージャスで素晴らしい。

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よく見ると三人の魔女の形をしたカーテン

簡単に説明すると、オリジナルではスージーが魔女たちごと建物を燃やして終わる勧善懲悪の終わり方をします。オリジナルは「サスペリア」「インフェルノ」「サスペリア・テルザ最後の魔女」という3部作になっていて、魔女の正体は2作目と3作目で明らかにされる。

魔女は3人姉妹なのだが、3作で呼称が若干異なっているのですこぶるややこしいのです。邦訳、このぐらい統一してや!

サスペリアの魔女3姉妹

  • Mother Tenebrarum(暗闇の母/暗黒の母)
  • Mother Lachrymarum(涙の母)
  • Mother Suspiriorum(溜息の母/嘆きの母)

で、本作リメイク版で、寮母たちがリーダーを決めるために投票をした結果、ブランク派とマルコス派に票が割れます。結局マルコス派が勝ち、魔女マルコスがスージーを器にするためにサバス(儀式)をするのかと思うわけです。

ところが。

なんとスージーが魔女3姉妹の一人「溜息の母」であることが判明するのです。どひゃー。すごい展開やでー。

スージーが溜息の母という驚きの展開でしたが、思い返すとスージーが魔女3姉妹の一人であるという伏線は多すぎるほどありました。

  • 子どもの頃のスージーが地図上のベルリン命だった
  • スージーがプロの訓練を受けていないのにイージーモードで劇団に迎え入れられ、さらに主役を演じた
  • スージーのダンスの一挙手一投足が魔女に悪態をついたオルガを傷つけていた
  • スージーがマダム・ブランク(ティルティル)と自然に親交を深めていた
  • スージーのため息のサウンドが強調されていた

などなど。

ちなみにサバトでは、マルコスがスージーを器にすることにマダム・ブラン(ティルティル)が反感を示してマルコスに首を斬られます。ブランとマルコスは魔女として価値観を共有していなかったことになります。

マダム・ブランが首を斬られたあと、スージーこと溜息の母は、 おもむろにマルコスやマルコス派を根絶やしにします。スージーは魔女たちが力を乱用して堕落していたことに怒りを覚えていたのですね。(魔女たちは警察のチンコいじったりして遊んでた)

なお、ブシューッと血が飛び交っている間、マルコスに投票しなかったセーフの皆さんたち?ダンサー?はずーっと「ロブスター」の森の住民みたいに踊っています。

スージーは、肉塊にされていたクロエ・グレース・モレッツちゃんとサラちゃんに「どうしたい?」と希望を聞き「死なせて」というと、安らかに死なせてあげるー魂の解放をしてあげます。また妻を強制収容所で亡くしたことを知り、罪悪感を背負うクレンペラー博士の記憶を奪うことで罪悪感から解放します。魔女が救世主の役割を担ったわけで、これはダリオ・アルジェント監督のオリジナル版とまったく違う結末となりました。

確かにオリジナルと違う展開になってダリオ・アルジェント監督が怒りたくなる気持ちは理解できるけど、オリジナルから41年も経過して時代が変化しているので、こういうリメイクもありなんじゃないかなぁ。オリジナルに忠実に作るのもアリだろうし。とりわけ現代のように権力を持つ者が権力を乱用しまくっている社会にはマッチした映画だし、おもしろい試みだと思う。

続編が観たくなるよね。

最後にスージーの生家に飾られていた美しいセンテンスを皆で復唱しましょう。 映画のテーマが力の乱用・悪用ということで、母は強大なパワーを持っていること、そしてそれを悪用しないように気を付けましょうという戒めですね。スージーやってくるよ。

A mother is a woman who can take the places of all others but whose place no one else can take.