Netflixオリジナル映画「エンドレス・ウォー」を見た感想です。
2018年2月にアメリカNetflixで配信されました。
日本では2018年10月20日に劇場公開されます。
2年前に消息を絶った妹を探すため、コンゴの内紛地帯に身を投じた女性のスリラーです。
【エンドレス・ウォー】作品情報
原題:El Cuaderno De Sara(Sara's Notebook)
公開年:2018
監督: Norberto López Amado
出演:イヴァン・メンデス(ハミール役)、ベレン・ルエダ(ラウラ役)、マリアン・アルバレス(サラ役)
上映時間:115分
言語:スペイン語、フランス語(コンゴ公用語)、リンガラ語、キトゥバ語
【エンドレス・ウォー】あらすじ
アフリカのコンゴで消息を絶ったサラ。2年後、コルタンの利権をめぐって内紛が絶えないコンゴでも最も危険地帯とされるゴマという場所で、サラの姿が確認される。
姉のラウラは、コンゴに入り、言葉も分からないまサラを探そうとする。
【エンドレス・ウォー】感想
まぁまぁ面白いんだけど、これを見るなら少年兵を真っ向から扱ったビースト・オブ・ノー・ネイション(Netflix)、コンゴ動乱のジャドヴィル包囲戦(Netflix)ブラッド・ダイアモンドあたり見てた方がいいんじゃないかしら。
まず、アフリカ中央に位置するコンゴがいかに危険な地帯になっているか予備知識があれば、ラウラみたいな綺麗な白人女性が、のこのこと1人で行くこと自体リアルに考えられない。ラウラの無謀な行動に終始冷や水を浴びせてしまうんですよね。
まずコンゴについて簡単におさらい。
コンゴは銅,コバルト,ダイヤモンド,金,錫石,コルタン,タンタル、原油などの資源が豊富で、とりわけコルタン埋蔵量は世界の60~80%、タンタルは世界の60%にのぼる。
コルタンはスマホやパソコン、ゲームなどのハイテク電子機器に使われている。コンゴでは無秩序な採掘がおこなわれていて、軍や民兵が子どもをリクルートあるいは誘拐して採掘に当たらせている。
コルタンは1kgあたり600㌦にもなるが、子ども採掘者は1日1ドル未満しかもらえない。
もちろん採掘現場は崩落の危険が常に伴う危険な場所で、毎年何百万の人々が犠牲になっている。コルタンはいつしか「ブラッド・コルタン」と呼ばれるようになった。
コルタンの無秩序な採掘のせいでマウンテンゴリラも危機に追いやられている。
コルタンをめぐって将軍たちが内紛を繰り広げており、少年兵士を誘拐・リクルートしたり、強奪、暴行、誘拐、殺人、レイプ、虐殺が横行している。
とりわけ女性への暴力はひどいもので、軍や民兵による残忍な性暴行が何万件も発生しており、女性にとって地上で最悪の場所という異名をとっている。それがコンゴ。
ノーベル平和賞候補者の産婦人科医ドニ・ムクウェゲ医師は、レイプが兵器となっている事実を社会に訴え続けているが、毎年なんと3500件以上の女性が女性器の再建手術を受けにムクウェゲ医師のもとを訪れる。
ムクウェゲ医師が指摘するように、コンゴの内紛の本質は民族紛争にあらず、コルタンやタンタルなどのレアメタル、資源物資を求める経済戦争ということ。
先進国の人々が使うスマホなどハイテク産業が、コンゴの人々の犠牲の上に成り立っている。
このコンゴの地にですね、ラウラという白人金髪のスペイン女性がひとりで妹を探しに行くんですよ!
ちなみにラウラは現地語、分かりません。
ラウラはまず土地勘のあるラテン系ビジネスマンのセルジオに「ゴマまで連れてってくれー」と頼みます。
セルジオは「危険すぎるので連れて行けない」と最初言うんだけど、ラウラは「絶対行く」と言ってききません。
セルジオはなんか他のビジネスのアジェンダをやったりしてて当てにならなそうなので、ラウラは妹サラのかつての恋人スベンに協力を仰ぎます。
スベンはハミールという少年をラウラに紹介します。ハミールはかつて家族を殺され、少年兵士に無理やりさせられた過去を持つようで、土地勘があります。ハミールはもちろん「ゴマなんか絶対いかねー!」と断ります。
するとラウラは無謀にも一人で船でゴマまで行こうとするのよ…国連職員、セルジオ、スベン、ハミールと4つもの「やめとけ」アドバイスを物ともせず、ゴマに行こうとします!
別に行くのはラウラの自由だけど…
でもここで助っ人登場、なぜかハミールが気が変わってラウラのお伴をすることに。
なんでぇ?
まぁいいや、あまりにもナイーブで無謀な金髪白人がみすみす自殺しようとするのを見ていられなかったのかもしれない。
ハミール役はイヴァン・メンデス、この子いいよ!スチール画像の左側に映ってる黒人青年なんだけど、すごく雰囲気ががある!
予想通り、ハミールはラウラのケツ拭き係になってしまいます。トラックの荷台にワラワラと乗って移動していると、途中で民兵に遭遇しちゃいます。というか、民兵が無差別に撃ちまくってきます。
もちろんハミールがラウラを連れて逃げ出します。ラウラはショックを隠せません。来る前に予備知識つけてショック受けとけよ!
2人は教会の神父(白人)に助けられます。ラウラはここでお決まりの肌見せ!白人女性はきまってこういう所でシャツを脱ぎ、タンクトップになるんだけど、危険なエリアでは女性は肌を隠した方がいいと思うの。
翌日、神父が車で送ってくれようとすると、民兵に行く手を阻まれます。二人はこっそり車を抜け出し、深い森の中を進んで行くと、ラウラがヒガシグリーンマンバみたいな緑色のヘビに噛まれます。
ハミールは死にそうなラウラを背負って近くの村へ。村人の女性がラウラを助けてくれます。
翌日、すっかり良くなったラウラは、さっそうとシャツを脱ぎ、また肌見せ!タンクトップ姿で水浴びしてると、今度は村が民兵に襲われます。ハミールはラウラを連れて家の屋根に隠れますが、助けてくれた女性の惨劇を目撃するラウラとハミール。
民兵がいなくなったと思って出て行ったラウラですが、まだいた民兵に襲われます。ハミールが助けてくれます。でもハミールがナタを何度も振り下ろしたので、まるで違う人を見るかのようなラウラ。今ハミールに命を助けられたのに、その視線はないわー。
ふたりでジャングルをウロウロしていると運よく国連部隊に遭遇したので国連基地に連れて行ってもらいます。でもハミールは現地の人なので基地内に入れない。
あぁまたこの展開か…
ラウラはハミールにお金と村の女性からもらったアクセを渡し、礼を言い、民兵になっちゃダメだよーなんつって基地内に戻ります。
優しいハミールはさんざん危険な目に遭わされ、無防備なラウラの命を何度も助けたにもかかわらず「ラウラ、ありがとう」なんつって去って行きます。
ラウラは国連基地で冒頭のビジネスマン、セルジオに再会します。セルジオはラウラの妹がまだ生きていて、サラがいると思われる辺りに行くと言います。
そこでラウラがなんというかと思ったら…
私も行くわ!
いつになったら懲りるんだ!
一行は途中で民兵に取っつかまってサラがいる採掘地に連行され、サラと会えるんだけど…そこでまさかのハミールがスパイ工作。ハミールが将軍に成りすましていた男を暗殺したんで民兵たちが怒り、「お前らの仕業だな!」なんつってラウラたちを追いかけます。
そこでラウラがまたもやピンチの時に現れるはハミール、自分を犠牲にしてラウラたちを逃がします。
お前も、またラウラを助けるのかよ!
白人女性としていつも守られる選民の立場にいながら、この残酷な状況を自分の目で見て世界に伝えたいからコンゴ行ってきました!みたいなノリで映画作るのもう止めたらどうかと思うのね。
タイトルの「サラのノート」は特に何の意味もありません。サラは医師として採掘場の人々を助けられるのは自分しかいないという使命で残るんで、結局ラウラだけ無事に戻ってくるんだけど。
ラウラはコンゴに入る時と出る時とまったく変わっていないし、コルタン採掘についても踏み込んでおらず、子どもを少年兵にしたり危険な採掘をさせたりしているという残酷な事実を白人女性の目を通して見るだけに終始してしまいました。
無知で利己的な理由からコンゴに入り、危険な目に遭ってきましたが、私には何もできませんでした、無力でした、という白人の贖罪にもならない映画でした。白人は「救世主」症候群なるものから逃れられないのかもしれない。
でも弁護するとしたら、コンゴの危険地帯がリアルに描かれていたことですかね。そこに荘厳なBGMを加えたりスローモーションにしたりラウラをオーバーに取り乱させたりせず、淡々と映してくれたのは逆にリアルでした。
評価:50点