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【マンハント:ユナボマー】ドラマの感想:全米を震撼させた爆弾魔

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マンハント:ユナボマー

全米を震撼させた爆弾魔とFBIプロファイラーの捜査を描いた「マンハント:ユナボマー」を視聴した感想です。
全8話です。
Netflixにて視聴しました。

ユナボマー・・・おそらくその名を聞いたことはない人はいないでしょう。1978年から1995年まで、航空業界、大学、金融業界に爆弾を送り付けた爆弾魔。FBI史上、最長となった事件です。

 

マンハント:ユナボマー

「マインドハンター」シーズン1(感想ここ)に設定が似てるので、雰囲気がちょっと似てます。マインドハンターはFBIプロファイラーの誕生とその軌跡、実在の連続殺人犯を扱ったドラマで大変見ごたえがありました。 

ユナボマーの初めての犯行は78年。その後95年までの17年間、FBIはほとんど手がかりを得られませんでした。ほぼ完全犯罪を成し遂げていた恐るべし人物です。

唯一の手掛かりは、87年の犯行時の女性店員による目撃証言に基づいて作成されたスケッチ1枚だけ。地味で地道な捜査を続けていく崖っぷちのFBIエージェントたちの姿をこれ以上ないほどサスペンスフルに描いています。

17年も遅々として進まない捜査のなか、最後に突破口を見つけたのがこのドラマの主人公で、FBIプロファイラーのフィッツジェラルドです。ユナボマーは96年に逮捕され、仮釈放なし8度の終身刑を受けて収監されています。

ユナボマーの本名は、セオドア・カジンスキー。セオドアの愛称テッドとも呼ばれましたが、一般にはユナボマーとして広く知れ渡っています。

ドラマでも説明されますが、ユナボマーはなんとIQ168の数学者でした。飛び級により16歳でハーバード大学に入学、25歳でカリフォルニア大学バークレー校の助教授に就任したという、非常にインテリジェントな人物でした。

一方で、飛び級でハーバードに合格したにも関わらず、成績は良くなかったために指導の地位に就けなかったり、専門性への評価が高いのに生徒からの評判は良くなかったなど、ちょこちょこと彼の基礎には心理的な闇が垣間見れたようですね。

 

ドラマはどこまで真実か

史実を描いたこのドラマ。どこまで真実なのか、ちょっと気になるところだったので、調べてみました。

主人公ジェイムズ・フィッツジェラルドは、実在のFBIプロファイラーです。彼からのOKも出たこの作品。彼によれば、80%は真実だということです。

ドラマでは、フィッツジェラルドのキャラは、複数の人物を合成させたキャラとなっています。フィッツジェラルドがユナボマーとのインタビューをすべて行ったわけでもないし、犯罪現場の検証をすべて行ったわけではないものの、それらを行った人物のことも知っているということです。

フィッツジェラルド氏によれば、ドラマはだいたい真実に沿っているということで、とりわけユナボマーからのメッセージの言語分析と解読はまさにフィッツジェラルド氏そのものだということです。

ただし、逮捕後のユナボマーとの面会やその後のユナボマーとのやり取りはフィクションです。フィッツジェラルド氏は2007年に面会を試みたものの、収監されているユナボマーから「忙しい」とドタキャンされたそう。

その後も手紙を送ったものの、返事はなかったそうです。フィッツジェラルド氏は、ユナボマーはフィッツジェラルド氏が誰かを知っていて、自分の方が頭がいいことを示したいのではないかと考えています。

また、ユナボマー事件を担当して家庭から距離を置いたり、プライベートライフが困難になったのは確かですが、ドラマで描かれているようなユナボマーへの異常な執着心などはフィクションだということです。

フィッツジェラルド氏は、ジョン・ベネ殺人事件や、炭そ菌事件などの捜査にも加わっています。FBI退職後は、人気ドラマ「クリミナルマインド」などのコンサルタントやアドバイザーとしても活躍しています。

 

登場人物

新人FBI捜査官ジェイムズ・フィッツジェラルド(by サム・ワーシントン)

マンハント:ユナボマーフィッツジェラルド

主役のFBIエージェントを演じるのはサム・ワーシントン。アバター以降、パッとしませんが、私はアバターも見ていないので、彼のイメージはターミネーター。あっ、クラッシュ・オブ・ザ・タイタンズも出てましたね。どっちかっていうと体を使った役の方が似合う気がしました。

 

FBI捜査官コール(by ジェレミー・ボブ)

マンハント:ユナボマーコール

フィッツのFBIの上司の一人。ゴッドレス~神の消えた町~で、目から涙が出ちゃう記者を担当していましたね。味がある俳優です。
フィッツのやり方を信用せず、ことあるごとに衝突します。

 

FBI捜査官ジェネーリ(by ベン・ウィーバー)

マンハント:ユナボマージェネーリ(ベン・ウィーバー)

コールやアッカーマンとは違って穏やかなタイプのFBIエージェント。この方、SATCのシーズン1に出ていたスキッピースキッパ―?セリフは少ないですが、けっこういい味出してました。最後にとんでもないことするし。

 

FBI長官アッカーマン(by クリス・ノース)

マンハント:ユナボマーアッカーマン(クリス・ノース)

ご存知、ロー&オーダーやグッドワイフ、SATCのビッグでお馴染みのクリス・ノース。好きだわ。なんだかんだでずっと人気ドラマに出演していますよね。FBI長官役が似合っていました。

 

ユナボマーテッド(セオドア)・カジンスキー(by ポール・ベタニー)

マンハント:ユナボマー テッド・カジンスキー(ポールベタニー)

ユナボマーという大役に抜擢されたのは、イギリス出身の190cmもある長身のポール・ベタニー。最近はアベンジャーズで忙しそうだけど、私はレギオンのポール・ベタニーが好きでした。イケメンじゃないけれど、まぶたが見えない奥目のあの冷たそうな顔が現世の人間ぽくなくて天使役がハマッていた。

 

マンハント:ユナボマーの感想

第3話から急速に面白さを増します。

手がかりがまったくない状態での捜査の過程が非常に面白いです。言語分析による犯罪捜査って90年代でさえ正式に確立していなかったとは。とはいえ、今でこそ普通に見ているクリミナル・マインドのようなFBIのプロファイリングも、マインドハンターで描かれるているように70年代以降に確立したものですから、犯罪心理学自体は比較的ここ最近の新しい学問なんだよなぁと改めて思いました。ホンットに感慨深いわ。

わずか数十年ですけど、新しい学術分野の誕生と展開をこうしてドラマや映画で見れるのは非常にありがたいことです。本作で言語学者のナタリーさんが目をキラキラさせて話してましたが、彼女の興奮が素人でも共有できます。

まだ確立していないシステムを自分たちが発掘しつつある興奮たるや、たまらないでしょうね。自分たちが先駆者になるかもしれないなんて。

しかも、FBI長官アッカーマンや上司コールにさんざん怒鳴られ、過小評価され続けたあと、ギリギリでフィッツの言語分析が捜査方法として活用されることになるきっかけは、皮肉にもユナボマーが17年間も手がかりをまったく残さなかったということですから。

封筒に残されたネイサンRの文字跡の真実が判明したその後10分くらい、鳥肌が立ちましたね。

FBI一世一代の賭けに絡むポリティクスも非常に面白い。どこまでが脚色かはわかりませんが、アーティスト型のフィッツと伝統的捜査を重んじるコールの衝突や、長官アッカーマンの葛藤、マネジメント職という難しいポジション、捜査を続けたいのに続けられないフィッツのフラストレーションなど、見所がたくさんあって、共感しまくり。

ただひとつ、フィッツがユナボマーを見つけたのは同僚のタビーなんですけど、タビーへの仕打ちがひどい。てっきりフィッツが助け船を出すのかと思ったら・・・こんな奴信用できないわ。まぁ、この辺は脚色なのかな?

あとナタリーさんとの不倫もどきは要らなかったな。奥さんの心配していた通りの展開になってて、関係を修復しようとうする兆しもなかったし、ちょっと女性関係だらしないですよね。実際のフィッツジェラルド氏のプライベートライフについては、ちょっと調べたのですが記述がなく、どうなったかは分かりませんでした。

後半にはユナボマーの人生についても描かれています。彼は3人を殺害し、23人を負傷させ、全米を恐怖に陥れたモンスターであり、そこに同情の余地はありません。

しかし彼の心の闇をのぞいていると、私たち誰もの脳裏に時にふともたげる鬱屈した感情やフラストレーション、退行というものを権化したものがこのテッド・カジンスキーであることに愕然とするわけです。

2年も飛び級をした天才的な頭脳でありながら、本人はそれが嫌だったと本作で描かれています。初めてできた友人を女子に奪われ、裏切られ、初めて父親的ロールモデルと出会い、すべてをシェアした相手に裏切られたりと、セオドアの若き日々は辛いものでした。

特筆すべき点は、CIAの前進機関と秘密裏にCIAに雇われていた教授に人体実験を2年もされていたことです。正確には、冷戦下のソビエトのスパイに利用するつもりだったマインドコントロール計画の被験者になっていました。

連続殺人犯がこうした犯行に至るきっかけは、複合的な要素があわさって起きるので、この悲劇的な出来事がユナボマーの犯行に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。

ユナボマーであるセオドアが知人の男の子に数学を教えていたり、いじめっ子に対する対応策をアドバイスしていましたが、これは脚色?めっちゃいいこと言ってましたよ。理想の父親像みたいに。男の子からもらった誕生日パーティの招待状をテーブルに置くシーンも、セオドアに残っている温かい人間らしさが感じられるうまい演出でした。

でも一言言わせてもらうなら、爆弾送るならヘンリー・マレー教授では・・・ただ大学教授あてに爆弾を多数送っていたので、それはやはりマレー教授への恨みによるものかもしれませんね。飛行機やコンピュータ店は、テクノロジーへの怒りとテクノロジーを破壊するため。PR会社と木材業界のロビイストを選んだのは分からない。

このドラマを見るまでは、ユナボマーの素性も知らず、「爆弾を送り続けた頭がいいけどクレイジーなテロリスト」としか見ていなかったんですよね。ぶっちゃけ、この見解も一つの真理ではあるけれど、2年間のMKウルトラ計画(マインドコントロール)は無視できない影響ではないでしょうか。

寡黙で社交性がなく惨めな生活を送っている自身の境遇の責任を社会に転嫁したかっただけであるという見解もある。
引用:セオドア・カジンスキー - Wikipedia

本作は、物事の二面性を追求することの重要性と楽しさを改めて教えてもらった一作でした。

そのうちゾディアックとかジョンベネあたりもドラマになりませんかねー。あれは未解決だから難しいかな。映画の2時間だけでも、めっちゃ怖かったですけれど。