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【ロング・ロード・ホーム】ドラマの感想:アメリカ史上最悪の救出作戦

ロングロードホーム

Long Road Home@National Geographic

海外ドラマ【ロング・ロード・ホーム】を視聴した感想です。

2004年、バグダッドでとアメリカ軍とイラク武装勢力の武力衝突ー通称ブラックサンデーを描いた全8話のドラマです。2017年11月に放映されました。

タイトルのロング・ロード・ホームは、家までの道のりが遠い~という意味で、四面楚歌になった米軍兵士たちが無事に家に帰ることを本望するメタファーとなっています。同時に、帰還した後のPTSDや罪の意識に苦悩する米兵たちが、自分たちのホーム、心の拠り所を探し求めるメタファーでもあります。

 

海外ドラマ【ロング・ロード・ホーム】

ロング・ロード・ホームは、2004年4月4日、イラク、バクダッドの貧困地区で起きたアメリカ軍とイラク武装勢力の武力衝突事件を描いたドラマです。通称ブラックサンデーと呼ばれています。

バグダッドの治安維持のために派兵された米軍兵士は、ほとんど実践経験がない若者でした。襲撃されたのはアメリカ兵18名と通訳1名。米軍が救出にかけつけましたが、8名の兵士が死亡、65名の負傷者を出しました。

本ドラマを制作したナショナル・ジオグラフィックは、舞台となったサドル・シティを本物そっくりに再現し、北米では最大級となる100棟もの建築物を建設したそうです。

出演は、サラ・ウェイン・キャリーズ(ウォーキング・デッドのローリ、プリズンブレイクのサラ)、ケイト・ボズワース(オーランド・ブルームの元カノ)、ハウス・オブ・カーズのマイケル・ケリー、アーノルド・シュワルツェネッガーの息子パトリック・シュワルツェネッガーも兵士役で出演しています。

 

【ロング・ロード・ホーム】の感想

見始めて最初の方は、 兵士役の人たちが棒読みっぽくてクサくてB級さ満点なんですが、戦闘シーンになるとこれが逆に自然に見えてくる不思議。数か月前にこのドラマに初めてチャレンジしたときは、最初の5分でストップして放置したままだったんですが、再チャレンジして正解でした。

兵士役はほとんど無名の人たちばかり(脇役でちょい見たことはあるような人たちばかり)で、有名どころは大隊長のゲイリー(マイケル・ケリー)とその妻(サラ・ウェイン・キャリーズ)、それから兵士の妻(ケイト・ボズワース)ですね。

マイケル・ケリーが出演しているという嬉しい展開。マイケル・ケリーはちょこちょこ色々な役で出演していますが、私のお気に入りキャラはやはりなんといっても、ドーン・オブ・ザ・デッドのCJです。ゾンビファンじゃなきゃ知らないか。ゾンビファンなら知ってるはず。ドーンのキャラCJは、最初は嫌な奴かと思ったら実は根性あって仲間のために自分の命を張っちゃうような奴っていう王道のギャップにしっかりハマッて、DVDまで買っちゃったもの。

でもマイケル・ケリーは「話がわかる奴」キャラも似合うし、本作の大隊長役も似合ってました。まさかのサラ・ウェイン・キャリーズと夫婦役で驚きましたが、歯の浮くようなセリフも自然で、視聴者としてはそれほど恥ずかしさを感じずに済みました。

マイケル・ケリーは普段静かに話すのと、指令を出すなど大きい声を出さなければいけない時には声がよく届くのがまたいいんですよね。でもまあよくもこんなクサいセリフをあんな格好良く笑わずに言えるもんだ、さすが俳優だわと思いました。

大隊長ゲイリーとその妻を筆頭に、かなり敬虔なクリスチャンのアメリカ人の設定なので、この辺はクリスチャンではない日本人の私にはしつこかった印象があります。これから救出のために必死の任務の前にも祈りを捧げたりもするし、ゲイリーの妻もことあるごとに「神が」どうのこうの言うので、強い宗教心がないと「もういいよ」と不敬を抱くかもしれません。

サラ・ウェイン・キャリーズっていつもこういうクィーン・ビー的なキャラを演じている気がします。頼れる先輩ママという感じですけど、こういうキャラはあまり好きではないです。プリズン・ブレイクのサラが一番良かったように思います。ウォーキング・デッドのローリ役もビッチーで憎たらしくて好きでしたけどねww

兵士役ではライドルという若~い青年がウォーキング・デッドのカール(チャンドラー・リッグズ)に見えました。若くて純朴な印象もあって、彼を通じて恐怖感や人を殺めた時のストレス、苦悩が身近に感じられます。

屋上で応戦していた一人バーキンさん。戦闘ものには必ずこういう人をいれるとグッとしまる。プライベート・ライアンのトム・サイズモアみたいなのね。家庭環境が悪かったために若くして軍隊に入隊。でもそのバックグラウンドが戦場では役に立つという皮肉。我が夫も十代の時に若くして入隊した一人ですが、夫も父親と不仲でした。軍隊に入ると決めて2週間後に家を出て行きましたが、彼が家を出た後、彼の父が泣いていたと後で家族から聞きました。

前科者みたいな男性が兵士の中に一人いるんですが、銃で撃たれているのが慣れっこなようで、戦場でもやけに余裕があります。戦場にはギャングとか囚人送った方がいんじゃないでしょうか。抗争で撃たれたり友人亡くしたりして、場慣れしていますよ。

兵士たち一人一人にフォーカスしていたのは、兵士たちへのトリビュートという意味でも良かったと思います。急襲された兵士たちがほとんど実戦経験のない若者たちだったため、理由の分からないまま現地の人に憎まれ、狙われ、生き延びるために反撃し、人を殺さなければならない虚無感を強く感じさせます。それがまた説教くさくないのでいいですね。

実際、危険な地域に派兵されるのは20代のアメリカの若者が多いです。筆者の夫は海軍ですが、彼と出会った時、彼はすでに30代になっていて、すでに危険なエリアへの派兵は何度か経験していたのは幸いでした。20代に出会っていたら、私もこのドラマの家族のように、彼の派兵を見送っていたかもしれませんから。

まぁ付き合って半年で彼が米国本土へのオーダーを受け、2週間後には遠距離になってしまったり、30代になってからも、映画の舞台になったり人権団体が騒いでいるかの地に突然派兵されたりして、私たちの結婚が延期になったりしましたけどね・・・150人くらいの中から一人選ばれてしまう不運よ。彼はMPで刑務所の経験が多くあるので、仕方なかったのかもしれません。帰ってきたころの彼の様子は、それは険しくダークでした。今はだいぶ丸くなって、顔つきも丸くなりました。太っただけのような気もします。

ちなみに彼は任務のことは一切話してくれません。どんな様子かをちょこっと話してくれる時もありますが、ほとんど話してくれないので、はっきりいって私は軍のことを殆ど知りません。かの地では、いわゆる拷問がずっと論議されていて、彼は拷問はないと言っていましたが、それも本当かどうか分かりませんよ。

ただ、まだ軍に入って間もない若者なんかは、本作のように、任務のストレスなどから泣いていたりする人もいるようです。え?うちの夫ですか?彼が力を発揮するのは、他の人たちが泣くような場所ですよ・・・he is better off in hell とでも言いましょうか。天国より地獄に住む方が居心地がいい人がいるのです。

戦闘シーンは嫌になるほど続きます。戦況が悪くなってくると、「助っ人はよ」とエリック・バナの顔が浮かんでしまうほどブラックホーク・ダウンは凄かったのですが、本作も同じように大変な銃撃戦でございます。映画の13時間~ベンガジの秘密の兵士~(感想ここ)を思い出しましたね。

救出チームの最後尾を走るトラックは、上が開いてるんで、建物の上から撃ってくる武装勢力たちの格好の的になっていた気がするんですが、あれはまずいんじゃないですか?もっとこう、上まですっぽり装甲されたトラックみたいなので、銃口だけ出して撃つようなのないんですか・・・

もう米軍はそろそろロボコップとかアイアンマンみたいなの作って戦わせた方がいんじゃないですかね。米国の技術なら、そろそろできるんじゃないかと思うんですけれど、まだそこまではいかないのかしら。

武装勢力がジリジリと近寄って来た時はキツすぎましたね。彼らの作戦がクソすぎて、信じがたいほどです。このときの軍曹と通訳のハシームのメンタルを考えると、辛すぎて想像がつきません。

このドラマは、傷ついて帰還した兵士たちのその後の描写もあるのですが、これがまた堪えました。 兵士たちはPTSDや仲間を失った罪の意識に悩みますが、互いの存在やVAのヘルプ、そして命を落とした仲間のために、自分のホーム=居場所を見つけます。ある者は、妻子が自分のホームであると言い、ある者は軍と家族の両方がホームであると言います。

米兵にとって「ホーム」という言葉は、単に家や家庭という意味だけではなく、心の拠り所、精神的にも自分が帰る場所という意味合いがあります。私が旦那に言われた言葉の中で一番嬉しかったこと、それは彼が突然オーダーを受けて2週間後に出発する時の彼からの「Remember, you are always my home.」という言葉でした。11年経った今、その言葉が心に沁みます。

見ごたえある良作ドラマ「ロング・ロード・ホーム」はHuluで視聴できます。第8話の本編に加え、第9話では本ドラマの原作者マーサ・ラッダーツによる実際のインタビューや、実際の兵士たち、実際に戦闘が起きたイラクのサダー市などを見ることができます。

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