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【インサイド・ザ・リアル・ナルコス】麻薬カルテルに元特殊部隊の男が潜入取材するドキュメンタリードラマ

インサイド・ザ・リアル・ナルコスドラマの内容と感想

インサイド・ザ・リアル・ナルコス@Netflix

Netflixでドキュメンタリードラマ【インサイド・ザ・リアル・ナルコス】を視聴したので、内容の紹介と感想です。

Netflixオリジナルドラマの【ナルコス】は観たかしら?観てないなら観なさい、今すぐ。なんでいつもこんな偉そうなの。

本作は【ナルコス】のドキュメンタリーみたいなものなので、ナルコスを楽しめたら本作のドキュメンタリーも一見に値するでしょう。

3話のミニシリーズなので、さくっと1日で観れちゃうよ。

 

【インサイド・ザ・リアル・ナルコス】

シーズン1は全3話。

第1話はメキシコ、第2話はコロンビア、第3話はペルーが舞台です。

麻薬カルテルに潜入取材というアホな命知らずな企画を実行したのは、イギリス人の元特殊部隊の男ジェイソン・フォックス。

ジェイソン・フォックスは、元イギリス海兵隊コマンドー部隊員で、特殊部隊の軍曹をしていました。彼の任務内容は、人質救出や対テロ戦、対反乱作戦(テロやゲリラを鎮圧する作戦行動)、対海上テロ戦、対麻薬ミッションなど。

水中工作員やデモリッション・エキスパート、特殊部隊の犬の調教やジャングルのエキスパートでもあるそうです。

すごい経歴ですね。逆に言えば、これくらい暴力に接している人でなければ、麻薬カルテルに取材しようなどと考えもしないでしょう。

麻薬カルテルに潜入取材とか最初はバカ嘘かと思いましたけど、よくやりましたよジェイソン・フォックス。

 

【インサイド・リアル・ナルコス】第1話:メキシコ

いま地球上で最も危険な麻薬カルテルといえばメキシコというわけで、第1話はジェイソンがメキシコの麻薬カルテルに潜入取材する。

ジェイソンはメキシコのクリアカンに飛んだ。クリアカンといえばシナロア州で最大の都市であり、シナロア・カルテルの本拠地である。

同じくNetflixで【ナルコス:メキシコ編】がこの2018年にリリースされたばかりだが、この先メキシコ編がしばらく続いていくはずなので、シナロア・カルテルもじきに詳しく取り上げられることでしょう。架空という名のもとに。

大麻一つでギャーギャー大騒ぎする人たちのために説明してやるとだ、シナロア・カルテルというのはメキシコで古参にして最大の麻薬カルテルであり、その最高幹部が麻薬王エルチャポことホアキン・グズマンである。

アメリカ連邦政府はエルチャポを「地球上で最も危険で残酷で恐ろしい男」、DEA(アメリカ麻薬取締局)は「パブロ・エスコバル(コロンビアの麻薬王)に匹敵する影響力を持つ麻薬界のゴッドファーザー」と形容している。

ちなみにエルチャポはNetflixオリジナルドラマ【ナルコス:メキシコ編】シーズン1にも登場している(のし上がる前)。

シナロア・カルテルはメキシコの北部全体を支配しているが、メキシコ政府軍や警察以外にも敵は多く、新興カルテルの「ロス・セタス」や、「フアレス・カルテル」「ティファナ・カルテル」といった敵対カルテルとも殺し合いがずっと続いている。

なお、エルチャポは二度の脱獄を図った後、2017年にアメリカに移送された。現在61歳。

そんなエル・チャポが統率していたシナロア・カルテルに潜入したのがジェイソン・フォックスでして、どれだけバカ命知らずなミッションであるかがお判り頂けたでしょうか。

お判りいただけないなら「メキシコ麻薬カルテル」「○○」で検索すれば、いくらでも彼らのアーティスティックな悪魔の所業が見れるものの、検索するのは勧められないし、良い子は絶対見てはならない。

ジェイソンは、クリアカンで地元の信頼できるフィクサーを通じて、シナロア・カルテルの中間管理職に会いに行く。それが冒頭の写真の赤いバンダナの人物だ。

赤バンダナの旦那は、数百人の部下を抱え、周辺の警備を担当している。「色々な人を殺してきたが、まだジャーナリストを殺したことはない。君を殺したら君が初めて殺したジャーナリストになる」といって薄ら笑い。このときの気まずい雰囲気といったら、私なら間違いなく失禁する。

ジェイソンは次にカルテルのシカリオ(ヒットマン)にも接触する。

インサイド・ザ・リアル・ナルコスドラマの内容あらすじ感想

リアル・シカリオ(ヒットマン)とジェイソン・フォックス

シカリオはジェイソンに会う時も緊張感を持っていた。彼曰く、一番の恐怖は殺されること。敵対するカルテルや、メキシコ軍、メキシコ警察など、いつ襲われて命を落とすかわからない日々を過ごしている。

彼がシカリオを仕事にしている理由はただ一つ、金のため、家族を養うためである。一旦この仕事に就けば、何があっても任務を遂行しなければならない。拒否すれば、自分が殺されるし、往々にして家族全員殺されてしまう。

つまり人々が麻薬カルテルのメンバーとして働く背景には、貧困があるわけだ。

ジェイソンが会ったこのシカリオ(写真左)の恐怖は現実のものとなり、その後まもなくして彼は車中で銃撃を受けて殺害された。

ジェイソンは次にメキシコの警察を取材する。

紛争地帯でもないのにバラバラ死体が路上に横たわる国、それがメキシコだ。舞台がメキシコなら、もはやバラバラ死体では驚かなくなる。ジェイソンが取材中も通報が入り、バラバラ死体の現場に向かう。

ジェイソンは特殊部隊員として紛争地域や戦闘地域を経験しているが、ウォーゾーンでないのにバラバラ死体が散見することが信じられないとショックを受けていた。バラバラ死体の多くは、生前に切られているものだ。カルテルは残虐性と暴力を見せつけて恐怖で人々を支配する。

かねてからメキシコの麻薬カルテルには注視していたのと、Netflixオリジナルドラマの【ナルコス】シリーズも観てきているので、本作【インサイド・ザ・リアル・ナルコス】の第1話:メキシコと第2話:コロンビアは既知の内容だったものの、現場のリアルな雰囲気を感じとるのは深淵を覗いているようでブキミこの上ない。

メキシコは麻薬カルテルの力が強大すぎて、警察や軍がとても太刀打ちできない無法地帯という印象だったのだが、実際はカルテル側もとりわけメキシコ軍が厄介で恐れていることを知り得た。

 

【インサイド・リアル・ナルコス】第2話:コロンビア

第2話ではジェイソンがコロンビアに向かう。コロンビアは言わずと知れた麻薬カルテルの地であり、希代の麻薬王パブロ・エスコバールの故郷である。

ジェイソンはパブロ・エスコバールが築いたメデジン・カルテルに向かい、パブロ・エスコバールの腹心の部下ジョン・ベラスケス、通称「ポパイ」に会う。

コロンビアのメデジン・カルテルのヒットマン通称ポパイ(左)とジェイソン・フォックス

【インサイド・ザ・リアル・ナルコス】を鑑賞したなかで、私が一番背筋が冷たくなったのがこのポパイであった。

パブロ・エスコバールは、飛行機を爆破して乗客全員を殺害するテロ行為や邪魔者を一掃する残虐な人間である一方で、地元の貧民のために住宅施設やサッカー場を作ったりと慈善事業にも熱心だったため、いまでも地元民には人気がある異例の麻薬王だ。

そのため、ポパイも、いまでも地元民から挨拶や歓迎を受ける存在だ。地元民と気軽に挨拶を交わし、歓迎を受ける様子は、さながら地元の名士や政治家のようである。

ポパイは自宅にジェイソンを招待した。二人きり+カメラマンになると、ポパイは本来の自分をさらけ出す。ポパイは銃を持ちだし、ジェイソンに見せる。

ジェイソンとの会話の中で、ポパイはジェイソンの額に銃口を向け、「俺たちは必ずここを狙う。ここを2発撃つんだ」と言う。銃に弾は入っていないと信じたいが、私の素人知識の限りでは、たとえ銃弾が入っていなくとも銃口を人に向けるのはタブーである。

しかしカメラの前で、元特殊部隊の男の額にいとも軽々しく銃口を当てる姿は、私には狂気そのものであり、それだけで彼の狂気を垣間見ることができる。

気のいいおじさん風のポパイは、257人を殺したと証言している。

 

【インサイド・リアル・ナルコス】第3話:ペルー

第3話のペルーは、最も多く情報を収穫できた。ペルーが2012年にコカイン畑の面積でコロンビアを抜いていたとはまったく知らなかった。新たなコカイン帝国という不名誉を着せられたペルー。そこには一体どんな麻薬事情が存在するのか。

驚いたことに、ペルーではコカインは伝統的な栽培植物なのだそうだ。ペルーでは、コカの葉を栽培することは合法なのである。人々はコカの葉を噛んだり、コカの葉でコカ茶やコカキャンディ、コカクッキーなどを作っている。コカの葉の豊作を願う祈祷祭りのようなものもある。ペルー人にとってはコカは人々の生活に馴染んでいる植物なのだ。

ジェイソンはコカの葉を栽培し摘んでいる農園を訪れた。農園のペルー人夫婦はごく普通の人々で、コカの葉のおかげで生計を立てられていると言う。

その後ジェイソンは、コカインを精製するペルー人と精製したコカインをリュックに入れて山越えをするペルー人と接触する。

コカインの精製は、山の中の掘っ立て小屋の中だ。小屋の外で物音がしないか、細心の注意を払いながらコカインを精製する。コカインのシェフの仕事は危険な仕事だが、ペルー人は金のためにやっているという。

しかし彼が作る純度95%のコカイン1kgに対し、彼のもうけはなんとわずか150㌦だという。純度95%以上のコカインであれば、米国の末端価格で22万ドル(2400万円)にもなるだろう。

出来たコカインはバックパックを背負った「モチレロ」という運び屋がジャングルを通って運ぶという。モチレロの男も、動機は「家族を養うため」と言った。敵対するギャングの脅威もある危険な山道100キロを歩いて得る収入は、これまたわずか150ポンドに過ぎない。

メキシコ、コロンビア、ペルーとコカインの帝国三国を見てきたジェイソンがいうように、これらの国に住む人々に希望があるとしたら、兵量でナルコスに勝つ道より貧困をどうにかしてなくす道のほうが近道と言えるかもしれない。

【ナルコス】は現在マイTOP10に入る海外ドラマなので、是非見てね。

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