ミセスGのブログ

海外ドラマ&映画の感想をパンピー視点で書いてる。

【グリーンブック】アカデミー賞映画の感想:主演のヴィゴが助演男優賞

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グリーンブック(3月1日公開)

今年のアカデミー賞作品【グリーンブック】をさっそく観てきたので感想です。

アカデミー賞作品で、60年代にヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリがロードトリップするという以外の予備知識ナシの状態で観ました。おそらく良い作品だろうな~と察しがつくと、予備知識なしで観たくなるのですよねぇ。

【グリーンブック】はアカデミー賞作品賞、脚本賞、を受賞、ヴィゴは主演男優賞にノミネート、アリは助演男優賞を受賞しました。

観終わった後に知りましたが、実話を基にしています。

 

【グリーンブック】作品情報

原題:Green Book

公開年:2018年(アメリカ)

監督:ピーター・ファレリー

出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カルデリーニ

上映時間:130分

なお、グリーンブックとは、人種差別が残るアメリカで、黒人がトラブルなく利用できる施設などが書かれたガイドブックのこと。

まぁ、分かりやすく言えば、ミレニアル用のトリップアドバイザー、私のようなジェネレーションX用の地球の歩き方みたいなもんだ。黒人用の…

 

【グリーンブック】あらすじ

人種差別が色濃く残る1960年代、クラブのバウンサー(用心棒)として働いていたイタリア系アメリカ人のトニー(ヴィゴ)は、クラブが2か月閉鎖する間、アフリカ系アメリカ人のピアニスト(アリ)の運転手として南部をツアーして回ることに。

 

【グリーンブック】感想

黒人に偏見と人種差別意識を持ったヴィゴが知的で教養のあるピアニストのアリと過ごすうちに黒人への差別意識を払しょくし、いつのまにか二人の間に友情が芽生えていく…という心温まるお話です。

人種差別を描く映画は数多く、本作も今の時勢にマッチした映画ゆえにアカデミー賞を取った部分もあるだろうと猜疑的な目で見ていた私ですが、映画を見始めて数分、これはいい作品であろうと胸を躍らせた。

まず主演のヴィゴ・モーテンセン。デンマーク系を代表するケツアゴ名優だ。

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ケツアゴだけどヴィゴです

ケツアゴと男性器で有名なだけでなく演じる役にのめり込んでしまうことで有名で、代表作ロード・オブ・ザ・リングではうっかり本気で戦ってしまい共演俳優を本当に殴って青あざだらけにしてしまったことから共演を嫌がられる俳優でもある。

アポカリプス世界で父と息子の崖っぷちサバイバルを描いたスリラー「ロード」では、役の理解のためにホームレス民のマインドを理解しようと道路に住み始めたという噂まで立った。

実際はホームレスにインタビューして勉強したのと過剰な減量のみに留めたらしいが、ヴィゴが役にのめり込むメソッド俳優であることを端的に示したエピソードである。(メソッド俳優については、ふかづめさんに教わった。アリス。)

本作ではイタリア系に扮し、流暢なイタリアンアクセントを披露。ヴィゴを知らない人はきっとイタリア系と信じて疑わないだろう。ちなみにヴィゴは2歳から11歳まで南米に住んでいたためスペイン語も流暢で、ほかにデンマーク語、フランス語も話すマルチリンガル俳優である。

本作ではパンピーを代表して有色人種への偏見を払拭するという偉業に成功している。

そしてインテリジェントで教養のある高名なピアニストにマハラジャ・アリ。

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NYに行きそうな星の王子アリ

出演する作品によって印象がまったく違う俳優だ。ちょうどモハメド・アリが主演するドラマ「ツルー・ディテクティブ」シーズン3を観たところなので、アリの変化に一驚を喫した。

カーネギーホールの上に住んでいるドクター称号を有するアリは、スマートな話し方でトゥルー・ディテクティブの時より声を高く出している。 

アリは全米を代表する高名なピアニストで(ピアノの演奏は鳥肌モノ)、人種差別が色濃く残るアメリカ南部にツアーに行かねばならない。そこでヴィゴを雇うことになる。

ヴィゴは有色人種に危害を加えるようなレイシストではないが、なんとなく黒人を汚いものだと思っている。黒人作業員が口をつけたコップを洗わずに捨ててしまうという具合だ。

実は人種差別の多くは、物理的・心理的な攻撃を加えるといった分かりやすい人種差別言動ではなく、彼のように「よく知らないけどなんとなく嫌悪感がある」というバイアスに基づいた漠然とした人種差別である。

そんなヴィゴのバイアスがアリとロードトリップをするうちに払しょくされていく。またその過程でアリが行く先々で受ける忌むべき人種差別も紹介される。

ヴィゴとアリのペアは相性が良く、さすがに二人のセリフややり取りも終始小気味が良かった。

たとえばアリがケンタッキー・フライド・チキンのチキンさえ食べたことがなく、トニーが「食え!食ってみろ!」と言いながらフライドチキンを後部座席のアリに無理やり勧めるシーンがある。

アリは「お皿もフォークもないのにどうやって食べるの。脂でベトベトするから嫌なの。それに衛生的にちょっとどうかと思う」とまるでスノッブなセレブの子どもぶりを見せる。

その後、「骨はどうするの?」と聞くアリにヴィゴは「こうすんのさ」といってポイ捨て。骨のポイ捨てには喜んだアリだが、ドリンクのポイ捨てをしたヴィゴに車をバックさせてドリンクを拾わせるアリ。今度はヴィゴが子どものよう…といった具合である。

二人の関係は、優秀な有色人種のアリが白人のヴィゴを正してやるという一方通行ではなく、アリも同時にヴィゴにパンピーの楽しみや粗野で素朴な面を教えてもらい感化されるという双方向である。

アリはヴィゴの単語の間違いを正したり、万引きはいけないと教えたり、賭博で小金を設けて満足するだけではいけないと諭す。そんなアリの姿勢にヴィゴは襟元を正すようになり、アリが弾く音色に感銘を受けながら、ヴィゴはいつしかアリをリスペクトするようになる。

アリもヴィゴの粗野だけれども信頼できる実直な面に触れ、次第に心を開くようになる。

フライドチキン食ってる辺りでアリがゲイであることが分かるので、一瞬「ポリコレ」という言葉が浮かんでくるかもしれない。ちなみにアリが演じたドン・シャーリーは生前ゲイであることをカミングアウトしていないが、ゲイであったと信じられている。(YMCAで男性と性行為に及んで手錠をかけられている描写は脚色で、実際はトニーが到着したときにシャーリーがいちゃついていたと話しただけ)

黒人でゲイというリベラルメディアが飛びつくほど大好きなキャラクター像であるが、本作で注目すべきは、アリがパンピー黒人ではなく全米を代表する高名なピアニストであるということだ。

物語の全容が見えない前半では、ヴィゴの差別意識を払拭するためにピラミッドの上にいる黒人を使ってどうするのだろうかと私は訝しがっていた。当時黒人は被人種差別主義者であるが、肌の色という要素を除けば上流階級であるアリが相手であれば、ヴィゴの黒人への偏見が薄れていくのは当然のことだからである。

私たちのような一般人がアリのような教養ある世界的なピアニストに出会ってバイアスを払拭するなんていうケースは限りなく低く、そんなレアで当確予想が限りなく高いケースを持ち出されもなぁ、という思いがあったわけだ。

ところが、物語が進むにつれて、アリは黒人でゲイだけでなく「黒人なのに上流階級」という3つのマイノリティ要素を抱えて苦悩していることが明らかになってくる。アリは黒人にもなり切れず、上流階級でも白人になり切れず、どの社会的グループに属することもできないトリプルマイノリティなのだ。アリは成功しても社会的に自分の居場所が見つけられないことに苦悩しているわけです。

この頃にはトニーはアリとの間にすでに友情が生まれていて、トニーはアリをリスペクトするようになっているので、「上流階級のあんたは黒人だけど黒人でない。俺の方がよっぽど黒人に近い」とバイアスのない率直な意見を言えるようになっている。言われたアリは、自分がどの社会グループにも属せないという事実をトニーに目の前に突き付けられて、抑えていた気持ちが爆発、トニーに本音を吐露するわけです。

全米を代表するピアニストになっても、白人の世界に入れてもらえず、黒人の世界からも隔絶されているアリだが、ヴィゴに触発され、ついに黒人が集まるバーで演奏をして黒人に受け入れてもらったり、最後にはトニーの家族親戚一同に会いに行ったりと、小さいながらも大きなステップを踏むのだった。

この作品はアリがアカデミー助演男優賞をとり、ヴィゴがアカデミー主演男優賞ノミネートされたんだけれども、実はヴィゴ(トニー)がアリ(シャーリー)を助演している作品なのね。だから助演男優賞は主演だけれどもヴィゴにあげて欲しかったのです。

アリもいつものように素晴らしいのだけれど、本作はヴィゴのトニーがあったからこそアリがアカデミー助演男優賞を受賞できたのだと。本記事のタイトルは間違いではなく、そういう意味なのです。分かってくれます?

いい映画でした。去年のアカデミー賞「スリー・ビルボード」よりこっちの方が好き。

正直、ポリコレ全盛期の今、「人種差別をやめよう」映画はプロパガンダ的なニオイを感じて斜めに見てしまう自分を否めないのだけれど、ヴィゴとアリの二人の掛け合いがとにかく楽しくて、二人のロードトリップをずっと観ていたくなるんですねぇ。

正直、「人種差別問題とかどーでもいいから二人の掛け合いをもっと見せてよ」みたいに人種差別をちっぽけな存在にしてしまうくらい素晴らしい二人を観れること、それが本作の一番の魅力かもしれないなぁ。

テーマは人種差別だけど、楽しくて心が温まる映画です。

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二人の笑顔がいい

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