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【ラッカは静かに虐殺されている】ISIS支配下のシリア・ラッカの潜入取材ドキュメンタリー映画の感想

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City of Ghosts © Our Time Projects and A&E Indie Films


アラブの春が吹き荒れた中東。シリアでも、40年に渡るアサド政権を倒そうと自由を求めた民衆が2012年3月にシリア革命を起こす。しかし、政権不在の真空状態に生まれたのは、ISISという史上最悪の残虐な組織であった・・・

2018年4月14日に公開予定の「ラッカは静かに虐殺されている」の感想です。

 

ラッカは静かに虐殺されている

2014年、ISISがシリアのラッカを制圧したあと、シリア内外からラッカの現状を世界に向けて発信し、シリアで何が起きているかを人々に知らしめた市民ジャーナリストの集団を追ったドキュメンタリー作品。

市民ジャーナリストたちは、#RaqqaisBeingSlaughteredSilently というキャンペーンを初め、ウェブサイトやFacebook、Twitterなどでシリアのラッカの情報を世界に向けて発信し続けた。

Raqqa is Being Slaughtered Silently

ドイツに避難したメンバーと、シリアとトルコ国境に残ったメンバーが注意深く連絡を取り合い、細心の注意を払いながら、潜入取材を続ける。

監督は、「カルテル・ランド」のマシュー・ハイネマン。カルテル・ランドも凄かったが、本作も地球上で最も危険な場所のひとつー地獄と言っていいーを扱ったドキュメンタリー。

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マシュー・ハイネマン監督

 

ラッカは静かに虐殺されている 感想

R指定映画です。ショッキングな映像が何度か出ますので、ご注意下さい。

独裁政治であれ、民主政治であれ、国家の中枢に穴があくということは、我々が想像する以上に危険なことであることを思い知る。RBSS(Raqqa is being slaughtered silently)メンバーによれば、ISISは最初は普通の民兵に見えたという。

ところが、彼らがふつうの民兵ではないことをシリアの住民はすぐに知ることになる。

まだISISの残虐非道さが国際社会に知れ渡っていない初期、RBSSメンバーは、文字通り命をかけてラッカの現状を伝え続けた。メンバーの多くが捕まり、拷問、処刑されていった。

ドイツに逃れたメンバーは、自分がRBSSメンバーであることがISISにバレたため、父親を拘束され、処刑された。メンバーは父親の処刑動画を何度も見返す。彼の心情は、とても私には想像できるものではない。

筆者の背筋が一番凍った瞬間は、処刑シーンでもなければ、無残な人の亡骸でもない。2~3歳のヨチヨチ歩きの子どもがナイフを手にして、ぬいぐるみの首を落とそうとしていたシーンであった。

本作では、ドイツに渡ったメンバーたちが、ドイツでも苦悩する様も描いている。祖国を破壊され、家族や友人、仲間を殺され、祖国を追い出され、避難した先でも憎悪のターゲットなる悲劇には、言葉を失うしかない。

ISISは確実に弱体化しているが、RBSSメンバーの言う通り、彼らのイデオロギーは消えることはない。フランス、スペイン、ドイツ、イギリス、アメリカでもISISによるテロは続いている。共通の敵を見誤らないように、共闘が望まれる。また、RBSSメンバーと家族の安否、平和な日々を祈って止まない。