ミセスGのブログ

海外ドラマ&映画の感想、世の中のお話

【ブラック・サマー:Zネーション外伝】シーズン1感想:ガチでおもしろいゾンビドラマ

ブラック・サマー:Zネーション外伝あらすじ感想ゾンビドラマ

ブラック・サマー:Zネーション外伝

我が愛しのゾンビラバーたちよ。

Netflixで配信中の【ブラック・サマー:Zネーション外伝】は観ましたか。

第1話と第2話を観たところで登場人物とあらすじと感想を書いたので、もしよかったら読んでみてね。

私は【ブラック・サマー:Zネーション外伝】を2日で観終わりました。観始めたら止まらなくって。

続きが気になってしまって気が付いたら睡眠削って観ていました。体力のないアラフォーを殺そうとする気なのだろうか。(アラフォーになると睡眠不足は生命の危機を及ぼす)。

ゾンビファン歴30年の女が自信を持ってお勧めする【ブラック・サマー:Zネーション外伝】は、その名の通りゾンビドラマ【Zネーション】の前日譚ドラマである。

(残念ながらZネーションはシーズン5を持って昇天された。どういう終わり方をしたのか、最後まで観たゾンビラバ―の鑑の貴方は教えて下さいねー。)

ブラック・サマーの監督はZネーションでも数話監督をしていたJohn Hyams(英語読めない)で、製作会社はZネーションの会社である。

Zネーションのスピンオフと聞くと、アクションコメディタッチのB級ゾンビドラマ?と思うかもしれない。

と・こ・ろ・が!

本作はZネーションのスピンオフとしての欠片も見えないほど毛質が違う。

予告を見ればわかると思うが、本ドラマのトーンはZネーションとは似ても似つかないほどダークでシリアスだ。

おそらくZネーションのトーンを予想していた視聴者は、いい意味で裏切られるだろう。

【ブラック・サマー:Zネーション外伝】はむしろレイジウイルスに感染してゾンビ化する映画「28日後」とその続編「28週後」、ゾンビ映画の巨匠の故ジョージ・A・ロメロ監督作品「ゾンビ」のリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド(サラ・ポーリー主演)」と同じトーンである。

登場人物は、こちらを参照されたい。 

  

【ブラック・サマー:Zネーション外伝】感想

けっこうお金かかってる。

軍の戦闘機が爆音を立てながら何度も飛行していたり、放置された車が盛りだくさんだし、カーチェイスも迫力あるし、ゾンビはCGじゃなく生身の人間使っている上に大勢いる。

ゾンビファンは頑なに認めたくないことなのだが、ゾンビといえばB級がデフォルトなジャンルなので、B級を予想していた私はあまりの出来の良さにビックリした。

結論から言うと、めちゃめちゃ面白い。

最近のゾンビものドラマと比べても、その差は歴然だ。

「Zネーション」はゾンビアクション満載だけれども、どちらかというとコミカルな要素が大きく、シリアスなゾンビものではない。

ロシアのゾンビドラマ「デイ・アフター・Z」 もアクションはある程度あり、ゾンビもユニークだが、登場キャラが理解に苦しむ言動をとったりするフラストレーションや、ゾンビの原因である企業とのやり取りなど緩慢な展開も多い。(ゾンビもシーズン1の6話くらいまでろくに出てこないので、その前に観るのを辞めてしまう人がいると思われる。)

フリーキッシュー絶望都市ー(感想ここ)は、登場人物がほぼ十代の高校生で、ティーン向け。アクションもあまりなく学校の中で話が進んでいくのでシーズン2で脱落してしまった。

この3作に比べると、ゾンビは出てこないもののNetflixの終末世界ドラマ「レイン(感想ここ)」は健闘していると言える。

本作に出てくるゾンビは全力疾走する上に人数も多い。ゆえに人間も相当走る。

郊外の住宅街でゾンビに転化して人間を追い始めるシーンは「ドーン・オブ・ザ・デッド」に酷似している。ランスの恋人が目の前で車に轢かれるのも「ドーン・オブ・ザ・デッド」のトリビュート的シーンだ。

第1話で逃げ惑う人々が軍の検問所に押し掛け、軍人たちと押し問答するシーンも丁寧だしリアルに描かれている。

第2話では、脅威はゾンビだけでないという現実がさっそく描かれる。ゾンビコンテンツあるあるポイントをきちっと抑えている。

第3話は残念ながらメインキャラのローズとライアンにイライラさせられる。学校にいた者たちの目的がよく分からないものの、何も喋らずに冷酷無慈悲な行為をする描写はなかなか薄気味悪いものを感じられた。

第4話はランスの独壇場なのだが、彼はめっちゃ走る。学校の屋上にひとり残され、雨水管をつたって降りていくディテールや、スクールバスでの攻防など、ゾンビ一人対人間一人なのにずっと見ていられる。この4話だけでも十分に楽しめるので是非見てもらいたい。

第5話はレストランに籠城したウィリアムとサン、そしてピックアップトラックで生き残った3人(男2人、女1人)がなんとかして外にいるゾンビ2人を倒してレストランから脱出しようとする回だ。

小さなレストランが舞台のシチュエーションスリラーに仕上がっており、そこに居合わせた5人の心理戦やパワーバランスもリアルで緊張感がある。

白人、メキシコ人、プエルトリコ人、アジア人がいるこの状況で、アジア人のサンが排除の矛先にされそうになっていたが、現実世界でもきっとアジア人が真っ先にのけ者にされるのだろうと想像できる。同じアジア人としては悪寒がする恐ろしさである。

それでも最終的に最も卑下すべき男が全員にボコられる展開によって救われるのだが、そのあと生きるために生贄を捧げるという非人道的行為はやはり恐ろしい。まあ、あいつはこの先も誰構わず裏切るし利用するので仲間にはなれない人物であるが。

そこにスピアーズとローズたちがたどり着いて合流するという展開もユニークで、構成がしっかりしている。

第6話は一行がどこかの武器庫を襲って武器を手に入れる回。武器庫がある地下では、ナイトクラブさながらに人々が酔っ払い、ドラッグや売春が横行している。文明がなくなったアポカリプスと退廃はセットである。

最終話の8話はスタジアム付近で人間とゾンビのエンドレスな戦いが続くので冗長的であることは否めず、途中で飽きてきたものの、終わり方が心憎くて気に入った。遠目でジョン・グッドマンみたいなの出てくるし。

これはシーズン2を待望するしかない。

登場キャラはバランスが取れている。とくに一言もしゃべらないミステリアスな初老の男性(アール)と犬など、キャラの使い方もなかなか洒落ている。どこからともなく現れ、そして何も言わずに消えて行く彼の素性を知りたくてたまらなくなる。

難をつけるとすれば、もう少し回を増やして逆にテンポを抑えても良かったかもしれない。テンポを抑えることで、キャラを掘り下げることができ、深みも増すだろう。アールについては何も分からないままだったし。

それから軍人がとにかくクソのように描かれている点も気になった。第1話ではローズたち家族が軍人によって引き裂かれるシーンがある。これは監督も言っている通り、現在のアメリカ・メキシコ国境で起きている現状のメタファーである。

アメリカ・メキシコ国境で確かに引き裂かれてしまっている家族もいるのだが、物事はそうシンプルではない。自分の子どもではない子どもを連れて親子であることを偽装してアメリカに入国しようとする不法移民も相当数いたため、親子を別々に尋問しなければならない状況があったのだ。

また、国境に押し寄せるキャラバンによって国境警備隊が機能不全に陥っている現状や、それを利用して麻薬の密輸や不法入国を狙う麻薬カルテルの影もある。事情を考えずに俗物的なメタファーを入れても心は動かない。

こうした点を除けば、8話という短いドラマ構成にも関わらず、ゾンビコンテンツで抑えるべきテーマをすべて抑えていて、無駄な時間は殆どないように感じた。

これはおススメ。