5月25日公開【ゲティ家の身代金】映画のあらすじ&感想です。
ふかづめさん、リドリー・スコット監督のライフワークは続いているようです。
主演はミシェル・ウィリアムズ、共演はマーク・ウォールバーグ、石油王ジャン・ポール・ゲティ役にクリストファー・プラマーです。
石油王ゲティ役は、当初ケビン・スペイシーが演じていましたが、公開2か月前にケビン・スペイシーが性的暴行!というニュースが出たため、ケビン・スペイシーの部分を他のキャストで再撮影したといういわくつきの一本です。
ケビン・スペイシーの代理を務めて石油王ゲティを演じたのはクリストファー・プラマー。クリストファー・プラマーはわずか9日間でゲティのシーンの撮影を終えました。
上映時間は132分と相変わらず長め。一回で見切れずに2日に分けて見たよ…
【ゲティ家の身代金】あらすじ
石油王であり世界一の富豪であるジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された実際の事件を映画化しました。
by リドスコ
1700万ドル(1㌦100円換算で17億円)の身代金を要求されますが、ゲティは「身代金は払わん」とメディアで宣言します。
誘拐された少年の母親は、犯人と交渉しながらゲティ帝国と戦い、なんとか金を工面しようとします。
ゲティ家について
石油王ジャン・ポール・ゲティは祖父の代にアイルランドから米国へ渡った一族で、石油ブームに沸いていた当時、父が石油会社を創設、1914年からジャンも石油採掘事業を手伝い始めます。
父親の死後、金銭問題で母親と不仲になったが、ビジネスは買いたたきと見切り価格の良さで成功する。
世界恐慌時には、全従業員を解雇した後、安く雇い直した。ナチス政権が誕生すると高官たちと親しく付き合い、オーストリア併合時にロスチャイルド家の資産放出を狙った。
ナチスがアメリカに宣戦布告すると本国で役職についたが、FBIの監視下にあった。
大戦後は、イギリスの大邸宅を購入し移住。1948年にはサウジアラビア、イラン、クウェートで権利を獲得し油田を開発する。
1950年には石油やホテルビジネスなど関連会社で40社を保有し1956年、フォーチュン誌で世界一の大富豪に選ばれた。1976年、がんで死去。
こちらが石油王ジャン・ポール・ゲティのリアル写真。
彼の死後は、金を巡って一族が泥沼の訴訟合戦を繰り広げ、最終的にゲティオイルはテキサコに売却されました。
彼には5人の妻との間に5人の子どもがいて、3男のユージーンと最初の妻アビゲイル(本作のミシェル・ウイリアムズ)の長男が、誘拐されたジョン・ポール・ゲティです。ジャンだのジョンだの分かりにくい!
なお、誘拐されたジョンの弟マークは、大手画像配信会社 Getty Images の共同創業者です。えええ、あの Getty か!
ロスアンゼルスにはジャンが多額の費用をかけて建設したジャン・ポール・ゲティ美術館がありますが、完成2年前に本人は亡くなってしまったので一度も訪れることはできませんでした。
ジャン・ポール・ゲティの特徴は以下の3つ。
・ドケチ
・アート好き
・女好き(愛人多数)
【ゲティ家の身代金】感想
リドリースコットがもう分からない。リドリー・スコットの映画は、心から面白かったと思えるものと、なんだこれ?というのと2つに分かれる。
「エイリアン」「ブレードランナー」「グラディエーター」「ブラック・ホーク・ダウン」「テルマ&ルイーズ」「ブラック・レイン」「白い嵐」を作れる人が、何を血迷って「ロビンフッド(ラッセルクロウ版)」「プロメテウス」「コヴェナント」「キングダム・オブ・ヘブン」「ザ・グレイ凍える太陽」とか作るんだろうか。
本作の題材が貴重な事件に基づいていることで期待したけれど、映画を観ているというよりはふかづめさんが言うようにリドスコのライフワークに付き合わされているような気がした。
世界一の富豪が誘拐されたというのに物凄く画面が静か。誘拐された少年も静か、ママも静か、ゲティも静か、みんな落ち着き払っている。
登場するキャラは一次元的にしか描かれておらず、誘拐されたジョン・ポールがどんな子だったかも分からなければ、母親がどんな人だったかも映画が終わってからも掴めない。富豪ジャン・ポール・ゲティがケチでアート好きだということは分かるが、それ以外の顔が一切見えてこない。
メルギブソンの「身代金」の方がよっぽど緊張感もあったし、キャラが活きてた。本作のキャラは全員、勢いがなく死に体をしている。
母親は息子を救うために犯人ともゲティともダブルで交渉・駆け引きをするのだが、犯人と話す時はまるで「義父に金借りようと思ってんだけど、難しいんだよねー」というノリだし、息子が誘拐されて耳を削がれたというのに取り乱すシーンもほとんどなく、人間らしさを感じない。
それはもう「コヴェナント」の再現のように、登場キャラがモブキャラ。リドスコはどこへ向かっているのだろうか。内へ内へと向かっているような気がしてならない。
富豪の孫が誘拐され、富豪は「びた一文払わねえ」という悲劇は、ドラマチックで映画的においしい題材のはずなのに、本作はドラマチックさのないドラマで、情熱も何も見えなかった。
ケビン・スペイシー代理のクリストファー・プラマーは良かったけれど、やはりケビン・スペイシーのゲティが観たかったな。
評価:50点