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【父の秘密】あらすじ&感想:暴力の不条理を描いた胸糞悪い作品

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父の秘密


かねてから見たかった「父の秘密」を視聴した感想です。高校生の女の子が執拗なイジメを受けるストーリーなので、憂鬱になると噂の一作です。

思っていたより過激で予想通り憂鬱になりましたが、同時に「暴力」について色々考えさせられた作品です。

ネタバレあり

 

【父の秘密】作品情報

原題:Después de Lucía(After Lucia)
製作年:2012年
上映時間:103分
監督:ミシェル・フランコ
言語:スペイン語
受賞:カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でグランプリを受賞
ジャンル:ドラマ

 

【父の秘密】あらすじ

妻を亡くして失意の底にいるロベルト(エルマン・メンドーサ)と娘のアレハンドラ(テッサ・イア)は、メキシコシティへと移り住む。

二人は見知らぬ土地で再スタートを切ろうとするものの、なかなか喪失感から逃れられずにいた。
アレハンドラは転校先の学校で友達もでき、少しずつ明るさを取り戻していくが、ある日、盗撮された性行為をインターネットで流され……。

(引用:シネマトゥデイ)

 

【父の秘密】感想

定点カメラというのでしょうか。カメラを固定してその場所からすべてを撮る撮影方法です。カメラが動かないので、まるで自分がその場にいるかのように臨場感があります。内容が内容だけに臨場感を感じたくないのに、この映画はイジメという暴力をまっすぐに伝えてきます。

原題のLuciaは、劇中の事故死した妻の名前です。見終わって考えると、タイトルもピッタリだなと思いました。

娘アレハンドラが性行為の動画をネットに流されてしまって虐められるという知識はあったのですが、これほど過激だとは予想していなかったので、胸糞悪くなりました。おそらく自分の子どもがアレハンドラだったら全員ぶち殺したくなるほどの行為です。

「狂気は躊躇を知らない」というキャッチコピーがついていますが、躊躇を知らないどころか狂気は加速します。いったん獲物となってしまったアレハンドラは、いじめっ子たちの目にはもはや同じ人間としては見られず、サブヒューマンとして見られていることが画面を通して伝わってくるので、これはキツイですよ。

イジメが加速していくと、被害者はおろか、加害者でさえも、なぜこうなっているのか分からなくなっていくのではないでしょうか。そこではいかなる論理性も理解も存在せず、コミュニケーションも役に立つことがないーまさに狂気であると言えます。

こいつら全員成敗したる!と思うのは人間として当然の思いなんですが、この映画のミソは最後に父が成敗しようとした相手がホセさんだったということです。

動画を撮影したのはアレハンドラと性行為をした人気者のホセですけど、たぶん動画に流したのはホセを気に入ってるカミーラさんですよね。コトが終わって帰る時の車のやり取りを見ると。

ホセさんは、動画が流れてしまったあとも申し訳ない様子でアレハンドラに何度も話しかけようとしていた。また、アレハンドラを虐めることもなく、その後はただの傍観者でした。

アレハンドラを直接いじめていた少年二人マニュエルとハビエル、カミーラとアイリーンはしれっと先生や保護者の前に座っています。ハビエル(とおそらくマニュエルも?)はアレハンドラをレイプまでしているのです。

未成年ということで何もできない警察に代わり、父は自分の手でケリをつけようとするのですが、それがアレハンドラを虐めていた当本人ではなく傍観者のホセなので、私たちはそこに暴力の不条理さを感じるわけです。

なお、アメリカだと未成年の性行為を動画にアップするのは児童ポルノに当たりますので、撮影した人もアップした人ももちろん重罪に処されます。実はアメリカでもアレハンドラとまったく同じような経験をして自殺や自殺未遂をした女の子たちがいます。ちょっとしたパーティに行って泥酔したところで服を脱がされ、裸を撮られてアップされ、学校中に知られたりとかですね。その子は耐えきれずに、自ら命を絶ちました。

沈黙も多く、説明もないので、ちょうどミヒャエル・ハネケのメキシコ版を見ているようなデジャブ感でした。ハネケの影響を受けているのかな?ハネケよりは見やすいですけどね。

評価:65点