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【クワイエット・プレイス】感想:音を出したら終わり、沈黙のサバイバルホラー

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クワイエット・プレイス

音を出したら終わり!沈黙のサバイバルホラー映画「クワイエット・プレイス」を見た感想です。

主演は「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラント、マイケル米「13時間~ベンガジの秘密の兵士~」でコンタクトを落としていたジョン・クラシンスキーが監督、共演しています。

 

【クワイエット・プレイス】作品情報

原題:A Quiet Place
公開年:2018年
上映時間:90分
監督:ジョン・クラシンスキー
出演:エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー、ミリセント・シモンズ
製作国:アメリカ
言語:英語
ジャンル:ホラー&スリラー

タイトルをずっと Quiet Please(クワイエット・プリーズ)だと勘違いしてて、劇場の窓口でフフッと笑われましたー

父親を演じるジョン・クラシンスキーは「13時間~ベンガジの秘密の兵士~」でコンタクトを落としたジャックである。本作品では主演と監督を務めている。

聴覚障害をもつ長女役のミリセント・シモンズは自身も聴覚障害のある子で、映画はワンダーストラックに続いてこれが2作目。

 

【クワイエット・プレイス】あらすじ

音を出すとクリーチャーが数秒で辻斬りしにやってくるアポカリプス世界で、音を立てないように抜き足差し足忍び足で暮らす5人の家族。

428日くらい沈黙ライフを続ける家族だが、よりによって母ちゃんが音を出すのが唯一の仕事である赤子を産み落とす日が迫ってきていた。なに妊娠しとんねーん。 

 

【クワイエット・プレイス】感想

「ドント・ブリーズ」に続き、ノンセガールの「沈黙のホラーシリーズ」第2弾は、退役軍人の爺さんじゃなくて素早いクリーチャーが相手である。

これがどんなのかというと、ストレンジャーシングスのデモゴーゴンにデッドリースポーンを頭にくっつけたような風貌だ。耳が異常に良く、それもそのはず耳がスピーカーになっている。

ストレンジャー・シングスの感想を読む

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ストレンジャーシングス

人間を食べる描写はなかったが、カマキリみたいな腕でとにかく辻斬りしようとするし、顔はデッドリースポーンなのでおそらく最後は食すのかもしれない。

おそろしく耳がいいので、音を出すとどこからともなく飛んできて辻斬られるので、家族は道に砂を撒いて年中裸足で暮らしている。枯れ葉とか踏んじゃうとクシャクシャいうから。

皿もカチャカチャ音がいうので、バナナの葉っぱみたいな大きい葉を使っている。家族は手話で話をするが、蚊の鳴くような囁き声ならなんとかセーフレベル。

図書館の音40デシベルでボーダーラインというところだろうか。普通の会話60デシベルは無理、電車の80デシベルなら間違いなく即死である。

世界はクリーチャーにほぼ絶滅されたっぽい。一家の付近で確認されたのは3体のようだ。

冒頭からクリーチャーがあらかた全容を現すまではものすごい緊張感がある。ここアメリカは観客のノイズとともに映画を楽しむのがデフォルトであるが、本作はノイズを出すと即死するのでノリやすいアメリカ人は一緒になってノイズを出さぬようシーンとしていた。

ポップコーンをゴソゴソ食べる音さえ出しづらかった。「ああオナラが出たくなったらどうしよう」といつものようにいらん心配をしていたら、映画のキャラはオナラもゲップもクシャミも咳も我慢してるのだろうかと考えを巡らした。オナラをプゥと出したら即死ーなかなか厳しい世界である。

しかしよく考えてみるとクリーチャーは聴覚が異常に発達しているがために、会話レベルの60デシベルが飛行機の爆音である120デシベル以上なのであって、そんな大きい生活音を日常でいつも聞かされていたら辻斬りしたくなる気持ちも分からないでもない。

ドントブリーズ状態になって息も止めていたのに、昔のホラー映画みたいな手口使って突然大きい音を出したりするので、ビクッとしてポップコーンを落としそうになる自分に怒ること数回。

音を立てちゃいけないと分かっていても、スピードスケートの小平奈緒選手になる夫婦。

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しかしこの夫妻は子どもたちには静かにしろと言うくせに、音製造機である子どもを作ってたりする。ウォーキングデッドのローリ並みにタイミングをわきまえない、なんとも身勝手な親である。その前に子どもをつくる行為は音を出さずに一体どうやってやったのだろうかと考え込んでしまったのは私だけじゃあるまい。 

しかしこの妊娠している設定が中盤からものすごい生きてくるので、私のように「なに妊娠しとんねん」と思わずに有難がって頂きたい。

さてこんな沈黙ライフのなか、緊張感がマックスに達するのはエミリー・ブラントがよりによって一人の時に破水してからだ。

破水して陣痛の痛みに耐えながら出産の準備をしようと地下に向かうも、「危ないよーおっかさん、それ刺さるよー」と観客がかねてから心配していた階段のクギに、ホームアローンばりに足をプッ刺してしまうエミリー・ブラント。

その音ですかさず「ジブン、生活音うるさいでー!」とやってくるデモゴーゴン。ここからエミリー・ブラントの映画史上初の沈黙の陣痛が始まる。

エミリー・ブラントはプラダを着た悪魔やシャネルを着たアンハサウェイ、はてはシカリオwithデルトロに至るまで戦ってきた勇者であるが、今回はデモゴーゴンにバレないように沈黙しながら自力で陣痛に耐え、赤子が出ないように両手で押さえて我慢するという前代未聞の偉業を成し遂げる。

赤子が出たら最後、オギャーといった瞬間にデモゴーゴンが辻斬りしに飛んでくるからだ。

もうこのときの描写は凄まじく苦しくて息をするのを忘れてしまった。朝の満員電車に乗ってたらお腹がゴロゴロしてきたのに信号だかなんだかで電車が途中で停まってしまい、お腹の痛みと戦いながら便意を必死にこらえる苦しみを遥かに越す。

いよいよ耐えられくなくなった時に雄たけびをあげるエミリー・ブラントに心底同情してしまう。

 これまでエミリー・ブラントについては好きでも嫌いでもなかったのだが、沈黙の陣痛の末に出産してしまうエミリー・ブラントが気に入った。いま企画中の好きな女優ランキングTOP10に入れるかもしれない。

さて本作の立役者はなんといっても自身が聴覚障害をもっているミリセント・シモンズである。自分の優しさのせいで家族が大きなダメージを受けてしまったことで自責の念に駆られている。そして、そのせいで父親が自分を愛していないと思い込んでいる。

この父娘の微妙な親子関係がホラー映画の中でもちゃんとしたヒューマンドラマを作り上げており、その成功要因がミリセント・シモンズである。

劇中、エミリー・ブラントが「子どもたちを守れかったら意味がない」みたいなことを言うのだが、父親の無条件の愛が最後のカギとなるストーリー展開は、昔からある手法でありながらも今見るとやけに新鮮に感じて切なかった。

沈黙の設定には少し突っ込みたくなるところもあった。たとえば滝の側なら滝の音で声がかき消されるので普通に話せるという設定なのだが、滝のすぐ側で叫んでもオケなら、じゃあ滝つぼ付近で生活したほうが良くはないだろうか?

また納屋に地下を作ってマットレスでフタをして防音に近い部屋を作っていたが、あれはどういう仕掛けだったのかよく分からなかった。防音材を張っていたのか、なんなのか。マットレスごときで音が防げるとは思わないのだが。

しかしこうしたツッコミをするのも野暮なほど映画の出来映えがよく、家族を演じたキャスト全員を称賛したい。

評価:75点