Netflixオリジナルドラマ【13の理由】シーズン3を観終わった感想です。
【13の理由】は、センセーショナルな思春期のハイスクール・キッズを描いて度々物議を醸したドラマです。
とりわけシーズン1のショッキングな自殺シーンは論争の的になり、ついには専門家が恐れていた悲劇が起こってしまいました。ドラマの自殺シーンに感化された19歳の女子が同じ方法で自殺してしまったのです。事件の報告を受けて、Netflixは件のシーンを削除しました。
私も問題のシーン放映には反対の立場で、これはきっと感化されて自殺を試みる人が出るのではないかと懸念しました。暴力が伝染するのは分かっていることなのに。
製作側は、自殺は決して美しいものでなく地獄のようなものというメッセージを伝えたかったようですが、まったく逆効果かつ危険な判断だと思いました。
シーズン2でも残虐な性的暴行シーンがあり、ホラー映画を観慣れている私でもキツかったのを覚えています。
ドラマ内で自殺をした主役ハンナ・ベイカーの物語が幕を閉じたので、シーズン2で終了するかと思いきゃ、シーズン3までリリースされると聞いて多少心配でした。
もっともハンナ役のキャサリンは出演の意向なしとキッパリ断言していたので、役者として賢明な判断だったと思います。【13の理由】はハンナ・ベイカーの物語だったのだから、シーズン2できっぱり終了すべきだったと思う。
それではシーズン3を観終わった感想です。
ネタバレ注意
【13の理由】シーズン3あらすじ要約と感想
アニの存在がドラマを台無しにした
日本では分からないけれど、アメリカではアニというキャラに非難轟轟です。勢いあまってアニ役の女優さんがSNSでハラスメントを受けるという事態にまで。
怒りの矛先を女優さんにぶつけるのはやめましょう。
とはいえ、アニというキャラが台無しにしたといっても過言ではありません。ファンのお怒りもご尤も。そのくらいアニというキャラは場違い、不要キャラでした。
新キャラというハンデを背負っていたにしても、あまりにも場違い過ぎました。明らかにアニだけ浮いてる。まるで他のドラマからキャラを投入したような印象でした。
くわえてアニが病的に嘘つきで、詮索好きで、自分の立場をわきまえずに他人の領域にドカドカ入っていく様や、グループを引っ掻き回す様子に、苛々はマックスに達してしまいました。
アニがナレーションで喋っていた相手はアレックスの父、スタンドール保安官です。スタンドール保安官は13時間もこの娘の話を聞いていたのか。あんた、ヒーローや。
第1話から延々とアニの
「○○には秘密があった」
「○○には知らない一面があった」
「○○に殺人ができるのだろうか?わからない」
「○○が犯人に違いない」
というナレーションが続いて、心底ウンザリしていたので、7話まで観終わったあとに最終回に飛んじゃおうかなという衝動に駆られました。でも「後半の9話~12話あたりはダイジョブよ!なぜならアニのナレーションが最小限で、アニの登場回数も少ないからw」というアメリカ人のコメントを目にしたので頑張って全部見ました。
確かに9話~12話あたりは改善していて、やっぱりアニのナレーションと登場が少なかったので、オリジナルキャストだけのほうがなんぼか良かったはずだと確信しました。
仲間に質問しまくって過去をほじくり返して「○○が殺ったと思う(○○は毎回違う人)」とかチクりまくってグループを引っ掻きまわした挙句、殺人を隠蔽するオーケストラになった挙句、クレイとくっつくなんて。
クレイもさぁ、対抗試合でブライスとアニがキスしているのを目撃したくせに、なんでその後は何も気づいていないみたいなフリしてんの?
アニが「私が犯した最大の過ちは、ブライスと寝たこと。あなたのは?」とかジェシカに聞くシーンなんて、「なんだこいつ!?」と憤慨しましたね。他人を詮索するための手管が酷い。
しかもブライスはジェシカをレイプした犯人…仲よくなった女子をレイプした男とふつう寝るか?
そもそもアニに質問されて答える必要もないし、質問された時点で「なんでお前に質問されなきゃいけないんだ」と思いますよね。
なんでこんな場違いで鬱陶しいキャラを入れてきたんだろう。
なんならナレーションはブライスの声で良かったと思うんですよね。シーズン1のナレーションがハンナの声だったように。
実は私はイギリス英語が好きなんですが(聞き取りやすいから)、実はアメリカ人はイギリス英語に対して羨望と耳障りという2つのアンビバレントな感情を隠し持っています。イギリス英語に憧れながらも、ずっと聴いてると耳障り…というわけですね。
アメリカではアメリカナイズされることが暗黙のうちに奨励されます。それは意思表示をする、思ったことを率直に言語化する、といった内面的なことでもあれば、アメリカ英語で話すという対面的なことでもあります。
過小評価されがちですが、英語を話すときに自国のアクセントを極力抑えてアメリカ英語で話すということは、アメリカ社会に馴染むためにはとても重要なことなのです。
アクセントが強くてもアメリカ人は大体理解してくれますが、アクセントの強い英語つまり耳障りな英語を話す人物とずっと付き合って行こうとは彼らは思わないでしょう。自然に同じアクセントを共有する人たち同士でまとまっていくことになります。
大体その地に長く居れば、その土地のアクセントが自然に身について行くものです。したがって、アメリカ生活が長くなっても変わらずイギリス英語を話していると、イギリス英語に憧れを隠し持つアメリカ人としては、「いまだにアクセントを拾ってやがる、お高くとまりやがって」というネガティブな印象を抱くようになります。
人気ドラマ「ウォーキング・デッド」の主人公リック・グライムズを演じたアンドリュー・リンカーンはイギリス人ですが、完璧なクイーンズ・イングリッシュ(正当とされるイギリス英語)を隠して挑みました。彼がイギリス英語のままドラマを進行させていたら、ファンの反応もおそらく違っていたでしょう。
ビジネスの場でもきっと同じことが言えるはずです。たとえ流暢に喋っていても発音がアメリカナイズされていないと「外国人」という印象が拭えずに、重要な案件が回ってこないかもしれません。
日本人は一般に英語が苦手とされていますが、発音を少し気を付けるだけでも相手が抱く印象は大分違いますので、英語を話す機会では発音に気を付けてみてください。
ああっ、超脱線。何の話をしているんだろうか、私は。
アニね。アニ。
最終回で銃が見つかったことからお分かりのように、シーズン4が製作されるらしいんだけど、どうかアニが出てきませんように…(女優さんには御免なさい。)
ブライス殺しの犯人は誰?
最終話まで引っ張ったブライス殺しの犯人は一体誰だったのでしょうか!
犯人はね、端的に言えばアレックスや。
あとザックとジェシカ(ジェス)や。
対抗試合のとき、クロエ(ブライスの元カノ)がザックに「試合がんばってーウフフ」みたいに仲良くしているところをブライスが目撃しちゃうの。しかもクロエちゃんが「あんたの子を妊娠したけど中絶した。ザックがずっとついててくれた」みたいな余計な一言を言っちゃう。
プライドを傷つけられ怒ったブライスは、試合中の乱闘騒ぎのさなかにザックの足を攻撃して怪我させちゃう。(ザックはブライスに負わされた怪我で選手生命を絶たれることに。)
試合後、ブライスが懺悔テープをジェシカに渡そうと桟橋で待ってると、ザックがやってきてブライスをコテンパンにのしちゃう。足の骨も折る。ブライス歩けない。
ザックが去った後、ジェシカがアレックスと一緒にやってくる。アレックスはブライスを病院に連れて行こうとして肩を貸してやるが、怒りに燃えているブライスは「ザックを破滅させてやる~」みたいに悪態付き始めるので、「ダメだ、こいつは一生変わらない」とふんだアレックスが川に落としちゃう。ジェシカも見殺しにしちゃう。
ブライスは溺死…というわけです。
はよ言えや!
シーズン3の内容、1話に纏められたよね。
ブライスは「銃で撃たれて死んだ」「殴打されて死んだ」てのは何だったの?殴打ってのはザックによる暴行ってのは分かるけど、タイラーが撮った写真ではブライスの後頭部が吹き飛んでいたけど…魚に食われた?
あとさぁ、あれだけの重傷を負わせたザックが何の罪にも問われずに無罪放免て…私の生きる現代社会とずいぶん違うんだが、どこの異次元社会ですか。
アレックスとジェシカは自分たちが殺した(見殺しにした)ことを隠して、クレイが逮捕されても放置プレイしてたよね。それなのにクレイも「お前たちのせいで!」とか責めるわけでもないしさぁ…クレイの性格だったら、アレックスとジェシカに自首を進めてたよね。トニーもきっと。
あ…思ったんだけど、トニーってプエルトリカンじゃなかった…?プエルトリコはアメリカ領だから、家族が強制送還なんてあり得ないはずなんだけど…いつのまにかメキシカンになったんか?
あとトニーの話すスペイン語はメキシカンともプエルトリカンとも違う感じで、ニューヨーカーっぽいスペイン語だったのが気になった。
殺人を無罪にする方法
前半は「プリティ・リトル・ライアーズ」そのものだったけど、後半は「殺人を無罪にする方法」になっちゃったなー。(殺人を無罪にする方法はシーズン3でドロップアウトした。)
終わり方、どう思った?
私は最悪だと思った。ブライスは連続レイプ魔だけれども、あの死に方はないわ。おまけにグループで惨い殺人を隠蔽して、最後は「俺たちBFF」みたいにスマイル浮かべらられて、視聴者はどう思えばいいんだろう。
結局「目には目を」的なあらすじになってしまったけれど、ブライスの贖罪意識を丁寧に描いていたのは何のためだったのか…製作側が言うように、ブライスを善人に仕立て上げたかったわけじゃなく、ブライスも人間であるということを描きたかったというのは分かるけど、それなら何故あんな惨たらしく殺害し、それをまるで美談のように仕立て上げているのか…
このドラマに出演しているキッズ(実際は皆成人w)たちは、誰ひとり罪を被らず、責任をとらず仕舞い…ていうかお前たち、それでいいわけ?皆クソだわ。
モンティもドぐされ外道だったけど、モンティをモンティに至らしめた生い立ちには殆ど触れず仕舞いで、おまけに殺人の罪まで負わされるのはなぁ…
真実を知りたいノーラ(ブライスの母)の気持ちとか、もうちょっと考えてみませんか?クレイもさぁ、モンティに罪かぶせておいて、のこのこノーラに会いに行ってんじゃないよ。失礼極まりないよ。
シーズン4で彼らが罰を受けない限り、納得いかない。
ブライスの贖罪
さんざん悪口を言ったところで、良かった点にも触れておきましょうかね。
まずブライスさん。ブライスさんはとても良かった。中の俳優さんが非常に良かったね。ちなみにブライスさんの中の俳優さんは25歳なんだけど、実は若ハゲで、あの綺麗な金髪はウイッグだって知ってた?全然気づかなかったよ。
レイプ魔だということを除くと、ブライスにはとてもいい面があることも分かりましたね。シーズン1でもシーズン2でも、一度も見せなかった善人ぶりですけどねぇ。
お金持ちだから見せられる姿勢なのかもしれないけど、ブライスって全然動じないですよね。タイラーが突然押し入って銃を突きつけられても超冷静だし、相手が劇オコのシーンでもいつも冷静で説得しちゃうという超コミュニケーション・スキル高し。
トニーに金銭的な支援をしてあげたり、タイラーのためにモンティにくぎを刺したり、といった描写はとてもブライスとは思えないけれど(あなた誰状態)、タイラーとブライスの間にかすかに芽生え始めた友情は心にジーンとくる美しいものでした。
タイラーの変化
ブライスの贖罪路線とあわせてフォーカスすべきは、やはりタイラーの変化ですね。
アニというキャラをなくして、ブライスとタイラー、そしてモンティにもっとフォーカスすべきだったと思います。
アメリカ派銃乱射事件が後を絶たないですからね。タイラーのキャラ設定は説得力があって中の俳優さんも良かったね。
タイラーがレイプされたことをクレイに初めて告白してハグするシーンとか、ブライスがタイラーに「俺がモンティに話つけてやる」みたいに協力するシーンとか、タイラー絡みのシーンは良シーンばかりでしたね。
海から銃があがってきちゃったので、シーズン4でタイラーが大丈夫か心配ですけど。
モンティのウェスティン
ブライス殺害の濡れ衣を着せられて獄中で殺されてしまったモンティ。これも酷い…
さてモンティが最後にベッドインした男性ウェスティンだっけ?彼が果たしてシーズン4に戻ってくるのかどうか。戻ってきて欲しいなぁ!登場シーンも台詞も少ないけど、存在感ありましたよね。
隠ぺいをオーケストラしたアニに「モンティはあの時僕と一緒だった」と言って憮然としていたけれど、果たしてどうなるのでしょうか。もうアニがクレイ達に「あいつがいる限り、平穏は訪れない。目撃者は消さないと!」みたいになってウェスティンを殺そうとして捕まればいいよ。
モンティの生い立ちは、父ちゃんにカミングアウトしたところで「ホモ野郎」と言われて唾をかけられる、という端的な描写しかなかったのが残念でした。いやー、ここは掘り下げないと。なんで掘り下げないの?「ゲイのキャラを入れればいい」くらいにしか思ってないように感じるよなぁ。
モンティを獄中で生かしておいたほうが絶対良かったと思う。
というわけで、【13の理由】シーズン3のあらすじ&感想でした。
皆さんはどう思われましたか?