2020年3月にアメリカのHuluで放映が開始された新作ドラマ「リトル・ファイヤーズ・エブリウェア（原題）」を前半まで観た感想です。
富裕層の家族と貧困層の母子家庭という社会経済的に異なる2つの家族の糸が絡み合うことで起きるドラマを描いています。「デスパレートな妻たち」のコメディ要素をすっぱ抜いた雰囲気です。
ネタバレあり
【リトル・ファイヤーズ・エブリウェア】5話までのあらすじと感想
上のリンクで舞台設定を詳述していますが、舞台は90年代半ばのクリントン政権時代です。
富裕層の白人家族の母イリーナ役をリース・ウィザースプーン、貧困層の母子家庭の母ミア役をケリー・ワシントンが演じています。
とりあえず5話までの大雑把なあらすじと感想です。
リチャードソン家で働き始めたミア
色々あって第1話の最後でミアがリチャードソン家で働くことを了解し、ミアはパートタイムで働くことになります。
働くとはいってもフルタイムではなく、夕飯の仕込みや皿洗い、たまにリチャードソン家で開かれるイベントの手伝いなどです。
すでに気まずい雰囲気になっていた二人なのに何故仕事の契約を結んでしまうのか。
私もアメリカで暮らしてはみたものの、いまだにアメリカ人の心理、真意、社会的な付き合い方を完全に理解はできていないと思うので、この辺の塩梅がまだ分からなかったりする。
逆に娘はアメリカで育ったので、日本人の心理、真意、社会的な付き合い方を理解できずに戸惑うことがあるようです。大人になってもし日本社会で働くことになった時のために日本人特有の人間関係や付き合い方を経験しといたほうがいいと思っていたので、今の時期に経験しておいて良かったのかもしれない。
インターナショナルスクールに通っているのだけれど、その中でもやはり仲が良くなるのは外国人の子か、今までずっと外国にいた子か、ハーフの子が多い。子どもながらに距離感が同じ感覚の子のほうが居心地が良くなるんだと思う。
彼女自身も、アメリカの「ソーシャル・ディスタンス」の方がやりやすいと言っているからなぁ…私も言ってるけど。
何が違うかと言われると、大きな違いとしては日本の付き合いはパーソナル過ぎるということかな。アメリカの場合は、個人としての自分がまず在って、別の個人とそれぞれ付き合っていく。
日本の場合は、他の人たちとの付き合いがあって自分が在るという感じなので、良くも悪くもパーソナルになり過ぎる一面があるかなぁ。
たとえばAさん、Bさん、Cさんがいて、AさんがCさんと揉めると、それはAさんとCさんの問題であるのに、Bさんが間に挟まれて困ったりとか。これがアメリカだと、あくまでもAさんとCさんの間の問題であって、Bさんは「I'm not getting involved」で済んじゃうので、Bさんは別に害を被らない。まぁ、ティーンの世界とか特殊な世界は別だけど、大人の日常の世界だと結構そんな感じ。
あとはAさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんがいて、どこかに行こうということになったけど、Eさんが用事があって行けない、あるいは行く気分じゃないので行かないとなったときにA～Dさんは別に気にしない。でも日本だとEさんは「断るのは悪い」という罪悪感を抱くし、A～Dさんも言葉にはしないまでも「輪を乱す」という目でEさんを見る。
将来的に娘はアメリカに残るのかもしれませんが、できれば日米両方の社会でうまくやっていける社会的スキルを身に着けて欲しい。
グローバル人材だの何だの30年も言われてきたけれど、日本での生き方や身の振り方を知らなければグローバル民になれないし。
とはいってもコロナウイルスが終息した暁には、反グローバリズムが訪れるかもしれないから、どちらにしても順応できるようにしておきたいですね。
ミアの中国人の同僚のBBの事情
ミアが自分の過去を隠して嘘を付いていたことがイリーナにバレてしまいますが、ミアはそこで初めて率直に心を開き、二人は心の距離を縮めます。
お股を自分で見たことあるなし協議までしちゃう。女あるある。イリーナは自分の股間を見たことがないらしく、ミアに見ることを勧められる。
なんだその笑顔は。
女性陣に質問なんだけど、皆は自分の股間を見たことあるよね？
まぁ私も自分でマジマジと見たのは20代になってからだったかもしれないけど。
感想は…「エイリアン出てきそう」だったな。
それ以来、アワビの踊り焼きを見るたびに女性の局部に似ているなと思わずにはいられない。
男性は何故あんな不気味なもののを求めるのか。
おかしな話になってきましたー。
イリーナとミアのわだかまりが溶けたと思われたところで、ミアの娘パールが学校の授業の選択で困ったときにイリーナが動いて解決してくれたことを知り、ミアは再び動揺し、イリーナへのライバル心が再燃してしまいます。
リンク先の記事にも書いたけど、ミア（ケリー・ワシントン）の表情が大袈裟すぎるのが気になって仕方ない。
ケリー・ワシントンのことは美人ということ以外はよく知らないけれど、リース・ウィザーは何故わざわざケリー・ワシントンをご指名、抜擢したのだろうか。
イリーナとミアの関係は、やがてミアの同僚BBの事情によって決定的な亀裂が入ることになります。
BBはミアが働く中華レストランの同僚で、不法移民の中国人です。シングルマザーゆえに貧困に陥り、誰にも頼れず、やむなく自分の赤ちゃんを消防署の前に放置したという過去があります。
そして何の因果か、BBが捨てた娘は、イリーナの親友リンダが養子にした女の子だったことが分かります。わぁ、ドラマにありがちー。
それもミアが探りまくって発覚するんだけどね。
結局ミアがBBに教えちゃって、BBがイリーナの家のパーティ会場に怒鳴り込んで「マイベイビー！」なんつって修羅場が起きてしまいます。
えらい余計なことしてくれますわね！
養子縁組したリンダは長年不妊に悩んでおり、劇中でも死産のシーンがあったり、お子さんをとても欲しがっていたこと、そしてBBの娘ちゃんを愛情たっぷりに育てている様子が伺えます。
イリーナとリンダはBBとお金で決着をつけようとしますが、BBは拒否。
確かミアがマスコミにリークしたんだったけか。マスコミも嗅ぎつけてリンダ母を追い回したりして、リンダ母は精神的に一杯一杯になります。
生みの母だけど貧困シングルペアレンツVS育ての親だけど裕福で愛情たっぷりという2つの環境の間で赤ちゃんをどうしたらよいかというテーマは「ゴーン・ベイビー・ゴーン」でも一生懸命描かれてるけど答えがない問題なので難しいのよね。
ミアとイリーナの歯に衣着せぬ口論
BBの突然の乱入の裏にミアがいることを知ったイリーナはミアに直接対峙します。
この口論が直球過ぎる。
ミア「赤ちゃんの母親はBBなんだよ！私は貴方とは意見が違う。」
イリーナ「その通り！私たちは違う！貴方はルールも守らず、選択や行動には責任が伴うことさえ分かっていない。あなたもBBも酷い母親よ。パールがいい子に育ったのは奇跡」
ミア「奇跡じゃない。私が育てたのよ。私は良い母よ。」
イリーナ「良い母親は自分より子どものニーズを優先させる。良い母親は車で次から次へと移動して子どもに不安定な環境を与えたりしないし、寒い日に赤ちゃんを消防署の前に放置なんてしない。良い母親は良い選択をする。」
ミア「貴方は良い選択なんてしてないでしょ？貴方はすでにその選択を手にしていた。金持ちで白人という特権を既に手にしていたじゃん！」
イリーナ「人種の問題にすり替えるのは卑怯ですー」
ミア「道路で私にメイドになれと頼んだあの時、貴方がすでに人種の問題にしたのよ」
イリーナ「友達だと思ってたのに」
ミア「白人女性はいつもメイドと友達になりたがる。でも私はあなたのメイドじゃないし、友達でもない」
悲憤慷慨を直球で口論するドラマはあまり見かけたことないので驚嘆してしまいました。
確かにねぇ…親は子どもに「なりたいものに何でもなれる」「やればできる」「可能性は無限大」「努力すれば成功できる」とか楽観的な台詞を吐くけど、自己の生まれた環境、家庭の経済状況、人種、人種差別、女性差別、運、そのほか諸々の障害についてはちっとも教えないよね。
現代の教育はポリコレの追い風を受けて「みんな違っていい」「みんな同じ」と、とにかく違いを無くそうと躍起なんだけど、逆に違いを認めた上で障害を認識していかないと、子どもたちも成長していって現実社会で自身の境遇に悲憤慷慨することになるでしょう。
子どもたちには、理想は差別のない世の中だけど、現実は差別が蔓延っているということ、人類は差別と戦い続けていること、差別をする人がいるという現実を教えていく必要があると感じている。
ミアの正体は？
生みの親VS里親論議はひとまず置いておくとして、結局BBは娘を奪い返すために法廷で争うことを決意します。そのためには弁護士費用に3万ドル以上もお金がかかるんだけど、なんとミアがお金を工面するという展開に。
え？生活は困窮しているのにどこにそんな金があるわけ！？と思っていると、どうやら写真をサザビー（オークション）に売ったようです。新聞にパッと出ただけなのでよく見えなかったけど、40万ドルという数字がみえたので価値がそれだけあるということ？
そしてその写真には、ミアと思われる妊娠中の女性がバスタブに座っている姿が映っていました。
これが大々的に新聞に出ていたので、イリーナが「あいつ貧しいわけじゃなかったわけ！？私たちのこと騙してたわけ！？」て感じで怒り、ミアの正体を探ろうとします。
ミアは写真を売る前に写真を見て大泣きしていました。また、単なる同僚のBBの赤ちゃんを取り戻そうという意気込みから鑑みるに、自身も同じような境遇にあるのだろうと見てとれます。それが何なのかは、イリーナが第5話でミアの両親に会いに行ったときに大方判明することに。
最初、私はミアはゲイで、愛するパートナー（女性）との間に精子提供で子ども（パール）を作ったのかと思ったんだけど、ミアは中華レストランのオーナー男性と気晴らしのベッドインしてたので違う。
次に、ミアがパールに父親のことを話さないことから、ミアがレイプされて生んだのがパールなのかと思ったんだけど、祖父母の話からするとこれも違う。
祖父母はパールに会ったことがなく、ミアとも10年会ってないと言います。
さらに、写真でミアのお腹の中にいる子は「ミアの子じゃない」と祖母が言います。
ということは…ミアのお腹の中にいる子は、他の子に養子に出されるはずだったということでしょうかね。あるいは代理母をかって出たので生物学的にも血が繋がらないという線もある。
どちらにしても、他人に渡されるはずだった子という事なんでしょう。だからBBに肩入れして、大金を払ってでもBBの子を取り戻そうとしている。
長女レキシーに起きた出来事
リチャードソン家の優等生の長女レキシーはというと…
妊娠してしまいました。
まずドラッグストアの検査薬を試すシーンですが、この辺がうまかった。検査薬の陽性判定が画面に出るのですが、それを持っているのがパールなの。黒人でシングルペアレントを持つ貧困層のパールが持っているわけです。
傍に白人で優等生で富裕層のレキシーが立っていて「で？どう？」と聞きます。人々は「あぁ、パールが妊娠しちゃったんだな」と先入観を抱くように出来ているのねー。
でも実際に妊娠したのはレキシーの方だったというわけです。
レキシーはBFのブライアンにも親友のセリーナ（チャイニーズ系）にも妊娠したことを言えず、パールに付き添ってもらって中絶クリニックに行きます。
クリニックに母の友人が働いていたため、レキシーは本名を隠してパールの名前を勝手に使います。
パールはそれに気付いてしまいますが、「行く場所がない」というレキシーを連れて自宅に戻ります。
ミアはすぐに事の次第を察してレキシーを宥め、家で休ませてあげますが、娘パールに本当のことを聞きます。
ミアを演じるケリー・ワシントンは好きになれないし、ミアのキャラクターは好ましい人物ではないけれど、ミアの姿勢には学ぶところがたくさんあるんだよなー。
落ち込むパールに「レキシーが貴方のことでなく、貴方が彼女に何をしてあげられるかという視点でしか見ていないのが悔しい」
とか
「どこにも行く当てがない」というレキシーに対して
「あなたには幾らでも行く当てがある。誰もいないという事がどういうことなのか、全然分かっていない」
とか
処女を喪失したミアを叱ったりせず、セーフセックスをしたかどうかだけ聞くとか。
イリーナがNYで元彼に会う
ミアの素性を調べるミッションでNYに飛び立ったイリーナ。ミアに執着してしまって長女レキシーが妊娠中絶したことさえ知りません。
このあたりはミアがBBとその子に執着してしまってパールをよくおざなりにしてしまうのとダブります。
イリーナはニューヨーク・タイムズで働く元彼ジェイミーの元へ。ジェイミー役は眼光鋭いルーク・ブレイシー。
こういう大人な温和な雰囲気の男性も好き。
NYタイムズのジャーナリストにも見えるけど、夜な夜な娼婦を殺している連続殺人鬼にも見える。ルーク・ブレイシーはイマイチ個性が出なくてブレイクしない。
さて元彼とは楽しい食事をして、ミアの調査もしてもらいますが（この時代、インターネットは揺籃期）、途中でよく分かんない痴話げんかになってお別れしてしまいます。
ルーク・ブレイシーが「認めろ」みたいなこと言って（別れのことじゃないらしい）、イリーナが認めないと、「君は変わっていない。あの時と同じ寂しい人生を送る寂しい人だ。自分のプランに固執し続けた。でも君の人生を良くするのは僕の仕事じゃない」みたいなこと言って去っていっちゃう。
なんのこっちゃか分からないよ！
まぁ、ミアの素性と一緒に、この辺りも残り3話で明らかにされていくと思いますが、完璧だと思われたイリーナの人生も実はそうではなかったということですかねー。
次女にも「ミアがママの憧れのNYタイムズに載ってるから怒ってるんでしょ？」みたいなこと言われちゃうし。
このドラマは一気見した方が面白いよ！
