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【ナチ・ハンターズ】観終わった感想:題材、粗筋、アルパチをスタイリッシュに無駄遣うドラマ

ナチ・ハンターズ

ナチ・ハンターズ@Amazon

Amazon Primeドラマ【ナチ・ハンターズ】を観終わった感想です。

Amazon Prime【ナチ・ハンターズ】アル・パチーノ主演ナチス復讐ドラマを見始めた感想、登場人物

アル・パチーノがナチスを狩る!という宣伝文句で話題性も十分の新作ドラマですが、正直に申し上げると大分期待外れでした。

 

【ナチ・ハンターズ】観終わった感想

本ドラマは「ミュンヘン」のようにダークで緊張感あって気骨のあるものではなく、タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」を「ザ・ボーイズ(Amazon Primeドラマ)」の型に入れたんだろうなーというテンプレドラマで、真新しさはあまり感じられない。

(Netflixのパターンだけでなく、最近はAmazon Primeオリジナルドラマのパターンも見えてきた気がする。)

1970年代のNYでナチス残党の高官を人知れず始末していくナチ・ハンターズ。富豪老人アル・パチーノを筆頭に6名のメンバーと19歳の青二才が繰り広げる復讐劇という前提は良いんだけど、粗筋と描き方が完全におかしいのよね

ナチ・ハンターズのリーダー、アル・パチーノ

どのようにおかしいかと言うと。たとえば、冒頭にナチス高官を登場させてショッキングなシーンを大々的に演出しているので、ナチ・ハンターズがこの黒幕をどんどん追い詰めていくのかと思いきゃ、このナチス高官は完全なる茶番で、チェスの駒のように右往左往させられる小物だったりする。

ディラン・ベイカーという美味しい俳優が美味しい悪役を演じているというのに、粗筋にまったく貢献していないのである。要するに冒頭のシーンもディラン・ベイカーの無駄遣い。はっきりいってバチ当たり。

そこかしこに漫画とブラックスプロイテーションを試してみたものの、キャラクターの掘り下げにはその都度、過去の強制収容所の回想シーンに頼りまくるという怠慢さも頂けない。

強制収容所の悲劇を常に回想シーンで流しながらコメディで笑いを取ろうとする目論見が完全に滑っているので、タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」の失敗例と言っていい。タランティーノのワナビーである。

70年代の設定のクオリティの高さや俳優陣の好演といった好材料がありながら、漫画チックでブラックスプロイテーション風味が滑りまくっている様子は、なんでも奇をてらえばいいもんじゃないことを私たちに教えてくれる。

歴史上の悲劇のマイルストーンの裏でナチス残党が暗躍していたというせっかくの面白い粗筋が台無しにされてしまって勿体ない。

サスペンスとしても不十分で、ナチ・ハンターズは格好だけはいいが、その実、計画がずさんである。まともに動いているのは暗殺担当水島くんと元MI6の尼さんくらいで、他のメンバーは殆ど仕事をしていない。

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ロクシー、マレー、ミンディ、ハリエット、ロニー、ジョー

ユダヤ人老夫婦マレーとミンディは老齢なので動き回ったり体力仕事はできないが、暗号解読や技術部門で少し活躍する。ハンターズとしてよりも夫婦の絆と癒しが2人の仕事で、不覚にもホロッときてしまうシーンはほぼこの夫婦の功績だった。

メンバーの一人、ロニー・フラッシュはけっこう売れていた俳優らしいが、ほとんど機能していないので何でメンバーに入っているのか分からない。そもそもお茶の間に顔が割れてるメンバーをナチ狩り実行犯にするリスクは大きいので、この時点で本作ナチ・ハンターズはファンタジーを超えて茶番であることも分かる。それでもロニーは笑いを取り、メンバー間の緊張をほぐす潤滑油役を一応こなしている。

一番分からなかったのはフォクシー・レディの黒人美女である(名まえ忘れた)。あっ、フォクシーとかけてロクシーだ。ロクシーは、馬糞だか牛糞だかを食べさせられても「元ナチです」と自白しない女性政治家をアルパチが冷酷に撃ち殺したのを目にしてメンバーを脱退する。え?脱退すの?

アル・パチーノは普段から何を言ってるかあまり分からないが、ユダヤ人のアクセントで話しているのでことさら何を言ってたか分からない。だがアル・パチーノはいつも美しいし格好いい、それは変わらない。好きなシーンは尋問室でアルパチがFBI女性捜査官に怒鳴っていたシーン。アル・パチーノが怒鳴る様子が途轍もなく好きである。

収容所でアル・パチーノが愛し守り抜いた女性ルースの孫がこのドラマの主人公でもある。しかしこのキャラクター、主人公であるというのに蛇足に思う。強制収容所を生き延びた祖母から収容所でのことを何も知らされていない19歳の青年ジョナが、祖母の死を悼むこと以外にできることはそうそうないというのが現実的な見方であり、ジョナをナチ・ハンターズにリクルートするのであれば、精神的にも肉体的にもそれなりの準備期間や教えがたっぷり必要である。(水島くんが武術をちょっと教えただけや)

案の定、ジョナは拘束したナチの口車に騙されてメンバーや計画を危険に晒したり、「やっぱりバイオレンス無理」と弱音とゲロを吐いたかと思えば、次の瞬間には勢い勇んで暴走して水島君の眉を顰めさせたりと安定せず、視聴者を苛々させる。

通常は祖母の死にどん底まで突き落とされたのち、ナチ狩りという人生の目標と目標を遂行するための同士を手に入れて徐々に生きる力を取り戻し、ドジっ子青二才というプロセスを経て立派なナチ・ハンターに変貌するのが定石だが、ジョナは最後まで祖母の死の影響を克服できず、悲しんだりイキッたりという精神不安定さを晒して回るからだ。

7話ぐらいまで祖母の死で女々しくしたあと、ジョナは突然サイコパス宜しくの無謀な若者に変身する。しかもイキりまくりの。こんなのがナチ・ハンターズを率いていけるかっ。

さらに悪いことに、私はこのジョナ役の彼が「フューリー」の頃から好きになれない(俳優として)。画面のあちらとこちらでも相性というのはあるものだ。

いつも青二才を演じることが多い彼の名はローガン・リーマン、ビバリーヒルズ出身の正真正銘のユダヤ人のお坊ちゃまです。本ドラマでは祖母と二人きりの貧乏家庭の設定だが、育ちの良さがにじみ出てしまっていると思わないだろうか。多分、リアルライフでとても良い子だと想像します。

こんなナチ・ハンターズたちが結集して、あまりろくな計画も練られないまま、なし崩し的にナチ狩りをしていくので、回が進むごとにだらけて緊張感がなくなる。良いドラマは回が進むごとにおもしろくなっていくものだが、その点でもこのドラマは落第。

それから強く美しく、死んでもなお存在感のある祖母ルース役に、魔女顔のジーニー・バーリンを起用しているのだが、ジョナに優しく話しかけるその姿はどう見ても「ヘンゼルとグレーテル」の魔女。

ジーニー・バーリン

FBI捜査官のミリーが奇しくも恋人に「ヘンゼルとグレーテルて知ってる?」と話していたのが可笑しかった。

FBI捜査官ミリーがゲイ枠だけど、ゲイであることを察した病床の母とミリーの親子愛など、感動するのは本筋のナチ狩りとはまったく関係ないことばかり。

ナチ・ハンターズたちもグデグデしてるが、アメリカに巣食うナチス軍勢も烏合の衆だったりする。

司令官レナ・オリンの若い燕トバイアスは、米国人のナチスシンパであるトラヴィス(グレッグ・オースティンは英国人)と互いに憎み合っており、ことあるごとに相手を嘲笑し罵倒するという頼もしいチームワークを見せるし、任務の際中にトラヴィスがトバイアスのブラザーたちをブチ殺した挙句、キレてトバイアスまで手にかける。(確かにむかつく奴だが)

アメリカの人種差別主義者の豚(トラヴィス)とドイツの人種差別主義者の豚(トバイアス)が戦うというのは面白いが(名まえが似すぎて覚えられん)、部下同士が殺し合ったり勝手な行動してたりとか組織系統が無茶苦茶や。冒頭の高官ナチは逃亡犯と化してるし。

トラヴィスは愛すべき憎みキャラだが、歌いながらトバイアスの死体を処理しながらというのはサイコキラーとして安直すぎるし、安っぽい

冒頭のナチス高官(ディラン・ベイカー)も途中から殺人逃亡犯になっちゃうし、滅茶苦茶である。

物語はアルパチが女性政治家から自白を取っていないのに殺した頃から最後のオチに向かって少しずつ闇を小出しにしていくので、最後のオチで何が起きるかは勘が悪い人でも気がつくだろう。

シーズン2続編とつながるような終わり方をしているが、このオチをどうとるか…私としてはアルパチが出ないのならまったく見る価値がないとしか言いようがない。