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【ジェネレーション・キル】第4話~第7話ドラマの感想:ベスト5に入る超秀作!

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ジェネレーション・キル

台風が来ているようなので、気をつけるのですよ、お前たち。

なんか昨年のチャーミン並みの暴風だと言うじゃない。チャーミンは軽くハリケーン状態だったよね。

この数日、夢中になって観た海外ドラマ「ジェネレーション・キル」全7話を観終わりました。

第1話~第3話まで観たところで前半戦の感想を書きましたが、この秀逸クオリティは最後まで続きます。

このドラマねぇ、半端なくレベル高いですよ。それこそ映画のような出来栄え。さすが伝説的ドラマ「ザ・ワイヤー」の製作総指揮コンビだと感心することしきり。

海外ドラマのマイベスト5に入りそう。ドラマのトーンも雰囲気もかなり自分好みでした。拙者と似たようなドラマを好む方であれば、楽しめるはず!

未見の人は絶対観てね。ていうか観なさいね。

 

【ジェネレーション・キル】第4話~第7話の感想

いやーたまらないね、このドラマ。超好きなタイプのドラマ。俳優で言ったらコリン・ファレル、寿司で言ったら炙りサーモンと中トロ、映画ブロガーでいえばふかづめさんだよ!

観終わった後のこの充実感、まさに「ザ・ワイヤー」の時のそれ! 

内容は全く違うのに、製作総指揮が同じ人だとこういう風に独自カラーが出てくるんだなぁ、なんて妙に感心しましたよ。

ここでいう充実感は「ゲーム・オブ・スローンズ」を観たときの衝撃の充実感や複雑な謎解きが解けたときのような充実感でもなければ、「ウォーキング・デッド」でゾンビ倒してヒャッハー、アポカリプスにワクワク(どんな充実感や)という充実感でもないのねー。

それはもうアメリカの海兵隊が耐え抜かなければならない危険やストレスを少しでも垣間見ることができるという充実感なのねー。

でもこれはもしかしたら軍に関しては殆ど話してくれないアメリカ人旦那の経験と心情を垣間見ることができた私のパーソナルな充実感かもしれない。

彼はどうでもいいことは話してくれるんだけど、任務についてはもちろん貝のように口を閉ざすし(ちゃんと機密保持契約がある)、言ってもいいことでも軍の内情とかあんまり詳しくは話してくれないんだ、当たり前田のクラッカー。

だから私、実は軍の内情を殆ど知らないんですよね...在日米軍基地にも2〜3回くらいしか入ったことないの。

でもこのドラマを観たおかげで、彼がたまに言う愚痴や文句がすーっと理解できちゃった♡

そのくらいリアルな軍の内情を描いてます。

もちろん、全7話なのでドラマ上の演出やアンビリバボーな無理くり展開もあるように感じたけど、BS(=bullshit)とポリティクスについてはまさにこんな感じ。

本ドラマでは無能な指揮官が軒並み登場するんだけど、旦那は上官が無能だということを常々言っていて。それでいつも衝突していた。おかげさまで奴のあだ名はナッツ(=クレイジー)じゃんかさー。

あるときは何かの鍵のことで言い合いになって「いいからゴチャゴチャ言ってないでカギを渡せ。小さい女の子みたいにわめくな」みたいなこと言ったら、上官が顔を真っ赤にして大激怒してちゃぶ台ひっくり返して部屋中の皆がビックリしてたって旦那の友人が言って大笑いしていた。...そこ笑うところけ?

よくクビにならないよね。でも言うことを聞かない目の上のタンコブのような存在だったから常に上司からハラスメント受けてましたよ。ま、いくらハラスメント受けても全然応えない人だから、意味なしだけど。

たとえば彼が緊急手術で民間の病院に入院していた時も、上司が「Gはなんで出勤していないんだ!」と友人兵士に怒ってて「Gは手術して入院してますよ」と返したら「今すぐ連れてこい!」とか。

それで病院に上司が押しかけてきたり。でも病院の医師たちがとても良くしてくれて、「手術したばかりで絶対安静が必要です。お引き取り下さい」と面会謝絶にしてくれたり、軍の上層部に医師が「彼を移動することはできない。患者が将校からハラスメントを受けているので直ちにやめるように命令してください」的な書類を提出してくれたり。お医者さん、格好ええな。

その後、上司が「早く良くなってね」カードを持って今度はお見舞いにきました。「調子はどうだ、G兵」と。そこへ友人が慌てて病室に戻ってきて「おいG、こいつどうする?どうして欲しい?」と聞いたので「部屋から連れ出してくれ」というとカードをビリッビリッと上司の目の前で破くというハチャメチャぶり。でも上司は何も言わず、静かに出て行きました。

旦那のラッキーだったところは、基地のCO(Commanding Officer)との関係が良好だった点で、上官との間にトラブルが生じたりハラスメントされるとCOがすぐ動いて上官に「Gが必要なものを全て用意してやるんだ。彼の任務の邪魔をするな」というように命令してくれたので自由に動くことができたそうです。

ゲイ嫌いを公言する夫だけど、そんな素敵なCOはゲイ。無能でイヤなオフィサーが多い中で、彼はとても良いオフィサーで、とてもリスペクトしてましたよ。それ、ゲイ嫌いじゃないやん。LGBTのごり押しが嫌いなだけやん。

旦那のことを嫌いな上官は多かったでしょうから150人くらいの中から一人選ばれて○○に飛ばされたのもきっとそのせい。おかげで1年ぐらい結婚が延びたしさぁ…私にもしわ寄せきてんじゃん。まぁそのおかげで今がある…と言えるような良いこともあるんだけど。

○○から帰ってきたときの彼は尖ってましたよ…帰国したら上官たちも「よくやった」みたいにおべっかを使ってきたけど「F U、話しかけんな」 みたいな状況でした。上官たちは部下の手柄は自分の手柄になるから、ゴマすりをしてくるわけです。

あの頃の彼は野生動物というか、眼光鋭く、いつにも増してキツくなっていたのを覚えている。今は心も体もすっかりまあるくなって私の奴隷のように動いているが、お前、早く痩せろな。

と、長々と個人的な話をしてしまったけれど、このドラマがいかに米軍の内情と戦争のリアルさをうまく伝えているか知って欲しいのです。

前述したように、上官が信じられないほど無能だとかドラマ上の脚色はあるのかもしれないけど(真実と思いたくないような判断と行動をする)、米軍がいかに官僚的であるかが十全理解できるんじゃないかな。下手すりゃ日本の官僚より酷くない?というレベル。

あと旦那はいつも海兵隊を良く思ってなくて「海兵隊は a bunch of idiots(まぬけ)」とこき下ろすが、このドラマを観る限り、それって無能な指揮官によるところが多いんじゃないだろうかと思った。

少なくともこのドラマでは無能な指揮官によって海兵隊員がまぬけなことを強制されるシーンが多い。上司に楯突けばinsubordinationになって自分の身が危うくなってしまうので文句を言うわけにもいかない。米軍の指揮系統において命令は絶対的である。

ちなみに旦那の上官の将校たちは、ほぼ誰も派兵されたことがない大卒だった(将校は大卒じゃないとなれない)。このドラマのように、大卒で上層部にコネのある無能な上官が何度も派兵された実績のある兵士という駒を好き勝手に動かすことができる状況である。

最終話のクレジットのあとに本物の海兵隊員と思われる声が流れるが、このような戦争状態を経験して祖国に帰れば、口先だけの「お勤めご苦労様です」パレードが待っていて、人々は木曜日のゴシップ誌のスターの新しい交際相手に夢中という愚民社会に戻る羽目になる。

地球のどこかで人が簡単に殺されていることよりくだらない芸能ゴシップに関心をよせるような堕落した現代社会を批判しているのだが、あくまでも海兵隊員の目を通した描写なので説教臭さがない。「ザ・ワイヤー」コンビの成せる業。

MTVのくだらない番組を観ている私にいら立ちを隠せない旦那の文句と海兵隊員の言葉がかぶる。彼がTVで「私には米国にいる権利がある」と主張するドリーマーを見て「米国のために何をした?米国にいる権利があると主張できる者がいるとしたら、それはネイティブアメリカンと祖国を守るために仕えた者だけだ(つまり俺)」というのも、今なら十二分に理解できる。※ドリーマー:幼い頃にアメリカに不法入国したままステータスを変更せず今までやってきた若者たち、多くは親が貧困や暴力から逃れるために不法入国して連れてきた子どもたち。

これはそのまま平和ボケした日本人にも説教できることで、他人の食べ方のマナーがどうとかこうとか、女子高生が車を買ったとかどうとか、新幹線での車掌の対応がどうとかこうとか、くだらないことに時間を割く自分の愚かさをいまいちど振り返るべきではないだろうか。

旦那に「現役時代に戻りたいか?」と聞くと、「軍の任務や本質を懐かしく思う気持ちはあるが、同時にBSとポリティクスを思うと戻りたくない。だがそれでも軍は俺に良くしてくれたので感謝はしている」と言っていました。

このドラマにでてくる指揮官たちがどれだけ無能か、どれだけBSなことをしているかというと、捕虜を殺そうとしたことを下士官の行いにして濡れ衣をきせて停職処分にしたり、食あたりして上下から吐いている海兵隊員を、命令規定違反ともなる夜間の地雷畑での警護に命じたり(濡れ衣を着せられて停職処分にあった二人を地雷畑への任務のために復帰させて送るという外道ぶり)といった具合だ。

こうした無能な指揮官への怒りとフラストレーションは、常に冷静で部下のことをしっかり考えて判断を下してきた指揮官マイケル・ケリーのワンパンチに凝縮されていた。

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いつも仕事こなすマイケル・ケリー

同時に海兵隊員たちのストレス、行き場のない困惑、死体を見ても人を殺してもなんとも思えない麻痺した感情は、これまでアレクサンダー・スカルスガルドに「黙れ」と言われても黙らなかった明朗なレイが最終話で黙りこくり、アレクサンダー・スカルスガルドに「喋れ」と促され、フットボールのゲームでルーディに与えたタックルに集約されていた。

怒りや戸惑いといった抑えきれない感情を丁寧に口に出すような無粋な描写はない。実際に海兵隊員は感情を吐露して話し合うなんてことしないからだ。カウンセリングに行けと言われても行こうとしないような人間なのだから、戦場で気持ちを話し合うなんてことがあるはずがない。

せいぜい、アレクサンダー・スカルスガルドが部下を慰めるため、そして自分に言い聞かせるために「殺さない者は、殺す者に殺されるだけだ」と言うだけだ。

日本には国防なしに平和が享受できると考える危険な思想の持ち主がいて、平和を理解している人々に「お花畑」と揶揄されているのだが、彼らは平和を説きながら平和についてまったく考えていないことが分かる

防衛なしに平和は実現されないことは歴史が教えてくれる真理だ。彼らはいまいちど人間の本質、平和、国防について考えるべきか、あるいは黙って殺す者に殺されるしかない。

次にこのドラマが優秀な理由は、プロパガンダや政治的アジェンダが見当たらないということだと思う。

狂犬マティス(トランプ政権の前国務長官)をディスる方向かと思いきゃそうでもないし、海兵隊ひいては米軍を賛美する意図かと思いきゃそうでもない。かといって反戦でもなければ反米でもないし、もちろん戦争賛美でもない。

では何が描かれているかというと、海兵隊の任務、経験した出来事、危険、ストレス、試される忍耐力、そして思惑と感情などがリアルに描かれているわけです。

換言すれば、戦争賛成や戦争反対を訴える安っぽい演出が一切ない。

イラク侵攻がどんな様子だったのか、イラクで米軍は何をしていたのか、現地の様子だとか、イラク民間人と米兵たちの接触の様子とか、戦争における巻き添え被害だとか、赤裸々で正直。隠されたアジェンダがまったくないの。

そういう硬派ドラマって、最近では殆ど見かけなくないですか。

最近のドラマといえば、ポリコレばかり気にして黒人枠OK、ゲイ枠OK、アジア枠なくてもいいいや、異人種カップルOK、セックスシーンOK、どのキャラ殺す、とかチェックリストがあって、最早ドラマのあらすじや設定、展開の方が後回し。

そのせいでストーリーが破たんしていることも度々あったり、余計なシーンや不要シーンが多くなって散漫になってる。

でもこのドラマは無駄なシーンが全くない。

第1偵察大隊に同行したローリングストーンズ誌のエヴァン・ライトの本を原作にしているという強みもあったんだろうけど、やっぱり製作総指揮の「ザ・ワイヤー」コンビが優秀というのも大きいだろうなー。

第1話~第3話の感想記事で、「ジャーナリストがなんでローリングストーンズ誌なの」と書いたけど、これがニューヨークタイムズ紙だったら超反戦・反米のプロパガンダドラマに仕上がってたでしょうねぇ…ローリングストーンズ誌で良かったですよ本当に。

映画と対比とかハチャメチャなことしてしまうと映画ファンから怒られそうだけど、無駄なシーンがないので、クリント・イーストウッドの作品を観ているかのような感覚です。「アメリカン・スナイパー」とか。

「ザ・ワイヤー」でも同じ感想を抱いたけど、台詞も自然で、聞いてて恥ずかしい台詞がなかった。

軍人たちの態度や喋り方、立ち振る舞いも現実に相当近いと思っていいでしょう。相当口悪いし、ひたすら男性的ですけど。うちは徹底的に私が口うるさく言って直させましたよ。

そういえば、1発150万ドル(1億5千万円)のトマホークがバグダッドに降っていたシーンがある。旦那はこのときイラクにいて、彼の乗っていた戦艦にトマホークが乗っている写真が家にあるんですよね。以前、彼の乗っていた戦艦からイラクにトマホークを大量に打ち込んだと言っていたので、もしかしたらこれがそうかも…

あと劇中で「ペンドルトン基地」とあったけど、あれはこのブログで紹介した西海岸の主要基地です。

敵を倒してハッピーエンドとか、窮地を脱して家族のもとに無事に戻るだとか、狙ったようなメロドラマは一切ない。偽られた大義の下、祖国のために忠実に不明確な任務にあたる海兵隊員の姿を描いているだけ。

おもしろいドラマとして手放しであげるには不適切かもしれないが、「好き」か「嫌い」かで言えば「ブレイキング・バッド」ど同じくらい好きなドラマになった。

こういうドラマがもっと観たいです!これはもう本当にオススメ!!