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【ゲーム・オブ・スローンズ】シーズン8最終話の考察:何がダメだったのか

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オワッタ。終わりましたねぇ。終わってしまいましたねぇ。

【ゲーム・オブ・スローンズ】がついに幕を閉じてしまいました。

あらすじと感想をアップしましたので、興味があったら読んでみてください。

ファンからは不満の声が多いようです。また、キャストからも最終シーズンへのボヤキがちょこちょこ聞かれています。

最終話をどう思いましたか?

ゲーム・オブ・スローンズの最終話に満足しましたか?
大満足
おおむね満足
可もなく不可もなく
あまり満足していない
全然満足していない
 
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私は正直に申し上げて「あまり満足していない」ですね。 

ゲースロ贔屓なので「全然満足していない」は選択しませんが、シーズン8は満足いくものではありませんでした。

シーズン1からシーズン8まで総じて考えると私が好きなドラマ1位の位置は不動のまま変わらないものの、残念ながらシーズン8は期待に見合った満足感を得られず、ブレイキング・バッドのような有終の美は叶いませんでした。有終の美を飾れるドラマはごく少数だな。

では最終話を詳しく考察してみましょう。

 

【ゲーム・オブ・スローンズ】シーズン8最終話の考察:何がダメだったのか

最終話の敗因を探ってみたい。

ストーリーに傾倒し、キャラの掘り下げを蔑ろにした

今シーズンは意味のない壮大な死が駆け足に語られた。

ゲーム・オブ・スローンズのこれまでの死を振り返ってみると、ネッド・スタークの死、ジョフリーの死、レッド・ウェディングの死など、それぞれメインキャラの死は緻密に計算され、最大限の注意が払われていた。

キャラクターの性質や信条がストーリーを作りだし、死を必然にしていたと言ってもいい。

たとえばネッド・スタークは、スターク家の人間らしく、自分が損をしても正しいことをする教義を貫いたために命を落とした。メインキャラだと信じていたネッドの死は多くのファンにとって容易に飲みこめない予想外の死ではあったが、ネッドの実直で正義を重んじる性格ゆえにネッドが少しずつ危険な運命の階段を登っていたことはファンも十分感じていたのだ。

登場人物の多さにも関わらず、キャラクターの徹底した掘り下げという地道な根回しのおかげで、なんとかネッドの死を咀嚼したあとはそれが必然的な展開だと認識することができたし、悲しみと衝撃を覚えることはあれど批判の余地はなかった。

さらにネッドの死は、スターク家とラニスター家のその後の対立というストーリーを決定づけ、これから始まる血みどろの戦いを予感させるものだった。

そして今度はロブがタリサを選んだとき、私たちは、誓いを破った者への末路というものをなんとなく不安に感じていた。ロブのように視聴者に愛される実直な騎士のメインキャラがあっけなく殺害されてしまうなんてことは考えたくないことだが、頭のどこかに「まさか…」という不安を覚えていたはずだ。

そしてネッドに続き、ロブ、キャトリンの死が、アーリアをラニスターへの復讐へと駆り立てるというストーリーにつながった。

ジョフリーの死でさえ多くの人たちの利害が絡み合っていた。皮肉にもジョフリーの死によってティリオンの悲運や姉との骨肉の争い激化、サンサの悲運が始まった。

つまるところ、キャラの死に意味があった。死に至る軌跡が丁寧に描かれていったし、彼らの死はストーリー上のマイルストーンでもあった。

ところが今シーズンでは、ヴァリスが早々に消される。突然拘束され、あっというまにドラゴンの火に焼かれた。本来のヴァリスであれば、デナーリスの女王としての資質に疑問を持った時点で、閣僚に書簡を書いたり、デナを引きずり下ろすために何かしらの根回しをしていたはずだ。

ところがヴァリスがしたことといえば、デナーリスにキングズ・ランディングに攻め込んで一般市民の犠牲を出さないように進言して無視されたこと以外には、大勢いる水辺でジョンに直接反逆罪を持ち掛けるという愚行と、デナーリスに毒を盛ろうという行為だけ(指輪の中に毒を仕込んでいたと思われる)だ。

これまでスパイと異名をとっていたヴァリスは一体どこへ行ったのだろうか。(ヴァリスを演じた俳優もインタビューで過去2シーズンのヴァリスのストーリーは気に入らなかったと発言している。)

ミッサンディがサーセイ達の手中に落ちてあっけなく処刑されてしまったのも唐突だった。ふつうなら人質を得た時点で交渉を進めるだろうし、その過程でミッサンディ✖サーセイ、サーセイ✖デナーリス、ミッサンディ✖デナーリスの会話が見られたはずだ。

しかし謀略大好きなはずのサーセイは、ただミッサンディを衝撃的な方法で公開処刑しただけだった。

あの手この手で交渉を重ねたりゲースロらしい攻防を見せていたら、ミッサンディの死がデナーリスのヴィラン化に貢献したという意味も見いだせていたかもしれないが、キャラクターの進展を無視してストーリー主義に傾倒してしまったため、ミッサンディの死は無意味になってしまったのである。

ミッサンディの死は、むしろデナーリスを狂王にするためのプロットとして利用されるだけとなった。つまりデナーリスのヴィラン化ありきで、そのためにミッサンディを殺したという具合だ。ネッドやロブの死と並列であるはずのマイルストーンなのに、キャラよりストーリーを優先したためにこれほど見方が変わってしまうとは。

私はデナーリスがヴィラン化したこと自体は批判しないが、デナーリスをヴィランにするためだけにミッサンディを殺したというように視聴者に思わせてしまっては本末転倒だし、少なくともこれまでのゲーム・オブ・スローンズでは侵さなかったミスだ。

ゲースロの予想を超える展開は、キャラクターを掘り下げて緻密に構成したストーリーから何らかのわずかな伏線を視聴者に預けることで支持されていたのであって、根回しもなく、どこからともなく突如あらわれたプロットにファンがNOを突きつけるのは無理からぬところである。

ワルだったジェイミーやハウンドの贖罪は数シーズンにもわたってそれは丁寧に綴られてきたといのに、それに比べてデナーリスの変貌の唐突さや心理描写の薄っぺらさ、ヴァリスの一面的描写等々、振り返ってみると同じドラマとは思えないほどだ。

後述するようにクリエイター二人がエピソードの数を6話にカットしてしまったので、キャラクターやキャラクター同士のやり取りを十分に描き切れないまま、ストーリーでの意外性、奇をてらったことが最大の敗因だろう。

アーリアの意味なし伏線

光の王の寵愛を受けている(と思われた)アーリアだが、その回収まるでなし。

予定されている3作のスピンオフのうち1作がアーリアのその後になるのなら理解できるが、このまま私たちがアーリアと再会することがないとしたら、光の王という横糸は一体何だったのか。

第5話ではアーリアが戦火のキングズ・ランディングから生き延び、光を受けながら白馬に出会うシーンが意味深に描かれていたが、あれは何だったのか。

そしてメリッサンドルが予言した「緑の目」の意味なし伏線。

さらに顔なしアサシンという意味なしツール。あれだけ特訓して身に着けたのに…あのワイフとひたすら戦っていた長い長いプロットは何だったのか。

代わりにクリエイター二人が考え付いたのは、アーリア・ザ・コロンブス。ウェスタロスより西に向って、アメリカ大陸を発見しに行きます。スピンオフですよね?そうなら許すけど、そうじゃないなら許せない。

デナーリスの不当な扱い

第5話でサーセイに対して全く同じことを思ったが(サーセイ役レナ・ヘディも脚本を読んだ時に困惑し、サーセイに大きな見せ場を与えてほしかったと語っている)、デナーリスの不当な扱いには落胆した。

シーズン1から辛酸を舐めてきたデナーリス。ドスラキの原始的で粗野な蛮行から奴隷を解放し、アンサリードを解放し、メイリーンで奴隷を解放し、ウェスタロスの地では王座への熱意をいったん脇において、死の軍と戦って人々を助けてきた。大切なドラゴン1頭(ヴィセーリス)も死の軍との戦いで失った。

行く先々で人々を解放してきたデナーリスは、なるほどメサイア・コンプレックスを患っているかもしれないが、むやみやたらに無分別に人々を殺す人物では決してなかったはずだ。

たとえ愛するドロゴを失ってもお腹の赤ちゃんを失っても人々を焼き尽くす選択などデナーリスにはなかった(ドロゴを殺した魔女ミリー・マズは除く)。

デナーリスが処刑したドスラキのリーダーたち、デナーリスを騙そうとした奴隷主、デナーリスに忠誠を誓うことを拒んだターリー親子でさえも、デナーリスには処刑する理由があったのだ。

そんなデナーリスが突然!あの一瞬で!キレて首都を火の海にし、理由もなく女も子供もまとめて虐殺するなんてことが考え得るだろうか。デナーリスがわずか1エピソードでヴィランになるなんてあり得ない。

ドラマとしてはデナーリスが最も近親の信頼する家臣ジョラーとミッサンディを失い、ジョンに愛を拒まれていることで孤独を感じ…という線でもっていきたかったのだろうが、だとしたら完全にデナーリスの掘り下げが足りていない。

キングズ・ランディングに鐘が鳴り響いたあのとき、デナーリスがそのまま火を放った姿をみて大方の視聴者は「えっ?デナーリスどうした?」と思ったに違いない。デナーリスの追い詰められた心情を私たちはまったく理解してなかったし、完全に置いてけぼりを食らっていた。

デナーリスがいかにして精神をきたしてキングズ・ランディングでの狂行に至ったかを掘り下げることもなく、キレるに足る十分な理由や動機付けを描写しないままキレさせてしまっため、多くのファンは「What the Fuck?」と思うしかなかった。

さらに酷いのはデナーリスの死に方だ。ティリオンがジョンとちょっと話をしただけで、デナーリスはジョンにすぐに刺殺される。デナーリスに与えられたのがこんな簡単で呆気ない死なんて納得いかない。デナーリスには言葉を発するチャンスさえなかった。

ましてジョンもティリオン一人にちょっと説得されただけで突然デナーリスを刺すとは。あのジョフリーでさえ、数か月も毒殺を計画されていたというのに。デナーリスのあの死に様はデナーリスへの冒涜である。

距離はもはや関係ない

先シーズンあたりから物理的な距離がもはや関係なくなっていたことにお気づきだろうか。

ウェスタロス大陸の首都キングズ・ランディングから北部のウィンターフェルまでは、キングズ・ロードといわれる王様の通り道があって、1日で移動できるものではないので途中で宿屋があって…

といった細かいジャーニー事情はすっかり抜け落ちてしまい、ドラゴンwithデナーリスは飛べるのでともかくとして、アンサリードでさえも首都とウィンターフェルを一瞬で行き来している。

雑になりすぎ。

王座があの人に?

ジョンとデナーリスの事件のあと、暫定的な閣僚会議が開かれていたのもまた突飛だったど(ヤーラもエデュモンドもロビンも来てた、ヤーラはバトルでせっかく何かしてくれそうだったのにここまで出番なし)、なにより突飛だったのは、王座にブランが選ばれたことである。

まず、決め方。

閣僚会議で「誰にする~?」「お前は喋んな(グレイウォームからティリオンに)」「じゃあ、お前決めろよ」「じゃあ俺が・・・」「いやお前じゃない、座れ」みたいなやり取りもどうかと思ったけど、何が納得いかないってお前だよお前、ブラン。

あなた、もう人じゃないでしょ。三つ目の鴉でしょ。

人に非ず者が人で成り立っている6王国を統治するって変な話じゃない?アベンジャーズのソーが地球を統治するみたいなもんだよ!

それでもソーならまだ分かるよ、地球助けたりしてるから。でもブランて結局なんっにも貢献してないよね。王国を救ったわけでもなければ、ギャグを言って人を笑わせることさえしていないし、人の役に立ったことあったかお前?

シーズン1からのデナーリスの苦闘や、幾度となく大戦を勝ち抜き人類を守ろうとしたジョンの功績を考えると、何もしていないブランが王様って…いくらなんでもそれはないだろ。

例えるなら徹夜で必死に勉強したのに落第した中、勉強してない奴がA+とったようなもんだ。むかつくわー。

「だからこの場にいる」とかドヤ顔してる。

ジョンの出生の秘密はどーでもいい

書いてたら、だんだん腹が立ってきた。

ジョンの出生の秘密はどうなったんですか、あれ!

シーズン7までそれはそれは大事に温めてきたでしょう、この大事な秘密を!

ファンを、私を、「ちょ...もしかして!もしかしてジョンの母ちゃんと父ちゃんて...嘘だろ...まさか」みたいに散々興奮させてたやろ。

あれだけ大仰にジョンの出生の秘密を描いておいて、結局何に使われることもなかったこの無意味さといったら。

挙句の果てにジョン・スタークことエイゴン・ターガリエンは野人友達と北の最果ての地に旅立つという悲しい最期に。

ミッサンディの死と同様に、これもデナーリスを狂王に追い込むためのプロットのツールだったってわけか!そんなチープな使われ方するなんて納得できない。

シーズン8では終始ジョンが八の字眉で渋柿食ったような顔してたけど、わかるよキット、君の気持ち、ガッカリだよな。

サムの足元に水のボトルがある

サムの足元に水のボトルが置いてあった。この前は卓上にスタバのカップだった。

シーズン7とシーズン8を短編にした

「急かしすぎ」という言葉をたくさん目にしているけれど、シーズン7とシーズン8を短編にしたのは完全にミス。

原作者ジョージ・R・R・マーティンの本から解放された途端にこれだもんなぁ…

シーズン7が7話、シーズン8が6話構成なのはクリエイター二人の決定です。

HBOでさえ続けたがっていたというのにクリエイター二人がゲースロをシーズン7で終わらせたかったそうです。

2015年のインタビューでHBOのマイケル・ロンバルドはEWにこう語っている。

This is the hard part of what we do. We started this journey with David and Dan. It's their vision. Would I love the show to go 10 years as both a fan and a network execuctive? Absolutely...If they weren't comfortable going beyond seven seasons, I trust them implicitly and trust that's the right decision - as horrifying as that is to me.

Michael Lombardo - HBO programming president

(そこが難しいところなんだ。この旅はデビッドとダンと始めたから、彼らのビジョンなんだ。僕はファンとしてもネットワークのエグゼクティブとしても10年続けたいと思っているよ、もちろん。だが彼らが7シーズンで終わらせたいというのであれば、彼らの言うことを信頼するし、それが正しい決断なのだと思う。できれば終わらせてほしくないけどね。)

また、HBOは最近ショーランナーの2人に最終シーズンのエピソードを増やせる予算と時間の用意があると申し出たのだが、ショーランナーは終わらせたかったという。

原作者のジョージ・R・R・マーティンはというと、常々ドラマが本の肉付けを切り捨て過ぎていると言っていた。10話ではなく13話の方が望ましいと言っていたし、8シーズン以降もいけたという。

I don't know. Ask David and Dan when they come through. We could have gone to 11, 12, 13 seasons, but I guess they wanted a life.

(さあね。デビッドとダンが来たら聞いてみて。13シーズンくらいまでいけたと思うけど、きっともっと人生を楽しみたいんだろう)

George R. R. Martin-at the Emmys 2018

シーズン6までほぼ完璧に凄まじいドラマだったというのに…

最後の2シーズンが本当に残念でならない。