成人おめでとうございます。
まだ成人式じゃないけど、もうじき来るから先に言っちゃおうと思って。
明るい展望の見えない日本だけど、これからの日本をよろしくお願いいたしますね…
今日は、年始にふさわしくですね、軽快に、楽しく、ノーブレイナー(no brainer: 考える必要がない)お祭り映画を選んでみました。
2020年初頭記事のお眼鏡に叶ったラッキーボーイはこの人、ノーブレイナーときたらこの人を置いて他にないマイケル・ベイさんでーす。
マッド・プロデューサーとして知られるマイケル・ベイは、英語のメイヘム(mayhem:大混乱、大騒ぎ、カオス的な暴力)と掛けてアメリカではベイヘムとも呼ばれていますよ、恐縮です。
あのね?マイケル・ベイは前までは嫌いだと思ってたんだけど、最近はこいつが嫌いじゃないのかもしれないと思い始めました。どうしたんだろう、Gさん。ミッドエイジ・クライシスだろうか。よく考えたらミッドエイジ・クライシスじゃなくてミッドライフ・クライシス。
映画は極上の娯楽と言い切り、批評家にもアメリカ国民にも「中身がない映画」とコテンパンに虚仮にされようとも、ひたすら中身がない映画を撮り続ける。その一貫した姿勢と非常識さは唯一無二のものだし、常識人の感覚ではとても真似できね。文化人を気取った俗人よりはちょびっとばかり好感が持てるんだよなぁー。
逆にそこで下手に中身のある映画撮られても虚構にしか過ぎないわけだし、そもそもお前たちがいう「中身」のある映画って何なんだーと逆にマイケル・ベイを庇い始めたので、その辺はお茶を濁します。
(この一文の背景にはポリコレの影響を過分に受けている映画界の一部への苛々が込められています。中身のある映画を気取ったポリコレ傾倒というハリウッドの流行を批判したいのかもしれない。もうポリウッドと呼んだら宜し。)
そういうわけだから、マイケル・ベイには腹心の友ジェリー・ブラッカイマーと二人で、いつまでも中身がない映画を撮り続けて欲しいと切に願うわけであります。
お前たちもさ、「人生って何なんだろう」「もう日本ヤバい」「お先真っ暗」「年金貰えない」「氷川きよしがきーちゃんに」とか言ってないで、マイケル・ベイの作品を観ていちど頭をすっからかんにしてご覧。きっと何かが見えてくるよ。見えた試しはないけれど。
取り上げる映画はNetflixの【6アンダーグラウンド】です。
【6アンダーグラウンド】作品紹介
原題:6 Underground
公開年:2019年
監督:マイケル・べイ
出演:ライアン・レイノルズ、メラニー・ローレン、マニュエル・ガルシア・ルフロ、ベン・ハーディ、アドリア・アルホナ、デイブ・フランコ、コーリー・ホーキンス、リオル・ラズ、ペイマン・モアディ
上映時間:127分
もうマイケル・ベイの映画で120分内に収まることは金輪際なさそうだな!
中身がないないと言われているのに2時間以上もド派手なアクションで最初から最後まで強引に引っ張る豪腕はベイならではだと思います。そして、初老にはとても疲れる。
【6アンダーグラウンド】あらすじ
自らの死を偽装したテック界の大富豪が、卓越した技能で世界を股にかけて活躍する男女を集めチームを結成。傍若無人な独裁者を倒すため、"命"をかけた任務に挑む。
Netflix
【6アンダーグラウンド】感想
まず6アンダーグラウンドとは、地中に埋められた6人のことを指しています。
ライアン・レイノルズを筆頭にチームメンバー6人が、自身の死を偽装して書類上は存在しない「ゴースト」になり、極秘でいろいろとアブナイ任務を遂行するというのが粗筋です。
冒頭20分、ヨーロッパの古都を無意味にぶち壊しまくるカーチェイスで早々にデイブ・フランコ(ドライバー)が死亡、新たにコーリー・ホーキンス(狙撃手)をリクルートするので彼が7人目になるので、正確には7アンダーグラウンドと違いますか。まぁいいや。
メンバー同士はお互いの名を知らず、お互いを「ワン」「ツー」「スリー」と番号で呼んでいる。途中で混乱するのでここでは番号を使わないので安心してほしい。観終わったばかりでも覚えていません。
主役のライアン・レイノルズは磁石で財を成した富裕層で、チームのリーダーである。特技は…富裕であること…?
「ジャスティス・リーグ」のベンアフ・バットマンをディスってるのかパロディってるのか…
ライアン・リーダーは、男気熱いブラザー魂を大切にするタイプとは正反対の、合理的で割り切った現代中年親父である。(そのくせ何かとミレニアル世代の人情味あふれるベン・ハーディをディスる。)
任務中にトラブルが発生して仲間が危険になっても仲間を助けないのが信条で、チームメンバーにもそれを徹底させようとする。
これまでのベイのアクション糞大作は兄弟分にフォーカスしていたので最初は意外だなと思ったのだが、のちに兄弟魂に命を懸けるコーリー・ホーキンスが出てきてライアンの心境に変化が訪れる。
コーリー・ホーキンスはタイミング最悪の時にライアンに説教をかまし、兄弟魂の大切さを体を張って説くとか鬱陶しいことをしてくるが、何故だかライアンは心打たれたようで、ライアンのチームメンバーへの取り扱いにも変化が見えてくる。
ちなみにライアン・レイノルズはリーダーとして計画を練る役割以外に殆ど仕事しません。
唯一したことはと言えば、香港ペントハウスで仲間がピンチになったときに援軍に現れて、まるでエージェントのような技を見せて狙撃手のコーリー・ホーキンスに「どこでそんな技を?」と言わせるシーン。
とはいえ、ライアンがどこでそんな技を身に着けたかは説明しようとしないマイケル・ベイ。そんな細かいことは多分どうだっていんだろう、ベイだから。些末なことに構っている暇はないのである。
あともう一つライアンが活躍するのは、終盤の高級クルーザーを舞台にしたアクションシーンなのだあ、それもスマホでEMP(電磁パルス)のスイッチを入れたり切ったりするだけです(まぁ致死力満点な武器ではあるけれども)。
そんでもって大事なときにもちろんスマホのチップを落とす。
こういう任務中のアクシデントはマイケル・ベイ映画の特徴の一つなのだが、本作はとにかくアクシデントが多い。もはやアクシデントばかりで成り行き任せなこと甚だしい。
かといえばパルクール人間のベン・ハーディをリクルートするときに、ベン・ハーディを拷問すると見せかけるイタズラを再現してベン・ハーディを無意味にビビらせるというシーンを挿入している。
ふつう、こうしたシーンはライアンが拷問をも厭わない厳格で強面である男であることを説明するために挿入されるものだが、別にライアンは拷問するわけでも厳格でも強面でもない。それなのに何故挿入したのかというと…マイケル・ベイが挿れたかったから。
ライアン・レイノルズのリーダーとしての器や資質がどうとか性格がどうとかもはや映画において何の意味もなさない。マイケル・ベイの自分勝手ぶり此れ甚だしい。
メンバーの紹介シーンも番号ごとに挿入されているが、無用の長物で、「このままセブンまでいっちゃうんじゃないだろうなーやめてくれよな」と思っていると本当に4くらいでやめてくれる。割と空気を読むマイケル・ベイ。
しかしライアンの偽装事故死シーンはご丁寧に2回も繰り返す。「それもうさっき見た」と突っ込んだのは私だけではあるまい。
背番号2はフランス人にして元CIAエージェントのメラニー・ローレン。「イングロリアス・バスターズ」で惚れたメラニー・ローレンは本作でもホットで魅力的。
チームの中で最も功労しているのが、この元CIAエージェントのフレンチ娘である。
冒頭20分のカーチェイスでは、さんざん追われているのに銃撃の応戦をしているのが手負いのメラニー・ローレンだけという意味の分からなさ。
ドライバーは運転しているし、ドクターはメラニー・ローレンの体内から弾を取り出そうとしているし、ライアン・レイノルズは喋ってる。
なんだこのチーム。バラバラでまるで統制が取れていない。
後から分かるのだが、これまにでこなしたミッションは1つと小さいの1つくらいだとかヤマカシ(ベン・ハーディ)が言っていた。これすなわち…新設チーム?
背番号3はメラニー・ローレンと恋仲に落ちる元ヒットマンのメキシコ系、マニュエル・ガルシア・ルフロ、「マグニフィシエント・セブン」のバスケス役で存在感を残した俳優である。
陽気で豪快なヒットマンは、余計なお喋りが過ぎて度々ライアン・レイノルズと口論する。しかし、その粗暴な外見と言動とは裏腹に母思いで、禁止されている家族との面会(こっそり老人施設の痴呆母を訪れる)というハートウォーミングな一面もある。
一体なんのためにヤマカシが任務を遂行するメンバーに入っているのかは最後まで分からなかったが、多分格好いいから入れたんだと思う。
確かにヤマカシは窃盗や偵察には打ってつけの身体能力を持ってはいるが、冒頭の20分で追手を邪魔した以外は大して役に立っていなかったような…むしろ一人逃げ遅れてピンチになったり、小柄なために肉弾戦で不利になって助けを求めるとか踏んだり蹴ったりな役だった。
おそらくヤマカシの最も重要な役割は、パルクールの様子を除くと、コーリー・ホーキンスがライアン・レイノルズの心構えを変えるための要員である。
これ別にミッションに関係あるから降りてるわけじゃないからね。このときチームメンバーたちはカーチェイスで逃げている最中で「おいヤマカシどこにいんだー!」なんつって呼ばれて「ここにいるよー」なんつって降りていくから。無意味にドゥオモの尖塔にいただけです。
とはいえヤマカシはチームメンバーで一番人間味があって共感できる末っ子的存在で、ベン・ハーディはとても愛くるしく、お気に入りの子でした。
ベン・ハーディがパルクールで逃げるシーンで「Run」とかいうセリフで始まるBGMがかかったりするので不思議な気分。
背番号5はドクター!
ドクターって。
ドクターはメンバーじゃなくてもいいような…潜りのドクターと連絡手段だけ確保しておけば要らないよね?
少なくともドクターのほかにマーシャルアーツの達人だとか、ITガイであるとか、任務遂行に直接関係あるスキルを持っていないといけないのでは…とか言うなー!それがマイケル・ベイなんだ!
たぶん、ビジュアル的に素敵だから入れたんだと思います。
アドリア・アルホノは「サラリーマン・バトル・ロワイヤル」「トリプル・フロンティア」に出演しているプエルトリコ人。美人なのにスクリーン上で強い存在感を残せないシンドロームにかかっている。本作は続編を計画しているようなので、起死回生なるか。
最初の20分のカーチェイスでご臨終なさるのがドライバーのデイブ・フランコ。ジェームズ・フランコの弟。弟の方が顔はタイプだな。
血が苦手らしく、バックシートでドクターが元CIAの腹から銃弾取り出す外科手術をしているので気が気じゃない。
このドライバーはヨーロッパの美しい街並みどころか美術館を無意味に破壊して回ったのちに非業の死を遂げる。ヨーロッパの美術品の呪い。
そしてこの死んだドライバーの代わりにリクルートされたのが背番号7のコーリー・ホーキンスだ。「ウォーキング・デッド」のヒース役で有名だが、さっさと見切りを付けたのか途中で行方不明になったまま帰ってこない。
実は今までコーリー・ホーキンスを格好良いとおもったことがなかったし、地味で魅力が全然分からない俳優だった。
しかし、本作で初めてコーリー・ホーキンスを格好いいと思った。
マイケル・ベイのハチャメチャぶりにコーリー・ホーキンスの地味さがミスマッチしている故にとてつもなく格好良く見える。マイケル・ベイの映画などにはとても居なそう…というミスマッチ故に、コーリー・ホーキンスの良さが際立つという思いがけない効果が見られた。
わかるか。ここにウィル・スミスやベン・アフレックをもってきても、ちっとも格好良く見えないわけだ。地味でパッとしないコーリー・ホーキンスだからこそ、マイケル・ベイの映画で兄弟魂を説いて成功したのである。…全体がおバカすぎて硬派なコーリー・ホーキンスが格好良くみえたというベイ・マジックです。
ドライバーが死んだので新たにドライバーを雇うのかと思うきゃスナイパーを雇ういい加減さが小気味いいと思わないか。
さてこの6名が遂行するミッションは、なんとかスタンという独裁国家のクーデターである。なんとかスタンという国はロヴァクという独裁者によって統治されていた。
ロヴァクには良心の弟ムラットがいて、ロヴァクはムラットを香港のペントハウスに軟禁していた。ライアンたちはまずムラットをペントハウスから誘拐しようとする。
ミッションのしっちゃかめっちゃかぶりは実際に観てもらうとして、ヤマカシとコーリー・ホーキンスのコンビネーションなど見応えあるシーンもいくつかある。
予告編にあった終盤のEMP爆弾もユニークだし、独裁国家があっというまに転覆していく様子はリアルで躍動感に溢れている。
尼さんに中指を立てさせたり、カーチェイスの最中に美女ショットを挿入するなど、ベイらしさを感じる下品なシーンも健在です。
不満だったのは、カット割りっていうのかな。アクションシーンの画面が次から次へと切り替わり過ぎて、目まぐるしく動くので何がなんだか分からない。さらにそこにあらゆる要素を加味しているので、カオスもカオス、祭りをしているのかカーチェイスをしているのか分からない。
ベイの十八番であるカーチェイスも細かすぎるカット割りと余計なアドオンのせいで、せっかくのアクションのスムーズな流れが妨げられてしまっていた。
「6アンダーグラウンド」は成績が良ければシリーズ化される予定だそうで、今のところNetflixも続編の企画に前向きな姿勢を見せているという。
映画の出来や、社会基盤が異なる国にアメリカ式民主主義を強制することの是非は横に置いておくとしても、国籍を持たない者たちが集まり、国に頼らずに自分たちの力で世直しをしていくというのは、いかにも現代のグローバル世界らしい。「ミッション・インポッシブル」「ワイルドスピード」に続く世直しシリーズ物になるか。