日本人はマナーが良いと聞く。
そう思っていた。
今までは。
しかし、海外から久しぶりに帰ってきて、「日本人はマナーが良い」に疑問符を抱いている。
「日本人はマナーが良い」を否定はしない。海外基準で見れば、明らかにマナーが良い人が多く、秩序が保たれている。
顔の造形が似ている中国人のマナーのなさに比べれば、日本人のマナーは遥かに良い。でも中国人と比べたら、世界のほとんどの人たちはマナーが良くなっちゃう。
最近は、手放しに「日本人はマナーが良い」と言えるほど、日本人は特別マナーが良いと思えなくなった。
ときに日本人は西欧諸国の人よりマナーが悪いことが往々にしてある。それは文化の違いに起因することも多いため、すべてを非難することはできないのだが、たまに日本に来て「なんだこいつ」と思うような事象も少なからず経験するのは事実だ。
「日本人はマナーが良い」と言えない点
ぶつかっても無言
人にぶつかっても無言この数週間で何度かあったことだが、日本人はちょっとぶつかったくらいでは何も言わずに通り過ぎることが多い。
日本は人口過密でパーソナルスペースも狭いので、人とぶつかり合うことが多いのかもしれない。でも、だからこそ声をかけたほうがいいのではないだろうか。
私のケースでよくあるのは、私のバッグにゴツゴツぶつかってきて、何も言わないパターンだった。何度もぶつかってくるのに何も言わないので、一体なんなんだろうと思った。
他人の体やモノにぶつかって何も言わないケースは、長く住んできたアメリカでは一度もない。少しでも当たってしまえば、必ず I'm sorry をいう。
また、通りすがりでコンニチハしてしまった場合も、私は必ず「ごめんなさい」「すいません」を言うのだが、相手は何も言わないことが多い。
なんて無礼なんだ
日常のちょっとしたことだからこそ、声をかければ、お互い気持ちよくその場を乗り切ることができるのに、非常に残念だ。
ドアをホールドしない、こちらがドアをホールドしても無言
海外では必ず後ろの人のためにドアをホールドするのがマナーなのだが、親切なはずの日本人は男も女もそろってドアをホールドしてくれない。引き戸の文化ゆえなのだろうか。
もちろん私は海外の郷にならって、必ず後ろの人のためにドアをホールドするようにしている。
しかし日本では、こちらがドアをホールドしても、お礼を言われることがない。せいぜい、会釈をちょこっとするくらいだ。
なかには、雨の中、ドアをホールドしてたら、後ろの人のさらに後ろの人も入って来て、無言で二人とも消えて行くこともある。
さらには3人目も加わって(しかも男)、私がホールドするドアをすり抜けていく人もいた。
ドアマンか。
ありがとうぐらい言わんか。
レジの割り込み
レジの割り込み?
それはなくない?
東日本大震災の時とかも、コンビニのレジに長蛇の列に並んで海外を驚かせていたじゃん。
と思うだろうが、意外にレジの割り込みが多いことに気が付いた。
複数のレジがあって、列が一列であるとき、日本人は割り込まない。ここで割り込むのは、おそらく中国人ぐらい。
しかし、列が一列ではなく、「こちらに並んでください」のような表記や、フロアに貼られた足跡、列を整理するガイドポールなど、マーカー的なものがないとき、日本人による割り込みが起こる。
それは自分の前に割り込むものではない。そして、複数レジの時に起こる。
レジAとBがあったとしよう。列を示すマーカーなどはない。
AとBが両方うまっているので、あなたは早くあいた方に行こうと思い、AとBのちょうど間に立って待つことにする。
すると、あとから来た人が、あなたの後ろではなく、あなたのちょっと離れた隣に立つ。レジBに近いほうに立ったとしよう。
そして、Bのレジがあいた時、その客は、あなたを差し置いて、なにげなくBのレジに行ってしまうのだ。
気の利いた店員であれば、「すみません、こちらのお客様がお先です」と声をかけてくれるが、声がかからない方が多い。
このケースは何度も経験した。
アメリカだとこれを経験したことがない。列が分かりにくいときは必ず「並んでますか?」と聞いてくれるし、このケースの場合は、「お先にどうぞ」と言ってくれるのが普通だ。
何も言わずに、ちゃかりレジ進むなら「あ、すいませんね」ぐらい言うべきだ。
レジに限らず、特にヒドイのは、ビュッフェ(バイキング)形式のレストラン。
お目当ての料理をとるために、人の前に平気で手を出すわ、割り込むわで最悪でした。
また、レストランの通路が狭くて、向こう側から来る人Aさんがこちらに着くまで待っていたりすると、Aさんが着くやいなや、最初に待っていた私たちを差し置いて通路を歩いて行く人も非常に多いです。
レジ待ちの時に、ぴったりくっついてくる
パーソナルスペースが狭いのは分かるが、ぴったりくっついてきた挙句にグイグイ押してくるような人もいる。
飛行機の降機時、我先に降りようとする
イヤな瞬間のひとつが、飛行機を降りる時。
飛行機が完全にとまり、シートベルトサインが消えた瞬間、乗客がいっせいにベルトを外して立ち上がる。
そして狭い通路でファーストとビジネスの人たちが全員降りるまで待つわけだが、通路の反対側にいる人たちが我先にと降りようとする。普通なら私たちが先に降りるべきはずなのに、すぐ後方の人が先に降りようとすることがある。
今までの経験では、なぜかほとんど日本人だった。外国人はたいてい「お先にどうぞ」と言ってくれた。
時間に厳しい日本人の性なのかもしれない。
信号のない横断歩道で歩行者を無視する車
アメリカではあり得ない光景のひとつが、信号のない横断歩道を渡ろうとしている歩行者を無視する車である。
歩行者優先なはずだ。
あり得ない。
歩行者が横断しようとしているので待っていたりすると、後ろからクラクションを鳴らされることもある。
全般的に運転マナーはアメリカ人より遥かに良いのに、歩行者への配慮という点では日本人はめっきりマナーがない。
あなたが車に乗っているとき、歩行者はあなたより弱い立場にある。弱い立場をないがしろにすべきではない。
他人の目を気にする日本人
こうして考えてみると、日本人のマナーが悪くなる瞬間は、他人の視線がない場合に起こることがわかる。
人にぶつかったり、人の持ち物にぶつかった場合は、他人が見ているわけでもなく当事者しか知りようがないので、謝らなくても他人からの評価が気にならない。
ドアをホールドの際もそう。別に誰もドアの開け閉めを注意深く見ているわけではない。
レジの場合もそう。これが長蛇の列ができているような場合は、全員の視線が見張っているので、割り込みは絶対に起きない。
また、電車の中でのマナーの悪さも目立つ。
たとえば妊婦に席を譲らないとか。誰も譲らないから、自分も譲らなくて大丈夫という集団心理が働いてしまうのだろう。
スーツケースなどの重い荷物を持って階段を上り下りしているとき、アメリカやヨーロッパでは必ずといっていいほど、男性が手伝いを申し込んでくれる。
日本ではあまりないが、一度だけ、スーツケースを抱えて駅の階段を降りていたとき、サラリーマンの男性が「運びましょうか?」と声をかけてくれた。とても重かったので、好意に甘えたのだが、声をかけてくれたことが無性に嬉しかった。
話しかけるのに勇気が必要かもしれないが、こうした人が増えてくれるといい。