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「灼熱の魂」映画の感想(ネタバレ注意)

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以前から見たかった映画「灼熱の魂」の感想です。

2010年カナダ・フランス作。

中東生まれでカナダに移住した劇作家ワジディ・ムアマッドの戯曲「灼熱の魂(原題:Incendies)」を映画化したものです。

おそらくレバノン内戦下の一人の女性の過酷な人生の話です。

予備知識なしで見ました。

この映画はネタバレなしで見てください。

2時間ちょっとある長めの映画です。

冒頭の頭を刈られる少年の瞳でまず吸い込まれそうになります。

無機質な壁の部屋で、少年が順番に髪の毛を駆られている空間がなんとも異様です。

男の子のかかとには、丸い小さな点の入れ墨が三つ並んでいます。

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実は…

映画の半分まで見たところで…

あと1時間もあると思うと正直ゲンナリしました。

(面白くないという意味ではありません。内容が辛すぎるからです。) 

それでは感想です。

 

「灼熱の魂」の感想

いやーヘビーでしたね。

カナダに移住してきた中東出身の女性の過去…とくれば、大体どんな話か予想はついたのですが…ここまでは想像できなかったわ。

ナワルの中東での恐ろしい人生を描いた映画なのかと思っていたら…そうきたか…

見終わった後、非常にゲンナリしてしまいました。

でも運命のイタズラというのはあるもので、たまに聞きますねこういう話を。

次元が違いますが、幼い時になんらかの理由で手放した我が子が大きくなって年上の女性と恋に落ちたら、その女性が実の母親だったというニュースがたまにありますからね。

一番キツかったのは、バスのシーンですね…やっぱり子供と母親となると知らずうちに感情移入してしまう。なんていう腐れ外道なんでしょうか。

しかしISISなんかはこれ以上に酷いことを毎日繰り返しているんですよね…

 

最初の方のナワルが愛し合った彼と駆け落ちしようとして、兄に彼を殺されてしまうシーンなどがありましたが、「なんでそんなことで?」と思った人もいるでしょう。

いわゆる名誉殺人というもので、この場合、宗教の違う男性と交際してさらに婚前前に駆け落ちしようとしていることで、中東では家族の恥、不名誉と判断され、家族は当人をどうしても構わないという慣習が横行しています。

中東やイスラム社会にはびこっている悪しき慣習です。

この名誉殺人というものは実に不条理に女性の命や人権を奪っている慣習なのですが、残念ながら今も根強く残っています。

多くの女性がこの「名誉殺人」の犠牲者となっています。

たとえば婚姻前の性交渉や、異性との交際、親や親せきが決めた結婚から逃げた時や、最悪な例ではレイプされた女性などが「名誉殺人」という名のもとに家族によって処刑されたりしているのです。

家族が何もしない場合は、村長が家族まとめて殺せと命令することさえあります。

なんの罪もないレイプ被害者がなぜ処刑されなければならないのかと思うかもしれませんが、残酷な事実です。

イラク戦争中、米軍のアグレイブ刑務所でレイプが起きているにも関わらず、イラク女性が被害を訴えなかったのは、被害を訴えれば自分が処刑されることが分かっていたからです。

あるいは夫婦間であっても、妻の不貞を疑った夫が、なんの証拠もないまま公然と妻を処刑するケースも多々あります。

家族の名誉を汚したという恐ろしい不条理のもと、この殺人は正当化されます。

ときにはアメリカでも、イスラム圏から移住してきた両親が子供を「名誉殺人」したことがニュースでも流れています。少し前にも、大学生の娘にボーイフレンドができたことが原因で娘が父親に殺された事件がありました。母親さえもが「娘は殺されて当然のことをした」というコメントをしていたことが衝撃でした。

 

下手に戦争反対プロパガンダ式映画を作るより、こういう映画を作った方が戦争の悲劇や宗教で争う不毛さが響いてくるように思うんですけど、どうでしょうか。

なにはともあれ、映画好きなら見ておきたい一作です。